VSゴーレム
ズドォォォォォンンン
突然の爆発!
空には砂煙が舞い上がり、地響きと轟音が鳴り響いた。
幕僚や参謀たち・・そして、王国軍総司令官プライバン伯も、何事かと驚き・・その方向に目線を移す。
それは・・ここから北方、5ロキル先にある小高い山の麓付近で発生しているようだ。
しかも時折、光を放ち、破裂音がこだまする。
何かが起きている!
・・・おそらく、索敵小隊が敵と遭遇・・戦闘となっているのだろう。
だが・・・総司令官プライバン伯のもとには なんの情報もない!
小隊からの伝令が届かないのだ。
そこで伯は・・・危険ではあるが、さらなる索敵小隊を派遣させ、情報収集を命じた。
一方・・・勇者として参加していたレシプロンは眉を細める。
ゴーレムの一体から いやな報告を受けたせいであった。
ゴーレムたちの間には、目に見えない通信網、いわゆる魔導ネットワークが張り巡らされており、
互いに自分たちの居場所を報告しあっていたのである。
しかし・・・あの轟音が聞こえた直後、索敵に派遣していたゴーレムからのネットワーク通信が切れたのだ。
「うっ 間違いない! 俺のゴーレムが3体・・やられたな!」
レシプロンは・・忌々しく、あの砂煙を睨んだ!
-*- - - - - - *-
そう! シルンちゃんの要望・"生け捕りにしたいっす"に応じて・・ノアは索敵小隊の一つ、ゴーレム隊に対して・・先制攻撃を仕掛けたのである。
「よし! ターゲット確認。奇襲攻撃だ」
サテライト魔法による映像で 敵の位置を確認しつつ、ノアは"チョココーティング魔法"を放った。
粘着性の高い鳥もちのようなチョコを召喚し・・撃ちこむ魔法、ターゲットとなるゴーレムの動きを封じ地面にしばりつけるのが目的!
だが・・そのゴーレムの力は、おそらく怪力であろう。
すさまじいパワーをもっているに違いない。
そう! 生半可な・・鳥もちチョコでは動きを止められないだろう。
もっと量が必要なのだ。圧倒的チョコの物量で押し切る!
チョココーティングの大量投入による火力の集中・・チョコの飽和攻撃、いや! 無差別チョコ爆撃なのだ!
ノアの放った黒いチョコが次々と空へと舞い上がっていく。
連発の連射の速射チョコ!
「くわぁ〜、すごい!」
どこかの対空車両のように攻撃を放つノアを見て感嘆するコサミちゃん、
だが、すぐに鼻に手を当て、かがみ込んだ。
シルンちゃんも同様に、小さい羽で鼻をおさえた。
『 うわぁ・・これは・・甘ったるい匂いっす! 』
大量のチョコ魔法を放出したことが原因で、付近の空気そのものが甘ったるくなってしまった。
チョコを食べていないのに口が甘くなる!
サテライト魔法による映像を凝視するノア。
大量放出したチョココーティングによる戦火確認をしているのだ。
ターゲット目標となる三体のゴーレムたち・・・
彼らの頭上から 粘っこいチョココーティングが降り注いだ!
しかも大量に・・滝水をかぶるがごとく・・
そう!見事にべっとり・・ジャストタイミング!
ゴーレム三体は黒く染まった。
「よし!」
ノアの口角が上がる。
もう・・動けない! 動けない!
ゴーレムたちは動けないはずなのだが・・・・あれぇ~!? どうして!? 現実は違っていた。
ゴーレムは動き続けていたのだ!
幾つもある腕がドリルのように回転し・・チョココーティングの殻を食い破ってきた!
故障もなく無傷、周囲をグルリと見渡し・・警戒態勢をとっている。
このような攻撃をしかけてきた者を探しているようであった。
「・・・・うっ、まさか!」
ノアにとっては、初めてのことだった!
今まで、如何なる魔獣、あのマンティコアさえ、動きを封じ込めてたはずなのに!!
無理なのか! チョココーティングでは無理なのか!
ノアは困惑する。
いったい・・どうするべきか!? 他の方法は・・・!?
・・・などと考えていると、シルンちゃんがアドバイスしてきた。
『 生け捕りが無理っすなら・・破壊してもいいっす! 残骸でも・・手に入るならそれでいいっす! 』
あのゴーレムたちを無傷で手に入れるという目論みは・・無理かもしれない。
そうならば・・・ゴーレム関連の部品、できるだけなら、内部構造、動作原理が理解できる部品さえ手に入ればよいのだ。
壊れていても・・構わない!
