スタンピード・オーク Vs 王国軍
ノアが入ったダンジョンは・・・初心者ダンジョンではなかった。
シルンの判断が間違っていたのである。
実は、このダンジョン・・・初心者ダンジョンと見せかけた罠ダンジョンだった!
そして・・初心者ハンターを引き込み・・・魔獣の餌にしてしまうのである。
( 食虫植物ならぬ・・・食人ダンジョン!? )
シルンでさえ・・まんまと騙されてしまっていた。
このダンジョンの本当のランクは初心者とは真逆・・エキスパートダンジョンであった。
超凶悪なダンジョンで・・・ベテランハンター向きだったのである。
一つ間違っていれば・・・ノアも餌食になっていた可能性もあった。
実に恐ろしい!
ノアは・・・とにかく逃走した!
恐るべきオーク軍団、見たところ・・・数千匹はいたであろう。
囲まれたりしたら いくら邪神様から貰った魔法があっても対処しきれない!
「ふにゃあっああぁあ」
人に聞かせられないような奇声を発しながら・・・森を超え山を越え・・ノアはひたすら逃げた。
あのオーク軍団たち! ダンジョンから出てきそうなぐらいの勢いで 追いかけてきているのだ!
いや! 実際・・・ダンジョンから出てきていたりする。
元来・・・ダンジョンから、これほどの魔獣は出てこないのだが・・・
ノアやシルンによって刺激され・・・興奮状態に陥ったオークたちが・・・そのままの勢いで、
外へと飛び出してきてしまったのである。
しかも、このオーク軍団! 勢いが余り過ぎて・・集団暴走を始めたのだ。
俗に言う・・・スタンピード、人々が行き来する街道方面に向かって、突き進みだした。
ノアのせいなのかな!? そう! ノアが引き金となって起きた・・・大災害!
「ちっ・・・ちがうもん、ダンジョンが悪いのよ!」・・その後、ノアはそう言いわけしたとかしないとか・・
-- -- -- -- -- -- -- -- -- --
ドッドドドド・・・ドッッドドド
遠くから砂煙が立ち上り、森全体が揺れ動く地響き。
そして、ウォォォッオオオッォオ
・・オークたちの雄叫びが空気を震わす!
街道を行き交う人々は・・すぐさま、その異常に気づいた。
魔獣が暴走している!
これは明らかにスタンピードだ!
危険信号! 緊急事態! 命の危険が迫る!
街道を旅する人たちは 全速力で走った。逃げた!
一刻もはやく・・・ここから離れるのだ。
親たちは 幼児を抱きかかえ、または、おぶって駆け走る。
荷馬車の御者は激しく鞭をうつ、馬の嘶き・・・そして、街道を行き来する人達の悲鳴!
荷馬車は横転しかねない勢いで街道を突っ走る。
いや! すでに何台かの荷馬車は横転してしまっていた。
街道は・・・無秩序な大混乱、誰もかれもが逃げ惑う。
だが・・・ここで このオークたちに立ちふさがる者たちがいた。
彼らは旅人たちの安全を守るために ここにやって来た!・・・・・わけではなく、
エルドラート王太子の勅命にて・・・反逆者であり爆弾魔、フィレノアーナ王女の討伐に来たカイラシャ王国軍であった。
ちなみに・・・フィレノアーナ王女とはノアのことである。
そう、ノアを捕縛、または抹殺を任務としてきた王国軍であった。
その数、2個師団12000名・・・王女を一人、討伐するのに1万以上の兵力を動かしたのである。
それだけ・・・王女は危険視されていた。
王太子の情報では・・・反乱軍を率いて、ゲルンラン城伯領を火の海にかえ、
その城伯を抹殺したことになっていたからである(誤情報)
その2個師団が 予定外の事態、オーク軍団と激突しようとしていた。
本来の命令・・・王太子の勅令に従い、王女捕縛を優先すべきなのだが・・
もはや・・現在の位置取りから考えると・・・このスタンピートから逃れられないと判断、
オークとの戦いを決意したのである。
-*- - - - - - *-
王国兵は盾を並べて・・・堅固な陣形を作った。
その後方から・・弓隊が雨のように矢を降らし、または魔導師隊による魔法攻撃を撃ち放つ、
そして、時には槍隊を全面に押し出すこともあった。
オークたちは怒りと狂気にかられ、王国兵に襲いかかったが、次々に倒されていった。
さすが王家直属の王国兵である。訓練された兵士たちを前にして・・オークの死体が山積みになっていた。
だが・・・暴走するオーク達は止まらない!
