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とある村の惨劇


『 この紋所が・・・目に・・えっと、刮目するっす! 天下の副公王・・・ノア様であらせられるっす 』

シルンちゃんによって掲げられた印籠・・・そこにはキヨウラ家の家紋が描かれていた。



村人たち・・・十数人は額を地面にこすりつけ、ノアに対して平伏している。

その中でも初老の老人、おそらく村長であろう、その老人が涙ながらに訴えてきていた。


「キ・・キヨウラ家の者とは知らず! ご無礼を申し訳ありません! 我らの救世主キヨウラ様に何の叛意もありません。なにとぞ・・・ご容赦を、ご容赦を・・」


すると・・・他の村人たちも同じく、「「ご容赦を! ご容赦を!」」と連呼しはじめたのだ。


老人を泣かし・・村人たちを恐れさせる!? いや!? 恐縮させた。

そして、その様子を見て勝ち誇るシルンちゃん! 


もう・・・完全に虎の威を借るキツネというかドラゴン。

いや! 虎の威を借りるドラゴンはないだろう! ドラゴンとしてのプライドはどこにいった!?



恐れおののき平伏す村人を見て動揺するノア! 

ノアは記憶喪失のため・・・貴族的威圧行為というか・・権威を振りかざすことに慣れていない。

側にいるコサミちゃんも どうしたらいいのか目が右へ左へと泳いでいる。



ちなみに・・・シルンちゃんがもっていた印籠は幻影魔法であり、現実には存在しません!

ノアを含めて・・みんな騙された!



「えっと、みなさん・・・面を上げてください」


平伏してるままでは話も出来ないのだ。

とりあえずノアは・・・村人たちと目線を合わしたかったのである。


その村人たちは・・・動揺しつつ、おそるおそる顔を上げる。


「初めまして。うちはノア、キヨウラ公王イジャルの・・・えっと・と・・妹です」


ここでノアは・・・とりあえずハッタリをかます。

王女でもなく・・キヨウラ公国の黒幕でもなく・・・ただの、普通の公王イジャルの妹だと名乗ったのである。

信じるか信じないかは・・・村人次第!?


そこへ・・・かぶせるようにコサミちゃんの発言がはいる。


「ノア様は偉い人なのです!・・・お貴族様なのです! そして・・私の魔法の師匠なのです!」


あれ!? コサミちゃんの師匠は・・シルンちゃんのはず!?

いつのまにか、うちが師匠になっているのだ!?・・・と、困惑しつつ一応、この発言に同調した。



「コサミちゃんは魔導の才能が高く、我が公国にとって重要な人材です。

それゆえ、公国が責任をもって彼女を預かることにしました。彼女は将来、この村の誇りとなるでしょう。」


このノアの発言によって・・・動揺していた村人たちが一転、ざわつきだし・・ついに歓声が上がり始めた。



「お~!」「すごい!」

「さすが・・・あの魔導師さんの娘のことはある」

「コサミさん・・がんばって~」


おばさんの何人かは・・・涙目となりコサミちゃんへの応援をしていた。


そして・・幼い男の子の一人が号泣している。

「コサミちゃん・・いかないで~ 結婚してくれるって言ってたのに!」


その男の子は・・・もうコサミちゃんと会えなくなると勘違いしてるのかもしれないし・・・どこか遠くに行ってしまうと思ってるのかもしれない。


・・・というか! その歳で・・すでに男の子の心を弄んでいたのか! 

おそるべし・・・コサミ! 

でも・・・あの男の子・・・幼くて可愛いよね! 可愛いよね!


あっ・・コサミちゃん、その男の子の頭をナデナデしてあげてる・・あげくにほっぺにキス。

こ・・これは、ひどい、いや! 参考になる。

ああして・・・男の子を弄んでいたのか!

だけど・・・コサミちゃんは無自覚だった。可愛い男の子だから弟のように接していただけだったのだ。





残りの村人たちも続々と集まり・・・なにやら祭りのような雰囲気となってきた。

コサミちゃんが出世したというか・・・高貴な者に認められたことが知れ渡り、騒ぎになってきている。


もちろん歓迎ムードである。



どうやら・・・ここの村人たちはノアの事を高貴な人物、

キヨウラ公イジャルの妹だと信じてしまってるらしい。


印籠の家紋一つで騙される・・・いや! 騙してはいないのだが・・・

こんなにあっさり信じてしまう村人たちの純粋さが怖い。


いや! もしかしたら・・・

かつて民に安寧をもたらしたキヨウラ家への絶対的信頼によるためなのかもしれない。

そんなキヨウラ公爵家の統治能力にある種の恐怖を覚えてしまう。




そんなこんなで・・・ノアとコサミちゃんは村人たちにつれられ・・水田を貫くあぜ道を歩いていた。

この先にある村で・・うちらを歓迎するらしいとのこと・・・


丁重に断ったのだが・・・この村の村長が是非ともと言われた。

ついでに この村での名産、"キリタンポ" "五平餅" なるものがあるらしく・・かなり美味しいらしい♡ じゅるり!

