王子逃亡
白煙が広がり、轟音が響きわたる。
崩壊していく構造物・・爆風に吹き飛ばされた破片は宙を舞い、やがて一面に散らばっていく。
あの美しきルヴァの王宮に対しての容赦ない破壊行為!
空飛ぶ箒に乗るルナたちは、サテライト魔法で映し出された"黒い点"、すなわちエルドラード王子がいると思われる場所付近に空爆を敢行した。
ノアの得意魔法、コーヒーバブルボムの乱射である。
「どこに逃げても無駄! 無駄! 無駄! 王宮ごと破壊つくしてやる!」
ノアの冷たい眼光が・・ルヴァ王宮の象徴ともいえる天守閣を睨む。
そして倒壊、崩れ去った。
ドッドドドドッドドド
衝撃によって地面は波打ち、白煙があたり一帯を覆い尽くす。
「潰れろ! 潰れろ! 全て粉砕、瓦礫の山!」
ノアの雄叫びが響く。
闇に飲み込まれたかのようなその声に、背後で座るコサミちゃんは、思い切りのドン引き!
それとは対照的に、シルンちゃんは何かを納得したかのように頷く。
『 仕方がないっす! ここで恨みを全て吐き出すのも・・よいことっす 』
ズドッドドドドッドドド
また一つ、塔が崩壊していく。
一方、こちらは地上を進撃するキヨウラ公国軍。
爆散! 爆音!
・・その目前のあまりの光景に、公王イジャルは困惑の色を隠せなかった。
「やり過ぎだ! 味方まで巻き込む気か!?」
だがノアにその言葉が届かない。やりたい放題の破壊衝動。
復讐だ! おじいさまの仇! 怒りを叩きつける。
そうだ。エルドラード王子を抹殺するまで・・・破壊し続けるのだ!
ズドッドドドドッドドド
その頃、その恨みのターゲット・・・エルドラード王子は必死で駆け走っていた。
崩れ落ちる建造物、降り注ぐ瓦礫に木材・・周囲は白い埃で覆われる。
その中を・・王子は転げるように逃げ惑う。
「ぐわぁぁぁぁっっ キヨウラの仕業か! なんということを・・」
とにかく・・ここからの脱出だ! ぐずぐずしておられん。
それに、目の下の傷、かつてフィレノアーナによって刻まれた・・あの忌まわしい傷が突然、痛み出したのだ
この痛み・・疼きは・・・近くに奴がいる証拠ではないのか!?
恐怖にも似た焦りに震えながら、鋭い視線で周囲を見回した。
もちろん、ここは王宮の奥深く、ノアの姿は見えやしない。
それでも王子は、どうしようもない恐怖に支配されていた。
「奴はいる。フィレノアーナ! 再び・・俺を襲ってくる」
一刻も早くここから脱出するのだ。
王子は、唯一の逃げ道を求め地下へ・・地下へと駆け降りていった。
外に逃げることは、もはや不可能。
そこには奴ら・・あのキヨウラ公国軍がひしめき、退路を完全に塞がれていたからだ。
王子は幾つもの隠し扉を開けては閉め、開けては閉めながら、螺旋階段を下りていく。
それは、いわゆる"隠し通路"・・王族だけが知る、王宮からの脱出路だ。
通路は真っ暗! 視界は何もみえない。
王子は明かりの魔法を放ち、朽ち果てた通路を駆け抜けていく。
この通路を、人が通り抜けたのは何百年ぶりのことなのだろうか!?
通路は所々で崩落しており、王子は体を斜めにしながら、慎重に進んでいく。
人ひとりがやっと通れるほどの狭い隙間を抜け、息を切らし・・そしてついに、最後の隠し扉を開けた。
暗い通路に、明るい日差しが差し込んでくる。
「おっ! 出口なのか・・奴らを出し抜いたようだ」
そう、ここは、おそらく枯れ井戸の底なのだろう。
頭を上げると・・筒の向こうに青い空が広がっていた。
やっと外に出れる! 暖かい日差し! しかも敵兵の声が聞こえない。
どうやら、うまく逃げ切れそうだ。
エルドラード王子は、わずかな警戒感さえも忘れ、井戸に垂れ下がる縄はしごを登り始めた。
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一方、ノアたち空飛ぶ箒組はサテライト魔法によって・・"エルドラード王子"らしき黒い点を追跡していた。
たとえ地下に逃げ込もうとも・・"ロスト"することはない。
この魔法の探索反応は、地下深くにまで及び・・追い続けることができる。
「逃がしはしない。絶対に・・・バラバラにしてやる」
その冷酷なノアの発言に、コサミちゃんやシルンちゃんでさえ背筋が凍った。
殺意のオーラが身体に絡みつくがごとく・・
もはや、王子を抹殺することしか考えていない"絶対に殺すマン" と化すノア・・・
サテライト魔法のウインドに映る黒い点・・・王宮から南へと移動しているが、空からの確認では、人影らしきものは確認できない。
王子は・・地上にはいない! おそらく、地下の隠し通路だね!
「まるで・・ネズミのようにこそこそ逃げる! じつにあの兄らしい」
ノアは焦らない。逆に面白い!
さぁ・・ネズミ狩りを始めようではないか!
残酷に・・残酷に・・殺してあげるよ!
サテライト魔法がある限り・・・どこまでも追跡できるのだ。
それに、いずれは地上に出てこなければならないのだからね!
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ノアは追い続けた。上空から空飛ぶ箒で追い続けていた。
そしてついに、ルヴァ南方、森に隠された遺跡から出てくる・・・とある人物を視認したのである。
「あれは・・見つけた! エルドラード! うちの獲物!」
ノアは手に持つ魔法の杖を強く握り閉める。
「撲殺!」
一方、それらとは別口で・・・影忍の猿たちに誘導され、逃走する王子に向かって駆け走る一人の人物。
それはノアと同じくエルドラードに恨みを持つ者・・それは公王イジャル!
「あれは僕の獲物だ。この剣で切りきざんでやる」
元王太子エルドラードは・・ノアとイジャル君、双方から追跡され、追い詰められようとしていた。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)