進撃できないゴーレム
コーヒーバブルボムや、アイスバレットの弾頭を弾き飛ばしながら迫ってくるゴーレム。
止められない!撃破できない!
それに、もはや・・・ここまて接近されると、逃げることもできないのだ!
ならば! もう、やるしかない! 接近戦だ! 白兵戦だ!
ノアは手に持つ魔法の杖を握りしめ・・・迫りくるゴーレムを鋭く睨む!
もちろん、ノアはチョコザイナ魔法で身体強化済み!
そう、腕力はアップしているのだ。通常の数倍で殴り倒せる。
よっしゃ~! ここが正念場・・・撲殺技で頭を叩き割ってやろうじゃないの!
ノアの意気込みにあわせて・・いや! 殺意にあわせて・・ノアの身体が赤く輝きだした。
これは波動・・魔力が急速に増大しているのだ!
これぞ! 火事場の馬鹿力・・切羽詰まった際に生じる人知をこえた魔力・マックスパワー!
いける! いける! なにかの力が沸き上がって来たぞ! 天啓だ! 邪神様の天啓だ!( ただの気の迷いですw )
「うぉぉぉぉぉ、うがぁぁあぁぁぁぁ」
ノアは吠えた! 魔獣のように吠えた。
・・・人間をやめているかのように吠えた。
そんなノアの雄叫びを・・コサミちゃんはあえて聞かなかったことにした。
いや!対ゴーレム射撃のため、聞く暇さえなかったのかもしれない。
シルンちゃんの方は、そんな雄叫びよりも・・空飛ぶ箒の起動準備で大忙しであった。
もしものときには・・この箒に二人を乗せて、全速逃亡しなければならないのだ!
ノアは走った。魔法の杖を振り回しながら走った。
全速疾走! 身体強化による筋力アップで地面を蹴り・・・高速で走る。
ノアの目に映るのは・・千手観音のような幾つもの手に・・幾つもの剣をもつ危険なゴーレム!
奴だ! 奴を叩く!
ノアは・・魔法の杖を伸ばし 棒高跳びのように地面をついた・・・ドン!
身体は舞い上がった。身体強化された腕力でノアは空を飛ぶ!
そして、その眼下には・・・ターゲットとなるゴーレムの頭部が見えた!
ノアは・・そこへと向かって落下し・・・握りしめている魔法の杖で、唐竹割りのように振り下ろすのだ。
落下速度とノアの身体強化・マックスパワーを足した強烈な一撃! いける! 叩き割ってやる!
カキン! ギィィイィィィィ
鼓膜を震わせ、鳥肌が立つような金属音・・手にしびれが走る。
全身に電撃をうけた感触!
だが・・・手ごたえがない。弾かれてしまったのだ!
そう、あのゴーレムは・・全ての腕、全ての剣をXに交差させた防御の構え・・・ノアの必殺一撃、魔力マックスパワーを見事に受け止めきった!
無念! 破壊することに失敗!
だが、相当な力が上から加わったのだろう! ゴーレムの足元、地面が少しえぐれ付近に衝撃波が走った。
それにゴーレムの身体部分にも、それなりの損害を受けたようだ。
幾つかの腕が折れ曲がりブランブランと垂れ下がっている。だが戦闘力は健在、残った腕でいくつかの剣を握っているのだ。
一方、ノアは地面に転がり苦しんでいた。
あの強烈な一撃を跳ね返され 勢いよく吹き飛ばされてしまったのだ。
空中を回転しながら落下、地面に叩きつけられ、小さい窪みが形成された。
もしも、身体強化していなかったら、体はバラバラになっていただろう。
一応、ノアは健在ではあるが・・行動不能状態となっていた。
背中に強烈な痛みが走り、息ができない。立ち上がれない。ノアは苦しそうに咳込む・・・ゲホッゲホッ
目の前にはゴーレムの影が迫ってきていた。止めを刺すがごとく・・剣が振り下ろされる。
ヤバイ! 死ねる!
だが・・声が出ない! 詠唱が出来ないのだ!
ならば・・無詠唱で!
無詠唱で発動できる魔法・・・そう! チョココーティングを、すぐさま発動した。
かなりの至近距離、目と鼻の先にいたゴーレムが黒く染まっていく。
まさに・・間一髪だった!
チョコのネバネバ、鳥もち効果によって・・ゴーレムの動きを止めたのだ。
助かった!・・・と言いたいところだが、この魔法でゴーレムを封じきるのは無理!
そう、ゴーレムパワーは強力・恐るべき底力
ノアが放った魔法・チョココーティングの殻が・・今にも破られそうなのだ!
