されど物語は続く
---- リューム降誕暦681晴月の中五日 ----
ノア様がこの世を去られてから、一年の月日が流れた。
その間、キヨウラ公国は数々の戦いを乗り越え、着実にその基盤を固めていく。
公国の暫定的な首都は" ルヴァ "と定められ、そこを中心に新たなる体制が整えられつつある。
しかし、公王イジャルの戦いは、まだ終わりを迎えてはいない。
彼の決意は固く、その瞳には・・まだ見ぬ未来を切り拓こうとする強い決意が宿っていた。
「逝ってしまったノア様のためにも・・・僕はこの公国を守りとおす」
カイラシャ王国との戦いは、その後、幾度か繰り返されるものの、決着はつかず、国境線はルヴァの東に広がるトーラス大河で維持されることとなった。
一方、ルヴァの南方で勢力拡大を図るビリアーナ王国軍との間では、小競り合い程度の衝突が散発的に起きている。
だが、状況は安定しており、深刻な戦いへと発展することはない。
それもそのはず、ビリアーナ王国は国力回復の時期にあり、現時点で大規模な戦争を望む理由がないのだ。
互いの静かな均衡は、しばらく続くことになるだろう。
同じくキヨウラ公国南方のレルンシア総主国 、レルンドの町を基盤とした都市国家。
この国の総主はレシプロン・・・幼女化したヒラガ氏とは、錬金術師時代から続く仲良い間柄、それゆえにキヨウラ公国との関係は比較的に良好だ。
西方の大国・ヴルティリア帝国。
その皇帝ユゼンは、ノアの訃報を耳にして、軽いショックを受けた。
かつての屈辱と、そして彼女への想い・・
彼の胸に去来する感情は複雑だったのだろう。
「そうか、ノア殿は・・・ふっ! 黒だったな」
ユゼンは静かに呟いた。
だが、そのヴルティリア帝国は依然として混乱の渦中、内戦は続く。
国は南北に分かれ・・・戦いの火種は消えていない。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
とりあえず訃報にされ、死んでいるはずのノアは、遥か彼方・別大陸にて、絶賛困惑中だった。
はっきりいってしまえば・・言葉が通じない。文字も読めない。
この大陸の人たちとの意思疎通ができないのだ。
ものすごく不便である。買い物もできない。何もできない。
しかも・・・この大陸では、魔導師は不浄な存在とされ、捕縛、排除・・あげくに火焙りにされてしまうのだ。
まるで某異世界の中世・・魔女裁判
そして、案の定というか・・やっぱしというか!
この大陸における最大宗教組織の武装集団に、ぐるりと囲まれてしまうノアたちだった!
「▽✕●◎●乙○」
「○●▽◎✕乙●◎乙▽●乙○●◎~抹▽殺!」
「うわぁ 何を言ってるのか分からないけど・・うちらを襲う気なのは間違いないのよね!」
『 ならば・・・やるっす! やるっす! 』
「えっ 手加減は!?」
「なしよ!」『 ないっす! 』
ドスガスドス! ズトドドッッドォォォォン
舞い上がる白煙、吹き飛ぶ瓦礫・・そして悲鳴!
彼ら武装集団は、本当の魔導師! 本場仕込みの魔導師の恐ろしさを知ることになる。
-------------------- END