弟子志願者到来!
ノアは走った。
後ろから追跡してくるのは・・・あの少女だ。
彼女の目つきはますます悪くなり、邪悪な邪眼と化してノアに迫ってきた。
しかも・・溢れ出す魔力は黒く染まり・・その姿、まさに魔王のごとく・・・
ノアの背中に冷たい汗が流れる。
ついでに、シルンちゃんも恐怖に震えていた。
この少女・・・魔法が使えないにもかかわらず・・・この波動! 威圧をかけてくる!
しかも無意識でだ!
間違いなく魔導師の素質、いや! 能力はピカ一!
うちのようなバッタものの魔導師ではなく・・間違いなく彼女は本物なのだ!
だが・・・バタン!という鈍い音ともに あれだけ強力だった威圧が突然に消えた。
んっん!? どうなった!? ノアは後ろを振り向く。
すると、彼女は顔からスライディングをしていた。
それは実に豪快なものだった。地面に頭から突っ込み、逆立ち状態で気絶!
うっ、痛そう
まるでどこかの殺人事件のようだ。
あっ! パンツも丸見え!
彼女は魔力があっても運動神経は鈍そう・・しかも、ドジっ子の資質もあり!
というか・・・これは大変! 大怪我をしてそうだ!
ノアはすぐに駆け付け・・・地面に、めり込んだ少女の頭を引っこ抜いた。
彼女の顔は泥だらけ! 髪の毛は砂だらけ!
しかし、幸いなことに怪我はなかった。
それはおそらくチョコを食べたおかげ・・・身体強化によって体が丈夫になっていたのであろう。
ただし、そのチョコの身体強化が原因で 速度を出し過ぎて転び・・その結果、パンツ丸出しの姿になってしまったのだ!
おそるべし・・チョコザイナ魔法!
「あらあら、大丈夫!? 大丈夫ですか?」
・・・・と声をかけたが返事がない。ただの屍ではなく、いまだに気絶をしているようだ。
ノアは邪神様からもらったアイテムの一つ・・・気づけ薬を飲ませると、その少女はおもっきり口から液体を噴き出した。
「もう・・・なんか汚い!」
ノアは・・後ずさった!
その少女は目を覚ました。どうやら・・・現状を把握していないらしい。
目をパチクリ・・・付近を見渡す。
そして・・・やっと認識したのか、地面に座り込んだまま・・・ノアに懇願してきた。
「私・・・コサミというのです。先生の弟子にしてください!」
やっぱし・・・きたぁぁ~! ノアは心の中で叫んだ。
弟子は無理!無理! 魔法なんて・・どうやって教えたらいいの!?
いや! その前に親御さんの許可が必要だろ。
そういう理由で断ろう!なんて考えていたら・・・
「私は天涯孤独、家族にうれいはありません! 先生のためなら、どこまでもついていきます!」
「そ・・それは・・・」
「私は・・父のような魔導師になりたいのです」
なんてことだ! しかも亡き父ときたか!
断りにくいではないか!
しかも・・彼女には完璧なほどの資質を持っている!
魔導師になるために生まれてきたのではないかと思うほどに・・・
ノアは物凄く困惑・・・目線をさまよわしていると、肩に乗っているシルンちゃんが とんでもないことを言い放った。
『 ノア様は忙しいっす! ので・・・わっちが教えてもいいっすよ 』
その言葉に少女コサミは ドキリ!・・・そして、うろたえた。
そう!・・・ドラゴンが人の言葉を喋ったという事に驚いたのである。
「えっ?! えっ!? ドラゴン・・・さんが!?」
『 わっちはシルン・・・そうすっね! 魔法の国からきた偉いドラゴンっすよ! 』
ここでシルンちゃんは とんでもハッタリをかましてきた!
