エアーウィッチ・空飛ぶノアちゃん
「ぜいぜいぜい、この街道はなんて恐ろしい街道なんだ!」
ノアは・・・あの少年愛を追求する団体たちに恐怖した。
シルンちゃんも・・・ノアの頭の上で震えている。
こ、こんな街道、危なすぎて歩けやしない!
だからといって、街道から外れてしまうと、魔獣や獣たちが襲ってくるかも・・・
あっ! そうだ!
困った時の神頼み・・邪神の神様からもらったあのアイテムがあったのだ!
しかも、空を飛べるアイテム!
そう! 空を飛んでいけば・・・街道でたむろするあんな連中を避けることが出来る。
ノアは・・時空ストレージ内を検索し・・・そのアイテムを取り出した。
それは箒! ノアの身長とほぼ同じ長さの箒なのだ。
・・これが俗に言う空飛ぶ箒である!
シルンちゃんはその箒の周囲を旋回していた。
『 これは・・反重力掃除機"飛んじゃいますマーク2型" っすね! これはまた・・なつかしっす! 』
どうやら・・・シルンちゃんはこの箒のことを知っているらしい。
ノアは・・・邪神様から聞いた話から さっそく箒にまたがり・・・いや! まてまて・・・
またがるのは、なんか嫌! 女として問題あり!
とりあえず・・・・横すわりすることにした。
ノアは箒の横についているボタンを押すと何やら軽快な音楽が流れる。
何だろ!? 何だろ!? と注目していると目前に空中ウィンドが表示されたのである。
そう! 空中に浮かぶ立体ディスプレイ、しかもタッチパネル方式、
ファンタジー世界なのに・・・ここだけSFなのだ!
""FUEL-EMPTY ソーラーにて充電中 しばらくお待ちください""
どうやら・・・この箒は、電力で動くらしい。ついでにいうと、反重力で飛ぶのである。
だが・・・この世界の住人であるノアには・・・何のことなのか サッパリわからない。
あまりにも未知の技術すぎたのだ。
すると横からシルンちゃんのアドバイスが入った。
『 これっすは・・・電気で動くらしいっす! 太陽の光で電力をつくってるっす すこし待つといいっすよ 』
さすが異世界アイテムのシルンちゃん・・・異世界技術の知識をもっていたのである。
だが・・・ノアには サッパリ理解不能!
「電気!? 太陽!? なにそれ!?」
頭を傾げてしまう。
とは言えども・・・箒に太陽の光を当てるらしいということぐらいは・・なんとか理解した。
「洗濯物を干すって感じなのかな!?」
ノアは片手に持っていた撲殺用魔法杖"ブラッディ・マリー"を時空ストレージへとしまい込み、そのかわりに
・・この空飛ぶ箒を 両手で持ちあげ、サンサンと降り注ぐ太陽へと捧げた。
「こんな感じでいいのかな」
ノアのその姿、まるで重量挙げ選手のごとく力強い・・・ただし、この杖は軽いのよね。
バーベルなどの重りはついておらず・・シルンちゃんが箒に止まり、羽を休ませているだけ・・・
そして・・・その姿のまま一時間が経つ。
ノアはわりと我慢強かった。
"ピコーン"の音がなると 空中にメッセージが浮かび上がった!!
"" 充填率100% ""
『 ノア様! これで飛べるっす! 』
「・・・やっと! 感激!」
ノアは・・はやる気持ちを抑え、深呼吸!
ゆっくりと・・・箒に腰かける。
どきどき! ワクワク!
ノアの目の前には空中メッセージが表示された。
行先入力から・・・高度入力・・・箒に乗せる荷物の量から 慣性制御数値などなど・・・
あらゆる項目が表示されたのだ。
ハッキリ言って・・・複雑な操作である。
旅客機のパイロットなみに手順や操作が必要だったのだ。
「うにゃ・・・わけがわからん!」
そう! この世界の住人であるノアには・・・もはや複雑すぎて 何をしていいのかわからなかったのだが・・・
・・・なんとその横で シルンちゃんは自分の羽を器用に使い 空中パネル操作をしていた。
異世界アイテムのシルンちゃんにとって・・この程度の異世界アイテムなど造作もないのだ。
「シ・・シルンちゃん・・・わかるの!?」
『 余裕っす! 』
得意げに答えるシルンちゃん!
