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ノア・ザ・バーバリアン


王太子エルドラートは ガラスに映る自分の顔を苦々しく見つめていた。


「この傷・・・いまだに痛い」


そう! あの時・・・フィレノアーナの爆弾攻撃によって 俺は体がバラバラになるほどの重症を負ってしまった。

比喩ではなく本当にバラバラになったということだ。


その時・・たまたま聖女と呼ばれるほどの治療魔導師がいたので・・・

・・・体を繋ぎなおし一命を取り留めたが、顔の傷までは治せなかった。



「フィレノアーナめ! 忌々しい!」



奴もキヨウラ公爵も・・・あの血筋は、俺に対して何かと盾突きやがる。

王太子だというのに尊敬の欠片すらなかった。

いや! 王家そのものにすら敬意を示さなかったのだ。


だからこそ・・あの公爵家を潰した! 当然のことだ!


それに! ゲルンラン城伯・・・彼は、より意欲的となって公爵の弾劾をしてたな!

俺の指示に従ったということもあるが・・・城伯自身、窮地に立たされていたという理由もあったのだろう。


内務卿でもあるキヨウラ公爵は・・・リセル子爵を暗殺した中心人物として・・ゲルンラン城伯を告訴しようとしていたのだ。

そして、おそらく判決は有罪となり・・・処刑となるであろう!


そう! 城伯にとって・・ここで公爵を潰さない(殺さない)と後がなかった。




なるほど! そうなるとフィレノアーナにとって、祖父を殺したゲルンラン城伯は復讐の対象になる!!

だからこそ、反乱軍を率い城伯領を火の海にした上に・・城伯を殺した・・・

戦争をする気なのか!? いや! すでに戦争をしている!


俺に向かって爆弾を投げつけるような奴だ。

魔力が無いからといって・・侮れん!

何をやらかすのか分からん! 


すでに・・・城伯は殺された。


すると次は・・・殺し損ねた俺を再び・・・殺しに!?


「ふっ! ならば・・殺される前に奴を殺してやる! 待ってるがいいフィレノアーナ・・俺こそが勝利者なのだ」





-*- - - - - - *-



「殺せ! 殺せ! 撲殺! 撲殺! あっははは」


ダンジョンから這い出てきた猿型の大型魔獣・・・

・・・マイトモンキーを大喜びしながらノアは、どつきまくっていた。



そう! いつもの通り・・チョココーティングの魔法によって 魔獣の動きを完全に止めた。

もう、動けない! 驚異のチョコテクノロジー!


そして・・・無防備になったマイトモンキーを笑いながら 魔法の杖(ブラッディ・マリー)を握りしめ

・・・ドス、ガス、ドス、ドス!

鈍い音を響かせながら撲殺を楽しむ。


動物保護団体から苦情が来そうな行いであった。



そんなノアの姿を木陰から観察する手乗りドラゴンのシルン。

『 こ・・これはもしやっす! 危険な人物を世間に解き放ってしまったすか!? 』

そんな思いが脳裏をかすめた。




そう! あれから数週間・・・ノアはダンジョン前にて撲殺という名の訓練をつづけていた。

まさに・・・実戦形式の訓練というか・・・まじの実戦である!


敵、魔獣が現われると・・素早く、反射神経的にチョココーティングの魔法を発動!

その素早さに・・磨きがかかる!

しかも、詠唱無しに発動してしまうほどにまで・・・熟達してしまったのだ。


そして・・・その後、身動きできない魔獣に対して遠慮も躊躇もなく撲殺できるほど たくましく成長していた。




「うん! もう飽きたし・・・ダンジョンにお邪魔するのもいいかもね!」


これまでダンジョンに入らず・・・そこから出てくる魔獣だけを相手にしていた。

だが・・・そろそろ良いだろう。

それなりに訓練をして・・スキルも上げてきたのだ。


相当数の敵に囲まれない限り、対処も可能なはずである!



いよいよ・・新境地、ダンジョンの内部への侵入を決心するノアであった。



ステータス表示をしたところ・・


【職業】の見習い魔導師がLv12に上がっていた! いいね!

体力も魔力も上がっているし・・チョコ魔法がLv9


よし! これだけのスキルがあればなんとかなる。



ノアは片手に撲殺用凶悪杖(ブラッディ・マリー)を握りしめ・・・意気揚々とダンジョンへと潜る。

その後ろには・・・パタパタと羽をばたつかせながらついてくるシルン。

かなり心配そうな目をしていた。



チョココーティングと撲殺の組み合わせ!