これは不味い! ノアはなんとかして、体を動かそうとするが・・・おもうように動かない。
彼女の視界には黒く染まったゴーレム・・その向こうでは青ざめた顔のコサミちゃんがいた。
そして、そのコサミちゃんは・・悲鳴のような声を吐き出す。
「ノ・・ノア様! すぐにお助けをします」
コサミちゃんが今まで放っていた氷結弾・アイスバレットでは・・あのゴーレムに まったくといってもいいほど歯がたたなかった。
連射のように撃ちつけていたのだが・・傷さえつけられていない。
そこで・・・大技を放つことにした。
魔法によって、動きを封じ込めている僅かな時間を使い・・少し長めの詠唱をおこなう。
その魔法はアイスジャベリン・・・氷結弾の強化型魔法、コサミちゃんにとっては、始めての魔法である。
彼女は詠唱をとなえると・・目前に渦巻く冷たい霧が発生した!
まるでドライアイスのようだ! 身体が震える。
そんな霧・ドライアイスの中から姿を現したのは・・鋭い先端を光らせた巨大な槍! 人の背丈の倍はあるだろう。
それが・・アイスジャベリン、質量と速度で装甲を撃ち破る必殺兵器!
コサミちゃんは慎重に狙いを定め・・・そして、放出!
アイスジャベリンは風を切り、一直線となって的へと吸い込まれていく。
バシュン!
短く鈍い音・・・・手ごたえがない!
コサミちゃんに落胆な表情が浮かび上がる。
だめだったのか!? これほどの魔法でも通用しなかったのか!?
ゴーレムは今だ健在、チョココーティングの殻をうち破ろうと、幾つもの手が動きまくっていた。
ノア、危うし!危機迫る。
だが、ノアは冷静に、その様子を観察し・・勝利を確信!
身体をなんとか動かして上半身を持ち上げた。
「ゴホッ」
すこし・・咳き込むもののノアは、なんとか声を発する。
「あ・・ありがとう・・コサミちゃん! なんとかなりそうだ」
そう、コサミちゃんの放った魔法・アイスジャベリンは見事に命中!
ゴーレムの胴体にめり込み装甲に亀裂がはいった。
かなりの近距離、ゼロ距離射撃によって・・・なんとか亀裂を生じさせたのである。
あと少しだ! 亀裂を拡大させれば撃破できる。
次の一手・・・止めの一撃が必要!
ノアは手を伸ばし・・地面に突き刺さっている魔法の杖を握った。
そして、目前のゴーレムを睨む。
身体は・・まだ本調子ではない。
うまく動かせない。体が痛い。
だが・・・やらねばならないのだ!
力強く杖を握ると同時に、地面を思い切り蹴った。
身体強化はなされているが・・いつもの力はでないだろう。
しかし・・ゴーレムの亀裂部分に直撃できれば・・勝機はあるはずだ!
ノアの目線はゴーレムの胴体部分に注がれた。
あの亀裂だ!あそこを叩く・・・
カァァンガッァァ
ありったけの力が魔法の杖に注がれ・・そして、見事に命中!金属音が鳴り響く。
亀裂は拡大し・・・ゴーレムの胴体は真っ二つとなった!
よっしゃ~! うちの勝ちだ!
・・・と同時に、ゴーレムの動力パイプから赤い液体が噴水のように噴き上がる。
ノアはその液体をもろにかぶり・・身体が真っ赤に染まった。
もちろん・・・ノアの血ではない。ゴーレムの動力液である。
「ノ・・ノア様!」
コサミちゃんは叫ぶ!
真っ赤になって倒れているノアを見て・・悲鳴のように叫ぶ!
だが・・そのノアは手をフリフリして、健在をアピールした。
勢いあまって、ノアは地面へとめり込んでいるが、身体に異常なし。
全身が真っ赤になってるだけであった。
そんなノアに低空飛行で駆け飛んできたのは・・空飛ぶ箒に乗ったシルンちゃんだった。
『 ノア様、あのゴーレムを回収して、さっさと逃げるっす! 王国軍がくるっす! 』
「そ・・そうだね!」
たしかに・・!王国軍が襲来してくる前に撤収しなければならない。
これだけ騒ぎをおこしたのだ。この場所に来るのは必然!
そう! さっさと箒に乗って逃げるべき。
真っ二つとなって破壊されたゴーレムの残骸は、ノアの魔法スキル・時空ストレージ内に納めた。
人間程度の大きさのゴーレムなら、十分ストレージにいれることができるのだ。
よっしゃ~!
残骸とはいえ、ゴーレム奪取の成功は・・より良き事!
このゴーレム技術をうまく解析できれば・・大きな成果となるたろう。
そして・・
さっそくとばかりとノアたちは空飛ぶ箒に乗り込み・・セェルンの町へともどるのであった。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)