逃亡王女・フィレノアーナ ★☆(周辺地図を掲載)☆★
荷馬車や旅人らしき人達が街道を行き交っている。
そして・・その街道の先には町が見えるのだ。
なんという安心感! ノアの心が軽くなっていく。
森の中では絶えず孤独、
しかも・・いつ魔獣や猛獣に襲われるか分からない不安に苛まれていたが・・・
ここでは・・人が歩いているだけで・・心の安寧を得てしまう。
安心♡安心♡
・・・・などと思っている時がありました。
テクテクテク♪
ノアはスキップするがごとく軽快な足取りで・・町へと向かう。
街道を行き交う旅人は・・なにやら荷物を背負っているのだが・・・ノアは手ぶらであった。
時空ストレージの魔法を扱えるので 荷物を手にする必要はないのだが、なんだか居心地が悪い。
やはり・・・周りに合わせて、なにやら荷物を持つべきか!?
ノアは時空ストレージの中身をほじくりまわし・・・魔法の杖を選んだ。
現在・・・ノアの姿は邪神様からもらった魔導師用ドレスを着ている。
ならば・・・このドレスに合うものとして当然、魔法の杖であった。
これでノアも・・・立派な魔導師!?なのだ。
しかもTPO・・・周りの空気に溶け込める・・・などと思ったけど、まさかの逆効果!
ものすごく・・・じろじろ見られている! しかも興味津々な目で・・・嫌だなあ!
そう! 魔導師という存在自体、ごく少数であり・・・その象徴でもある魔法の杖を片手で持っていれば・・・
・・・いやでも目立つからであった。
「あれ・・・魔導師なのかな!?」
「でも、まだ少女・・・というか少年!?」「俺・・魔導師を始めて見た!」「俺も!俺も!」
旅人たちからジロジロと見られ・・目立ちに目立ちまくるノア、一部、性別を間違われたりしながら!?
ようやく町の城門にたどり着く。
立札には"アルゲルン"と書かれている。たぶん・・・この町の名前だろう!?
しかし・・・どこの国の所属とは書かれていないので・・・この国の名前が分からない。
一応・・・文字は読めるので・・・この付近の出身だと思う。
記憶を失っているので・・仕方がない!
まぁ~とりあえず・・この町に入らねば・・・!!
城門では、衛兵が旅人に対して・・・一つ、二つの簡単な質問をした後、何かの要求をしているみたいだ。
旅人が衛兵にお金を渡した。しかも、こそこそと隠れながら・・・賄賂かな!?
さらにさらに! この衛兵だけではなく、他の衛兵も同じことをしている。
・・・ということは、ふむふむ! 賄賂を渡せば簡単に入れるってことね!
金さえ払えば・・・厳しい検査をされずに済むということなんだ!
不正が蔓延っているようだけど、うん!それはそれで大助かり!
邪神様からお金をたくさんもらっている。そのお金さえ払えば・・・私でも簡単に入れるってわけね!
いいね! いいね!
さっそく検査待ちの行列に並ぼうとしたら・・・この城門を守る衛兵の一人が私の顔を見て驚いている。
しかも・・・その衛兵は、慌てて書類をめくりはじめた。
私の顔とその書類を何度も見比べていくうちに・・・どんどんと顔色が悪くなっていく。
ついでにいうと・・周りの衛兵も走り出した。
その時、ノアは思い出したのだ。
ステータス表示に書かれていたことを・・・
---- 【身分】逃亡中の王女 ----
記憶がないので何が何だかわからないが・・・どうやら 私は逃亡中らしい。
もしかしたら・・ヤバイ!? ヤバイことになる!?
賄賂を掴ませたら・・・なんとかなる!?って・・感じじゃないよね!
うちの目前に・・次々と集まってくる衛兵たち。
賄賂ばかりもらってるくせに・・・こんな時だけ真面目なのか!!
中には・・・腰に差している短剣の鞘に手をかざしている者さえいた。
今にも・・捕り物が始まるような雰囲気である。
そんな様子を見て・・・城門前で列を作っている旅人たちは、何が起こっているのかとざわつき始めた。
こ・・・これは、間違いない・・・あの衛兵たちのターゲットは・・・私だ!
