飛べない掃除機はただの白物家電
ドゥゥウォォォォォォ
ソニックブームをまき散らしながら・・・
木々や岩などを吹き飛ばし猛スピードで駆け抜ける超音速掃除機。
それが御存知! ノアが乗っている空飛ぶ箒・・"飛んじゃいますマーク2型" である。
ノアの周囲は重力制御フィールドによって守られていた。
そのため、突風で吹き飛ばされる心配もなく、慣性の法則も無効となっており、どんな急カーブ、急ターンも可能であった。
『 イージスロック完了す! 敵を確認! 迎撃弾放出 』
シルンちゃんの小さい手は、空中に映し出されたタッチパネルを 勢いよく連打すると同時に・・・
箒の尾から弾頭20発が撃ちだされた。
ズドォォォォ・・・・
その弾頭は曳光弾のように輝きを放ち・・一直線に突き進む!
ターゲットは、この箒に迫る20本の光の矢。そう! この弾頭は対・光の矢、迎撃弾なのだ。
『 たのむっす! 当てるっすよ! 』
シルンちゃんは迎撃弾に励ましの言葉を贈る!?
この一連の動作を・・・唖然とした顔で見ているノアは、はっきり言って、何をやってるのか理解できていない。
もはや・・・この戦いは、ファンタジーではなくSFになっていた。
レーダー用空中パネルを見守るシルンちゃん。
画面が赤く光ると同時に、箒の後方で炸裂する閃光・・・そして、遅れてやってくる爆音
ズドォォォオオンンッ
どうやら弾頭は・・・光の矢に命中したようだ。
『 よっしゃゃぁぁぁっす! 』
シルンちゃんは小さい手でガッツポーズをした。
ノアもその様子を見て うまく行けたのだと安心した直後、シルンちゃんが叫んだ。
『 ま・・まじっす! やべー 』
慌てるシルンちゃん、いったいなにが起きたの!?
状況を確かめる為、ノアは後方を振り向いた。
空を焼き尽くすほどの炎と煙・・・その中から20本の矢が飛び出し・・・こちらへと向かってきていたのだ。
迎撃弾頭はたしかに命中した! 爆発した!・・・だが、光の矢を撃ち落とすことが出来なかったのである。
この時点で・・シルンちゃん、そしてノアは・・・この光の矢の恐ろしさを認識した!
迎撃弾を命中させても・・はじき返されてしまい突き進む謎の物体・光の矢!
誰によって仕掛けられたのか・・知らないが、あんなものが命中すれば・・・間違いなく死ねる!
そうとうヤバイものに違いない!
『 だ・・大丈夫っす、す! ま、まだ打つ手はたくさん・・の、残っているっす!』
言い聞かせるように発言するシルンちゃん、でも声は震えていた。
ノアは不安そうに見つめたが・・何もしてあげることができない。
ただ・・・傍観するしかできなかったのであった。
-*- - - - - - *-
20本の光の矢は・・・迎撃弾頭を払いのけ、何もなかったかのごとく箒に向かって突き進む。
これぞ、呪術・光陰の魔矢!
物理法則など全て無効に出来るのだ。
迎撃弾頭が命中しても・・痛くも痒くもない!
そのような光の矢、20本に狙われる空飛ぶ箒は マッハを超す速度で地面スレスレ、谷間を駆け抜けていく。
凄まじいソニックブームをまき散らし、周辺の木々や岩が左右へと飛び散る。
ズドォォォオオオォォォ
だが・・・そんな速度で駆け走っても・・・その光の矢は障害物などを避けながら、着実にこちらへと接近してきていた。
このままでは追い付かれてしまう!
シルンちゃんはパネルを操作し・・・次なる手をうった。
『 煙幕っす! 』
箒の尾から放出された白い煙は、長くたなびき・・・広範囲に広がっていく!
これで・・・敵の矢の視界を奪うことが出来るはずだ。
そう! たしかに箒の後方は白に染まった。
視界ゼロ! 光の矢が生物だったなら、戸惑い足を止めるはず!
・・・だが、彼らは!?
ドシュー―ン
重低音の風切り音が鳴り響くとともに・・・煙幕から飛び出す20本の矢!
