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戦乱の始まり、ドラゴン軍団は舞い降りた


チビドラゴンが パタパタと羽をゆらし・・・ノアの周りを旋回している。

なんて可愛いの! 癒されてしまう・・・なんて思っていたら・・・突然、人の言葉で話し始めた。


『  わっちの名はシルン、ドラゴンワンド(魔法の杖)の本体なんっす 』


まさか! 喋れるの!? ノアは驚き動揺した。


「えっ・・あっ・・ う、うちはノアっていうの! よろしくね・・えっと シルンちゃん・・って

ドラゴンなの? 」


『  わっちは課金アイテムの面白グッズなんす。色々と面白いドラゴン技を見せてあげっすよ 』


アイテム課金!? 面白グッズ!? シルンと名乗るチビドラゴンの言葉にノアは戸惑った。

言っている意味がわからない! (異世界単語すぎて理解不能)


『  見たところっす・・・ノア様はあの男に追われているようすっね 』

・・・・と言うとチビドラゴンは その後方から追いかけてくる魔導師の男を見た。




そう!ノアは、チビドラゴンとお気楽に会話をしながらも 両足は高速回転・・全速力で駆け走っているのだ。

これは・・・身体強化魔法によってなされている技! 

ノアは高速の駆け走りによって・・どこかの走り屋のごとく爆走していた。


もちろん・・チビドラゴンも ノアに負けない速さで羽ばたき・・・しかもノアの周りを旋回している。


そして・・その後ろから 猛スピードの魔導師男が追跡してきていた。


ズドォォォン! 吹き荒れる旋風、舞い散る砂煙・・・


この二人と一匹・・・ソニックブームもどきの衝撃波を周囲に巻き散らし・・・

街道を行き交う人々や荷馬車を吹き飛ばしていった。


彼らの通った跡には・・・荷馬車の横転、人々の転がる様子が見て取れた。

なんという迷惑なのだ!


もはやこれは掟無用の世紀末バイクレース・・・・または峠バトル状態!

ときおり街道のカーブで どこかの某走り屋のごとく 人間ドリフトをおこなっていた。



だが・・・これだけの走りをしていても・・・後方から迫る魔導師男(エリャン)が徐々に近づいてきている。

身体強化魔法の能力は・・・どうやらあの男の方が上らしい。

このままでは追い付かれる!



ちらちらと後方を見ながら・・・ノアは対策を考えていた。

やはり・・・一戦することになるのか!


すると・・・チビドラゴンのシルンが声をかけてきた。

『  わっちにおまかせっす わっちの底力で追い払うっす! 』


「できるの!?」


『  もちろんっす! 』


ニコリと笑顔となり鼻がビクンと動くシルン・・・・ちょっと可愛い! なでなでしてみたい。


『  驚くかもしれないっすけど・・・我慢してほしいっす! 』



そう言うと チビドラゴンの口からわずかに炎を吐いた直後・・・周囲に大音響の音楽が流れた。

それは・・・ワグナーの壮大なるBGM、"ワルキューレの騎行"である♪♪


「なになに!?」

いきなり・・・聞きなれない音楽が流れてきたので・・ノアは付近を見渡し音源をさがす。

だが・・・シルンはすかさず注意を促した。


『 大丈夫っす! これは演出っす! ノア様は気にせず走り抜けてくださいっす 』


「う・・うん」


シルンにそう言われたので・・・とにかく!? とりあえず!? わけが分からないまま ノアは駆け走った。

後方から追いかけてくる魔導師男(エリャン)から 逃げきることこそが何よりも重要なのだ!



引き続きBGMが流れ・・その音調に合わしたかのように・・・雲ひとつない青空が・・・にわかに曇りだし・・・

ついに雷が鳴り響く。


バシャ――ン!


すると・・・地平線かなたから 大量の黒い点がこちらへと向かってきたのだ。

そして・・見る見るうちに強大化していき・・・その正体があきらかとなる。

それはドラゴン!


シルンのような手のりドラゴンではない!

正統的な本物のドラゴン! 人間の何十倍もありそうなドラゴンが大量に・・・空を覆いつくすほどやって来たのだ。


しかも・・・火炎放射のような炎を口から吐きだしながら!


その光景は・・・まるでラグナロック! 世界の終わり・・・

ついでにいうと・・・ワルキューレの騎行というBGMつきである。




「な・・・なに! えっ!? うそ!?」


そんなとんでもない光景を見て叫び・・・足が止まりそうになるノア。

だがそこで シルンは再び声をあげる。


『  ノア様・・ダメです! 止まってはダメです 』


「う・・うん」


???(クレッションマーク)で頭の中が一杯なのだが・・とりあえず、シルンからのアドバイスに従い・・・再び速度を上げ・・・街道を駆け抜けていく。



だが・・・ノアの後方、魔導師男(エリャン)は・・・その恐るべき光景を見て足を止め空を見入っていた。

「い・・・一体何が!? まさかあの王女・・・これだけのドラゴンを!!」


エリャンは確かに・・・元王女の動向を見ていた。

元王女とあのチビドラゴンは何かを会話し・・・そして、その後、チビドラゴンが小さい炎を吹き出したのだ。

するとその途端、大量のドラゴンが空を覆いつくした!


