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とあるVRプレイヤーの邪神体験


俺は目を疑った。

自分の姿が女性になっていた。しかもビキニ姿! パレオも巻き付けている(夏バージョン)

おまけにスタイル抜群! 顔も美しい。そして 刺激的な姿だ。


あの少年は・・・口を開けたまま・・・俺を見ている。


「ち・・! ちがう! これは宴会芸用の女装魔法なんだ 容姿設定を間違ってしまったのだ」


俺は慌てて・・・言いわけ・・・・・いや! まぁ、いいか!

この姿になったんだ・・・この姿で通すのも悪くないだろう!


それに・・・よくよく考えると、元の美青年と今の女性姿、顔と見た目がほぼ同じなんだ。

胸が出ているか出ていないか・・・ビキニなのか、魔導師姿なのかの程度しか違いがない。

ゲーム中でもよく性別を間違われたからなぁぁぁ


ちなみにリアルな姿を反映してるわけではありません(残念でしたw)




一方・・・あの少年は戸惑い混乱しているのであろう。


邪神のような邪悪な怪物が現れたと思ったら・・・美しい!?女性に変身、しかもビキニ! 

おそらく・・・頭の中は ??(クレッションマーク)で一杯になってるはず!

少年の不安気な様子が 顔を見ただけで読み取れてしまう。



どうしょうかな!? 何かを食べさせて餌付けしたら落ち着くかな!?

いやいや! 手っ取り早く魔法を使うべきだね・・・


「フィーリング、心に安寧を・・・!」


俺の呪文によって・・・少年の身体が青白く輝く・・・


少年の顔色が良くなってきた。

・・・すこし、落ち着いてきたかな!?

そのかわり・・・なにやら俺の姿・・・とくに胸あたりを見つめてきているのだ。


や・・やっぱし・・・この姿・・エロかったか!?

うん! ビキニだもんなぁ・・・しかもけっこうきわどい! 刺激的過ぎたかも・・・!?


あっはは・・・! 少年にとっては・・・目の毒だね~


俺は心の中で苦笑した。

まぁ あれだ・・・うん! 気を取り直して・・・少年に話しかけてみよう!


「俺の名は・・・明石、いや! コーヒーチョコケーキだ。世界の謎を求め旅をしている陰陽師さ・・・

それじゃあ、君は名はなんていうのかな!?」


こんなとこでリアルな名前を語る必要がないので・・ゲーム内での名前を言ってみた。

名前はちょっと・・・あれだけどご愛敬でおねがいします。

 


だが・・・少年はそんなことなど気にもしていない。

それどころか・・涙目となり震えている。そして やっとボソリと話した。


「う・・うち、名前を思い出せない。何も思いだせない」


「えっ! 」

俺は驚きの顔になってしまった。


少年は・・・うずくまり、なんとか思い出そうとしているけど、無理そうである。

そこで俺はいくつかの質問をしてみた。



「えっとじゃ・・・生贄になってしまったことは覚えているかい!?」


この問いに対して・・・少年は首を横に振る。


「ナイフで刺されたことは覚えているかい!? 」


それも同じく首を振る。

生贄にされていたこと・・・殺されていたことも・・・全て忘れているのであった。

あれは・・・残酷で生々しすぎるので 忘れてた方がいいのかもしれないが・・・

・・・これはちょっと困ったぞ!



まさか・・・この記憶喪失の原因が蘇生魔法の影響じゃないよね!!

う~ん! 俺はちょっと戸惑う・・・だが、あわてない!あわてない!


邪神にまでなった俺に不可能はないのだ!

