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セェルン攻略戦


すみきった青空に悠然と浮かぶ一本の箒、そして、その箒にまたがる二人の少女!

もちろんノアとコサミちゃんである (この箒は比較的に長いので・・二人乗りも可能なのだ!)


ついでにシルンちゃんも箒の先端に乗っかり、この箒のコントロールをおこなっています。

この空飛ぶ箒は・・・シルンちゃんの操縦なしに飛ぶことが出来ないのである。

(操作が難しすぎて この世界の人間には無理だった)



ノアの眼下に広がるのは、数十もの尖塔が空に向かってそびえ立つ町・セェルン・・・すばらしき景色!

幾つもの街道が交わる交通の要所、カイラシャ王国・北西部を代表する商業都市でもあった。


その町にキヨウラ公国軍2000が攻め寄せてきたのである。

もちろん、ノアもその一員であり、そして作戦手順に従い準備に入る。


ちなみに、ノアの背後で一生懸命に箒を抱え込んでるのは・・コサミちゃん。

地上に落ちたくない一心で 箒を握っているのだろう。


実際・・・そんなに握らなくてもいいのだけど、理解していないらしい。

そう! この箒には重力安定装置が搭載しており・・・どんなに揺れても寝落ちしても 箒から落ちない安心設計となっているのだ。


だが・・魔法というか アイテムというか、異世界最新テクノロジーを理解できないコサミちゃんは 半分、涙目となりながら

両手で箒を抱えこむのであった。  



そんなコサミちゃんとは対照的に・・・目をランランと輝かせ、狂気じみた表情を浮かべるノア。

どこからどう見ても悪人である!


そんなノアは地上に向けて・・・魔法を放った。


"" コーヒーバブルボム ""


時限式加熱魔法、コーヒー球体を地面に向かって放ち、地面スレスレというタイミングで 

強烈な高熱を発生させ、コーヒーを水蒸気爆発させるのだ!

その瞬間、水の体積が1240倍に膨らみ地面をえぐりとる。


要するに・・・爆弾である!



ズドォォォォォンンンン

砂煙が巻き上がる・・・耳をつんざく轟音、地は揺らぎ、セェルンの城壁に亀裂がはいる。


代官ラルスを始めとした城兵たちは・・・目前で巻き起こった爆発に身体を硬直させてしまった。


「なに!」

「いったい何が!」


濛々と立ちのぼる水蒸気、いや! 煙なのか!?

そして・・・その霧が晴れたとき、城壁前にひろがる平地に巨大なクレーターが出現していたのだ。

数十人もの人達を生き埋めにできそうなほどの大穴!!


代官ラルスの額に冷たい汗が流れた。

もし・・・あの攻撃が城壁にあたれば・・・・間違いなく粉砕されていた!

「こ・・これは警告なのか!?」



彼はおそるおそる目線を下げた。

城門前に立つ・・あの少年騎士! キヨウラ家の当主、イジャルと名乗るあの少年に問いただそうとしたのである。



だが・・・あの少年騎士は そこにいなかった。

そう、かかとを返し自軍の陣へ戻っていく後ろ姿だけが見えたのだ。

しかも 高笑いのような声を発していた。


「これが最後の警告だ! すぐに城門を開けよ! さもなくば、この町が廃墟になるだろう。あっははははは」



代官ラルスは、少年騎士の言葉から・・とてつもない絶望を感じた。

彼なら・・・いや! あの彼に味方するあの王女なら やりかねない。

この町ぐらい廃墟にしかねないのだ


・・・と、ラルスが思った瞬間、

またもやあの王女、自己申告であるため真実は不明だが・・あの王女によって、次なる魔法が放たれた。


青い空を、ふたつに分けるような 飛行機雲が引かれていく。

それは弧を描くように町の中央部へと落ちていった。


ズドォォォォォゴッゴゴコッッ


白い煙が噴き上がり・・・悲鳴と轟音が鳴り響く。


この町の象徴とされる代官屋敷・・・その屋敷を飾る尖塔に命中したのだ!

バン!・・という破裂音とともに折れ曲がり、そして瞬く間に崩れ去った。

まるで積み木のごとく・・・


その様子を見て愕然とする住民たち、兵士たち・・


そう! これは警告。

いずれ・・あの尖塔のように この町を破壊するのだという意思表明!