あの元王女は・・・ドラゴン軍団を配下にくわえているというのか!?

まさか!?・・ドラゴンマスター、いや! ドラゴンキング、世界を滅ぼす者!


エリャンは・・・とんでもない人物を敵にしたことに気づき恐怖した。

「ふっ! これが・・・若さゆえの過ち!」


ちょっとニヒルな笑いをしてるので まだまだ余裕はありそうだが・・・それでも周辺をぐるりと見渡し

・・・隠れることができそうな場所を探すのであった。


あの岩陰で・・身を隠すのがいいか!!



-*- - - - - - *-




遥かかなた・・・街道を駆け走るノアとチビドラゴンのシルン。

後ろを振り返ると・・・もうあの男はいなかった。


おそらく・・・大スペクタクル映像に驚いて・・・追跡をあきらめたのだろう。

これで一安心なのだが・・・あのドラゴンたちはいったい!?



『 ノア様! 大丈夫っす。あのドラゴンたちは3D映像で投影してるだけで・・・現実に存在してないっす

いわゆる面白演出なんすっよ 』


シルンは色々と説明するのだが・・・ノアには理解不能である。


3D映像ってなに!? 面白演出ってなに!?

・・・でも、なんであってもいいか! 追いかけて来た魔導師男も追い払えたし・・

それに・・シルンちゃんをモフモフしたいほど可愛いのだから(意味不明)



-- -- -- -- -- -- -- -- -- --


これは・・・邪神(コーヒーチョコケーキ)が元の世界でプレイしていたVR-MMO(戦国乱闘!血と肉のオンラインバラード)内の

面白課金グッズの一つであり ドラゴンワンドにしこんでいた面白仕掛けであった。


これら上空を舞うドラゴン軍団は・・ドラゴンワンド(魔法の杖)によって作られた立体映像であり現実に存在はしない。

BGMも場を盛り上げるための演出

そう、これは・・・邪神(コーヒーチョコケーキ)によって引き当てたガチャのハズレグッズの一つであった。


そんなハズレグッズなのだが・・・

この世界では何故か・・・そのハズレグッズ(ドラゴンワンド)に意思が芽生え・・・ノアと会話までしている。

しかも・・・かわいくプリティなチビドラゴンになったりもしていた。

実に摩訶不思議である!


-- -- -- -- -- -- -- -- -- --




空に現れたドラゴン軍団!

3D映像であり、現実に存在しないのだが・・そのあまりにもリアルすぎる映像ゆえに人々は恐れおののいた。


ドラゴンたちは炎を吐き、咆哮する・・・しかも奇妙なBGMつき・・・ワルキューレの騎行♪

ワグナーもびっくりな演出であるw


街道にいた人々は空を見上げ戸惑い逃げ出す。

荷馬車の御者は、恐れおののく馬を制御できずに街道から外れ横転。

商人たちは、命より大切な荷物を投げ捨てて逃げた。

子供は、泣き叫び・・・老人は、神に祈った。

これぞラグナロック・・・世界の終わり、神々のたそがれ・・・・人々はその光景に絶望した。




元王女フィレノアーナに抹殺命令を出し閣下と呼ばれた人物・ゲルンラン城伯、

その彼が領有するアルゲルンの町にも、ついにこの騒ぎが伝播してきた。


その町の人たちは空を仰ぎ・・・驚くべき光景を見る。

巨大なドラゴンが飛び交う! しかも空を覆いつくすほどの数!

口から炎を吐き、咆哮を轟かす。


しかし・・このドラゴンたちは3D映像、現実に存在しているわけではない。

もちろん、何の害ももたらさないのだが・・住民たちにそんなことを知る由もない。


「なんなんだ・・あれは!」

「いったいどうなってるんだ!」

「うわぁぁぁ 逃げろ! 逃げろ!!」



多くの人達は・・我先にと町から逃げだそうとしていた。

しかし・・・城門の数は限られている。人々は押し合いへし合いしながら進もうとしたが、

なかなか進むことが出来ない。


そのような状況下で・・大量のドラゴンたちは空を飛び交い・・・口から巨大な炎を噴き出す。

まさに恐怖! いつ襲ってくるか分からない恐怖!

