魔導技師は男の娘
ノアたちは一通りの挨拶を交わした後、ウッドゴーレムの肩に乗るその少女は、やはりのやっぱし!?
目的の人物、ヒラガ・ケールナイだと理解してしまったのである。
「わしには・・かつて可愛い孫がいたのじゃ!そう、息子の子じゃった。実に愛らしく良い子じゃったのに、なぜあの子は・・・いってしまったのか!!」
ヒラガと名乗る老人、いや!見た目だけは可愛い少女は、わずかに涙を浮かべ、しんみりとした空気を垂れ流す。
「良い子じゃったのじゃ いつもジィジィといって わしにしがみついてきたものじゃ」
いきなり昔話をされて戸惑うノア。どう反応していいか・・困るではないか!
しかも・・少女ではありえない低音のジジィ声を放ち・・違和感たっぷり!
コサミちゃんも・・どうしたらいいのか、戸惑っている。
ちなみに、シルンちゃんは こんな話など気にもせず、少女を肩に乗せているウッドゴーレムの頭を叩きながら・・性能調査をしていた。
ツンツン♪ トントン♪
「そうじゃ! あの子は・・・あの子は・・・」
涙ぐむ少女は空を仰ぎ見る
「時の流れはなんて残酷! あの可愛い孫娘は・・いまや!いまや! ただのババァになりはてたのじゃ、しかも、こうるさくなってしまっての~」
「「えっ ババァ!?」」
ノアとコサミちゃん、おもわずハモった。
話の展開が思わぬ方向にいってしまっている。
そう、その孫娘は健在であり、それなりの年齢に・・なっているはず
・・ヒラガ・ケールナイは106歳・・・孫といっても 相当な歳をとっていたのだ!
「だから、わしはあの頃を懐かしく思って自ら若返り、あの可愛かった頃の孫娘になったのじゃ!」
おいおいw
想いを拗らせたあげくに、じぃさんが孫娘になるって・・・どういうこと!? どういうこと!?
とんでもすぎる話に驚くノアたち!
いや! 人それぞれだから・・いいのだけど・・・
しかも・・そんな理由だけで若返り、さらに性転換までしてしまうヒラガさんの魔導技術は、やっぱし驚異的だ。
ついでにいうと、この少女の顔形は・・かつての孫娘とそっくりらしいとのこと。
これは遺伝のせいなのか、それとも素晴らしき整形技術の賜物なのか!?
とにもかくにも、その少女ヒラガは鏡を見ては かつての可愛い孫娘を思い出し・・・涙ぐむ
「カヨコ・・! どうして行ってしまったのじゃ~」
ちなみに孫娘はババァとなって健在です。
「これら、若返りは秘術なのでな! もちろん教えられん! ついでに必要な材料費も高額になってしまう!」
そう!・・・・この黒髪の見た目だけの少女(10歳前後)、ヒラガ・ケールナイは、とんでもない上級魔導師、とんでもない趣向の持ち主だった。
さらにもう一つ・・・
このシドン村、そのものがヒラガ・ケールナイの所有地、自宅とのこと。
・・・というか、公的に認められたシドン村・村長兼領主ということになっている。
それゆえに自分の趣味全開の庭造りというべきか!? 村中を廃墟風に飾り立てたという。
そう・・廃墟ってわびさびだよね! ロマンだよね!
このあたりはノアと共通した感性だったりする。
あとついでに言うとヒラガは・・村の領主ということで、準男爵を賜っているが、階級的には庶民扱いらしい。
「そうじゃ、わしがこの村の村長じゃ! いい廃墟村風景じゃろ! わしは気に入っている。 ただし村民は・・わし一人、一人だけの村なのじゃ」
その若返り少女・ヒラガは腰に手を当てしたり顔、無理するかのように偉そうに胸を張る。
「あ、えっ、は~!?」
何と返事していいのか、ノアはしどろもどろ
低音すぎるジジィ声と、見た目は可愛い少女のギャップがすご過ぎて・・話の内容が頭に入ってこない。
可愛いかった頃の孫娘が懐かしすぎて・・本人が孫娘になったって~!?