「うっ」


ラルスの顔色が青くなる。


-*- - - - - - *-



代官屋敷の尖塔を破壊し・・満足したノアは、次なる作戦へと移行する。


空飛ぶ箒はノアとコサミちゃんを乗せ・・・風上方向へと進路変更。

そう!・・・いよいよコサミちゃんの出番である。


" ポイズンミストフィールド "の魔法を撃ってもらおうというわけであった。

この魔法は" ゲラゲラダケ "の霧を発生させるので、風向きには注意!

間違っても・・味方に吹き付けないように気をつけなくてはならない。


セェルンの町に吹きつける風の方向は西風なので・・・西へと移動


この魔法は・・・殺傷性が低いので、嫌がらせに最適!


「せいぜい笑い苦しむがよい・・・下界の人間どもよ」


なんて・・・悪役なセリフを吐くノア。ちょっと悪ぶりたい年頃である。


コサミちゃんは両手で箒を抱え込みながら・・・師匠たるノアに一抹の不安!?(中二病)を感じた。 




『 風よしっす! 方向よしっす! 安全を確認っす! 』

シルンちゃんが最終確認、羽を器用にまげてサムズアップ、完了の意思を示した。


「さて 始めようか・・コサミちゃん」


「はい」


ノアの言葉に応じて、コサミちゃんは短く返事し・・そして、眼下を見た。

そこは自分の生まれた村とは違う・・目を見張るような建物の数々、素晴らしき色彩の屋根たちが地面を覆う


そして、そこに住む住民たちは・・・荷物を抱え、子供をおんぶし、我先にと路地を駆け走っていた。

おそらく、どこかの避難所へと逃げ込もうというのだろう。



彼女は息を飲んだ。

すこし・・躊躇したものの、師匠ノア様の命令、公王様の作戦なのだと・・・自分に言い聞かせて、

コサミちゃんは持てる魔力を最大限に使い・・魔法を放った。

それは超特大のポイズンミストフィールド


大気が揺らぎ・・・コサミちゃんの目前で白い霧が生み出される。


それは・・ゲラゲラダケの成分が混じった霧、吸い込んでしまうと笑い転げてしまうのである。

いわゆる、いやがらせ魔法、殺傷性はない。


そんな霧はゆらゆらと降下していき町全体へと広がっていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そして・・・町は笑いに包まれた。


ゲラゲラゲラ・・・・ゲラ


町中に響き渡る笑いの数々、はた目から見ると幸せに包まれているようであるが・・・

現実は苦しみであった。


公国軍の来襲によって逃げ惑う住民、または・・避難所で身を潜める人達さえも この霧に毒され 同じく笑い転げる


町中の人々すべて、身分を問わず、いやいや! 人間以外の動物、ペット、昆虫さえも・・笑い転げ引っくり返り収拾がつかない。

もちろん、代官のラルスや・・この町を守る兵たちも例外ではなかった。


「や・・やめてくれ! ゲラゲラゲラ!」

「く・・苦しい! 息が詰まる! ゲラゲラゲラ」

「にゃは・・ゲラゲラゲラ 我が人生に・・ゲラゲラゲラ・・・・ゲラ」


もはや戦争どころではない。

コサミちゃんの魔法だけで戦闘不能に陥ってしまったのである。

住民も・・・兵士も・・・代官も・・・

ある意味・・・・最強魔法であった。


「やったね!」


『 やったっす! 』


空飛ぶ箒に乗るノアとシルンちゃんは手を叩き、コサミちゃんの戦果に喜んだ。

だが・・そのコサミちゃんは浮かない表情をしていた。


良心が痛むらしい。 

こんな 時代(ファンタジー)に生きるには弱すぎるのだが・・・これも試練、魔導師としての試練なのだ!

