ノアVS皇帝、あるいは凶悪犯
帝国本陣にて、二人の人物・・・皇帝ユゼンと公王イジャルが鋭く睨み合う。
ただし・・・皇帝ユゼンはわずかに腰が引けていた。
目前の敵! 公王と名乗る人物が・・・何故か可愛い少女だったからだ! しかも好みの顔。
実にやりづらいのだが・・・油断するなかれ!
そう、皇帝直属の近衛兵は・・この少女によって切り伏せられてしまったのだから・・・
(注意・・・イジャルは見た目が可愛いだけの男の子です)
一応・・皇帝ユゼンは相手を睨み、威嚇した。
彼の思惑では・・・このまま睨み合いを続けておけば、やがて味方の兵士たちや近衛兵が駆け付けてくれるであろうと考えた。
天候は晴れ上がり、視界も良好・・・雰囲気的に、大軍を有する我が帝国軍が敵を押し始めていることに気づいたからだ。
だが・・・そう、うまくはいかなかった。
とんでもないものが空から駆け付け・・・いや、空から降ってきたのだ!
それは・・味方ではなく敵だった! しかも少女二人! しかも箒で! ついでに小型とはいえドラゴンまでもが・・・
そう・・空から降って来たのは、空飛ぶ箒に乗る少女たちと・・・手乗りドラゴン!
そんな異様な物体を見た皇帝ユゼンは、即座に危険と感じ・・身構えた
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本陣に向かって急降下していく物体・・・それはノアたち空飛ぶ箒組!
風を切り、自由落下!
イジャル君を守るため・・対峙している人物にノアはターゲットを絞る。
「どうやら・・間に合ったようね 」
ノアの手に持つは魔法の杖・・"ブラッディ・マリー"
そう、やたらと固い・・・撲殺用魔法杖を片手で一振りしたのち・・両手で強く握りしめる。
「準備完了!」
ノアの口角が上がった!
超高速で敵に接近し・・すれ違いざまに殴ってやろうというわけなのだ。
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皇帝ユゼンと対峙する公王イジャルは突然、空から落ちてくる彗星のような物体・・すなわち、ノアの姿を見て"マジ"かと驚いた。
助けにきてくれたのは、実に有り難いが・・・なんという荒業なのか! 無茶すぎる!
だがだが・・・これだけは一応言っておこう。
「ノア様! あれは・・敵の皇帝ユゼン、倒せば勝利する!」
イジャルの張り上げた声、それを聞いたノアは・・・驚きつつも、よりやる気が倍増した。
よし! ラストボスってわけね! 相手にとって不足なし
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皇帝ユゼンは上空を見る。
それは落ちてきていた! 空飛ぶ箒に乗る二人の少女が・・・急降下爆撃のごとく、こちらに突っ込んでくるのだ。
しかも魔法の杖を握り、勝負をいどむがごとく
それは・・一種の馬上槍試合!
すれ違いざまに勝負をつけようという魂胆なのだな!!
皇帝ユゼンは僅かに身震いしつつも、両足を開け、重心を低くおろした。
もちろん両手で強く握りしめるは魔剣・・"魔龍神剣" 天下無双の構え!
この勝負・・受けてたつ!
皇帝たるもの・・・敵に背をむけるわけにはいかないのだ!
空飛ぶ箒にまたがり、落下速度で突っ込んでくるノアと、それらを弾き飛ばそうとする皇帝ユゼン
この両者が・・目と鼻の先で、すれ違った。
カキィィィィン! ギィィィィ!
両者が手にする武器・・・"ブラッディ・マリー"と"魔龍神剣"が激しく激突し火花を散らす。
白煙と熱・・鉄の匂い
鳥肌が立つような鋭い金属音が鳴り響き・・不快にさせた。
そして・・バキッ!
いやな音が響く! 折れてしまったのだ。
交わるべきではない武器同士の激突によって、貴重な魔剣が破損した。
そう! "魔龍神剣"の方が・・・
邪神様から貰ったアダマンタイト製の魔法杖のほうが・・・"魔龍神剣"より硬かったのである。
" まっ、まさか! "・・の表情となる皇帝。
だが・・この勝負、魔剣が折れただけでは済まなかった。
音速に迫る武器の激突は・・・猛烈な衝撃波を生みだし・・・
皇帝ユゼンの身体を・・陣幕の外へと吹きとばしたのであった。
「ぐわぁぁぁぁぁ」
そして一方、ノアたちの方は・・・依然として箒にまたがっていた。
ただし・・・その箒は地面に対して、直角に突き刺さっていたりする。
「うにゃゃ 地面に・・・逆さま!?」
そう、直角状態となって、地面からそびえ立つ箒に、平然とまたがっているノアとコサミちゃん・・・ちょっとシュールであった。
ついでにいうと、地面に食いこみ過ぎて、箒を抜きとることが出来ない。
それは・・まるで墓標、オブジェクト。
だが・・・ご安心を! 自由落下速度で地面に食い込むほどの墜落をしても・・・ノアたちは重力安定装置のおかげで無傷。
垂直にそびえ立つ箒に なんの問題もなくまたがれるほどの安定装置なのだ。
そう、慣性の法則を完全に無視できるため・・・身体が放り出される危険性がなかったのである!
ちなみに・・・地面に突き刺さった箒は・・時空ストレージにあっさりと収納し、綺麗に片付けました。
「・・・・ふぅ、一仕事した快感」
命を懸けた一騎打ち、勝利した高揚感!
