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トーラス大河の戦い(終結)


カイラシャ王国軍左翼部隊の総崩れ!

その危機を救うべく、王国軍の中枢、本陣が左翼・最前線へと押し出る。


司令官・プライバン伯は自ら戦線に立ち、敵に立ち向かおうというのだ!

それはいわば・・もう後はないという意味でもある。


鋭い眼差しが前方を見据え、突入してくる公国軍・サリュマ隊とゴーレム隊をにらむ。


「放て! 放て! 打ち払え!」 


プライバン伯の号令とともに、無数の魔弾と弓矢が公国軍へと降り注いだ。


パシュ! パシュ! ドッドドドド


王国軍左翼部隊を撃破し意気軒高のサリュマ隊は、いきなりの攻撃を受け動揺する。

まるで冷水を浴びせられたかのように、その意気が削がれてしまい、やむなく一旦退却することにした。


しかし、ゴーレム隊だけは違った。彼らはAI、恐怖などないのだ。

降り注ぐ魔弾や矢など気にも留めず、王国軍本陣を目指し、突入せんとする。

圧倒的な力を振るいながら、戦場を突き進むゴーレムたち。


だが、司令官のプライバン伯は動揺しない。しかも僅かに口角があがる。

同じく側にひかえていたデルテ二ア邦伯もニヤリと笑った。


「予定通り・・・」


そう、ゴーレムの足元が崩れ、巨大な落とし穴に" ドスン! "という地響き!

3体のゴーレムが見事に穴へと吸い込まれていく。


これは戦闘開始前に王国軍が 万が一に備えて掘っておいた落とし穴だ。

その作戦が、まさにこの瞬間、功を奏したのだった。


「いいね・・素晴らしいです。本陣を囮にしただけのことはあります」

大げさな身振りで両手を天に掲げるデルテ二ア邦伯・・ちなみにこの落とし穴作戦は邦伯の進言であった。




ゴーレムは落下していく・・深さ8ルトメ(メートル)の底へと!!

さらには・・頭上からの魔弾や火弾による容赦ない攻撃に加え・・土砂も降り注いだのである。

これは俗に言う・・生き埋め!! 

ただし、ゴーレムは生物ではないので、死にはしないが、間違いなく壊れることだろう。


「これで懸念の一つ・・・ゴーレムを処分できたな!」


プライバン伯はゆっくりと頷き、小さな微笑みを浮かべながら語った。


王国軍の奇抜なる穴埋め攻撃によって、ゴーレム隊は事実上の壊滅! 全てのゴーレムが全滅したのだ。

その影響により、サリュマ隊は攻勢を中止し、王国軍本陣を前にして防御態勢、睨み合う状況となる。




一方、" ゴーレム隊 "全滅の知らせは、公国軍の本陣に届いた。

幕僚たちは、驚きを示したが、公王イジャルは、あくまでも冷静であった。


ゴーレムは、たしかに頼りになる最強兵器ではあるのだが、所詮は使い捨ての道具・・破壊されることは想定済み。

それは仕方がないこと。


しかし、それでも少女の姿をしたヒラガ氏は、元気よくサムズアップ! なにかの案でもあるのか!?


「いやいや、全滅はしておらぬ! ゴーレムを復活させたのじゃ! 使える部品で共食い修理・・ちょいっと大変だったがの~」


そう、その言葉通り、ソガラ公爵によって破壊されたゴーレムたちの部位を集め・・繋ぎ合わし、修理し、調整し・・なんとか一体のゴーレムを作り出したのである。

そして、この本陣にて堂々とお披露目したのであった。

ただし、頭部だけは空っぽ!

頭なしゴーレム・・まるでラストアタックw


その場にいる幕僚たちは、なにやら騒めく。

このゴーレムの両手には・・壊れた頭部を抱えていたからであった・・ちょっとホラー(デュラハン)である。


なぜ・・両手に頭部が!? という疑問だが・・おそらくヒラガ氏の趣味だろ!



「ヒラガ殿、すばらしい! さっそくの復活とは・・さすが仕事が早いのだが・・でも頭が・・」


公王イジャルは大絶賛したいのだが・・少し不安でもある。


「"頭部など飾り"と言いたいのじゃが・・・残念ながら、この頭部にはの~ 制御装置が詰まっていての~」


・・・とヒラガ氏は説明するのだが、ここにいる者の大半はチンプンカンプンであった。


要するに・・動作に不安が残るが、一応、単純な動きぐらいなら何とかなるということらしい。


「ヒラガ殿に感謝する。では! 急ぎこのゴーレムを再び投入するのだ」


公王イジャルは即座に王国軍本陣への攻撃を命じた。

公国軍左翼部隊、および魔導師隊・・そして、公王イジャル、ノアたちも加わる総攻撃である。



「ここで決着をつけるわよ」「はい、ノア様」

『 わっちの魔動拳パワーを見せるっす! 』


やる気に満ちあふれるノア。

記憶喪失からの復活・・・全てを思いだしたからといって、別に態度など変わらない。

いや! 恨みパワーによって・・より好戦的になっている可能性もある。

ちょっと危険! これが彼女の本質なのだ。


公王イジャルも・・ノアの記憶が蘇ったと聞いて・・少し不安になったが杞憂であった。


「いや! まてよ・・・記憶が戻ったのに・・全然、王女らしくないではないか!」


それが・・・彼女の本質であるw





---- 陸月の下7日(1月27日) 昼過ぎ ----


天を裂くような多数の魔弾と火弾が舞いちり、王国軍本陣に向かって落ちていく。

噴き上がる瓦礫、白煙、轟音が戦場を飲み込む。


ドッドドドッッッドドド


しかし・・兵士たちの叫び声が聞こえない。

王国側になんの反応もないのだ。反撃する様子も・・声も・・馬の嘶きも・・


その光景を見た突進隊の司令官サリュマは・・眉間に皺を寄せ、いぶかしがる。


「いない!? 敵兵がいないのか!?」



そのような発言を聞いたノアは、サテライト魔法を起動し・・・周囲の様子を探る。

白煙で、詳しい状況はつかめないのだが・・たしかに生物の反応がないのだ!