「わぁ すごい! おねがいします」
ノアは・・ものすごく、シルンちゃんを尊敬した。仕事が出来るチビドラゴンだと再認識したのである。
『 高度入力は100mほどでいいっすね! 荷物量は多めに入力っす、慣性数値はマックスに・・・
天気予報を確認っす! パッシブレーダー作動、時空変動確認、ブレーキ解除、コールサインok、トランスポンダ作動、
テイクオフクリアランス、オールクリア』
シルンちゃんの発言が何を意味するのか・・・全然分からないのだが・・・たぶんこれでいいのだろう!
なんたって・・・現在、この空飛ぶ箒が離陸してしまっているのだから・・
ノアを乗せ・・・フワリと飛翔している。
空飛ぶ箒・・・それは異世界科学技術を結集したハイテクノロジー製品だったのである!
(ちなみに・・・この重力装置は、とある近海で墜落した某UFOの残骸から解析した・・・いや、それは国家機密w)
肩にのっているシルンちゃんがノアに話かけてくる。
『 これからどこに行くっすか、行先入力をする必要があるっす 』
さてさて・・・ノアは困った! これからどこへ行くべきか!?
森林地帯の空に 空飛ぶ箒が浮かぶ。
・・・やさしい風が肌にあたり、涼しく心地よい。
ちょっと怖いけど・・・眼下には青々とした森林地帯が広がり、兎や鹿が走っている。
遠くの方では、青い空と山の尾根が美しく連なり・・その向こうでは、キラキラと光る海が見える。
「海、きれいよね! お日様みたい」
『 海ッすか!? 海にいくっすか!? 』
「うん、海! いいよね・・・魚に貝殻、それに白い波」
シルンちゃんは首をふって頷き・・・空中パネルを操作した。
"" 行先は港町のある海岸線 ""
この・・・空飛ぶ箒にはオートパイロットシステムが組み込んでおり・・・安全に目的地まで運んでくれるのである。
ノアを乗せた空飛ぶ箒は・・・ゆっくりとした速度で、大空を飛翔した。
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一方、その真下・地上では、王太子エルドラートの勅命により・・・
諸侯を巻き込んだ大規模軍事作戦が発動されようとしていた。
しかもその数、8万!
対外戦争をおこなうほどの兵力を動員したのだ。
この作戦の目的は、逃亡王女フィレノアーナの討伐でもあると同時に住民反乱に備えるものでもあった。
ゲルンラン城伯が殺されたアルゲルンの暴動を発端とし・・・
周辺の町では住民たちの不穏な動きが発生していたのである。
役所への襲撃、略奪、放火などなど・・・時には要人の暗殺や誘拐、
小規模とはいえ、確実に広がりつつあった。
この地域の領主たちはゲルンラン城伯も含めて、まともな統治をしていない。
度を越した重税に不正、違法な人頭税に初夜税などによって住民たちを苦しめていたのだ。
そんな住民たちの不満が アルゲルンの暴動を切っ掛けとして爆発寸前の危険な状態となっていた。
しかも! オークたちによるスタンピートに加え・・・逃亡したフィレノアーナ王女の暗躍、
このままでは・・・国を揺るがす大規模反乱が発生しかねない!
その上、この地域は国境沿いでもあり・・他国の介入もありえる。
危険な芽は早めに摘み取らなければならない。
暴動を扇動する者たちを捕らえよ!
もちろん・・・その扇動の中心には・・・あの王女がいるに違いないのだ。
8万の兵力を投入し 全ての危険人物を叩き潰せ!
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)