ノアは息荒くしながらも・・表情は明るい。
" 勝ちましたとも! 勝ちましたとも! "
だが・・・コサミちゃんの方は気絶寸前となりノアに寄りかかってしまっている。
「もう・・・だめ!」 ちょっと可哀そうだと思った。
コサミちゃんは身体が揺さぶられたというわけではなく、精神的にまいってしまったのである。
とりあえずイジャル君の危機を救えたが・・・これで終わったわけではない。
陣幕の外へと転がった皇帝ユゼンの・・・安否確認!?ではなくて とどめを刺す必要があるのだ!
そう、その皇帝ユゼンは・・・ノアとの激突、衝撃波によって、陣幕の外へと放りだされてしまっていた
彼は何度もバウンドしたものの・・意識はあり、生きている。
全身が痛むものの・・体を起こすことぐらいできるはずだ!
だが・・・動けない。
いや! 謎の黒い物体がネバネバと身体にまとわりつき・・・地面から起き上がることが出来ない!
その姿・・ホイホイに捕まったゴキブリのごとく。
ちなみに・・その黒い物体は・・・チョコレート!
そう、ノアはチョココーティング魔法を放ち、身体の動きを封じこめたのだ!
「ふっふふ 逃がさないわよ!」
皇帝ユゼンにとって・・この魔法は未知なるもの・・なにをされたのか全く分からない。
ちょっと口でなめてみると甘くておいしいのだが そんなことを思ってる場合じゃなかった。
とにかく・・・立ち上がるのだ!
このネバネバの黒い物体から、逃れなければならない!
彼は・・あらん限りの力をふりしぼり、身体を動かそうともがく。
手足を動かし、腰をねじる。
だが、そんなことは許さないとばかりに、強い力でおもいっきり腹を踏みつけられた。
しかも、ねじるように・・・
「うっ!」
そう、あの少女が踏みつけてきているのだ。
余を吹き飛ばした憎たらしい少女!
しかも、勝ち誇った顔をしながら、偉大なるヴルティリア帝国皇帝たる余を・・余を!・・見下ろしているのだ!
何という屈辱だろうか!
ユゼンは怒りに震えると同時に・・目から涙がこぼれる。
"" 負けたのか!? 余は負けたのか!? ・・・そして、殺されるのか!
いいだろう! 覚悟を決めた! さぁ・・はやく余を殺せ! 殺せ! ""
だが、その時、一筋の光を見ることになる!
そう、味方の兵士たちが、一団となって駆けつけてきたのであった。
「「陛下! 陛下!」」「すぐにお助けします!」
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皇帝ユゼンを、楽し気に踏みつける憎たらしき少女とは・・もちろんのことノアであった!
それはそれは、これでもかと踏みつけ、嗜虐心を満足していた・・のもつかの間、
帝国兵士の一団がこちらへと向かってきているのに気が付いた。
もちろん・・・彼ら兵士たちの目的は・・敬愛する皇帝陛下を救うことなのだ!
そう! こともあろうに皇帝陛下に対して足蹴りなどするような者など 絶対に許さないだろう。
そんな許されるべきではない人物が・・・兵士たちの前に立ちふさがる。
皇帝ユゼンを人質にとって・・・♡
「ふっふふふ! これを見ろ! 皇帝様の身柄は預かった。ほらほら・・・それ以上、近づくんじゃないわよ!
それに、つきあげている武器も下ろせ! 皇帝様の命が大事ではないのか! 」
多数の帝国兵士を相手に言い放ち、勝ち誇るノア・・もはや悪人!
しかもこの悪人・ノアの手には、巨悪な魔法杖"ブラッディ・マリー"!
そう、いまにもその杖で・・皇帝の頭を叩き割ろうとしていたのだ。
帝国の兵士たちはこの緊急事態に困惑する。どうするべきなのか!? 判断がつかない・・
どちらにしろ、皇帝陛下を人質にされているのだ!
軽率な行動など・・・許されはしない。
その後・・帝国兵たちは続々と集まってくるのだが・・
状況は変わらず、ある程度の距離をとり、ノアを睨むのみだった。
「お前たちは敗北者なのだよ、潔くするんだな! このノア様が勝利者なのだ!」
「ひ・・・卑怯な!」「卑劣!」
帝国兵たちからの罵詈雑言が聞こえて来た。
「不必要な発言を慎むんだな! こちらにはお前たちにとって大事な皇帝様がいるのだ 」
楽し気に・・兵士たちを見て発言をするノア! もはや悪人どころかラストボス!
それに対して・・地面に押さえつけられている皇帝ユゼンは声を張り上げ叫ぶ。
「・・・余の命などいらん! 帝国の名誉を守れ!・・・全軍突撃し・・・」
皇帝ユゼンの発言が途中で止まった。
そう、皇帝の口をノアの足裏で押さえつけたからであった。
またしても・・・なんという屈辱! でもパンツが丸見えw(ちなみに黒だった)
「勝手に発言するんじゃないよ!」
帝国皇帝を地面に押し付け、足蹴りにする凶悪人質事件の悪役・ノア!
そんな彼女に、後ろから駆けつけて来た・・コサミちゃんや、公王のイジャルは おもっきりのドン引きをした。
ちなみに・・・シルンちゃんのほうは、ノアの肩にのり、中指をたて・・兵士たちを威嚇していたのだが、指が小さすぎて、帝国の兵たちには 何をしてるのか見えなかったのである。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)