しかも若返ったあげくに性転換!?
ついでに・・領主だが、住民がおらず・・廃墟ジオラマ!
情報量が多すぎて・・もはやなにがなんだか・・・
そんな戸惑うノアを見て、見た目だけ可愛い少女・ヒラガさんは言い放った。
「やはりお前たちは、この・・しぶい声に戸惑っているのだな! 仕方がないの~ すこし修正してみるか」
少女ヒラガは下を俯き、何かの作業をした後・・・
「これでどうじゃ! この美声なら・・納得じゃろ!」
「おっ!」
その声、その声質・・・少女にふさわしい声色となっていた。
そう! どこから聞いても少女の声なのだ!
それはまさに・・某異世界風に言えばボイスチェンジャー
年齢詐欺少女が・・完璧少女になりかわったようである。
さすがというべきか!・・・ヒラガ・ケールナイ
若返りしたあげくに性転換をしてしまう魔術を行使できるのだから・・この程度は、お茶の子さいさいなのだろう。
しかも短時間で・・・
恐るべし! 恐るべし!
「ふっふふ、そんなに驚くべきことではないぞ! わしは真の孫娘となったのじゃ」
少女はしたり顔・・勝ちほこり、胸を反らす。
た、たしかに完璧な少女・・いや! 孫娘化している
ノアとコサミちゃんは・・・凄いと称賛すると同時に、何か納得いかないものを感じていた。
「う~ん! う~ん! 何かが心に引っかかる!」
そうか! 汚れを知らない少女の中身が、ジジィでした・・という残念さが このわだかまりの原因なのかもしれない!
だが、これ以上考えても仕方がない事なので・・ノアは、考えることをやめた。
一方・・シルンちゃんは、相変わらずウッドゴーレム頭をパコパコと叩き、性能を調査している。
・・・・というか、ここに来た目的は、そう! 奪取してきたゴーレム残骸の解析依頼だった。
もちろんの事・・この少女ヒラガを肩に乗せているウッドゴーレムとは無関係である・・・たぶんw
「あっ! 孫娘インパクトが凄すぎて、肝心な事を忘れていた」
ノアは当初の目的を思い出し・・ゴーレムの肩に座っている少女・ヒラガ・ケールナイに対して、改めて声をかけようとしたら・・・・逆に質問された。
「そうそう、ここに来られたのは、わしに用があってのことじゃないのか!?」
先手を取られてしまい、先に言われてしまったが、そのかわりに話がしやすくなった。
「そうですね! ヒラガさん、実は・・これらを見てもらいたいのです!」
そう言うとノアは時空ストレージを発動し・・王国軍から奪取してきたゴーレム残骸を地面に並べた。
「おっ!」
何もない地面に・・忽然と現れた大量の物体を見て少女・ヒラガは大変驚いた。
ノアの使用した魔法、"時空ストレージ"は秘儀・・・ノアにしか使えない魔法であり、世間的に知られてはいなかったからである。
そんな驚きはあったものの、少女・ヒラガさんはすぐに・・地面に置かれた残骸、すなわち王国軍のゴーレムへと興味が移った。
ヒラガも・・あのレシプロン同様、ゴーレムが大好きのようである。男の子は動くものが大好きなのだ!
「ほう!これは・・」
ウッドゴーレムの肩から飛び降りたヒラガさんは 即座に駆け走り、そのゴーレムを調べだした。
ちなみにこの残骸・・ノアの撲殺アタックによって 真っ二つになってはいるが、一応、原型の姿は残っている。
ヒラガは・・残骸ゴーレムを叩いたり、ひっぺがえしたり、こすったりと各部位の調査を丹念におこなっているようだ。
基本的に・・シルンちゃんと同じことをしているw
その光景を見て・・ノアの口もとが緩む。
予想通り、ヒラガさんは・・このゴーレムに食いついた。
「計画通りだ!」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)