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呪術書・光陰の魔矢


重厚なる鉄の扉。

その扉を開けると、石造りの壁に沿ってぐるりと曲がる螺旋階段。

その地下深くに降り立ち、薄暗い廊下の突き当り・・


そこに立つ人物は・・・癖のある黒髪が特徴としているこの国の王太子エルドラート

彼は・・人目をはばかりながら、この地にいた。




ここは王都ルヴァの王宮の地下・・・禁断の宝物庫である。

決して人目にさらされてはいけない危険な魔道具、呪物を保管しており・・・、

王族の中でも極一部にしか知らされていない・・まさに極秘中の極秘、王家の秘密が隠されている場所であった。



ギッギギギギ


不気味な音が、暗闇の地下に響き渡る。

王太子は頑丈な扉を開けた。いまいましいほど・・・重い。

この地にいるのは・・・王太子のみ、この宝物庫は極秘事項であり、側近であっても知られてはいけない。



暗闇に包まれた宝物庫に足を踏み入れる王太子、ライト魔法で付近を照らす。

目に入ってきたのは、ぼんやりと浮かぶ宝物の数々と、棚に並ぶ多くの書籍・・・

・・・おそらく禁断の魔術や秘密の歴史などが記されているに違いない。


なんたって、全ての書籍に閲覧厳禁の印が押されているのだから・・・ 

中身を見なくても・・・そのヤバさが分かってしまう。


王太子は・・・それらの書籍を一つ一つ探していった。

目的の書籍とは・・・呪殺! 呪いの書籍。

憎きフィレノアーナを呪い殺すのだ。


俺の体をバラバラにし、顔に傷をつけたこの恨み・・・はらしてやる!



王太子は・・いくつかの書籍の中から それらしき物を見つけ出した。

禍々しいほど赤く染められた書籍・・・見るだけで呪われそうだ。

しかも マル秘の印にドクロマーク、おまけに" 絶対閲覧厳禁 "と念を押したように書かれている。


間違いない・・・これだ!

閲覧厳禁の中でも・・・もっとも危険! 最上級の閲覧絶対禁止領域!


王太子は・・・恐る恐る、その書籍へと手を伸ばす・・・・



ズドォォォォォォングゥォォン




書籍から噴き出す炎、爆炎、暴風・・・直撃をくらった王太子は宙を舞い、そして床に叩きつけられた。


「ぐぅぅぅぅぅあぁぁぁ なんじゃこりゃゃゃぁぁ!」

王太子は叫び激昂! 元気よく立ち上がり、書籍棚に猛烈な蹴りを連発した。


ドンドンドン・・・怒りの八つ当たり!


どうやら、この書籍は目的とする呪殺書ではなく・・・・ブービートラップ本。

そう! 触れたら爆発する・・・まさに文字通りの" 絶対閲覧厳禁 "の書籍だったのだ!


「はぁはぁはぁはぁ・・・・なんて書籍だ! 書籍の分際で・・・爆発など!」



( このブービートラップ本は・・・書籍なのか、それとも爆発系魔導具なのか・・・判断が難しい所である。

一応、書籍が爆発するという珍しい宝物なのは間違いない!! )



息を切らす王太子・・一応、怪我はなかった。すこし腰を打った程度・・・

怒りはまだ残っているが・・・それでも呪いの書籍を探すべく宝物庫をさまよう。


ズドォォォォォン バコォォォ―――ン ドンドンドン


その後・・・数度の爆発と、王太子の八つ当たりキックをした後・・・やっと目的の書籍を見つけた。




"" 光陰の魔矢 ""


これだこれ! これこそ探し求めていた書籍。

呪いの矢を放ち・・・どんな遠くに逃げようとも 執拗に追跡しつづけ、最後には相手の身体を貫く呪いの書。


「ふっふふふ! フィレノアーナ! これで息の根を止めてやる」



書籍の内容は・・実に簡単だった。

掲載されている魔方陣を描き・・・対象となる人物の髪の毛と本名を書いた木札を添えて呪文を唱えるだけだ。


「ふっ、この程度でいいのか!」


フィレノアーナの髪の毛ぐらい・・・奴の自室に落ちているだろう。簡単に入手できる。

それに・・この程度の魔方陣など俺でも描ける。

呪文も魔力も俺の得意とするところ!!


「はっははは・・・」



王太子エルドラートは・・・さっそく実行することにした。



その翌日・・・

王宮のそのまた奥、王太子のプライベート空間にあたる中庭に赤く描かれた魔方陣があった。


我儘な王太子にもかかわらず・・・この魔方陣は、自分で描いたのである。

そう! この呪術は王家所有の禁書を元にして描かれているため・・・

側近とはいえども見せるわけにもいかず、描かせることもできなかったからだ。


「こ・・・この俺がここまでやったのだ! 必ず、あのフィレノアーナを・・・葬ってやる!」


準備は完了した。

奴の髪の毛も入手した。奴の本名を書いた木札もある。


「よし!」

王太子は・・・体をバラバラにされた恨み、顔の傷の仕返しをすべく・・・呪いの呪文を唱え始めた。


「 我の敵を打ち砕け! 破壊しろ! ドルドルドンルンド! 闇の化身、光の化身、我の願いを聞けドルドルドンルンド! ドルドルドルンド♪」



呪文というより、歌に近いが・・それでも王太子は熱唱した♪

近くに側近がいなかったのは幸いである!


