ゴーレムの制作者、それは・・
地面に横たわり真っ二つとなっているゴーレム(残骸)
そうそれは、ノアとコサミちゃんによって撃破し、捕獲してきたゴーレムの残骸だったのだ。
ちなみに・・このゴーレム残骸、赤い血のような動力液がべッチャリとこびりつき・・ちょっと陰惨な様相を呈している。
それはまるで・・どこかの殺人事件現場!
だが・・自称、10歳の黒髪少女・ヒラガ・ケールナイはまったく意に介せず・・血まみれゴーレムに駆け寄り、
叩いたり、引っ張ったりなどして、あらゆる部位を調べ上げていたのであった。
パコパコパコ ガタガタ・・ガタ
そんな少女ヒラガは・・ゴーレムの内部に埋め込まれている魔導回路を発見した際、ある種の特異性に気づいた。
「ふむ! こ、これは・・じゃ」
その魔導回路は・・・あまりにも洗練され過ぎていた。
複雑な文様は渦を巻き、多重に折り重ねられ・・・一種の芸術品!
なんと・・素晴らしきものよ! 魔導回路の最高峰といってもいいだろう
だが、ヒラガは・・このような魔導回路を以前、見たことがあったのだ!
-- -- -- -- -- -- -- -- -- --
そう、奴だ・・・錬金術師レシプロン!
魔導協会・錬金術書記課の若きエース。
彼の主な仕事は・・超古代文明時代の技術研究とその復活、古文書を解読し・・現代にかつての技術を蘇らせることだった。
そんな彼・・レシプロンはその研究課程として、とある魔導回路を、わしに見せてくれたことがあった!
そう! あの時、レシプロンから見せてもらった魔導回路と・・まさに瓜二つの物が・・・今ここに存在していた!
まさにそっくり!
特に魔石の接続部分は独特であり・・あのレシプロン独自の接続法でもあった。
そう・・ずばり結論を言うと・・
「この魔導回路・・いや! このゴーレムはレシプロンが製作したものじゃ!」
-*- - - - - - *-
魔導協会・技術部技長としての職を・・とっくの昔に引退していたものの・・ヒラガは時折、魔導協会に訪れることがあった。
その時、たまたま出会ったのが錬金術師のレシプロンだった。
ヒラガは・・レシプロンの才能を高く評価し、技術的なことに関して様々なことを議論し、考察しあった。
ちなみに・・・ヒラガが制作したウッドゴーレムは・・レシプロンから得た情報を基にして作られたものだ。
ただし・・その得た情報は、基本的なものだったため、レシプロンの制作したゴーレムに比べると、性能的に見劣りする。
そう、レシプロンは・・・魔導集積回路の開発者であり、最高のAIを搭載したゴーレムを制作できるからだった・・
しかし、残念なことにヒラガには・・その集積回路の原理が理解できず・・使いこなせなかったのである。
(複雑な計算式は得意じゃないんじゃ!)
ヒラガは・・そんなレシプロンと、何度か交流はしていたが・・その後、とんでもない事件を引き起こし・・彼はどこかへ逃亡したという。
「優秀な者だったのに・・おしいことをしたものじゃ」
-*- - - - - - *-
横たわるゴーレム残骸とたわむれる少女・ヒラガに当初の予定通り・・依頼を持ちかけたのである。
「このゴーレムと同じようなものを・・できれば大量に作ってほしいのです。依頼主はキヨウラ公国の公王です」
そんなことを・・いきなり言われたのでヒラガは驚きの表情となりノアを凝視した。
すると目に入ってきたのは公国の紋章が入った印籠・・・ノアの身分を証明するアイテムを示してきたのである。
「ほう・・公国の者だったのだな! となると・・独立戦争関係の依頼じゃな!」
「そうですよ。これらは王国軍から捕獲してきたゴーレム! 我ら公国も同じものを製造し・・対抗したいのです」
ヒラガは眉をひそめた。
「あれは王国製のゴーレム・・だったのか。奴は・・・レシプロン・・」
しばしの沈黙、ヒラガはもの思いにふけるが・・ノアの発言によって破られた。
「それでヒラガさん・・作ってくれますか!?」
「ふむ、わしはなぁ・・何かと、あのキヨウラ公爵の世話にはなっていた。
公爵の敵、奴らに仕返し、いや! 復讐もしてやりたいのだが・・あのゴーレムと同じものを作るのは無理じゃ
あのゴーレム機構は複雑すぎて わしの手にはおえん」
「えっ、無理なの! 複雑・・・なんですか!?」・・と落胆するノア。なんてことだ! 期待をしていたのに・・・
「仕方がないのじゃ!このゴーレムの制作者は、おそらくレシ・・・・」
会話が突然、止まった。
ヒラガは、目前にいる少女ノアの顔形に・・・フトあることに気づいたのである。
以前に出会ったあの少女に似ている!