彼らは仲間の死も気にせず、ひたすら突進を繰り返す。
街道は・・・流れる血と肉片によって地獄と化していた。
オークたちの雄叫び、魔法の炸裂音、王国兵の叫び声が混ざりあい、空気を震わす。
戦闘は・・・王国軍側が有利となっていた。
オーク軍団の猛攻を防ぎきっている・・・だが! この時、異変が起きた。
一回りも大きなオーク・・・ある種、ボス的立場ともいえるオークが現れたのだ!
片手に巨大な太刀を携え、頭には日本風の兜をかぶっていた。
・・・そう、あのオーク、ノアの目前で名乗りの口上をあげた礼儀正しいあのオーク! オークライン( 30歳 )だったのだ!
「やぁやぁ 我こそは我こそは・・オーク業界のオークライン! ダンジョン第二層から参った強者なり・・・・」
しかし、王国兵は彼の口上に耳を貸さなかったばかりか・・・すかさず弓で攻撃した。
ノアのように・・礼儀や作法を守ることはしなかったのてある。
「なるほど・・・我の口上を邪魔するとは なんと無礼な! そのような奴らにはそれ相当な対処が必要だ!!」
そのオーク、すなわちオークラインは片手にもっている太刀を投げ捨てる。
唯一・・持っている武器を手放すという行為。
だが、これには別の理由があった。こんな太刀を使った戦いではなく・・本当の戦いをするために!!
オークラインは・・・静かに両手を合わせ、祈りのポーズをした!
すると・・・彼の身体中から赤い血が噴き出したのだ!
これぞ・・闘気! 戦いの本能! ある種の赤いオーラをまき散らし・・・オークラインは駆け走りだした!
ドッドドド・・ドッドド・・
それはまるで疾風! 砂煙が線を引く!
王国軍側の矢を全てはじき飛ばしているのだ・・・魔法攻撃さえも通用しない。
これは闘気! 闘気の力によって弾いているのだ!
オークラインは・・・闘気神拳の使い手!
人間など・・・敵ではない!
王国軍最前線を守る盾隊を拳一つで粉砕! 吹き飛んでいく盾兵達より早く・・・王国軍中央へと突進する。
とんでもないパワーだ!
立ちふさがる王国兵士たちを、ダース単位で踏み潰し・・・蹴とばし、宙を舞う!
「だめです! 隊長・・・防ぎきれません」
「馬鹿者! 諦めるな! なんとしても あのオークを止めるのだ」
「ぐぅああぁぁあああ」
「おい! 不味いぞ・・・や、やめろ!!」
王国兵の悲鳴にも似た叫び
誰も・・・このオークラインを止めることができない!
魔導士隊の大規模魔法、または集中攻撃でさえ無理だったのだ!
もちろん 弓隊や槍隊でも不可能!!
そのオーク、オークライン! 傍若無人に突き進むその姿!
まさに・・・呂布か項羽なのか! 三国志演義をリアルに再現している!
