ドラゴンはお友達!
キヨウラ公国軍2000名は戦闘隊形を保ちつつ整然と行進・・・セェルンの城門へと進む。
使者であるメイロスの言葉通り、城門は開け放たれており
その門前に代官ラルス他、非武装となった守備兵たちが敬礼をしていた。
公国軍は・・武力で威圧し、この町・セェルンの城門を無理やりこじ開けたのだ。
それゆえに彼ら守備隊の心情は・・良くない。忌々しく思っているであろう。
だが・・一応、表面的には礼節をもって歓迎しているようだ。
公王イジャルはセェルン側の動向に注意しつつ・・・代官ラルスと思われる人物を視界にとらえた。
そう、ここで・・・降伏の調印をすることになっている。
椅子と机、そしてキヨウラの家紋が入った陣幕が用意されていたのであった。
準備は整っている。
公王イジャルはノアに目配せをすると・・静かに頷いた。
そう・・ここで、簡単に降伏の調印式をしたのでは芸がない!
ノアは例の計画に基づき とある演出が実行される。
セェルンの守備兵たちへ・・そして住民たちへ・・決してキヨウラ公国に逆らってはならないというダメ押しの示威行動。
ノアはシルンちゃんに小さく呟いた。
「よし! 状況開始」
『 了解っす 』
ズドォォォォゴォォォォン
それは・・お得意の幻想魔法である。今回は大スペクタクル映像!
突然・・太陽が二つになった!
巨大な炎が吹きあがり・・プロミネンスのような筋が全天を覆う。
青空が・・・赤い血のような色彩にかわったのだ。
そう! いきなりの超常現象、いきなりのクライマックス・ハルマゲドン!
「うぉっ! 空が・・・」
「燃えている! 燃えているぞ」
「いったい・・なにがぁぁん・・起きた!?」
セェルンの守備兵たちは唐突な出来事に戸惑う!恐れる!
おまけにキヨウラ公国軍兵士たちも同様だ。
まさに・・・世界の終わりを彷彿とさせる光景が広がっている。
そして、にわかに流れる妙な音楽、それは・・" ワルキューレの騎行 "
『 BGMスタートっす! 』
赤く染まった地平線かなたから襲来する細かい黒い点・・・その黒い点が徐々に近づき、その姿を表した!
そう、あれは! ドラゴン
しかも・・・今まで旋回していた巨大ドラゴンに匹敵するほどの大きさ、いや! それ以上の巨体
そんな超巨大ドラゴン軍団、数百匹が炎によって赤く染まった空を横一列となって迫ってきていたのだ。
一匹でもパニックしていた巨大ドラゴンが・・・文字通り空一面を覆う!
まるで某異世界の・・・独立記念日なみ
そんな変事、トンデモ演出に・・・兵たちも、代官ラルスも震え・・今にも逃げ出さんばかりである。
ちなみに・・セェルンの住民たちは大パニック。完全に逃げ惑っているようだ。
・・・自前でこの計画を知らされていた公王のイジャルも このスペクタクル演出に戸惑っていた。
そして・・・側にいるノアに目配せした。
"" やり過ぎだが・・これは予定通りなのだな!? ""・・・という以心伝心を送ると、
不器用にウインクしながら、ノアは"" もちもちよ! シルンちゃん特性、やりすぎ演出 ""・・・と返してきた。
すこし冷や汗を出す公王だが・・・顔の表情はいたって普通。
" まるでいつもの事だよ! "という演技をした。
動揺し・・今にも逃げたそうとする代官ラルスを調印式の椅子に無理やり座らせ・・・何気に公王は言葉をはいた。
「あ~ あのドラゴンたちは僕のお友達。いい子達ですよ」
ここで・・公王イジャルは何気なくハッタリをかました。
"" ドラゴンはお友達! ドラゴンはお友達! ドラゴンはお友達 々々 ""
心の中で繰り返しリピートする代官ラルス
「おっおお・・おっおっお友達!? す、すごいですね」
ビビりすぎて言葉にならないようだ。
セェルンの守備隊兵士も震えまくっていた。
もしも、降伏してなかったらどうなっていたかと・・・!
