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会戦前夜

カイラシャ王国・王都ルヴァ、再建中の王宮内臨時執務室にて・・

あの王太子・・エルドラートは怒りにまかせて机をぶん殴っていた。


「北西部で叛乱だと!? その程度のことで、いちいち報告してくるな!」


いつもの事であるのだが・・・新米である報告官は恐怖で顔を歪ませ・・殴られる前にさっさと一礼して退室した。


「そんな地方叛乱など どうでもいい とにかくフィレノアーナだ! 奴だ! 奴が一番危険なのだ!」

だが・・・そのフィレノアーナ王女ことノアはイジャルとともに・・その北西部で叛乱を起こしていたのである。





カイラシャ王国の首脳部は、南西部・アルゲルン地方での暴動に対応するために、8万もの兵力を投入していたが、今だに事態の改善には至っていない。

その上、旧キヨウラ公爵領で叛乱が勃発し、その地で代官を務めていたバルンド卿も消息不明・・・

叛乱をおこした旧キヨウラ公爵領は、王国の北西部に位置し、隣国ヴルティリア帝国にも接している重要な拠点!

だが王国には・・この地域に派遣するだけの余力がなかったのである。

やむを得ず、南西アルゲルン地域に投入した戦力の一部、一個師団6000名を北部へ転進させることにした。



首脳部は、エルドラート王太子にこの事態を報告したが、王太子はさほどの興味も示さず軽く扱った。

王太子にとって最重要なことは、南西アルゲルン地域で暗躍しているフィレノアーナ王女の動向であり、彼女の討伐を最優先していたからである。




---- リューム降誕暦680年 淡月の前3日(8月3日) ----


旧キヨウラ領にて発生した叛乱事変に対応すべく・・・

テアール伯率いる一個師団6000名が密かにアルゲルンから出発、北上を開始した。



だが・・この行軍の知らせは即座にキヨウラ公爵邸にもたらされたのである。


情報はなによりも大事! 国の運命を決める最大要素!

キヨウラ公国情報部・・・別名、影の猿軍団!


公国配下の優秀なる猿たちは影忍となり・・王国各地に潜伏しているのだ。


時には・・・野生の猿にまじり敵の屋敷へと侵入、または重要人物のペットとなったり・・大道芸人の猿にもなった。

手段は選ばない・・・目的は敵地奥深くに潜入し情報を手に入れること!


そして、その努力の成果として・・このキヨウラ領へと進軍する王国軍を察知したのである。


テアール伯率いる一個師団6000名・・・

この師団内にて、伝書鳩ならぬ、伝書猿として潜入していたサタロウニザエモンによるお手柄であったのだ。

しかも・・重要な書類の運搬という任務に就いているため・・・王国の情報がまさに筒抜け状態・・・全て公国に伝わっている。




無論のこと・・・キヨウラ公国は即座に迎撃態勢にはいった。

兵力もそれなりに揃えている。

前代官のバルンドの不正によってため込んだ資金で傭兵を集めたのだ!



=== えっ!? 不正にため込んだのだから・・元の持ち主である領民に返せって!? ===


「あっははははは」


公王イジャルは笑ってごまかした。

ついでにノアも悪い顔をしながら・・・「ふっふふふふ」


この二人・・・某異世界のあれな時代劇の悪代官と商人のような仲であった。

こういうところは血筋だろうか!?


シルンちゃんは寝たふり

コサミちゃんには・・もちろん! こんな二人の会話など聞かせられない。



そんなわけで・・・前代官バルンドのため込んだ資金で住民たちからの志願兵を集めた。

もちろんのこと、密かに戦闘経験のある者たちにも声をかけ傭兵隊も組織した。



そう! 無理矢理の強制徴兵は避けたのである。

前代官バルンドの悪政により領民たちは疲弊している!

ここで・・・強制徴兵などしては民の生活が崩壊しかねない。

資金があるのなら 出来るだけ傭兵だけで 事を為すべきである。

(その資金は前代官によって領民から 無理やり取り上げられたのだが・・・)



そんなわけで・・・公国軍1000名ほどの戦力を集めることが出来た。

少ないって!? いやいや! ノアの強力なチョコザイナ・身体強化魔法があるのだ!