そして ついに・・・オークラインは王国軍本営を直撃した。
本営を守る直属騎士など・・・何の役にも立たない。
連打パンチの連打キック! 舞い上がる砂煙、空から降ってくる血と肉片・・・・
王国軍司令官の最後を目撃した者はいなかったのだが・・・おそらく戦死したのであろう。
この時点で・・王国軍の陣形は オークラインの単独突撃によって かき乱されバラバラとなってしまっていた。
まったく連携がとれていない・・・混乱状態である。
そこへ最後のとどめのごとく、他のオークたちが一斉に襲い掛かった。
王国軍の本営は消滅している。
指揮系統がばらばら・・・・兵士たちは右往左往する。
オークたちへの対処ができず・・各連隊が崩壊、士気は完全に失われた。
「ど・・どうすれば!?」「に・・・にげろ!」「うわぁぁぁぁ」
王国軍は総崩れとなり・・・兵士たちが逃げる。
だが・・・オーク軍団は彼らを逃がさない。
人間たちを一人残らず抹殺しようと オークたちは雄叫びをあげ追撃する。
グゥァガァァァァアアアッッッ
「た・・助けてくれ!」「いやだぁ!」
バタバタと倒れていく兵士たち・・・・いまや王国軍は逃げ惑う烏合の衆、オークたちの狩場と化していた。
そして・・・2時間後、2個師団12000名はオークたちの海に沈んだ。
全滅したのである。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
「なんだと! どういうことだ」
王宮の執務室で怒声が響き渡った。
エルドラート王太子は報告官の胸ぐらをつかみ上げ・・殴りたおした。
だが、その痛みに耐えて、報告官は冷静に続きの報告をする。
「で・・殿下、申し訳ありません。フィレノアーナを追跡していた2個師団が壊滅したとのことです。
敵の正体は不明ですが、フィレノアーナの仕業ではないかと思われます」
「2個師団もだと・・・! ぐっ 無能者どもめ! たかが女ひとりに・・・・いや! 奴は反乱軍を率いていたのだな!」
「はっ! フィレノアーナ率いる反乱軍は・・アルゲルン付近にて活動中とのこと、
しかも多くの魔獣どもを、手なずけ・・・町の略奪を繰り返しています」
「好き勝手に暴れやがって・・・この落とし前は必ずつけてやる!」
王太子は完全に勘違いしていた。
フィレノアーナ、すなわちノアは・・・反乱軍など率いてはいなかった。
ただし・・ノアによって引き起こされたスタンピートが原因で・・2個師団が壊滅したのである。
見方によればノアによってなされたと・・言えなくともない。
「必ず殺せ! 何が何でもフィレノアーナを抹殺するのだ! 近隣の諸侯にも伝達、如何なる手を使っても抹殺せよ」
「ぎょ、御意に」
報告官は・・すぐさま執務室から退室した。
また・・何かの理由で殴られたのでは・・たまらないからであった。
その後も・・・王太子の怒りは収まらない。 執務室の机を何度も何度も叩きつけたのである。
-*- - - - - - *-
ノアはチビドラゴン・シルンとともに山や森を駆け抜け・・・逃走していた。
一時間は走っただろうか・・・後ろを振り向くと、オークたちはいなかった。
とりあえず一安心、ほっと一息・・・ついでシルンちゃんをモフモフして 可愛さも堪能
「と・・・とんでもない目に遭ったよ! まさかダンジョンが・・・あんなに危険だったなんて!」
『 わっちもビックリしたっす。もう・・ダンジョンのお勧めはしないっす 』
「そ・・・そうだね! だけど、スキルは上がったみたいだよ」
ノアはステータスウインドを開き・・そして、驚いたというか、ツッコミを入れた
---- 【職業】邪神の使徒、魔導撲殺師 Lv5 ----
いつのまにか、職業欄が変更していた。
魔導撲殺師になっていたのだ!
見習い魔導師から 魔導撲殺師にジョブチェンジ!
「なんでやねん!」
なんという・・・外聞の悪い職業名か!
あ・・・あれか!? この魔法の杖を愛用していたからか!?
それに・・・楽しく楽しく、癖になるほど、撲殺しまくっていたからなぁぁぁ
ノアは丘の上に立ち・・・雲によってかすむ夕日を見た。
そして片手には魔法の杖、その先端で羽を休めるチビドラゴンのシルン。
・・・・魔導撲殺師ノアの華麗なる戦いがここから始まる。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)
-*---------------------------------------------*-
【名前】カイラーナ・ノン・コハヤシ・フィレノアーナ
【種族】ヒューマン
【身分】逃亡中の王女
【職業】邪神の使徒、魔導撲殺師 Lv5
【年齢】14歳
【体力】40/40【魔力】45/45 【幸運】110
【魔法スキル】
ステータス魔法 Lv2 時空ストレージ Lv2 サテライト Lv2 コーヒー魔法 Lv3 チョコ魔法 Lv10
【耐性スキル】
恐怖耐性 Lv2
【特殊スキル】
ラッキーカード Lv1
-*---------------------------------------------*-