そして・・・キヨウラ公国軍の兵士たちは尊敬の目で公王を見つめた。
やはり! 我らの公王様は凄いと認識したのであった(イジャルのカリスマ +10000)
ノアとシルンちゃんも頭をふりふり、公国軍兵士に同調するふりをした (*-ω-)
そして、ドラゴン大襲来にビビり・・ノアの背中で震えるコサミちゃん
天空に舞うドラゴンたちは調印式を見守っているはずなのだが・・威圧してるようにしか見えない。
炎を口から吐き・・・赤く染まった空をより赤く染め上げた。
もはや・・・代官ラウスは生きた心地はしない。
" さっさとサインして・・・調印式を終わらせて、私は帰るぞ! "・・・と心の中で叫んだ。
震える手で・・震えた文字を書き入れ・・・震えた手で・・震えながら判をつく。
これで・・・この町セェルンはキヨウラ公国の領土となったのだ。
公王イジャルは震える代官ラルスに握手する。
「貴公の決断に感謝する・・・これでこの町の住民たちを救ったのだ。貴公は彼らの命の恩人というわけである」
代官ラルスは苦笑しながら頷いた。
彼は自分のしたことが正しいのかどうか、わからなかった。
いや! あのようにドラゴンたちを操る公国軍を敵にして勝てるわけがない。
住民たちのためだ・・・と自分に言い聞かせるのであった。
グゥオオオルッルルルル
ドラゴンたちが一斉に炎をあげ・・地響のような雄叫びを上げた。
調印式の終了を祝う・・雄叫びなのだが、威嚇にしか聞こえない。ほとんど災害である。
「ひいぃぃぃ」
代官ラルスの意識が遠のきそうになった。
「心配するな。僕はこの町を大切にする。貴公や兵士たちの命も保証する!」
公王イジャルはニヤリと笑い、代官ラルスの肩を軽く叩いた。
「・・か、かんしゃいたひゅいまひゅ」
言葉にならない言葉で返答する代官ラルス・・顔が真っ青
これは・・・ちょっと可愛そうだとノアは思った。
ドラゴン軍団襲来は、ちょっとやり過ぎたと反省!
まぁ・・・すぐ忘れるけど♡
「さて・・みなの者! いくぞ!」
公王イジャルは号令を発し・・・兵たちを連れセェルンへと入城するのであった。
堂々と・・その威厳を示しながら・・
------かくて、セェルンはキヨウラ公国の手に落ちた。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
キヨウラ公国軍はセェルンの町中央に位置する代官屋敷を本陣とした。
この屋敷から・・この町の統治を命ずるのである。
セェルンはそれなりの規模を有する都市・・ここからが大変なのだ。
とりあえず・・・
ドラゴンたちによる恐怖で委縮しまくる住民たちを なだめなければならない。
そうなると・・目に見えるぐらいの善政を敷く必要がある。
いわゆる選挙アピールが必要なのだ( 選挙制なんてなく専制政治なのだが・・一応、民の信頼がないと暴動がおきる! )
公王イジャルは・・・さまざまな対策を考えた。
生活保障に福祉・・・無料病院の建設、上水設備に下水、エトセトラ~エトセトラ~
などと考えていると予算がない。
前代官バルンドの隠し資金では到底まかないきれないし・・それに軍事費でかなり使ってしまっている。
「どうしたものか!?」
「それなら! あれがいいよね~ うんうん」
側にいたノアは頷き・・・とんでもないことを言い放った。
「そう、悪徳な商人や議員から奪うのよ! 犯罪を摘発して財産を奪う! なんなら犯罪をでっちあげても・・いいかも! ふっふふふ」
表情に暗い影が差し・・悪徳商人より悪徳な顔になるノア!
このセェルンは商業都市・・・そう! 叩けば埃がでる商人が多いのだ。
ついでに何かと悪さをしているだろう都市議員も・・叩いてみたら献金疑惑や賄賂とかしてるに違いない!
ちなみに そのあたりの捜査は影の猿軍団!・・・影忍に任せたら大丈夫だろ!
「ふっふふふ、確かに叩けば埃はでるに違いない お主も悪じゃの~」
・・・とイジャルは思ったが・・これはこれでやり過ぎると問題になりかねない。
清い水には魚が住まない同様・・道徳すぎる町には商人は住まない。
そう、摘発しまくると・・商人が大挙して逃げてしまう可能性があった・・そうなると商業活動が停滞してしまうたろう。
いやいや! 逆にはむかってきて・・ ブルジョワ革命的な暴動が発生する可能性もある
ついでに地元に根付いている都市議員を敵に回すのも厄介だ。
「そうだなぁ・・・とりあえず、無難な連中から・・・一人ずつ絞めあげるのがいいか」
「無難な連中というと!?」
ノアの質問にイジャルの口角が上がった。彼もノアと同じく悪い顔をしている。
「庶民に対して暴利をむさぼる商人だよ! そう、我らが正義の立場となれる連中の事だよ」
「あ~! いたね! いたね! エイチゴヤとかいう商人。
さっそくうちに饅頭箱を送って来たよ! もちろん箱の下には金貨が詰まっていた」
・・・といいながらノアは・・・その箱を開け嬉しそうに金貨を取り出した。
「・・・・ノア様、受け取ったのですか!?」
渋い顔のイジャル。
やっちゃった感のあるノアw
「ノア様・・・そちも悪じゃの~ 逮捕案件です」
・・・というと、猿たちがやってきて ノアの手に手錠が・・・!
ノア・・収賄罪で逮捕される!
困惑してしまい目がうろうろ ヘ(¯〇¯;)ノヽ(;¯〇¯)ヘ
「えっと・・・これってもしかして賄賂とかいうのかな!? 返しに行きます!」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)
ノアが逮捕されたため、次回は・・・新年スペシャル外伝♡