やりようによっては・・・数倍の戦力に匹敵することも可能である。



それに・・・湯泉大聖ソン・ゴクン率いる猿の兵団一千騎!もついている。

彼らには特殊作戦についてもらう予定となっていた。




公国軍の編成は完了した。

これらの仕事は・・・事務職でもあるアランスにお願いしたのである。

時間的制約の中で、彼は采配を振るい軍隊に必要な物資などを集めることが出来た。


本当に優秀な人物である。

公王イジャルは深く握手し・・・その功績をねぎらった。


ノアも・・アランスの能力を高く評価し公国にもっとも必要な人材であるとした。

「あなたのような優秀な人がいると・・公王様はたいへん満足されます」


「はっ! 誠心誠意、公王様のため、微力ながらつくす所存でございます」


・・・と返事したものの、この女の子は誰だろうかと・・首をひねるアランスだった。

おそらく、公王様のそばにいるので、高貴な人物だとは認識してたのである。




---- リューム降誕暦680年 淡月の前5日(8月5日) ----


公王イジャル率いる公国軍1000名は出撃した。

もちろん、ノアとシルンちゃん、それに・・・実戦訓練にもなるということでコサミちゃんも連れてきている。

魔獣との戦いで血みどろになっているノアにとって・・さほどの緊張はないのだが、完全な素人のコサミちゃんは終始、足が震えていた。


大丈夫なのかと心配なのだが・・・いずれノアの家臣となるのだ! 試練だと思ってほしい!


"" 師匠は弟子を千尋の谷に足蹴りにして突き落とす "" 

そんな名言をつくりたいw・・・などとノアは思っていたりする。



「わ・・わたし、攻撃魔法をやっと一つ、つかえるように・・な、なったばかりなのに・・・」


緊張のせいで震える声を出すコサミちゃんに対して・・別の意味で身震いするシルンちゃんがいた。 


『  コサミン・・恐ろしい子! 魔法攻撃が凶悪すぎっす 』 



そう! シルンちゃんは見たのだ。

先日の魔法試射訓練!


それは・・・・脅威だった! 凶悪だった!

コサミちゃんが以前、行使した"" ミストフィールド ""を、よりパワーアップした魔法・・・

"" ポイズンミストフィールド! ""である!



名前のごとく毒をまき散らす・・・卑怯な魔法なのだが・・その毒が問題なのだ。


そう! その毒は、ワライダケならぬ・・ゲラゲラダケ!

この毒に触れると無性に笑いたくなる。立てなくなるほど笑いたくなる。

息をつかせないほど笑い転げる・・・ある意味、危険な毒である!


そして、その毒を・・誤ってシルンちゃんが浴びてしまったのであった。

魔法試射場で試しに撃った"" ポイズンミストフィールド! ""

・・・間の悪いことに、その瞬間、風が吹いたのだ! しかも逆風の上に強風! 

毒の霧がこちらにむかって吹き付けてきたのである!



この魔法試射訓練に参加していた・・・公王のイジャルは、即座に危険と判断し、速攻で逃げた。

さすが剣士である。危険と分かれば・・即座に避ける危険予知能力を持っていたのだ。


次にノアも・・「にゃは! これは、まずい!」と叫び、身体強化していた身体でバク転しながらというか どちらかというと・・転げながら逃げた。

もちろん・・試射をした本人、コサミちゃんは・・猛ダッシュ! 

撃った本人だけあって この魔法の危険性を知っていたのである。


そして残されたのはシルンちゃんだけだった。

寝転びながら、試射を見物していたため・・判断が遅くなり、しかも半分、寝ぼけていたためか 見事に、毒の霧に包まれてしまった。


そして・・・その後、シルンちゃんは30分間、転びながら、ひっくりかえりながら、笑い転げることになる。

『 わ・・わっちは・・にゃはっはは ゲラゲラゲラ ぐくっうっはは ぜいぜい たちゅけてっす にゃぁぁぁ 』


シルンちゃんの笑い叫び声がこだましたという。


広範囲に敵を無力化する魔法!

しかも殺傷性が少ない。


公王イジャルの口角があがった。

「これは・・これで、かなり凶悪な魔法になりそうだ!」


だが・・この魔法は危険!