でも、今のところ彼らは何もせず見ているだけ。
おそらく、上司や上層部の者たちの到着を待っているのだろう。
記憶にはないが・・・ステータスを見たところ、うちは王女らしい!?
もし本当に王女なら、衛兵程度では手出しすることはできない。
上位の者の判断が必要なのだろう。
よし! 今のうちだ!
上位の者が来る前に逃げる! 逃げるのだ!
もちろん・・・全速力。
完璧なほどの怪しい行動!
十数人いるであろう衛兵の目前で踵を返し・・うちは全速力で駆けだした。
それに対して・・・なにも手出しせず見守る!? いや! 監視だけしていた衛兵たちも うちの走りだす姿を見て慌てだす!
そして・・・追いかけてきたのだ。
やはりというか・・・あの衛兵たちの目的は 私だった!
ドタドタドタ バタバタバタ・・・
街道を歩く旅人たちを押しのけ押しのけタックル! タックル!
・・転倒する子供や幼児・・・泣き声が鳴り響くが・・おかまいなし!
無我夢中でノアは駆け走った。
かなり迷惑! 悪役感満載の逃げっぷりである!
そんな逃走中に その背後から、とある声が聞こえてきた。
「王女・・いや! フィレノアーナを捕まえろ! 奴は反逆者だ! 殺しても構わん」
「閣下・・・本当によろしいのですか!?」
「問題ない! 殿下の許可は得ている」
「了解しました!」
どうやら・・・上位の者、閣下と呼ばれる者が ここに到着したらしい。
・・・・しかも殺すと言っている。 殺す!? うちを!?殺す! 殺すのか!? うちを・・・・!
ほぉぉぉぇぇぇぇ~
全身冷や汗! ノアは全速疾走! 捕まれば処刑される!
記憶喪失で何も覚えていないけど、どうやら大変なことに巻き込まれているらしい。
石畳みの街道を ダークグリーン色をした魔導師姿の少女が全速疾走、その後方から追いかけてくる衛兵たち。
街道を行き交う旅人たちは・・・何が起きたのかと、興味深げに眺めていた。
不味い! 不味いぞ!
このままでは・・すぐに追いつかれてしまう!
衛兵とはいえ・・・たえず軍事訓練を受けているのだ。
体力は・・・うちの数十倍! 逃げ切るのは無理!
いや! まてよ! うちの魔力はかなり回復してるとおもう。
ステータスで確認・・・魔力は20/20
魔力量が増えていて・・しかも完全回復している。
いいぞ! いけるぞ! よし! 魔法の発動・・・呪文だ!
「 美味しいチョコでチョコザイナ! 」
こんな呪文でも・・・間違いなく魔法は発動するのです。
そう! ノアの目の前に黒い空間が出現し・・・そこから板状のチョコレート、いわゆる板チョコが飛び出してきた。
この魔法は・・・チョコレートを召喚する魔法なのだ。
なんで こんな時にと疑問だと思うが・・・そんなことはどうでもいい
とにかくノアは まるで買い食い競争のごとく軽くジャンプし・・・チョコレートを口でパクリとくわえる!
王女としては どうかとおもう姿ではあるが・・・記憶がないので気に病む必要はない。
パクパクパク・・・・ちょっと苦い! ブラックなチョコだ!
でも、美味しい♡ 癖になりそう
「うわぁぁ 力がよぎってくる! これぞ! 邪神様の力! ありがとう・・・コーヒーチョコケーキ様」
そんな戯言をいっているうちに・・・ノアの足が速くなり速力がアップした。
某ゲームのキノコのごとく・・・いや、この魔法は召喚魔法・・・身体強化を促すチョコを召喚したのだ。
これで・・・追跡する衛兵から逃げ切れるはず。
砂煙を上げ・・・疾走するノア!
もちろん、体力もアップしており・・長時間、走り続けることも可能だ!
