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アリツ砦の攻防



かつて・・大陸にその名を轟かせたヴルティリア帝国! 

小さい都市国家からはじまり・・周辺を併呑、多くの民族を取り込みながら・・ついに最強国家となった。

だが今や・・その1000年の歴史に陰りが見えつつある。



-*- - - - - - *-


ノアたちが少女ヒラガと仲良く!?ゴーレム談議をしていたその頃・・・公国の国境線にて異変が起き始めていた。



歴史ある西方の大国・ヴルティリア帝国。

その東部国境ローランの町に帝国軍4万が集結し、そして東に向かって動き出そうとしていた。

目的は・・カイラシャ王国から一方的に独立宣言をしたというキヨウラ公国への軍事介入である。

そう、公国と王国、両者の戦い、又は内戦の・・どさくさ紛れに領土を得ようという魂胆なのであった。



若さを象徴するような荒々しい黒髪、鋭い目つき、そして 質素ながらも、威厳を放つ狩衣に身を包んだ人物が姿を現した。

彼はヴルティリア帝国皇帝ユゼン・・・目前で並ぶ数多くの兵士たちの前にて・・力強く宣言する。


「 我が帝国の敵、カイラシャ王国に正義の鉄槌を食らわす時が来た!

敵は内戦によって弱体化している! 今ここで動かずして、いつ動くと言うのか!

これはいわば神から与えられた幸運、そしてチャンスだ。奪われた領土を取りもどせという神からの啓示。

奪回せよ! 奪い返せ! これは国土を取り戻すための戦争・・・正義のための戦いなのだ! 帝国万歳! 」



するとこれに応じて、兵士たちは剣を高く掲げ、一斉に歓声を上げた。


「「帝国万歳 帝国万歳」」「「皇帝万歳 皇帝万歳」」


皇帝ユゼンは‥兵士たちの高い士気に満足し、彼自身も拳を突き上げた。


「勇猛なる兵士たちよ! 勝利は確定している! 我ら帝国軍は最強! 人類最強なのだ!」



兵士たちには一応、カイラシャ王国への侵攻と・・銘打っているものの実際のところは、その王国から独立宣言したキヨウラ公国への侵攻であった。

彼ら兵士たちにとって・・・独立まもないキヨウラ公国という名前はあまり馴染みがないゆえに便宜上、カイラシャ王国と名指ししたにすぎなかった。

ついでにいうと・・・" 国土を取り戻すための戦争 "などと言ってはいるが、ただの難癖であり、自国民向けの大義名分に過ぎない。




ユゼン皇帝は、この戦争における勝利を確信していた! 

カイラシャ王国は内乱状態に陥っている! 国内だけで手一杯のはず!

同じく・・独立宣言したというキヨウラ公国も、王国との戦闘で背後は、おそらくがら空きであろう。

そんな背後に忍び寄り・・帝国軍4万で突き崩そうという魂胆であった。


負ける要素がない。圧倒的に有利な立場・・勝利の女神が手を振って手招きをしているようなものなのだ。


それに・・この戦いによって領土を得たとなると・・・帝国議会内における発言力を強化できるであろう。

なにかとうるさい・・・あの反皇帝派の議員どもを押さえつけ、黙らせることが可能となるのだ。




「よし! 出撃せよ」


皇帝ユゼンの号令によって帝国軍4万は動き出した。

陣形は・・・皇帝と、その皇帝を守る近衛部隊を中心とした魚鱗の陣、

比較的広い平野を突き抜けキヨウラ公国・オグラへと達する算段であった。


だが、その道中にて・・・思わぬ妨害にあった。


まさかのまさか・・・青天の霹靂!

奴らは・・砦を作り、我らを待ち構えていたのである

それは通称・・アリツ砦! キヨウラ公国軍による仕業なのだ。


元々は廃墟となっていた砦なのだが・・・わずか短期間で改修、整備をされ、軍事的に使用可能な砦として生まれ変わっていたのである。


「なんと! 奴ら・・・キヨウラの旗印! 我らの動きを読まれていたのか! これは不味い・・・」

ここで皇帝ユゼンの思惑が完全に外れてしまった。


敵が気づく前に敵地へと乗り込む電撃作戦は不可能、奇襲は失敗!