風向きを間違えれば・・味方を危険に晒すのだ。

" 使用上の注意 "が必要であった。





そんな危険な魔法を取得したコサミちゃんをひきつれ(ノアも・・・かなり危険な魔導師)

公王イジャルは1000名の兵士を従えて出撃!


目的は・・この地に侵攻してくるカイラシャ王国軍1個師団6000名の迎撃!


公国の領境"クリカラン山脈"の隘路は、険しい山々に連なる山道、狭く険しい地形で岩肌をくりぬかれたような切通となっており・・・

まさに敵を迎撃するのに最適な地・・・そう! この狭き通路で待ち伏せするのだ。

作戦を主に立てたのは・・ソン・ゴクンであった。


我ら少数の公国軍にとっても・・・そして、山岳地帯の戦いに長けているサルたちにとっても、この地は有利となるだろう。



公王イジャルは兵士たちに指示を出し・・・簡易ながらも切通しの出入り口に陣地を構築した。

先の尖った木の杭を多数・・地面に打ち込み 一重二重に馬防柵を設けた。


敵からの騎馬突撃を防ぐというようなつくりとなっており・・

これは某異世界・・長篠の戦のような陣地作成だった。



さらにこれだけではなく・・・

猿たちの斥候が山脈通路を行き交い、敵カイラシャ王国軍の現在地をきめ細かく報告してくる。


もちろん・・・ノアはサテライト魔法を発動し・・・周囲の状況をたえず確認していた。

これで・・敵からの奇襲は防げれるだろう。

いや! どちらかというと・・こちらからの奇襲が可能となるだろう。



公王イジャルは どっしりと床几(しょうぎ)にすわり・・敵軍の到来を待ち受ける。


彼の顔立ちは女の子のように可愛く・・頼りなさそうに見えるのだが、

その可愛らしさを隠すかのような重厚な鎧を身に着けていた。


その姿を見て・・ノアはものすごく違和感、本当にイジャル本人かと・・顔を確かめたほどである。

あの可愛いらしい少年が・・・威厳ある人物、歴戦の勇者のように見えてしまっている!


鎧一つで・・一軍を率いる将にはやがわり!


ちなみに・・・ノアは黒い魔導ドレスのおかげで・・高齢のおばさんに見えてしまう悲しさw

本体は可愛いのだよ! 本当だよ!



-*- - - - - - *-


歴戦の勇者!?イジャルと・・・高齢おばさんノアw・・・

その背後で、シルンちゃんのモフモフに顔をうずめ・・・戦場という緊張感をなんとか誤魔化そうとするコサミちゃん。

そして・・新たに任命した連隊長たち、その中にはあのエル・ラッドやエル・ルッツもいた。

・・そう! かのエル兄弟、エルの二連星たちである。

あの悪代官のバルンドを護衛していた二人は死んではいなかった。

なんとか治療した上に、なんと! キヨウラ家に寝返りさせたのだ!


公王イジャルの徳によるものなのか!?・・・ということにしておく♡



そういうわけで 彼らがキヨウラ公国軍の幕僚、陣幕の面々、

すなわちキヨウラ公国軍首脳部は今や遅しと敵の来訪を待ち構えていたのである。



そこへ・・・サッササッササ~


疾風のごとく駆け走る一陣の風!


体毛をなびかせ・・ブラウン色の毛だまりが走ってきた。

そう! 彼は猿! 

ソン・ゴクン配下の特殊作戦群からの伝令であった。


「注進 注進! ソン・ゴクン様からの伝令でござる。 敵を発見! その数6000、"クリカラン山脈"の峠を北上中、作戦は予定通りとのことでござる」


「ご苦労! ソン・ゴクン殿には・・こちらも予定通りと伝えてもらいたい」


「はっ たしかにお伝えいたします」


その 伝令兵()は・・・公王イジャルに一礼をすると、すぐに走り去った。


いよいよである!

ソン・ゴクン配下1000名の猿たちも・・・今頃、作戦開始をしているだろう。


「皆の者! 敵は大軍なれど・・こちらには地の利がある。知略がある! 正義がある! すでに敵は我らの術中の中にいる。

我らの勝利は必然だ! だが決して・・・油断はするなよ! 」


公王イジャルの熱弁にエル兄弟や他の連隊長も声を張り上げ応じた。

「はっ! 公国に勝利を・・」





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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