重要なことは・・・ゴーレム原理がわかる部品を手にすること!
そう! あのゴーレムたちを素早く撃破・・残骸を奪取・・そして、敵が来る前に撤収するのだ!
シルンちゃんの発言を聞いてノアは頷いた。
「破壊していいのね!」
ならば、攻撃のための詠唱・・・"コーヒーバブルボム!"
ゴーレムたちに直撃を食らわす魔法なのだ。破壊を意図する。
だが・・あのゴーレムたちの装甲は固いだろう・・・数発の攻撃では通用しないはず。
ならば・・・再びの連射の連打!
バブルボムの飽和攻撃で押し切り倒すしかない。
ドッドドッドドドッッ
索敵小隊・ゴーレム三体の周囲に爆裂の赤い花が咲く。
大量に放ったコーヒーバブルボムが着弾したのだ。
ゴーレムの胴体部に、数発の直撃弾をあたえたような気がするが・・・一瞬のことでわからない。
サテライト魔法で、うつしだされる映像は真っ白!煙に包まれてしまい確認がとれないのだ!
これは困った!煙が晴れるまで戦火確認がとれない。
そんな映像を覗いていると、突如として、コサミちゃんの叫び声が轟く。
「うわあぁぁぁ」
煙の中から・・赤い血が噴水のように吹き出すと同時に、頭部が弾け飛び、コロコロと転がっていく・・・映像が映し出された。
だが、ノアはまったく驚いていない。
だって・・・吹き飛んた頭部は人間の物ではなく ゴーレム頭だもん。
それに、吹き出した赤い液体は ゴーレムを駆動させるための動力液、紛らわしいが血ではないです!
「この程度で驚くなんて・・・まだまだよね!」
「あうっ!」
そんな事をノアから言われたので 気をしっかり持とうと軽くほっぺをたたくコサミちゃん。
というか・・・この年齢で戦場に立っているのだから、仕方がない!(ノアも同じ年齢だけど・・)
とりあえずここは・・・
『 コサミン、がんばるっす! 』
シルンちゃんの掛け声がはいるのだった。
-*- - - - - - *-
渦巻いていた煙が徐々に晴れていき・・映像がクリアーになってきた。
三体いたゴーレムのうち・・
始めの一体目は・・・頭部は弾き飛ばされ・・・倒れていた。
次の二体目は、黒焦げとなっている。
そして、三体目は・・・健在だった!
「こ・・これは!」
あの集中・・バブルボム攻撃で生き残ったというわけなのか!
たしかに・・胴体部分は、えぐれてはいるが 貫通しきれなかったようである。
このゴーレムの装甲は特別性だったのか・・・それとも、たまたまだったのか!?
どちらにしろ・・・このゴーレムは頭部をグルリと回転したのちに・・走りだしたのである。
しかも、こちらに向かって・・・一直線、崖を登り、丘を越え・・・確実に迫ってきていた!
ドッドドドトッドド
どうやら・・ノアたちの居場所がバレたらしい。
バブルボムの軌道をたどられたのだろう!
突っ込んでくる! 突っ込んでくる! ゴーレムの冷たい目がノアたちを睨む!
「まずい! コサミちゃんも魔法を撃ちこんで」
あのゴーレムは・・・すでにノアの目前にまで迫ってきていた。
視認できる距離、1000ルトメを切っている。
かなりの速度だ。走っているというより・・・まるで低空で飛ぶ航空機
空気を切り裂き・・ソニックブームのような衝撃波をともなっている。
ノアは・・・あるったけのコーヒーバブルボムを撃ちこんだ。
もはや、必死! 仕留めそこなえば死ぬ!
コサミちゃんも・・・あわてて詠唱し・・魔法攻撃を放つ!
アイスバレット・氷結弾。
今までにない火力の集中!
コーヒーバブルボムの連射に・・コサミちゃんの氷結弾も加わった。
大量の投射弾が一つのターゲットへと集中する。
まさに飽和攻撃! 某スペースオペラの高出力レーザー砲に見えてしまうほどの凄まじき光景
ズドドドォォォォォンン
耳をつんざく轟音、砂煙が舞い・・地面が裂け、崖が崩壊、それでもゴーレムは走る!
バブルボムの命中弾を幾つもくらっているが 貫通をしてないようだ!
コサミちゃんのアイスバレットも同様・・通用しない。
やはり・・あのゴーレムは他のゴーレムと違い特別性だったのか!?
装甲が固すぎる! バブルボムをあれほど食らわしているのに!
迫りくるゴーレム! ヤバい!ヤバすぎる!
ノアの手は小刻みにふるえた。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)