・・・まったく通用していなかった。
『 ぐえっ!? え、煙幕が効かないっすか!? 』
叫ぶシルンちゃん、動揺しまくるが・・・すぐに次なる手を打つ。
『 つ、次はフレア・・放出っす! 』
箒の尾から・・・いくつかの炎弾が放たれる・・・だが弓矢の進路をかえることが出来ない。
『 デコイ放出っす 』
これまた・・・・無理でした! なにをしても逃れることが出来ない!
もはや・・・万策尽きた!?
シルンちゃんの顔が青くなる。次なる手が思いつかないのだ!
さすがに・・この状況、ノアでさえ、かなりヤバイ状況だと認識し始めた。
そこで・・・何とかしようと考えたノアは得意魔法の一つ・・・・チョココーティングを唱えてみた。
光の矢をチョコで塗り固めようというわけである!
「固まれ! チョココーティング 連続連打! ノアスペシャル!」
突然、空中に出現した黒き物体が、光の矢へと襲い掛かった・・・
そして、矢が放つ輝きが・・・次第にしぼんでいく。
そう、光の矢がチョコまみれになったのだ!
「いけたのか!?」
ノアはわずかに口元をゆるめた。だが・・・その光の矢は再び・・輝きを取り戻してしまった。
マッハの速度で駆け走る光の矢にチョココーティングは無理だったのだ!
風圧で・・チョコが飛び散ってしまったのである!
「あっあああ・・・」
だが・・・ノアは諦めない!
魔法はチョコだけではないのだ!
コーヒーバブルにコーヒーバブルボム・・・・
あらゆる魔法をこころみた!・・・
がんばった・・・うちはがんばった!・・・けど、光の矢を止めることが出来なかった。
そして・・・その光の矢の一本がまさに・・・目前と迫ってきている。
冷や汗、心臓の鼓動が鳴り響く・・
ノアは思わず頭を引っ込めたが・・・あまり意味がない。
「うわぁぁぁ シルンちゃん! 不味いよ、目の前!」
『 最終手段を使うっす! 』
シルンちゃんは・・・タッチパネルの一つ、" 緊急事態宣言 "のボタンを押した。
すると、アラートが鳴り響き、新たなる空中パネルが出現、次々と数値が羅列していく。
これによって強力な結界を形成する電磁シールドが発動したのである。
ただし・・この電磁シールドには膨大な電力が必要であり、充電量の半分以上を消費してしまうのだ
しかも持続時間はわずか1分
これを一度使用すると・・・二度目の使用ができない。
もし・・・二度目を使用した場合、この箒の電力は空となり墜落してしまうであろう。
箒の尾から噴出する目に見えない電磁の網・・・その網が箒の周りを取り巻いていく。
そして・・・青白く輝く球体が形成された。
もちろん・・・この球体の中にノアやシルンちゃんがいる。
そう! この青白い球体こそが結界、電磁シールドなのだ!
ノアは興味津々となった。
始めて見る・・結界!
青白く透明、キラキラと輝く、不思議に美しい
だが・・・そんな観賞をしている暇はない!
ついに光の矢が電磁シールドに接触したのだ。
ドウォォォォゴォォォォンンンンン
視界が真っ赤になり、炎が四方八方に広がった。
目が眩むほどの閃光!
なんという迫力! 身体が震え・・動けない。
それは・・まるで第二の太陽だ! そして・・・骨の髄まで響く轟音!
ノアは耳を塞ぐ、シルンちゃんも羽をつかって器用に耳を塞いでいた。
そう! 光の矢が爆発した。電磁シールドに接触して爆発したのだ。
もし・・・電磁シールドがなかったら・・・間違いなく爆死してたであろう。
各パネルから けたたましい警報がなる。
異常事態発生の警告音だ。
そして・・シルンちゃんは全身をこわばらせた。
『 不味いっす! 電磁シールドが消滅した~ 』
光の矢の爆発によって・・・電磁シールドが全てもっていかれたのである。
いまや・・・この空飛ぶ箒は無防備状態。
しかも、まだ光の矢が19本、迫ってきているのだ。
現在の電力量では・・・再び電磁シールドをかけることが出来ない。
そして・・・次なる矢が当たれば・・・
『 ノア様! 』
シルンちゃんは叫ぶようにノアの顔を見た。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)