遠いかもしれない橋
---- リューム降誕暦680年 夜月の中1日 ----
厳しい残暑の中、旧キヨウラ領へと向かうカイラシャ王国軍。その数は10個師団・6万に及ぶ。
総司令官は白髪の老将・プライバン伯・・・長年、王国軍を支えてきた将軍でもあった。
その王国軍は進軍ルート上の町 "レルンド"にて・・新たなる者達が合流した。
それは・・すなわち! エルドラート王太子の要望によって集められた勇者たち十数人だったのだ!
彼ら勇者たちは・・いわゆる神聖魔法の使い手、対魔王戦に必要な人材なのである。
もちろん・・・デルテ二ア邦伯によってスカウトされたレシプロンもその一人であり・・・勇者たちの中でも特に目立ちまくっていた。
そう! レシプロンは肉体的に筋肉隆々、見た目的にいえばマッスルなナイスガイ・・まさに勇者を体現してるような姿!
その上、彼はゴーレム集団、30体を率いていたのだ。
さらに、このゴーレムたち・・・見るからに強力、ついでに異様で不気味!
ふにゃふにゃ動く多数の手は生理的に気色悪い。
しかもその手、一本一本に剣が握られており・・・危険極まりないゴーレムたちだったのだ。
見た目はあれあれなのだが・・・レシプロンの肉体的強さと合わさり、戦力としては心強い。
特に・・・魔王!?フィレノアーナと相対する際には頼りになりそうだ!
というわけで・・・王国軍として受け入れられたのである。
数人の勇者とゴーレム集団を加え、再び北へと進軍する王国軍だったのだが・・その歩みは突然、止まった。
進軍ルート上の河川に架かっていた石橋が流されてしまい・・渡れなくなってしまっていたのである。
ついでにいうと 河川の幅は広く、泳いでわたるのは危険なのだ!
それにしても・・なぜ橋が崩落した!?
雨も降ってなかったし、増水もなかった。自然災害で流されたとは考えにくい。
間違いない! これは破壊されたのだ!
進撃する王国軍の総司令官・プライバン伯、白髪の老将は即座に騎馬からおりて・・部下たちに周囲を警戒させた。
この橋の崩落は・・・おそらく敵の仕業!
目的地である旧キヨウラ領はまだまだ遠い・・・にもかかわらず、この時点で仕掛けて来た。
すでにここは 敵の戦闘範囲内!だと理解したのである。
「・・・油断するな! ここはすでに戦場だ!」
総司令官・プライバン伯は兵士たちに緊張を促し・・・戦闘隊形をとらせた。
さてさて・・・
ここから問題なのは渡河問題、ついでに敵からの襲撃も考慮しなければならないのだ。
だが・・ここで総司令官でもあるプライバン伯は気づく。
== 我が軍には・・見るからに頼れそうな者たちがいるではないか! ==
早速、プライバン伯は勇者の一人、レシプロンに声をかけてみた。
「そのゴーレムたちに渡河作業をやってもらえないか?」
いきなり言われたので 少し驚いたもののレジプロンは了承したのである。
自分が作業するわけでなく・・ゴーレムにやらせるのだから 問題なしw
「俺のゴーレムたちにおまかせあれ」
レシプロンは、ゴーレムたちに命じた。
ただし・・どのように渡河作業をするかは・・ゴーレムのAIまかせなのだが・・・
そんなゴーレムたちは手に持つ剣を大工道具に持ち替え作業を開始した。
近くの森林地帯へと赴き・・木材を切り出す。
加工する・・運ぶ・・建設・・・
周囲の兵士たちは 彼らゴーレムたちを唖然として見守っていた。
多数の手が高速回転しなから木材を切る様は圧巻!