人々は焦りと絶望にかられパニックを引き起こす。

その上、諍いなどが発生し・いたるところで乱闘騒ぎ。


そのような様子を見て不安になったのか・・幼児達は泣き叫ぶ。

親たちはそんな幼児を抱き抱え・・とりあえず 逃げこめそうな建物へと避難する。


だが・・そんな避難先でも 争いと諍いが起きた。


そう! 町は混乱していた。

しかし・・・その混乱を治めるべき警備兵もすでに逃げ散っており どこにもいない。


それでも・・何人かの勇敢なる衛兵たちは・・バリスタや投石機でドラゴンを攻撃するが・・全く通用せず・・それどころか、ドラゴンは激しく咆哮した。

(3D映像なので・・攻撃しても無駄な上に・・映像が投影されている高さにまで バリスタや投石が届いていない!)


このような町の混乱に乗じて、悪さをする者たちが現れた。

または・・・今まで受けた横暴や差別、社会への不満を、この機会に復讐しようと考えたのかもしれない。

いわゆる下層民・・虐げられた者たち! 


今なら、治安は崩壊している。警備兵は来ない! 

暴れるなら今だ! 復讐するなら今だ!


ゲルンラン城伯の悪政も原因だったのだろう!

不正と横暴が蔓延ってたゆえなのか・・・この混乱の中で不満が爆発した。


彼らは商店や屋敷に押し入り、金品を奪う! 借用書に火を付ける! 

または役所に侵入し 破壊と略奪・・・しかもこの町の領主、ゲルンラン城伯の屋敷までターゲットにされた!


町の各所で・・争いが始まる。

当初、騒ぎを起こす者は少数であったのだが・・次第に数を膨らませていき・・

・・・ついに、侮りがたい数にまで膨れ上がった。


あのドラゴンたちは空を舞うだけで・・・攻撃を一切してこない!

襲う気など初めからなかったのではないのか!?

・・・・と気付いた人達が この機会を利用して騒ぎに参加し始めたのである。


ちなみに このアルゲルンの町の半分はスラム街であり、半分の人達が搾取される側、潜在的火種を抱えていた。


そして・・・その苛立ちと不満が・・暴動を、いや! 革命を引き起こしたのである。

 

「「うぉぉぉぉぉ! ぐぅぉぉぉ! 殺せ! 殺せ!」」


人々の雄叫びが響く!

殴り合いは当たり前・・・剣と剣の火花が散る・・・弓矢が飛び交う。

時には魔法の炸裂弾!!


そして、火の手があがった。一か所ではなく、いくつもの場所で・・・

消火する者はいない。

風にあおられ火の粉が舞い散り・・火災はどんどん広がっていく。

そして・・・ついに町は炎で包まれた。



この町の領主・ゲルンラン城伯は少数の護衛兵とともに逃げ惑っていた。

城伯の屋敷を暴徒に襲われ・・そこから辛うじて脱出したが・・・町は炎に包まれていた。

逃げ道がない。火災旋風のため進めないのだ。


いや! 一応逃げ道はあるのだが・・・そちらには暴徒が集結しており・・・

城伯を殺そうと探しまくっていた。


「城伯を探せ! 城伯を殺せ!」

「奴によって・・・俺の商会が潰されたのだ!」

「ああっあ・・俺の娘が奴によって・・・」「俺の嫁もだ」

「お父さんの仇!」「よくも財産を・・」「息子を・・」

「殺せ! 殺せ!」

「革命の始まりだ!」



怨嗟の声をあげる暴徒と炎にはさまれてしまったゲルンラン城伯は窮地に陥る。

すると・・・目の前にちょうどいい死体を見つけた。しかも体系が城伯と似ている。

「汚い服だが・・仕方がない! あえて目を瞑るしかないか・・」


彼は・・身につけている貴族服を脱ぎ捨て・・その死体の服を奪い、すばやく着替えた。


うっうう・・くさい! あっちこっちが破れている・・なんて衣服だ! だが、これで一般人に成りすまし・・・逃げきれるであろう。


だが、無理だった・・・あっという間に見破られてしまったのだ。


城伯を守る護衛兵が・・・見すぼらしい男を守るように周りを固めているのだから・・・

その不自然さが目立ってしまった。

城伯・・あほだった!


「まてっ・・・話せばわかる」

「だまれ! 殺せば分かるのだ!」

「良い城伯は・・死んだ城伯♪」

「もっともっと切り刻め!」


城伯と護衛兵は暴徒に取り囲まれ・・・最後の悲鳴とともに消え去った。



その後・・ゲルンラン城伯を見た者はいない。

遺体も発見されず・・・行方不明とされることになる。



こうして・・アルゲルンの町はゲルンラン城伯とともに燃え尽き・・壊滅した。







--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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