公王VS皇帝・一騎打ち
帝国陣営・本陣に突入した一人の鎧武者・・・
そう、彼の名はイジャル! キヨウラ公国の最高権力者・・すなわち公王だ!
そして、その公王に対峙するは、ヴルティリア帝国の最高支配者・皇帝ユゼン!
この戦場を二分する若きリーダーが・・・ここで出会う!
そして・・・歴史の流れを変える瞬間にもなった。
「余は・・偉大なる帝国の皇帝ユゼン! 余と戦うというのならば、この剣のサビにしてやろう」
「おぅ! 僕は・・キヨウラの公王イジャル。サビなど御免だ! 逆に・・お前の首をいただくとする!」
両者は、ここで名乗り合い、この戦いでの雌雄を決する相手だと互いに認識した。
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黒き鎧武者の公王イジャルは・・・皇帝ユゼンの持つ魔剣! そう、彼が手にする魔剣に警戒する。
その魔剣の名は・・"魔龍神剣"
重さを感じないほど軽く、ムチのようにしなるのだが・・・その打撃力は驚異的に重い・・・
普通の剣で斬り結べば、間違いなく折れてしまうだろう。
そう、決して斬り結んではならないのだ!
公王イジャルは・・・剣を下段に構え、皇帝の動きを見極めようとした。
まともに剣撃をすれば・・剣を失う。それは・・死を意味するのだ。
何らかの手段をつかい敵の隙をつくるしかない。
一方、皇帝ユゼンの方も大きな問題をかかえていた。
身体が・・ふらつき、本調子ではない!
ノアたちによるエレキテル砲の攻撃で・・・頭部を負傷し、先ほどまで身体が動けずにいたのだ。
今は・・・薬のおかげで動けているが、まだ目がかすみ、手足が震える。
これでは・・・剣術に自信ありといえども、勝てないだろう!
二人の若きリーダー、公王と皇帝!
互いに睨み合う。隙を見いだせない。
両者の額に・・・冷たい汗が流れる。
だが・・突然、状況に変化が起きた。
付近の霧が晴れあがり・・・雲の切れ間から現れた日の光が、"魔龍神剣"の剣身を明るく照らしたのだ。
しかも眩いぐらいに・・・
「うっ これは!」
突然の明るさに イジャルの視界が奪われた。
真っ白! 見えない・・・
そして・・・"魔龍神剣"のしなっていく音が・・耳元へと近づく。
シュルルゥゥゥゥー!
イジャルは・・・反射的に身体を低くし、のけぞったが・・・時すでに遅し!
魔剣の放つ波動によって イジャルの頭部が弾け飛び・・・地面へと転がる。
「うっ!」
手ごたえあり! 皇帝ユゼンのニヤリとした顔つき・・・勝利を得た表情だ。
しかし・・・その表情も、つかの間に過ぎなかった。
そう、それはイジャルの頭部なのではなく、彼のかぶっていた兜が、弾け飛んだにすぎなかった。
イジャルは健在! 剣を構え、皇帝を睨みつけていた。
しかし、皇帝ユゼンは、目前にいる鎧武者・・・
そう、兜がぬげた・・公王イジャルの素顔を見て、動揺する。
「・・・・・・なんと! なんと!」
淡いクリーム色の髪がたなびく・・・可愛い少女だったからだ! しかも好みの顔・・・なんてことだ!
(注意・・・イジャルは見た目が可愛いだけの男の子です)
キヨウラの公王が・・・女性だと聞いてなかったぞ!
たしか公王は・・前公爵の孫、男のはず!?
まさかのまさか! 人違い!?
いや、違う!
間違いなく・・・目前の少女は自分のことを公王と言っていた。
嘘を言ったのか!? それとも影武者!?
皇帝は・・・戸惑う。相手は可愛い少女・・・しかも好みの顔!
だが・・・油断はできない。皇帝直属の近衛兵は・・この少女によって切り伏せられたのだから!
「お主・・・本当にキヨウラの公王なのか!?」
「何を疑うのだ! 僕はキヨウラ・ノン・イジャル! この家紋を見ろ」
イジャルの着用している鎧の胸部分には キヨウラ一族を示す・・藤の家紋が描かれていた。
「うぬっ! たしかに」
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帝国陣営・本陣にて対峙する二人・・・・公王と皇帝!
皇帝ユゼンは動揺を隠しつつも、相手を眼光鋭く睨む。
この一騎打ち・・・目前の相手を斬れば、それはすなわち戦場全体の勝利となるのだ。
絶対に倒すべきラストボス。必ず討ち取るべし!
両者の殺意がぶつかり合った。
そして・・その外側でも、両軍の激突が繰り返されていたのである。
当初、勢いに乗る公国軍の攻勢によって、帝国軍を押しに押しまくってはいたが、
このまま最後まで、勢いを保ち続けることが出来るであろうか!?
おそらく無理であろう。
そう、朝日が徐々に昇っていき・・・地面を明るく照らしだしたのだ。
霧が晴れ、視界が良好になり始めたのである。
そうなると・・・帝国軍側の指揮系統も回復、
各部隊の将校、連隊長たちの命令が伝わりやすくなってきたのだ。
いよいよ、帝国軍の反撃開始である。
しかも・・帝国軍三万五千に対して公国軍は八千
兵力的にかなりの差があった。
公国軍の兵士たちはノアから配られたチョコザイナのチョコを口にしているので体力も戦闘力も倍増している。
だが! されど・・・この兵力差は大きく、不利は否めなかった。
そう・・帝国軍は数にものを言わすほどの圧倒はできないのだが、それでも徐々に攻め上げてきていたのである。
突進する公国軍先陣部隊は・・帝国陣営・本陣に突入し、皇帝直属・近衛部隊との激突を繰り返していた。
だが、さすが帝国の精鋭部隊・・・今までのように押し切ることが出来ない。
あのエル兄弟でさえ・・近衛兵たちの魔導と剣を織り交ぜた特殊攻撃によって 押されていたのである。
かなり危険だ!
