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王都ルヴァ・突入!


カイラシャ王国軍は撤退した。

一応、この戦いはキヨウラ公国軍の勝利と見なされている。


だが・・王国軍は崩壊していない。秩序を保ちながら撤退。現在、トーラス大河を南下している。



ところで・・・このトーラス大河を南部にて勢力を拡大しているのはビリアーナ王国。

150年ぶりにカイラシャ王国から独立した国・・国王はエイラル・セイメイ。


そんなビリアーナ王国軍と・・撤退を急ぐカイラシャ王国軍が不意の鉢合わせ、大きな戦いとなった。


これが世にいう・・トリァナの遭遇戦。名称は・・近くの村名から由来している。


戦闘は夜間に始まり、予期せぬ状況下での混乱の中、両軍は激しくぶつかり合った。

双方が入り乱れる激戦となる。


戦場では、デルテニア邦伯が手にしている魔導銃の発砲音かこだまし、閃光が暗い夜を照らす。

そう、カイラシャ王国軍本陣近くにまで、ビリアーナ軍に肉薄されてしまったのだ。


「ビリアーナ! 侮りがたし」


結果としては・・数に勝るカイラシャ王国軍の勝利! ビリアーナ軍を敗走させたとのこと。

その後、カイラシャ王国軍は大河を渡り東の地へ戻っていったという。



-*- - - - - - *-



一方・・キヨウラ本陣では、ささやかながら戦勝の祝いが行われていた。

公王イジャルを中心に、幕僚たち、そしてノアやヒラガ氏らが一堂に会している。


酒は出していない。ノア特性!?のコーヒーとチョコ・・あと、お菓子類が振る舞われているだけだった。



とにかく・・目前の敵、カイラシャ王国軍を撤退させたのだ。しかも主力軍!

これはキヨウラ公国軍にとっては大きな勝利と言えよう。


だが、その代償も小さくはない。公国軍の死傷者は約千名に上り、エル兄弟も矢傷を負っていた。

それでも、本陣で彼らは健在だ。エル兄弟は、コーヒーをすすりにながら元気そうに会話を交わしている。



「さあ、いよいよルヴァ攻略だ!」


立ち上がり気勢をあげる公王イジャルの声が本陣に響く。

他の幕僚たちもそれに続き、声を高らかに上げた。ノアも負けじと腕を振り上げ叫ぶ。


「エルドラートを打倒する!」


それはキヨウラ公国にとっての長年の宿願であり、公王イジャルにとっては仇討ちそのもの。

そして、ノアにとっても忘れ得ぬ恨み。

そう、我らの槍先が狙う標的・・・それは、かつての王太子・エルドラートの首!

首を取る!



-*- - - - - - *-


その首となる標的、かつての王太子(エルドラート)は、かつての王都ルヴァの王宮・自室にて・・絶賛パニック中であった。


「なんたることだ!!」


エルドラート王子の叫びが、静まり返った部屋に響き渡る。

もたらされた報せは最悪、最低な内容だった。

最も信頼していた有能たる司令官・シラヤ子爵の戦死。

そして、ルヴァ防衛軍の壊滅。


このルヴァを守るべき兵士は、ほとんど残っていない。無防備と言っても過言でないだろう。


「まずい!まずい!やばいぞ!」


焦るエルドラート王子の脳裏をかすめたのは、この地・ルヴァの防衛だった。

シラヤ子爵に代わり、このルヴァの防衛を任されたのは、かつて防衛副司令官だったムラディン。

しかし、その配下の兵士は千名にも満たず、しかも徴収兵ばかりで信頼性は低い状況だった。


「住民どもを徴兵しろ! 兵を増やせ! 何があろうとも守り通すのだ!」


エルドラード王子は机を叩きながら、厳しい声で命じる。

それに対して、ムラディンはまったく動じることなく、落ち着いた口調で答えた。


「仰せの通りにございます、エルドラード様。我々は全住民を徴兵し、総力をもってこの地を守り抜きます」


その確固たる返答を聞いて、王子はわずかながらも安心感を得た。

今や、頼れる人物は彼しかいない。


「おうっ、頼むぞ! ムラディン卿・・ルヴァの防衛は卿の手腕にかかっているのだ」


「承知しました。我が身を盾として、この地を守り抜く所存」


ムラディンは深々と礼をして、部屋から退出する。

しかし、それが彼の姿を見た最後となった。

彼は二度と・・王宮に戻ってこなかった。


ルヴァ防衛軍司令官という役職を放棄したムラディンはそのまま姿を消したのである。

いや、それは彼だけではない!