「ドルドルドンルンド! ドルドルドルンド♪」



歌唱にあわせたかのように・・・中庭で描かれていた魔方陣が、ほのかに輝きだした。

いよいよ始まった術の発動! 王太子は成功を確信する。


その輝きは 徐々に明るくなっていく・・・

そして、ついに見ることが出来ないほど白く輝いたその時、

突如として・・・数十本の矢が放出され 上空へと飛び出した。


この矢こそ・・・この呪術の本幹、光の矢、魔矢である。


これらの矢は 白き雲をたなびかせ 地平線を横切るように上空へ・・・

憎きターゲット"フィレノアーナ"目指し虚空を飛ぶ。


「よしいけ! 成功だ!」


その光景を満足気な顔で王太子は見つめていた。






◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇




ノアは空飛ぶ箒に乗り、ゆったりとした気分で山間部を飛翔していく。

・・・青空を背景に山の峰々、眼下には緑色した木々の絨毯、実によい眺め!


空の旅は快適、ノアはこの空飛ぶ箒に大満足であった。


ちなみに・・この箒の正式の名前は・・・反重力掃除機" 飛んじゃいますマーク2型 "


邪神様がくれたアイテムの一つで、しかも安全、快適、運用のマル適の合格製品なのだ!

重力安定装置を搭載しているため、どんなに揺れてもノアが落ちる心配もないし・・・

オートパイロットであるため、操縦の必要もない・・寝ていても目的地につけるのである。


箒の上で羽を休ませているシルンちゃんは・・この空飛ぶ箒の実質的操縦士、

・・・小さい手でサムズアップ! 安全保障をアピールした。


「うん! うちはシルンちゃんを信じているよ!」

ノアは笑顔でシルンちゃんを優しく撫でた。二人は仲良く空の旅・・・・Enjoy sky voyage





朝日が昇り・・昼を過ぎた頃、空飛ぶ箒はいまだ山岳地帯を遊覧飛行、ゆっくりとした速度で進んでいたのである。

ノアは周囲の景色を楽しみつつ・・半分夢うつつ、うとうとした良い気分。


そんな最中・・突然、警報音が鳴り響き、周囲に幾つもの空中パネル(立体ディスプレイ)が開いた。

ノアは驚きに目がさめる・・・何事かと!?



ウインドには赤字で非情事態の文字が点滅、エマージェンシーアラートサイレンが鳴り響く。

ノアにはさっぱり訳が分からないが・・・シルンちゃんは、すぐさま小さい手でタッチパネルを叩き状況を確認した。


『 何かが多数接近してきてるっす・・・これは不味いっす! 』


「えっ!?」


シルンちゃんは レーダー用空中パネルを指さした。

そこには 多数表示される黒い点、しかも高速で接近してきている!

間違いなくこの空飛ぶ箒を狙ってきているのだ。


『 ノア様! これは敵っす。なにかわからないっすけど・・敵っす! 』


「ぬっ・・敵!?」


いきなりの事で頭の中が ??(クレッションマーク)のノアは理解不能状態なのだが・・・

シルンちゃんの方は・・的確に対処した。

航行システムパネルを素早く開き・・・全ての数値をマックス、全開出力にした。


『 逃げ切るっす!・・・この程度の敵、たいしたことないっす! 』



空飛ぶ箒が急速に加速し始めた・・・箒の尾から炎が噴き出す。アフターバーナー展開!

そして、一挙に降下し・・・山岳地帯の谷間を地面スレスレ、しかもマッハに迫る速度で駆け抜けた。


ズドドトォォォォォドドォォ


衝撃波が荒れ狂う! 木々が吹っ飛び、岩がはね飛ぶ。

この付近に人がいなかったのは不幸中の幸い・・・だが、その代わり、野良のオークたちが空へと転がっていく光景を見た。


凄まじい速度! 景色が吹っ飛んでいく! 

箒に乗っているノアの顔は真っ青となった。

「ふにゃ! ちょ・・・ちょ・・・とこれは・・すごい」


だが一方、シルンちゃんは平気のようだ。

いや! シルンちゃんはパネル操作に忙しくて・・・まわりの風景を見てる暇はない。



操縦士たるシルンちゃんは・・・厳密にいえば操縦してはいない。

というか・・・もはやこの速度で、手動操縦は不可能!

全てをオートパイロットに任せている。


マッハの速度で 地面スレスレを飛ばし、木々や岩を確実に避けて突っ走るのはもはや 人間技(シルンちゃん)で出来るものではない。


ちなみに・・・箒で横すわりしているノアには まったくといっていいほど慣性の法則を感じてはおらず・・・振り落とされるという心配はない。

この箒に搭載されている重力制御装置のおかげであった。





ノア達が乗る空飛ぶ箒に向かって・・・十数本の光の矢が飛翔していく。

しかも誘導機能付き・・・ターゲットを永遠に追跡していくのだ。


もちろん・・・この矢の出所は王太子エルドラート、

王宮内の宝物倉にあった禁断の呪術書によって放たれた"" 光陰の魔矢 ""なのである。


== 王太子の憎しみが矢に宿り・・・憎きフィレノアーナを罰せよ! ==



白い線を引き・・光の矢は、ノアに迫る。

空飛ぶ箒は・・・なんとか逃れようと、狭い谷間、岩石アーチなどを マッハの速度でくぐりぬけるが、決して光の矢はターゲットを逃さない。

確実に接近してきているのだ。 



『 ヤバイ! あれは誘導弾っす! しかも速い・・追いつかれ・・』


「にゃ、誘導弾ってなに!?」


『 あぶない兵器っす! こわい兵器っす! 』


・・・もはや、まともに答える余裕のないシルンちゃんは・・・すかさず新しいパネルを開き、防御システムを稼働させた。


『 イージスシステムを稼働っす! 情報処理オン、戦術データーリンクok、CICシステム作動確認、敵誘導弾をターゲットロック 』



空中パネルに次々と表示されるターゲットロックのマーク・・・その数は20にのぼった。

20発の光の矢に追跡されているのだ!







--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)





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