だが・・・そこですかさず助けに入ったのが、猿たちの大ボス、ソン・ゴクン!
彼が手にしている如意棒をブンブンと振り回し、エル兄弟へと襲い掛かる近衛兵たちを天高くへと吹き飛ばしたのであった。
さすが・・・ボス猿! 人間を超えている。
・・・局地的に公国軍側が有利といえども、霧が晴れだし視界が良好になってきたため・・・
徐々に戦局が悪化し始めてきていた。
帝国軍はその数をいかし・・・公国軍の側面、または後方へと展開し始めたのである。
包囲をするつもりなのであろう。
しかも・・・魔導連隊や弓隊などの遠距離攻撃によって 公国軍後方部隊が崩壊しつつあった。
チョコによる身体強化をされているとはいえども・・遠距離攻撃の前では不利はいなめない。
ほぼ一方的に攻撃にさらされ・・・逃げ惑い始めていたのだ。
そう、公王イジャルによる強行突撃によって・・・強者たちは、我先にと前進していき、
そして、弱兵たちが後方に残されたためであった。
公国軍の弱点は後方にあったのである。
たしかにこれは不味い状況であった。
崩れていく後方部隊。
だが! 公国軍先陣部隊はすでに帝国本陣に突入しているのだ!
しかも・・その先端を走る公王イジャルは・・・なんと! 帝国皇帝と直接対峙し刃を交えてもいる。
ただし! 公王イジャルがあまりにも先陣を切り過ぎたため・・・他の公国軍兵士たちが追いついておらず・・孤立していた。
とはいえ・・・イジャルが皇帝の首を取りさえすれば・・この戦いは勝利となるであろう!
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雲の切れ間に一筋の飛行機雲が流れていく。
かなりの速度だ! 全速疾走の空飛ぶ箒・・・
アリツ砦での戦いを終えたノアたちは・・その後、司令官サリュマと別れ・・大急ぎとなって、この戦場に到着したのであった。
「まずい! まずい! まずいぞ!」
『 確かにこれは・・・ヤバイっす! 』
上空から見下ろす戦場!・・・あきらかに公国軍が不利なのだ!
多数の帝国軍によって包囲されてしまっている!
これは危機だ! イジャル君の身を案じる。
ノアは・・・サテライトの魔法を使用し、イジャル君の位置をすぐに特定した。
そう、彼は敵の本陣に突入しており、しかも・・一騎打ちまでしているではないか!
だが・・・苦戦を強いられている! かなり不利だ! ヤバイ! まずい!
イジャル君の兜が弾き飛ばされ・・地面に転がる様子が、サテライト魔法のウインドに映しだされたのである。
「うあっ、なんてこと イ・・イジャル君!」
これは急がないと・・・!!
ノアは後ろを振り向き・・・コサミちゃんに了承をとる。
「これは・・やるしかない! コサミちゃん・・荒療治になるけど覚悟してね!」
そう言われたので・・彼女は震えつつも元気よく返事した。
「はい! いつでも・・・」
するとノアは優しく頷き・・コサミちゃんの手を握った。
「大丈夫! うちも覚悟はできている。行こう! シルンちゃん、例の強行突撃をお願いね」
『 OK! やるっす! 』
シルンちゃんは小さい手でサムズアップをした。
そう・・・以前からノアとシルンちゃんによって構想されていた・・とある突撃作戦が実行されたのである。
ノアを乗せた空飛ぶ箒がいきなり急降下を開始した。
ちなみにこの箒には重力安定装置が搭載されているため、どんな激しい動きをしても振り落とされることはない。
慣性の法則を打ち消す安全設計となっているのだ!
ノアたちの空飛ぶ箒は・・・イジャル君のいる帝国本営へとまっしぐら!
ほぼ落下に近い角度で突き進んでいた。
あと・・ノアたちの安全を守るため、空飛ぶ箒の防衛システム・"電磁シールド"をすでに展開済!
箒の周辺を、青白く輝く球体によって覆われており・・・全ての物理攻撃、魔導攻撃を弾くことが出来るのだ。
そう、敵本陣への急降下中に、敵からの迎撃があるかもしれない・・
いや! すでに・・・撃たれていた。
某異世界・・・近代戦のような対空砲火というべき多数の魔弾が・・・ノアたちに襲い掛かってきていた。
ドカン! ドカン! ドカン!
すさまじい破裂音と閃光!
眩しすぎて、何も見えない
「す、すごい!」
ノアの目は見開き・・・僅かに手が震える。これが・・・真の戦場なのか!
そして、コサミちゃんの方は、震えを通り越し、口から泡をふきだしていた。
この空飛ぶ箒は安心安全設計!
いくら命中していようが・・全て、電磁シールドで弾いている!
この程度の攻撃・・・たいしたことではない!
とはいうものの・・・この電磁シールドの展開時間は・・わずか一分という制約がある!
そう、その一分でイジャル君のいる敵本陣に駆け込み・・・彼を救い出せ!!
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)