このルヴァの王宮にいる官僚、女官、衛士、兵士・・・そのすべてが忽然と姿を消していたのである。


王宮中を探しても・・人っ子一人見当たらない。

完全に見捨てられ、逃げられた。


この広い王宮にただ一人・・エルドラード王子のみ。

もう忠誠を誓ってくれる者などいない。日頃の行いの悪さが全てを表してしまったのだ。


「・・・ま、まさか!」


エルドラード王子は愕然と立ち尽くす。

さがしても、さがしても、誰もいない。人がいない。

使用人さえ、下働きさえいない。


もはやルヴァの防衛どころではなかったのだ。


「なんたること! どいつもこいつも・・・役に立たん!」


彼は怒り心頭・・叫ぶ、投げつける。叩き割る。

だが・・そんなことをしても、体力の消費、何の進展にもならないのだ。


それゆえに彼は・・わずかに冷静な判断をした。そして現実を知る。


「もう! ダメだ。すべては終わった」



ダッダダダダッッ・・・誰一人いない王宮の通路を、駆け抜ける足音。

そう、彼は走った。


このまま王宮に留まれば、間違いなくキヨウラの連中に殺されてしまうだろう。王都から逃げ出す!

ルヴァ防衛など、どうでもいい・・もう俺以外、誰もいないのだから!

とにかく走れ! 走れ!


いや、まてよ! エルドラード王子は立ち止まる。

この姿、この服装では、あまりにも王子そのもの! これでは逃げ出せない。

彼は目についた手近な衛兵の控え室に飛び込み・・適当な服装を探すが、式典用の華やかな衣装ばかり!


「これでは、だめだ! こんな衣装では目立ちすぎる」


仕方がなく、隣の控え室に入り込むと・・庶民風と言えなくもない衣装を見つけだした。


「こ、これなら!・・・・ってダメだろ! 絶対ダメだ。逆に目立ちまくり」


そこは、女官服にメイド服がならべられていたのであった。

ここは女子更衣室か! 使えん!



エルドラードは・・庶民の中に紛れ込める普通の服装を探していたが、見つからない。

どれもこれも、華美な衣装ばかりだ。


そんなことをしているうちに・・・兵士たちの歓声が耳に飛び込んできた。

かなりの人数だ。


"" おっ 味方なのか! ""・・・と期待したが、すぐに冷静となり、それはあり得ないと悟る。


そう、ついにキヨウラ公国軍が・・このルヴァに侵入してきたのだ。

守備隊も兵士もいないこのルヴァへと・・・



-*- - - - - - *-



「影忍の報告どおりだ。守備兵どころか・・門兵すら見あたらない」


キヨウラ公国軍の半数、約7千名を率いた公王イジャルは、かつての王都ルヴァへと突入するが・・・

その奇妙な違和感、光景に戸惑ってしまう。


そう、あまりにも無防備なのだ。

魔導障壁など、王都を守る防御機構が完全に沈黙している。動作していないのだ。

しかも・・城門は大きく開け放たれており、守備隊の影すらない。


もしや空城の計!? 巧妙な罠ではないかと・・疑ってしまうほどだ。


影忍からの報告では・・・" 守備兵はすでに逃げ散っている "と伝えられてはいたが、まさか! これほどまでとは予想外だった。

ある種の悲壮感を感じてしまう。


「国の滅亡とは・・こういうものなのか!」


町の住民はチラホラ見かけるものの、我ら公国軍に抵抗することなく、家々へと逃げこんでいく。

一応、非戦闘員である住民への暴力を禁じているので、今のところ・・被害は出ていないはず。

それに・・・町の住民の多くは離散しているため、それほど多くは住んではいないだろう。



キヨウラ公国軍は現在・・無防備なるルヴァの城門を突破し、砂塵を撒き散らしながら町の中央・・王宮へと駆け走る。


「我らの目的は・・エルドラード王子! 奴を捕えよ! つかまえよ! 捕えた者には褒美は望みのままだ」


公王イジャルの声が鋭く響き渡り、兵士たちの闘志が燃え上がる。


「「おっおおおお!」」


歓声とともに兵士たちは疾走する。剣を構え、鎧の音を鳴らしながら、王宮へと・・・




一方、ノアたち・・コサミちゃん、シルンちゃんは空飛ぶ箒に乗り、ルヴァ上空を旋回していた。

目的は、憎き敵・エルドラード王子を空から見つけ出すことだった。


ノアはサテライト魔法を起動し、周辺を入念に探索する。


「どこ! どこにいる・・!?」


魔法によって表示された空中ウインドウに、黒い点が一つだけ・・ポツンと映し出された。

しかも王宮内にて・・・ウロウロと動きまくっている。


その黒い点は、生命体を示している。つまり、ターゲットである可能性が非常に高い。 

ノアは、それが憎き敵、抹殺すべきターゲット・・エルドラード王子であると確信した。


-- -- -- -- -- -- -- -- -- --



頭上からの監視、どれほど王宮内に隠れようとも、ノアのサテライト魔法から逃れることはできないのだ!

そして・・・ノアの目が鋭く輝く。迷いはない。なんの遠慮もなく、魔導を撃ち放ったのである。


コーヒーバブルボム!


黒い点が表示されている付近、王宮内だろうが・・関係ない!

建造物だろうが、壁だろうが、破壊し、エルドラード王子を仕留めてやる



ズドォォォォォン


その日・・・ルヴァ王宮は炎に包まれた。





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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