「おっほほほほ・・うちの速度についてこれまい!」
おもわず高笑い、どこかの悪役令嬢!・・余裕綽綽
この速度・・もはや人間が追い付けるものではない! 某異世界の自動車並み!
ズドォォドォォォン
どこかの某アニメの走り屋のごとく爆音をあげ、走り抜ける。しかもドリフトしながら・・・
だが・・・そのノアの後ろをピッタリとついてきている人物がいた。
その人物は・・・ノアと同様に魔導師の服を着ている、そう、魔導師だ!
しかも 同じく身体強化魔法をつかっている。
衛兵の中にあんな魔導師はいなかった。
・・・となれば、閣下と呼ばれた人物の関係者なのだろう。
まぁ・・どちらにしろ、厄介な奴だ!
そんな厄介な奴が・・・ノアのすぐ後ろまで近づき 徐々にその間が縮まっていく。
顔は見えないが・・・その実力はノアを上回っているだろう。
身体強化魔法の性能で完全に負けているからだ。
昨日今日で魔導師になったノアに・・・実力などないのだから仕方がない。
どうしよう!? どうしよう!? このままでは捕らわれてしまう。
ノアは疾走しつつ片手に持った魔法の杖を後ろへと振った。
この魔法の杖は・・・なんらかの仕掛けがほどこしていると 邪神様が言ってたし・・・
とりあえず振って使うべしとも言っていた。
よし・・・振ってやろう!
そして・・・偉大なる邪神様の力を・・・真の恐ろしさをおしえてやる!
ノアは思い切り杖を振った。なにが飛び出すのかワクワクしながら振った。
・・・だが、何も起きない!
「あれ、あれ!?」
もう一度、振る・・・だが魔法は発動しない!
「つ・・使えないのか!? まさか・・どうして!?」
・・・とノアが発言した時、手に持っていた杖の形状が揺らぎだした。
杖が杖ではなくなりつつある・・別の物体に変化していってるのだ!
ノアは・・・全速力で走りながらも、その杖を凝視した。
これが・・・邪神様の言っていた仕掛けだと思うのだが・・・
でも、一体なにが起きようとしているの!?
そして・・・姿を現した! 魔法の杖から生まれた別の存在。
それは・・・ドラゴン、間違いなくドラゴン! しかも白く美しい。
ときおり・・・口から、ライターのような小さな炎を吐く。
「ド・・・ドラゴン!?」
ノアは驚き・・・そして、なんだかホッコリした。
ものすごく可愛いのである。
なんというモフモフ感・・・しかも手乗りサイズ! 何とも言えない白さ!
「うわぁ・・・なんて 素敵」
そんな手乗りドラゴンが 羽をパタパタさせながら、全速力で疾走するノアの周りを旋回していた。
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一方・・・そのノアのすぐ後ろを全速力で追いかけている謎の魔導師、その名もエリャン!
年齢21歳・・・そろそろお嫁さんがほしいお年頃の黒髪青年なのだ。
そう! だからゆえに・・彼は女性に飢えており・・・
目前の少女を追いかけストーカーして・・・いたわけではないよw
この町の領主、ゲルンラン城伯の命により・・・フィレノアーナ王女、いや! 元王女の抹殺の任務を受けていたのだ。
そんな彼が・・・衝撃的光景を見てしまった。
元王女の持っている魔法の杖が・・・ドラゴン! 小さいとはいえ・・・ドラゴンに変化したのだ。
あまりのことで目が点・・・・信じがたいものを見たが、これは現実。
いやまてよ! この僕の走りでも なかなか追いつけないということは・・・あの元王女も身体強化魔法を使っているのだろう!
彼女は・・・それなりの魔導師ということなのか!?
それならば・・聞いた話とは違っているぞ!
あの元王女は・・・魔法が使えなかったのではないのか!?
これは・・・慎重に事を運ばないと・・・まずいことになりそうだ。
元王女の魔導力・・どれほどの実力をもっているのか不明の上、侮りがたし
なんたって・・・魔法の杖をドラゴンに変えるほどの実力を持っているのだから・・・
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)