それどころか・・このアリツ砦を何が何でも落とさなければならない状況となったのである。


そう、この砦は街道を塞ぐように存在しており、放置などすれば、街道を通じた補給活動などに、大きな支障をくだすだろう。


それゆえに・・・この砦の攻略は絶対必要なのだ!

公国領侵攻のために・・何が何でも落とさなければならない。


キヨウラ公国vsヴルティリア帝国の火蓋が切って落とされた!





キヨウラ公国公王イジャルは、この砦・アリツの防衛に5000の兵を投入した。

司令官はサリュマ、代々キヨウラ公爵家に仕える家系の者。

キヨウラ家の改易に巻き込まれ、一族の多くが処刑されたが、当時、彼だけが国外にいたため、難を逃れたのである。

それゆえなのか・・サリュマはカイラシャ王国に対して恨みを抱き、好戦的な性格でもあった。


「敵が王国ではないのは残念だが、これはより良き予行練習になる! 兵たちに殺戮慣れさせ、戦争の楽しさを経験させる!

・・・これこそ精強な兵士を育て上げる第一歩なのだ」



このような発言を繰り返すサリュマに対して、公王イジャルは一抹の不安を感じていた。

だが、彼の軍事的能力の高さは間違いない!

アリツの砦を任せるに相応しい人物であろう。




ヴルティリア帝国軍、皇帝ユゼン率いる4万の軍勢がアリツ砦の西方2ロキル(キロ)に布陣した。

アリツ砦は街道の関所も兼ねているのだ。

軍の補給路、すなわち街道を確保するためにも、攻略は絶対に必要である。


だが、砦の周辺は広大な湿地帯、狭い街道以外は全て湿地帯なのだ。

もちろん・・この湿地帯に兵士たちが踏込めば・・泥に足をとられ・・容易に動くことが出来なくなる。

そうなると・・もはや、弓矢や魔法の的になるしかない!


戦闘は、必然的に・・幅の狭い街道での戦いに限定されてしまうのだ!

しかも、この砦は緩やかとはいえ、高台に位置しており 帝国軍を見下ろせる位置にあった。


「ちっ!」

皇帝ユゼンは舌打ちする!


ここが湿地帯だったとは予想外・・・なんという攻めずらさ!

だが、やらねばなるまい!


帝国の名誉にかけて・・ここを攻略するのだ!

「突撃せよ!」


「「 ウォー! ウォー! 」」 帝国兵の雄叫びが響き渡る。


アリツ砦に通じる唯一の街道を、怒涛の如く帝国兵が走った!

道幅は狭く左右は湿地帯・・・横への展開が出来ない以上、縦に真っすぐ突進するしかない。


さながら大渋滞、押し合いながらも狭い街道を突き進む帝国兵4万! 力攻めで攻め落とすのだ!


「「 ウォー! ウォー! 」」




それに対して、アリツ砦・駐屯軍司令官サリュマは・・迫り来る帝国兵たちの様子を伺っていた。

「そうだ、まだ撃つな! 撃つではないぞ! 敵を誘い込むのだ 」


砦の塁壁、狭間にて、司令官サリュマの号令を待ちわびる1000名の魔導師隊と弓隊!


帝国軍は、すでに射程内に入っているのだが まだ撃たせない。

まだだ! まだなのだ!


強烈な一撃を与えるには、もっと接近させるのだ!


「よしよし! もっともっと近づいてこい! 帝国兵のものどもよ」





一方、アリツ砦に向かって突進、駆け走る帝国軍先鋒隊なのだが、今だに砦側からの攻撃がないことに怪訝はあった。

だが・・だとしてもだ! ここで足を止めるわけにはいかない。 


これは戦争だ! 戦いの火蓋を切ってしまった以上、前進あるのみ!