そうだ! ステータス魔法で調べればいい。

自分の能力や状況が分かる情報系魔法。


俺は・・・ゲーム内で手に入れた魔術書をイベントリボックスに入れておいたのだ。

それを取りだし少年に手渡した。

少年から見ると・・・俺の手に いきなり本が現れたように見えたのかもしれない。

ちょっと・・・驚いた顔になっている。


「余りものなので・・その魔術本をあげるよ! 遠慮なく使って・・」


「ありがとう・・でも、うち・・・こんな文字、見たことないのだけど、外国語かな!?」


俺はその時 ハッと気づいたのである。

ゲーム感覚で考えていたからであった。


ゲーム内では 本を開けばすぐに内容を理解でき・・・一瞬にして魔法スキルが手に入る。

だが、この世界は・・・もはやゲーム世界ではない!

開けただけで理解したことになるとは限らないのだ。

まぁ・・・それでも、出来るかできないか・・・試してみるしかない。


「さぁさぁ・・・一度、本を開けてみて! うまくいけば読まなくても スキルを取得できるかもしれないよ」


そう言われた少年は怪訝そうな顔となりながら その本を開くと・・・ピカッ! 身体が光に包まれた。


「なにこれ!? えっ 何か知識のようなものが滝のように流れ込んでくる。うっ・・ちょっと気色わるい・・

でも・・・これ魔法よね!? うち・・魔法が・・・!?」


おっ・・・いいね!

ゲーム内の理が優先されたのか! これで上手くいきそうだ!

俺の口元がおもわずニッコリとなる。


「それはステータス魔法を取得できる魔術本なんだ・・・それで本人の状況を確認できる! さっそく使って見て」


「うん」


さきほど・・・不思議な力によって脳内に刻み込まれた魔法知識。

少年は・・その魔法を行使する。おそらく人生初めての魔法であろう。


不安と期待・・・少年はわずかに震える!


「ステータス開示」

少年から発せられた呪文によって 目の前にウインドが開かれた。

ただし このウインドは少年にしか見ることが出来ない。

そう・・・俺には見えないのだ! 残念・・・



-*---------------------------------------------*-


【名前】カイラーナ・ノン・コハヤシ・フィレノアーナ 


【種族】ヒューマン


【身分】王女


【職業】邪神の使徒、見習い魔導師 Lv1


【年齢】14歳


【魔法スキル】

ステータス魔法 Lv1


-*---------------------------------------------*-



しばしの沈黙。そして 困惑気味に少年は言葉を発した。


「う・・うち、王女様って書かれている!?・・・しかも邪神の使徒・・・えっ!? えっ!?」


少年が口にした言葉によって 俺は驚き戸惑う。

王女!? 邪神!? 使徒!? どういうことだ?!

疑問を解決すべく・・俺は少年の姿をじっくり観察した。



た・・・たしかに、よく見ると、顔立ちは少年というより少女だ・・・しかも可愛い。

髪は少し長め・・淡いクリーム色できれいだ。

胸の膨らみがなかったから・・・少年だと思っていたのだが・・・

・・・これは うん! 少女だな!


あっ! いや! これは不味いぞ!

この少年・・・いや この少女の姿は半裸・・・胸がはだけている。


・・・目のやり場に困る・・・・というわけではないけどね!

膨らんでないし、先ほどまで少年と思ってたし・・・


いやいや!それよりもだ。

身分が王女というのも気になるし・・・邪神の使徒というのも気になる。


・・・ってか 邪神って俺のことだよなぁ!

ということは・・・俺の使徒か!?


何故に何故に!? もしかしてあれか!? なんてこったい!

俺の眉間にしわが寄る。


予測だが・・蘇生したのが原因かもしれない!? 蘇生したら・・使徒になるサービス特典つき・・・なんてね!


まぁ あれだ! 使徒になってしまったのだから仕方がない!

・・・というか使徒になったからといって・・何がどうなるのだ!?


よく分からないが・・・一応、俺の使徒第一号! ちょっと嬉しい!


良し! 色々とプレゼントしてあげようじゃないか! 

とくに服だ! 胸がないとはいえ・・・目の前の人物は少年じゃなく・・・少女なのだから!

 



一方、その少女は戸惑っていた。

「うちって・・邪神の使徒・・・しかも王女!? 全然・・記憶がない!

