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なし崩しに・・・建国



代官屋敷・・・元々はキヨウラ公爵邸だったのだが、その屋根上に追い込まれていた代官バルンド、

そして その代官を守るがごとく立ちふさがる護衛二人が・・イジャルと対峙していた。


この二人の護衛兵はかなりの強敵!


ノアによって身体強化され・・一匹で数人の兵士と戦うことが出来る無敵な猿たちを、

彼らの剣技によって次々と倒されてしまっていたのである。



実に恐るべき護衛兵、その名はエル・ラッドとエル・ルッツ。

彼らは剣の達人、高名な剣士一族、エル家の兄弟!



そんな剣の名族とイジャルは対峙していた。

互いに睨み合い。時間が流れる。



「おい! ガキの一人に何をしているのだ。さっさと切り捨てろ」


代官バルンドはイラつくように叫ぶ!

もちろん、代官に言われずとも・・エル兄弟は切迫する危機を認識していた。


目前の少年・・・彼はたいへん厄介な存在!

しかも・・・頭上では、空飛ぶ箒に乗った謎の少女が 今にも魔法を撃とうとしていた。


それに屋根下から・・包囲するかのように猿たちが迫ってきている。



やるしかない!

まずは目の前の敵! この少年を即座に倒さなければ・・・後がないのだ。

いや! すでに後さえないかもしれない。

 


二人の護衛兵、エル兄弟は互いに目配せした。

まさにアウンの呼吸・・・そして、二振りの剣先がイジャルに迫る。


「ぐうぅぅ」



-- -- -- -- -- -- -- -- -- --


その時、ノアは目撃した!

二つの剣がイジェルの身体を貫く光景を・・・・


いや! それは幻覚・・・残像だ。

残像を残すほどの速さで・・イジャルは身体をひねり エル兄弟たちの横腹に回り込む。


だがエル兄弟は動じない。脅威の動体視力でイジャルの動きを掴んでいたのだ。

彼らは即座に姿勢を変え・・・第二撃の剣を放つ。だが遅い!

それよりも素早く、イジャルの剣は雷撃のごとく空気を切り裂く。


二人の兄弟は重心を後ろにずらしバックステップで避けようとした。

しかし、間にあわない! 兄のラッドが倒れる。だが弟のルッツは相手の懐に走り込んだ!

まだだ! 負けてはいない! 兄の分を含めて最後の一撃をくらわすのだ!


鋭い金属音! 剣は火花を散らす。

イジャルは相手の動きを読み取り一撃を受け止めた。

そして、わずかに半歩、下がったところへ剣を下から上へと切り返す!



飛びちる鮮血! 叫び声はない! 静寂が支配した!




そこに立っている者は少年だけだった。


二人の護衛兵、エル兄弟はイジャルの足元で倒れている。



ノアは・・・その結果に安堵した。イジャルは無事だったのだ。

エル兄弟は強敵だったが・・・イジャルはチョコザイナの魔法で身体強化していた。

それが勝利の決め手だったのだろう。



・・・・だが、ここで全てが終わったわけではない。最後の仕事が残っていた。



「待て! 助けてくれ! 金ならいくらでも払う」

悪代官が何か叫んでいるのだが・・・イジャルは遠慮なく一刀両断でぶった斬った。


イジャルの手で・・・この地の代官を切った。

そう! 彼の手でこの地を取り返したのだ。


「キヨウラ・ノン・イジャル 敵将を討ち取ったなり」


彼は代官の首級を剣先に刺し・・・高く掲げた。

すると、ソン・ゴクンをはじめとした猿たちも一斉に拳を振り上げ叫ぶ。


「「うぉぉぉー! うぉぉぉー! キヨウラ万歳! キヨウラ万歳!」」


もちろん、ノアもイジャルに向かって片手を挙げて敬意を表す。

イジャルはノアを見つめて微笑んだ。彼女のおかげで・・この勝利を手にしたからだ!




代官屋敷は・・・イジャル率いるキヨウラ解放戦線(仮名)の手におちた。

そして、残りの残存敵兵は逃げるか、討たれるかした。


そう! イジャルはこのキヨウラ領を奪還したのだ!

これで一つの目標は達成された。


しかし、彼らの戦いはまだ終わっていない。次なる試練が続く。


「王国は必ず、我らに討伐軍を送ってくるだろう」


屋根上から かつてのキヨウラ領だった水田地帯を眺めながらイジャルは呟く。


「ならば・・・先手を討つのがよろしいかと・・・」

猿たちのボス、ソン・ゴクンは片手で持つ如意棒の先端を王都ルヴァの方向に向けた。


攻撃される前に・・相手側を攻撃する!