魔法の国!? なんだその分けわからん国の設定は・・・おいおい、大丈夫なのか!? ノアは心の中で突っ込んだ。
『 ここから遥か東にある愛と魔法の国・・・ランダーラ! 遥かなるランダーラ! 様々な魔法を研究している究極の魔法王国・・わっちはそのランダーラからやってきたっす・・・ 』
シルンちゃんのハッタリ話に耳を傾ける少女コサミ・・・完全に信じている。
そして・・・ノアは呆れていた。
"" こんな詐欺師に騙されたら・・ダメよ ""などと心の中で叫んだ。
「お・・おねがいします! ドラゴンさんのすごい魔法を どうか私に教えてください」
偉そうに腰に羽の手を当てるシルンちゃんに対して コサミは懇願した。
おでこを地面にこすりつけるほど懇願した!
必死すぎて・・・ノアは引き気味。
いや! それほど魔導師になりたいのか! あれだけの素質があれば魔導師になりたいのも納得できる!
しかも・・父のような魔導師という願望!
『 いいっすよ、ただし! わっちを師匠と呼ぶことっす! そして、このお方っす・・ノア様は貴きお方、ノア様に永遠の忠誠を・・・ 』
シルンちゃんのその問いに・・コサミは即決で返答した。
「はい!もちろんです」
おいおい・・・大丈夫なのか!? 軽々しく忠誠を誓っていいのか!?
コサミの後先考えない・・いや!、なりふり構わない・・ただ前進するのみの姿勢にノアは困惑した。
日の光がサンサンと降り注ぎ・・晴々とした顔つきとなるコサミ。
魔導師になるという希望が叶うかもしれないのだ!
そんな彼女にシルンちゃんは・・こちらに来るようにと小さい手を振った。
『 それでは・・・コサミ君! わっちについてくるっす・・いい所に案内するっす! 』
・・・という発言にノアは・・しばし沈黙、そしてどん引きした!
まさに、変質者が言葉たくみに少女を誘拐する犯罪シーンそのままではないか!
しかも、そのシルンちゃんの言葉に誘われて・・・少女コサミもノコノコとついていく。
おいおい、いいのか!? 知らないドラゴンに連れ去られてしまうかもよ!
なんて思ったけど・・・シルンちゃんはそんなことしないよね! 多分(~_~;)
「それで・・・シルンちゃん、この子・・コサミちゃんをどこへつれていくの!?」
『 ういっす! キヨウラの邸宅っす! あの屋敷の図書館に魔術書があったっすよ! 』
「図書館か~! それなら・・・うちらが教えなくても勉強はできるわね! 」
『 とりあえず・・・魔術本で自習したもらうっす! 』
「それ・・・弟子を取るとか、とは違う意味になるけど・・・・まぁ、どちらにしろ、この子のためになるよね!」
『 それにっすよ! コサミンは・・魔導師としての素質はピカ一っす! きっと立派な魔導師になってノア様の役に立つっすよ! 』
「そうよね! 忠誠を誓ったのなら・・・うちの手下に! いや部下、えっと・・家臣の育成よね! うん、うちも、一応・・公国の黒幕だもんねw」
シルンちゃんは鋭い目つきでニヤリと笑う。
ついでにノアも口元がゆるむ。
「うっふふふ、そちも悪じゃの~」『 うっふふふ、ノア様ほどではないっす 』
毒々しく怪しい声、悪代官と越後屋の会話に・・・申し訳なさそうにコサミが発言してきた。
「す・・すみません、私、文字が読めないので・・・」
ノアとシルンちゃんは・・コサミを見た!
「そ・・・そこからか~!!」
この世界の識字率は低い・・・もちろん一般庶民のコサミは文字が読めなかったのである。
魔導師になる前に・・・文字を覚える必要があった。
「こ・・・これは、ちょっと大変そうだけど・・・文字なら、うちでも教えられそう?!」
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なし崩しなのか・・・成り行き上、コサミを弟子にしてしまった。
ただし、弟子にしたのはシルンちゃんであって・・・うちではない!
とりあえず・・ノアは責任放棄である。
シルンちゃんの考えによれば、この少女コサミを図書館に放り込み、
放置で自習させるだけのつもりだった・・のだが、どうやら文字が読めないらしい
あれ!? 父親が魔導師なら・・・ある程度の教育レベルがあるのでは?