「敵がいない・・・撤収か、それとも罠なの!?」


おもわず躊躇してしまう状況、だがここは戦場なのだ。

迅速な決断が求められる。


公王イジャルは即座に命令を下した。

「ゴーレム突進! 敵の出方を探れ!」


『 了解 』


首無しゴーレム(デュラハン)は、自分の壊れた頭部をラグビーボールの如く両手でかかえ・・敵陣に向けて走り始めた。


ドッドドドドッッ! デュラハン走る!


そのゴーレムの背後を・・・追いかけるように追尾する公国軍斥候隊、ゴーレムとともに敵・王国本陣へと侵入するが・・やはりというべきか抵抗がなかった。

無人なのだ。人がいない! 王国兵は全て撤収したようである。


「空城計!? それとも本当に逃げたのか!?」


公王イジャルは一瞬、疑念を抱いたものの・・・すぐに解決した。

公国軍各連隊からの伝令が次々と届いたからである。


「王国軍・・・撤収の模様!」


そう、王国軍左翼の本陣だけではなく、中央と右翼も同時に撤退を始めたとの知らせ。

王国軍全体が・・退却し始めたのだ。


これは好機! 逃げる敵に打撃を与える。

即座に追撃戦を行ったのが公国軍右翼部隊、特にエル兄弟率いる抜刀隊が先陣を切った。


「いけ! 突っ込め! 突撃」


しかし、撤収する王国軍に・・ミストフィールド(霧)を巧みに展開され・・ホワイトアウト! 視界を奪われてしまう。

" これは罠だ! "と思考したと同時に王国軍からの一斉射撃! 魔弾や弓矢が放たれ、抜刀隊に多大な損害を被ってしまった。


「なんてことだ!」・・エル兄弟の叫びが響く。


王国軍は・・敗走ではなく、秩序ある撤退。公国軍の追撃に備え、強力な殿部隊を配置し、さらに伏兵も用意していた。



-*- - - - - - *-


一方、王国軍司令官・プライバン伯は苦慮していた。


戦況は芳しくない。

王国軍は公国軍と比べ・・倍の戦力でありながら、圧倒的な優位に立てていないのだ。

しかも王国軍左翼司令官タルレードまで戦死してしまっていた。


左翼は崩壊、中央と右翼は若干有利という程度。

全体的に見て・・王国軍不利!

勝利は見えてこない。たとえ勝利したとしても、その代償は計り知れないものとなるであろう。


司令官・プライバン伯はその厳しい現実を鑑み判断を下した。

「容易に勝てぬ戦いで軍を疲弊させることは許されない。我らの使命は叛乱軍の東進を阻止することであり、無用な犠牲を払うことではない!」


撤退の命令が下される。

それは敗北を認めたわけではない。秩序を維持したまま、整然とした退却なのだ。

時には伏兵し逆撃、強襲! 公国軍側に・・かなりの出血を強いる。


その軍の強さは・・勝っている時よりも、退却する時にその真価を問われるのだ。


王国軍は・・トーラス大河に沿って南方に退却していく。

船橋を渡るのは危険であろう。ならばもっと南方に下り・・いずこかの浅瀬から東に渡る。



-*- - - - - - *-



「ちっ! やっかいな」

公王イジャルは唇を噛みしめた。下手に追撃するわけにはいかない。

ノアは一応、長距離魔導砲撃・コーヒーバブルボム"を放ってはいるが、それほどの戦果はないようだ。


どうやら魔導障壁で弾かれているようである。


王国軍は秩序を保ちつつ撤収をしている。

殿部隊もかなり強力のようだ。


ノアの空飛ぶ箒による強行突破で 敵を蹴散らすべきかと考えたが、目前の王国軍は手ごわい!

電磁シールドを張り巡らしたとしても、かなりの困難、危険だとシルンちゃんに言われたので断念したのであった。



ただし、制御を失った首無しゴーレム(デュラハン)はたった一体で王国軍に突入しているようだ。

頭部が破壊されているため・・複雑なAI機能は働かない。

敵を見たら撃破するという単純な思考(プログラム)で動作していたからであった。



ズドドッドドドッドド 


「おっおお 首無し!」「魔物!?」

「落ち着け! あれは魔導具! ゴーレムだ」


王国軍側に若干の驚きはあったが、すぐに冷静に判断し・・反撃に転ずる。

だがしかし・・ゴーレムは手ごわい! 王国兵をかなり吹き飛ばし大暴れしたものの、

最終的には・・・デルテ二ア邦伯が抱え持つ魔導銃によって狙撃、撃破されたのであった。


パシューン! パシューン! ドカー―ン!


「この狙撃感・・ちょっと癖になりそうです」






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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