この地を守りたいのなら 隣接する地域を占領し・・その地を防波堤にするのだ。


攻撃こそ最大の防御・・・・実に好戦的思想!

ソン・ゴクンはイジャルにさらなる攻撃、領土の拡大を提案した。



イジャルは、しばし考える。

彼の目的は復讐・・エルドラート王太子を廃太子(抹殺)させ・・王国の統治制度を改める。

決して反旗を翻すつもりではなかったのである。

目的はあくまでも・・王太子の処刑、父母の復讐・・



だが・・そこへ、ノアの何気ない一言が入って来た。ただの思い付きの一言である。


「攻撃するのでしょ・・・それならいっそう独立したら?! 独立国家として攻め込む。独立戦争ですよ!」


すると・・・周囲を旋回していたシルンちゃんがノアの肩にとまり、小さい拳をあげた。


『  歴史が動くっす! 決起するっす! 独立っす! 独立っす!  』


ノアは・・シルンちゃんの発言を聞いて・・うんうんと頷いた。


「ということは・・キヨウラ公国ですよね! 建国万歳!」


『  建国万歳っす! 建国万歳っす! 』



そんな、ノアとシルンちゃんのやり取りを聞いていた・・他の猿たちも なんとなくつられ、その気になってきた。


「「独立! 独立!キヨウラ公国! キヨウラ公国!」」


ついでにノアもシルンちゃんも・・声を合わせて・・・


「独立! 独立!」『 独立! 独立! 』


完全に大合唱状態となっていた。


そう! イジャルの思考をよそに いつのまにか独立へと気運が膨らんでいったのであった。


そして、ついに・・・ボス猿、ソン・ゴクンの決定的発言をかぶせてきたのである。


「イジャル様、即位おめでとうございます! キヨウラ公国万歳! イジャル公王万歳」


すると猿たちが一斉に拍手した。

もちろん、ノアも拍手する。

お祝いムード満載! 「「おめでとう! おめでとう! キヨウラ公国万歳 独立万歳」」



イジャルは戸惑う。

本人の承諾もなしに建国、ついでに公王にさせられていた。

「ちょっと待て・・・僕は何も・・・」


だが・・・イジャルの声は届かない。

引き続き・・・「独立! 独立! キヨウラ公国万歳」の大合唱が鳴り響いていた。

ノアやシルンちゃん、猿たちが大声で連呼し続ける。



かなりの騒ぎになり始めて来た。

こうなったら・・・何かの祝いをしなければならないと考えたシルンちゃんは・・・わずかに小さい炎を口から吐きだした。


すると・・・何かが赤く輝き、上空へと飛び上がった。幻影魔法が発動したのである!


ズドォォォーン


キヨウラ公国の建国を祝う花火・・・これは幻影魔法だが、空に赤・白・青の色とりどりの巨大花が咲く!

しかも・・・その花火の周囲を数匹の巨大ドラゴンたちが旋回し始めたのだ。


もちろん・・・このドラゴンも幻影魔法である。


そんなドラゴンたちは・・・空を駆け走り飛行機雲によって キヨウラ家の家紋を青空一杯に描いた。

ついでに・・"" キヨウラ公国建国祭 ""の文字も書き加えた!




この空の光景を見て、周囲の住民たち、キヨウラの民たちは歓喜にわく。

悪代官は倒されたのだ! しかも王国から独立をする!


あの善政を敷いたキヨウラ家が帰ってきたのだ!



「これはきっとイジャル様だ!イジャル様がやってくれたに違いない!」

「代官を誅し・・正義をとりもどしてくれたのだ!」


住民たちの声が領内に響いた。

人々は大騒ぎ! 祭りの様相となる。




もはやなし崩し・・・ノアの何気ない一言によって始まったキヨウラ公国

イジャルの思案など無視して・・・独立国へと話が進んでいく。


「なんでやねん! どうして独立の話に!? 僕は了承していないぞ! ちょっと待て・・話せば分かる!」


彼は叫んだが・・・もはや独立は規定路線!

だれも話を聞いてくれない。耳も貸さない!

ノアも猿たちも大声で連呼しまくるばかり・・



しかも・・・独立祝いの花火まで打ち上がっていた。

その上、幻影魔法とはいえ、ドラゴンまでが・・空を覆って祝いをしたということで・・・

このキヨウラ公国はドラゴンに愛された国という認識が・・・住民たちに植えつけられたのである。



--- ドラゴンに愛された国・・・キヨウラ公国! ----






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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