そして・・・それらの食べ物を食せると聞いて・・つられていくノアであったのだが・・・・



-*- - - - - - *-



突然、ノアたち一行の前に・・一人の青年が駆け込んできた。しかも! 顔色が真っ青となっている。


「出た! 出たんじゃ!」


「グラウじゃないか! どうした!? なにがあった!?」


村長はその青年・グラウを落ち着かせようと肩を叩く。


「俺は見た! あれは魔獣だ! 赤い牙と爪、巨大な翼を持つ凶悪な化け物・・」


「ま・まさか!?」


「魔獣が村に向かってきている・・すでに目と鼻の先・・・いや!」


青年の言葉が急に途切れ・・身体がピクピクと震えはじめた。


「おい! どうした・・!?」


村長は青年の異変を感じた。

しかも・・・背後からの嫌な視線、黒い影が付近を覆う。

悪い予感・・・まさか! と思いつつ振り向いた。


「「どぅぉぉっぉぉぉぉ」」


村長は絶叫した。他の人も絶叫した!


巨大な壁・・・いや! 見上げんばかりの巨大な魔獣が出現したのだ。

まさに目の前!  文字通りの目と鼻の先!




それは・・・マンティコア、人間の十数倍はありそうなほどの巨体、

4足歩行・・筋肉質な胴体と獅子のような毛並み、凶悪な爪で巨木を切り裂き、

邪悪な目で・・・村人たちを見下ろしていた。


間違いない! あの魔獣・マンティコアは・・・村人を餌として見ている。

ノアはその圧倒的な存在感に恐怖し、後ずさりした。


コサミちゃんは・・ノアの背中に隠れてしまっている。

彼女は目つきが悪いけれど、震えている姿が可愛らしかった。



すでに村長をはじめ、他の人達は 大慌てとなって逃げ出している。

しかも、子供も大人も大声を出し・・泣き叫びながら・・・


「うわぁぁぁ」「た、たすけてくれ~」「お・・おかあさ~ん!」



マンティコアはその叫び声につられ・・逃げる村人たちの方向へと歩み出す。


まずい! 


村人がいくら走っても・・・すぐに追いつかれるのだ!

マンティコアの一歩は10ルトメ(メートル)、時速でいうと70 ロキル(km)となる。


このままでは・・・村人たちは踏み潰されてしまうだろう! 爪で切り裂かれてしまうだろう!




ノアは即座に魔法を放った。もちろん無詠唱、チョココーティング魔法だ!


甘い香りをただよわせながら・・・ノアの数十倍もの巨体を持つマンティコアの前足にべっとりと張り付いた。

粘性が高い・・粘っこいチョコが鳥もちのように足の自由を奪う。



マンティコアは・・前足に違和感を感じた!

だが・・遅かった。

勢いのついた身体は、前足が止まったことでバランスを崩し、頭部から地面へと突っ込んだのである。


「よっしゃー!」

巨大な獲物が転倒し・・砂埃が舞う光景を背景にして、ノアの口角があがる。


そして・・もちろん、追撃のチョココーティング魔法を連射!

マンティコアは・・甘い匂いを漂わせながら黒く染まる。


チョコの粘り気で 地面に縫い合わせた! ばっちし縫い合わせた!

なにやら叫び声を上げているようだが・・もう、動けない!


『 ノア様、おみごとっす ぱちぱちぱち 』

シルンちゃんは・・震えるコサミちゃんの頭の上に チョコンと乗り・・・盛大に拍手をした。




後、すべきことは・・・「ふっふふふふ!」

ノアの邪悪な目が光る! 

だが・・・ここで、ふと思い出した。


「そうだった! コサミちゃんに・・・実戦と言う名の訓練をしないと」


ノアは振り向き・・背中に隠れている彼女を覗き見た。


「えっ!? えっ!? ノア様」

コサミちゃんは恐怖した。


彼女の目に映ったのは、捕食者の目をしたノアだったからだ。

" うわぁ~食べられる! " という思考が彼女の脳裏に浮かんだ。




失礼にも、そんな存在にされたノアの片手に とあるアイテムが出現する。

そう! 時空ストレージから取り出したアイテム・・・"ブラッディ・マリー"!

丈夫なだけの撲殺用魔法杖なのだ。 



そんな杖をノアはコサミちゃんに貸し与えた。


「えっ・・・これは!?」


それは・・・魔導師の必需品、魔法の杖!