そして、いずれ慣れてしまえば・・ノアのようになってしまうに違いないw




とにもかくにも、眼下に広がる町・セェルンの住民たちは笑い・・いや! ゲラゲラダケに毒されていたのである。


ゲラゲラゲラ・・・・ゲラ



だが! 町の住民が全て、笑い転げているわけではなかったのである。

毒耐性のある者は・・この笑い地獄の難を逃れていた。


その一人が魔導師のエリャンである。

かつて・・・アルゲルンの町でノアを追いかけまわしたあの魔導師、

そして偶然にも、この町の代官ラルスの客人として滞在していたのであった。


「おっ・・・なんてことだ! 敵さんよ、やってくれるではないか!」


エリャンは上級の魔導師・・このような時のための対処方法は心得ていた。


それは広範囲・解毒魔法である。 

ゲラゲラダケなどのような弱毒性、殺傷性のない毒に対しては・・・かなり有効な魔法であった。


エリャンの持つ赤い杖を天に掲げ・・・響くような声で詠唱を唱えた。

すると・・・町を覆う霧が晴れていくと同時に・・・解毒要素のある新たな霧が発生した。


これは・・・キュアミストフィールド、ポイズンミストフィールドに対する真逆な魔法、

霧の中に解毒作用をしこんだ広範囲魔法であった。




徐々に町から笑い声が消え去った。ちなみに悪い意味ではないw

ゲラゲラダケの毒から解放されたのだ。


代官のラルスは・・・戦闘不能な兵士たちを見て顔を青くしながら 笑い転げるという不可解な現象から逃れることが出来た。

その兵士たちも笑いから立ち直ったようである。


城壁上に上がってきた魔導師エリャンによって詳しい事情を聴き・・・エリャンの功績に感謝した。


「た・・たすかった! エリャン殿・・感謝申し上げる! この礼は後日改めて報いるとしよう」


「それは、ありがたきことですが・・敵の放ったミスト魔法は、かなりの精度と魔力量です。かなりやっかいな相手・・」


・・・とエリャンが発言した時、黒い影が地面を覆う。

何かが空に!?・・・目線を上げると、そこには信じられないほどの巨大なドラゴンが飛来してきていた。


「「なに!」」


代官ラルスとエリャンは同時に叫んでしまった。


そして、エリャンは・・・アルゲルンの出来事、ドラゴン襲撃事件を思い出す!

そう! かの悪名高き王女・・・フィレノアーナ! 

あの時、僕は王女を追跡し・・・目撃したのだ。

ドラゴンを召喚し、しかも操る恐るべき王女の姿を・・・そして、今、そのドラゴンが上空に!?


「ま・・・まさかフィレノアーナ・・王女!?」


エリャンは小さく呟くと・・・代官のラルスは、空を指さした。

その先には・・・空飛ぶ箒に乗る二人の少女。


「も・・・もしや!」


「自己申告だが・・・あの王女らしい!」


「ドラゴンを率いし・・・魔王!」

エリャンは再び・・・ノアこと、フィレノアーナ王女と対戦することになるのか!?



-*- - - - - - *-


『 ポイズンミストが封じられているみたいっす 』


「ちっ キュアされているようだ。敵には、わりと腕のいい魔導師がいるみたいだね!」


空飛ぶ箒に乗る二人の少女と手乗りドラゴン、彼らは眼下に広がる町の光景を見ていた。

どうやら・・何者かによってポイズンミストが阻止されたようだ。

しかも・・・広範囲魔法というべき、キュアミストの霧を吹きかけ治療までおこなっているではないか!



ちなみに・・このキュアミストにおける治療効果は大変小さく、ゲラゲラダケ程度の弱毒性にしか威力を発揮できない。

本当のヒーラー魔法を扱える者は・・・ごく一部の者にかぎられていた。




コサミちゃんの心の中は複雑であった。

解毒されることによって 良心の呵責が軽くなった一方で、魔法が阻止されたことに落ち込んでいた


そんなコサミちゃんの心境など、分かっていないノアは、彼女の肩を少し叩いて励ましの言葉をかける。


「相手が悪かったようね・・・強い奴は何処にでもいるから 気を落としちゃだめよ」


「は・・はい」


コサミちゃんの短い返事に少し安堵したノアは・・・シルンちゃんに振り返り、次なる指示をだした。


「やっぱし、アレだよね」


『 はいっす! アレをするっす』


お得意魔法というべきか・・・この魔法しか使えないシルンちゃんの幻影魔法!

ご存知・・・ドラゴン襲来である!





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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