それに 出身地はどこ・・どこの国の王女なの!? それに名前が長い! 覚えられないよ!」


少女が見ているステータスには 出身国の情報がなかったのである。

それはまだ・・ステータスのレベルが低いためなのだ。


ここは頑張ってレベルを上げるしかない!


ちなみに・・この世界ではスキルレベル制など存在しない!

邪神の使徒になってしまったからだろうか?それとも、異世界ゲームの魔術本を使用したからだろうか?

彼女はこの世界の(ことわり)から外れ・・・異世界ゲームのルールに取り込まれてしまったのである。



そんな少女の困惑を横目に・・

俺はイベントリーボックス内にある不用アイテムを全て取り出し 少女の目の前に並べていった。

もちろん、これらは・・彼女にあげる使徒第一号祝いのプレゼント


余っていたり・・使わなくなったり・・または わけありだったりするアイテムの数々である。

売っても二束三文であるがゆえに・・・貯めこんでしまっていた。


その中には魔導師のドレスやローブ、杖や魔術本などなど・・・より取り見取り。

俺は少女の体に合いそうなドレスを選んで、彼女に手渡した。

少女は驚いたようにドレスを受け取り、俺に感謝の言葉をつぶやく。



そう・・・このドレス・・・うん! 宴会でよく着ていた女装用のドレスなんだ。

・・・あはっ! 俺が着まくっていたのだよね!

ちなみにこのドレスは・・よく見かけるダークグリーン色をした・・一般的魔導師専用ドレス・・・戦闘にもつかえるのだ!


まてよ! 目の前の少女が・・・半裸でも恥ずかしがらないのは・・・俺が女性だと思ってるせいかもしれない。

うん! 俺が男性ということは 内緒にしておこう。



その後、俺は少女に これら数々のアイテム知識や使い方、効果、注意点などを丁寧に教えていった。

少女は俺の話を真剣に聞き入れ、時々質問したり感想を言ったりしてくれる。


俺は少女の反応に嬉しくなって、話が止まらない。マニアックな"あれ"なことや こんなことまで話してしまった。

そんな風に話し込んでいるうちに、時間はどんどん過ぎていく。



そして・・・俺は現実世界での約束があったことを思い出した。

直ぐにログアウトしないと!



俺は少女の瞳に見つめられていた。

彼女は感謝と不安、寂しさがいり混じった表情をしている。


「俺・・そろそろ行かなきゃいけないんだ。・・二度と会えないかもしれないけど・・・うまく生き抜いてくれ」


「えっ! はい・・・ここまで世話をしてくれてありがとうございました この御恩は忘れません 」


「いいよ!いいよ! 忘れてくれ・・俺はこの世界の人間じゃないからなぁ」


「あっ やはり・・・邪神様だったのですね」


「んっ・・・バレてたの!? バレるよなぁ! そう俺は・・・邪神コーヒーチョコケーキ

この世界にコーヒーとチョコ・・・そしてケーキを伝えるために異世界から来たんだよ」

・・・などと、俺は適当な嘘をつく。


気分とのりですね。ゲームの世界では"邪神"になってるので まったくの嘘ではないはずw


「コーヒー!? チョコ!? すごいです! うちは使徒として 邪神様の教えを広めます・・」


「んっんっ!? そんなことしなくてもいいよ! 自分の好きなことだけを やればいいんだ」


「いえいえ うちは使徒として・・・」


「あっははははは・・・まぁ、君の気持ちが伝わったよ。ありがとうね」


少女との別れは・・・なごみ惜しいが・・・仕方がない!


・・・俺はVRヘッドセットの解除ボタンを押して・・・この世界からログアウトした。

そして・・・目の前にはいつもの日常、いつもの俺の部屋が広がっていた。


「不味い!不味い! 今日は大事な予定があったんだ」

気を取り直した俺は机のカバンをひったくるように掴み 外へと駆けだすのであった。



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