生前のキヨウラ公爵とともに王宮へと出向いたあの時の・・・
「・・・まさか! まさか! こんなところに!」
ヒラガは その事実を確かめるべく、ノアの側へと駆け寄り、耳元で囁いた。
「もしかして、そなた・・・フィレノアーナ王女様じゃないですか!? 髪色が違っておられたので 気づきませんでしたぞ」
「えっ!?」
いきなり正体がバレたので・・ノアは驚きの表情となる。
それを見て、ヒラガの口角が上がった。
そして・・・目前の人物がフィレノアーナ王女様だと確信したのである。
「以前、王宮にて、お会いしたことがあったのじゃが・・覚えておいでにならなかったかの~!?」
・・・とヒラガに言われたが、記憶を喪失しているノアには、もちろんのこと覚えがない!
ノアの微妙な表情に気づいたヒラガさんは、ハタッ・・と気が付いた。
「ほう・・忘れておった! あの頃のわしは・・年寄りだったからの~! 印象ががらりとかわっているはずじゃ」
ヒラガは自己納得したようで 何度も首を振る。
「こんなところで住んでいても・・・王女様の悪評は耳にはいっておりましたぞ! かなりの御活躍」
「うっ」
「もちろん、ただの噂だとわかっておりました! どうせ、あの悪辣な王太子が流した嘘いつわり!」
実際は・・違うのだが、ノアはうんうんと、頷く。
「非才の身なれど・・・恩のあるキヨウラ公爵様のため、フィレノアーナ王女様のため、できるだけのことをします」
確かに、あのゴーレムの複製は無理ではあるのだが・・ヒラガは出来る限りのことをすることにした。
弱点の解析やら、対抗兵器の開発など・・・
「やってくれるのですね! ありがとう!」
ノアは少女・ヒラガの小さい手を覆うが如く両手で握手し、感謝を表した。
「まぁ、あのようなゴーレム作成は無理じゃが・・出来るだけのことはするつもり!
わしからのアドバイスをするなら レシプロンと言う名の錬金術師を探すのじゃ」
「レシプロン!?」
「わしの感だが、おそらく・・このゴーレムの製作者かもしれん。作った本人に依頼するのが一番と・・言いたいところだが、王国側に味方してるのかもしれん」
「敵方に・・・」
そう、このゴーレムは王国から奪取してきたということは、そのレシプロンという者が王国側に味方していることを意味していた。
「だが・・・そのレシプロン、わしの認識からいうと、王国の・・特に貴族階級が大嫌いなはず!
事件をおこしたのも、それが原因だとおもうのじゃ」
そう・・レシプロンは かつての魔導協会にて、様々な妨害や嫌がらせを受けていた。
彼は貧民街出身で、特に貴族階級からは強い敵意を向けられていたのである。
ヒラガはレシプロンの苦労を何度も聞かされており、彼の立場や境遇を理解していた。
ノアは目を細めた。
「王国や貴族たちに反意! ならば簡単に調略できそうですね。味方に引き込めそう」
だが・・ノアは忘れていた。ついでに自覚もなかった。
自分が王女、貴族の最高峰であることを・・・・だが、ヒラガはノアの発言に同意する。
「たしかに、調略はしやすいかもな、ついでにわしの名を出せば・・・こちら側につくかもしれん」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)