目にも止まらぬ速さで加工されていく
兵士たちも その作業に加わる予定だったのだが・・・へたに加わると逆に邪魔をしてしまうのであった。
そして・・瞬く間に橋が完成した(わずか2時間で)
しかも、デザインを考慮し・・見た目も素敵! 立派な眼鏡橋なのだ。
観光地になる可能性もあり
もちろん、軍隊の通行も可能なのだ。
「すごいじゃないか! もしかしたら・・俺、ゴーレムたちを率いて建設業ができるかも」
レプシロンは大満足で、したり顔、ついでに勝ち誇った態度をする。
(興味のないことは、あまりしたくない主義・・本人は横で休んでいました♡)
・・・この辺りが かつての上司・ルイーブル書長に嫌われた原因かもしれない。
だが、今回はデルテ二ア邦伯という後ろ盾もあり、その上、勇者としての身分、
しかも・・最速の架橋実績、さすがゴーレムというべきか!
兵士たちも含めて、誰もがレシプロンを称賛したのである。
もちろん・・総司令官のプライバン伯にも大いに感謝され・・後日の恩賞も約束された。
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ちなみに・・・・この河川の橋を破壊したのはノアたち!
シルンちゃんの操縦のもと、ノアとコサミちゃんは空飛ぶ箒にまたがり 空からの空爆で吹き飛ばしたのだ
目的はもちろん・・王国軍の進撃を遅滞させるため!
ヴルティリア帝国軍に対処しているキヨウラ公国軍の背後を 王国軍に突かせるわけにはいかないのだ!
そう、これは重要な任務である。
だが・・・河川での足止めは失敗したようだ。
予想よりも早く 王国軍は橋を架け直してしまった。
思ったより優秀な工作隊がいるようだとノアは思った。
もちろん、この程度は予想の範疇・・・妨害作戦は始まったばかりなのだから・・・
「再び、攻撃をするよ!」
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ゴーレムたちによって架橋された橋を・・王国軍は列をなして渡っていた。
まさに絶好のチャンス!
まるで、攻撃してくれと誘ってきているようだ!
ただし・・・周囲には魔導士隊や弓隊を配し警戒しているようである。
軍隊にとって橋の通過は、なによりも危険、当然の処置なのだ。
もちろんノアは、これらの警戒隊を確認、敵の射程外から攻撃するつもりである。
それにこちらは、空飛ぶ箒に乗っている。
つまり、制空権を握っているのだ!
というか・・・空を飛べるのは我々だけなのだけど・・・・
『 圧倒的っす! やっちまうっす! 』
シルンちゃんはやる気満々なのだが・・・コサミちゃんは俯いていた。
荒事には、まだまだ慣れないらしい。
これが普通の反応であり・・短時間で狩の本能を目覚めさせたノアがおかしいのである。
ノアはサテライト魔法を発動させ目前に ウインド画面を浮かび上がらせた。
これは・・遠くの様子を鳥瞰図で見渡せる魔法、敵の状況を細かく観測できるのだ。
ノアはコーヒーバブルボムで攻撃するつもりなのだが・・・
あまりの遠距離のため命中率は期待できない。
そこで、このサテライト魔法の映像によって 着弾の修正をしようというつもりなのだ。
しかも敵は今だに こちらの存在に気づいてない!
まさに・・・トラトラトラ奇襲作戦状態!
挙句に反撃もままならぬ上空にいるという利点つきだ。
シルンちゃんの発言したように・・まさに圧倒的な状況なのだ
「ターゲットは橋の橋脚・・兵士ごと流してしまおう!」
ノアは目標を定め・・"コーヒーバブルボム" の詠唱を開始した。
距離は5ロキル、ターゲットは微かに見える地平線付近だ。
初弾で当てるのは、おそらく無理だろう。
数うちゃ・・あたる方式だ!
「よし! 攻撃開始」
・・・とノアが叫んだ時、けたたましいほどの警報音声が鳴った。
『 ル、ルルルルルル! エマージェンシー エマージェンシー 』
いきなりの事態! 何が起きた!?
ノアは驚き周囲を警戒、コサミちゃんは箒の棒にしがみついた。
そして・・この警報音の深刻さを理解するシルンちゃんは慌てる。
『 ノア様! まずいっす。敵に先手をとられたっす 』
「えっ!?」
奇襲するつもりが・・奇襲されたのだ。
ノア・・ピンチ!?
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)