「突撃! 突撃!」


帝国兵士の雄叫びが空気を震わす。


-- -- -- -- -- -- -- -- -- --



ついに奴らが来た。

帝国軍の先陣、一番槍を狙う強者たちが、砦の城門に達したのだ!


" 勇敢なる者達よ! お前たちに洗礼をあたえねばなるまい! "


そう! 帝国軍を十分に引き付けた。今がその時! そのチャンス!

駐屯軍司令官サリュマは片手を上げ、号令を発す。


「撃ち方始め 撃て!撃て!撃て!」


数多くの狭間から噴き上がる白煙、魔導火弾が炎を放ち・・弓矢が雨のように降り注ぐ。


狙いは定めていない。個々は狙わない!

面を制圧するのだ。


ドッドドドゴゥオオオッッ


着弾とともに・・・帝国軍側からの悲鳴、怒号が鳴り響く。

第一の斉射、一撃だけで・・・砦へと迫る帝国軍先頭集団が炎に飲みこまれ姿を掻き消す。


「よっしゃ!」

司令官サリュマは握り拳をつくり叫んだが・・次の瞬間、その炎の中から青白い半透明のような壁が現れた。

これは・・・いわゆる魔導障壁!


砦側からの一斉射撃をした瞬間、帝国軍・魔導師隊によって展開されたのだ。


そう、帝国側は無傷、怪我ひとつ無し!

砦側からの攻撃を全て、魔導障壁によって弾いたのだ!


「そう来たか! だが、この程度は想定内、撃ち続けよ! 撃って撃って撃ちまくれ! 火力で押しつぶすのだ」


ゴゥオオオッッ ゴゥオオオッッ


両軍から放たれる魔弾や弓矢!

凄まじい応酬


炎と爆炎、舞い上がる砂煙、そして・・吹き飛ぶ人体!

耳をつんざく爆音が鳴り響く。


魔導障壁を展開できるのは、わずかな時間、全ての攻撃を防げるわけではなかったのだ!

砦側からの第一撃を防げたとしても・・二撃目を防げる保証はなかった! 



そう! 帝国軍先方隊は・・これ以上の魔導障壁を展開できず・・砦側からの集中砲撃にさらされてしまったのである。

しかも押し負けている・・これは歴とした数の差!

狭い街道からの正面火力だけでは・・あきらかに不利! 帝国軍は劣勢となってしまうのであった。



一方、公国軍・・・


「我が軍有利! この砦は難攻不落なのだ!」


城門上の櫓に登り・・声高に叫ぶ司令官サリュマ!

その眼下には・・くすぶる炎、黒く焼けこげた土、そして・・倒れ伏す帝国兵たちの死屍累々

実にいい眺めだ!


「ふっ! 帝国のやつらに地獄を見せてやろうじゃないか!」


司令官の発言に気勢をあげる兵たち・・「「ウォー!ウオー!」」


どうやら帝国軍は一旦、退却したようである。

まずは第一戦・・・公国側の勝利であった。





-*- - - - - - *-




帝国軍の後方に位置する本陣、陣幕にて・・その戦いの様子を眺めていた皇帝ユゼンは憮然としていた。


ある程度の苦戦は覚悟していたが、まさか退却せざるを得なくなるとは!

やはり・・・地形的に不利であったのか!


4万の兵力を有していても・・地形のデバフ効果が絶大すぎた。

皇帝ユゼンは忌々しく湿地帯を睨み、ため息をつく。


「あれを使うしかないな」


すると、側でひかえていた参謀のダンテルが口を開く。


「はっ しかし・・すぐには無理でございます。しばしの時間が必要でしょう」


皇帝は・・わずかに頷く。

ここで無理な攻撃をさせて・・不必要な損害をだすわけにはいかないのだ

そう、兵士たちは大事な臣民・・・人は城、人は石垣、人は堀


「ふむ! そうだな、ここでしばしの睨み合いをするとしよう」






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




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