文字ぐらい読めるのじゃないの!?と思ったのだが・・・
よくよく話を聞けば、その父親は流しの魔導師・・・
しかも父親自身、文字が読めなかったらしい。
文字が読めないのに魔導師!?
あり得ないのだが・・前例がないわけでわない。
・・・・おそらく、才能のゴリ押しで魔法を行使したのかもしれない。
この話が本当なら・・・コサミの父親はかなりの能力者、
コサミの魔導能力は父親ゆずりかもしれない。
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キヨウラ公爵邸内に存在する図書館、戦災にさらされたため みごとに真っ黒く焼けただれていた。
一見すると・・・廃墟?ゴミ屋敷、だけど図書館なのです(たぶん)
「これって・・・・えっと、書籍とか大丈夫なの?! 焼けて読めないかも!?」
ノアは不安げにたずねると・・シルンちゃんはバタバタと羽ばたきだした。
『 確認するっす! 』
シルンちゃんはウロウロ探す。
そこは廃材だらけ・・・廃材をより分けより分け書籍を発掘・・・
・・魔導消火機能がうまく作動したおかげなのか、半分の書籍は残っていた。
ちょっと・・焦げているけどw
そんな廃墟図書館、ゴミ屋敷もどきの場所に・・・コサミをつれてノアたちはやって来たのだが・・
一応、ここはキヨウラ公爵邸内なのである。
そんなわけで・・あまりにも身分違いすぎるゆえに コサミは大変驚き・・・恐縮してしまっていた。
「えっ!? えっ!? ノア様は・・・本当に貴きお方なのですね。こ、これは失礼しました。私のような者を・・」
今更ではあるが・・・コサミは恐縮してしまいしどろもどろになってしまっていた。
外観の見た目が・・・黒い魔導服を着ているノアを・・・コサミはすっかり一般人だと思い込み、
まさかの元王女、またはキヨウラ公国の重鎮などとは考えはしなかったのだろう。
または・・・亡き父親のような流しの魔導師だと思ったのかもしれない。
そんなコサミに対して・・・シルンちゃんは勝ち誇ったようにドヤ顔!
『 ノア様は このキヨウラ公国の影の支配者・・・暗黒のフィクサーなのっす! 』
「そ・・・そうなんですか! ノ・・ノア様、私のようなものを・・・」
コサミは顔を青くして・・・信じ切っている。
「シルンちゃん! 嘘はいけないよ! 影の支配者って何!? 暗黒って何!? うち・・・そんな怪しいことしてないよ!」
ノアは即座に否定するのだが・・・コサミはおもっきり怯えていた。
「えっと・・・コサミちゃんは魔導の素質があるのよね・・そんなわけで いずれうちの家臣となるために ここで精進してほしい」
この発言に対して、コサミは・・しどろもどろ、声を震わしていた。
「は・・・はい! が・・頑張ります! ・・・ですが私、本が読めません」
「そうだね! それは・・・うちが教えるしかないのね!」
ここから始まるノアの個人レッスン!
シルンちゃんは焼け残っていた書籍の中を探しまくり・・・一つの魔術本を引っ張りだしてきた。
それは・・・水系統の魔術本であった。
この本を・・・参考にして、ノアはコサミに文字と魔術を教えることになったのだが・・・
「あれ!? これってうちも・・・魔術の勉強になるのよね!」
コサミに文字を教え、魔術の勉強になるとともに ノア本人の魔術勉強にもなったのである。
コーヒー魔法やチョコ魔法とかいう・・・ちょっとアレな魔法しか取得していないノアにとって・・・
水系統などの一般的魔術は・・・実に新鮮であった。
ただし・・・邪神様から貰った特殊な魔術本ではないので、本を開くだけで取得できるという手抜きな機能はもちろんない!
本の内容を理解し・・・実戦でも使えるように訓練しないといけないのである。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)