「とりあえずそれを使って・・・あのマンティコアを攻撃してごらんなさい」


そんなことを言われたので・・手渡された魔法の杖をコサミちゃんは両手で握る。


人生で始めて握った魔法の杖!・・・魔導師と言われた父親でさえ所有していなかった杖!

コサミちゃんはその感触に・・ある種の感動を覚えた。


普通の一般人にとって・・・憧れの杖、魔導師を表す一種のシンボル。

彼女は・・・わずかに涙ぐむ。


そして・・・敵となるマンティコアを睨んだ。

敵は・・・凶悪だ! ただし身動きができない・・ただのターゲットになっている。


無害だと言っても良い敵なのだが・・・コサミちゃんの足は震えていた。

敵との戦い・・魔獣討伐が初めてだったからだ。



そんな彼女を見て・・・

『 コサミン! 頑張るっす  』

地面に寝そべり・・・気軽に応援するシルンちゃん。緊張感の欠片もない!



コサミちゃんは・・・震えながらも呪文を唱え 杖を振ったのであった。


「霧の結界・・我の前に!」


大気が微かに揺れ出した。

空気中から水分をひねり出し、視界を白く染めていく。



彼女が唯一使える戦闘用魔法・・・"" ミストフィールド ""

っていうか・・・敵の視界を霧で塞ぐ魔法!


たしかに戦闘用だが・・・直接のダメージは入らない!

コサミちゃんもわかっていたが・・・記憶している呪文がこれだけだったので・・とりあえず使って見ただけ・・


視界は霧に阻まれ、巨体の身体をもつマンティコアを消し去った。

だが・・・しばらくすると風が吹き、霧は雲散霧消したのである。


「ノ・・ノア様、すみません! 私、攻撃魔法を覚えていないのです」


「だよね!」


ノアはすこし呆れた。


ただし・・・この霧の魔法"" ミストフィールド ""の操作は大変難しく・・・中級者向け!

それを短時間で使えるようになったコサミちゃんは・・・確かに天才!


とはいうものの、攻撃力がなかったため・・・気まずい雰囲気だ。



「仕方がないね! うちが手本を見せてあげる!」


ノアは腕まくりをして・・・小さい力こぶを作って見せる。

だけど、あまり迫力はない! それどころか少し可愛い。


--- 細うで魔導師 見参 ---


それを見て・・・シルンちゃんは手を叩き、はやし立てた。

『 真打ち登場っす! 』




ノアは・・コサミちゃんの手にしている魔法の杖(ブラッディ・マリー)を受け取ると・・両手で握り閉めた。


「いいね! ちゃんと見ておくのよ! 戦いとは・・・気合なのです」


片手で杖を一振りし・・・なにやらポーズをつけた後、ノアは一直線に走りだした。

・・・そして、大きくジャンプ!


もちろん、身体強化をしている。

ターゲットは チョココーティングによって身動きができないマンティコアだ!



身体強化による腕力と・・・やたらと丈夫な魔法の杖(ブラッディ・マリー)があわさると、

凄まじい破壊力を醸し出す。


ノアの大好きな撲殺の始まりであった。


ドサッ グサッ グゥォぉおぉぉ ぐぅああぁぁぁあ グゥァ


「きゃはははっははは」


一撃! 一撃! 

動けないマンティコアに対して・・・丈夫なだけの撲殺用魔法杖(ブラッディ・マリー)が勢いよく振り下ろされる。


ノアの目は邪悪となっていた・・・黒い魔導ドレスが血に染まる。

血と肉と・・・なにかの液体が 振り下ろされるたびに舞い散っていくのだ。


ノアの雄叫び・・・泣き叫び絶叫するマンティコア!・・・そして、粉砕されていく骨の音

もはやノアは蛮族! ・・・ノア・ザ・バーバリアン


そこは・・モザイクが必要なぐらいの地獄絵図となっていた!



そのあまりの光景、残酷な惨状に・・血の気を失い倒れてしまうコサミちゃん。

薄れ行く意識の中で、彼女は僅かにつぶやいた。

「 こんなの・・・魔導師の戦いじゃない 」




しばらくのち・・逃げ去っていた村人たちが戻って来た.


そして・・見た! 村人たちは見た!

その凄まじい光景を見た!


かつてマンティコアだったなにかの塊・・・血塗られた地面・・・血塗られた少女の虚ろな目・・・

巨大な肉塊の上で・・・仁王立ちする少女の影が不気味に地面を覆う



彼ら村人たちは叫んだという。

「悪魔だ・・・悪魔の子がここにいる!」


村人の何人かは・・腰を抜かして再び逃げ去り、泣き叫び・・・子供たちにトラウマを植え付けていく。


やはりノアは・・・・悪の支配者、邪神の使徒・・宇宙大将軍だったのか!?






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)

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