たしかに魔導師としてはオーソドックスな戦法であり 手堅い戦い方であったのだが・・・

・・・・・【職業】が 今だに見習い魔導師というのが不安である。


せめて転職してもらい、一段、強くなってもらってからダンジョンに入ってもらいたかった。

・・・でもダンジョンの一層目なら たいした魔獣もいないだろうから・・『 大丈夫っすよね 』と考えるシルンであった。






ダンジョンに入ると・・・やはりというか、やっぱし暗い! 闇である!

ノアは・・・ライトコーヒーの魔法で 光の球体を召喚し、

コーヒーの香ばしい匂いを漂わせながら周囲を明るく照らしだした。

壁は岩でゴツゴツ! まさにダンジョンという感じである。


通路は一本道なので・・・今のところ迷う心配はない。


シルンの話によると・・・

・・このダンジョンは最近、生成されたばかりなので、複雑な構造にはなっていないらしいとのことである。

俗に言う・・・初心者ダンジョンなのだ。



「それにしても・・・魔獣が出てこないね」

ノアは不審に思いつつ・・・先に進む。

それに、一本道なので、後ろから魔獣は襲ってこないはず・・・


『 いえ! ノア様・・・後ろも警戒するっす。ダンジョン内では何があるか分かんないっす。

ワープゲートで後ろからっすこともありっす! 』


「えっ!?」

シルンの指摘に 思わず後ろを振り向いてしまった。

ものすごく不安になるではないか!


『 大丈夫っす、背中はわっちに、おまかせ・・・ 』と言ったものの、

シルンの口はよどみ『 いえ! お知らせします 』と言い換えた。


うん・・・シルンちゃんに戦闘は無理だよね! せいぜい火を噴く程度だよね!


そんなわけで 背中の警戒をシルンに任せて前進を開始するのであった。



少し進んだところで、大広間のような空間に出た。

ライトコーヒーの光源だけでは・・力不足らしく、広間全体を見渡せないのだが・・

・・・なにやら気配を感じる。


『 わっちも感じるっす。警戒するっす! 』

シルンは空中に舞い上がり、周囲を見回した。



ノアも付近の状況を確認すべく・・魔法を唱える。

「 サテライト・イメージ!」

これは周囲の状況を知るための魔法で、レーダー機能も備わっていた。

そして、やはりというか・・・


「不味い! シルンちゃん・・・黒い点だらけ・・・敵だ! 敵がいっぱい!」


サテライト魔法によって映し出されたウインドは・・・多数の黒い点によって埋め尽くされていた。

そう・・・ここは敵の巣窟!



ノアの叫び、または声に反応したのか・・・光源の届かない闇の中から 

突然、無数の目が光った。


妖怪・目目連(もくもくれん)なのかと、錯覚するほどの凄まじい目の数!


うわぁ・・・まさか・・・まじ!?


このダンジョンは初心者用ではなかったのか!?

しかも一層目で、ダンジョンに入ってすぐに遭遇した敵が・・・魔獣軍団ってありか!?




そんなことを考えていると・・・地響きとともに奴らが突っ込んできた。


彼らは二足歩行! 人型だが・・顔はブタだった。

幸い・・背丈はノアぐらいで小型タイプ、片手に棍棒やら剣を振りかざしていた。

そう・・・オークだ! オーク軍団。


一匹だけなら・・たしかに弱い!

だが・・・軍団だと・・シャレにならん!


オークの人海戦術ならぬ・・オーク海戦術。まるで波のように押し寄せてくる。



「にゃぁぐひゃぁぁぁぁ」

人に聞かれたくないような悲鳴を出しながら・・ノアはチョココーティングの魔法を連射していた。

幸いなことに・・・無詠唱ができるほど上達していたおかげで・・・機関銃並みの連続魔法!


ノアは顔を歪めて、恐怖に耐えながら・・・やらねばならない。

撃ち続けるしかないのだ!

それに・・もはや逃げる暇すらなかった!

・・・攻撃を止めれば・・・オークの海に飲まれてしまうであろう。




これは・・・まるで第一次世界大戦の塹壕戦、または203高地!

チョココーティングと言う名の機関銃が炸裂する!

そうだ! 敵を火力で薙ぎ払え!


突っ込んでくるオークたちは 次々とチョコまみれとなり動きを止める。

だが・・そんなチョコまみれを踏み越え・・・なおも多数のオークが突っ込んできた!


棍棒や剣を振り回し・・・雄叫びをあげながら!


グゥォォッォォォッオオ 


(一部のオークは・・チョコまみれのチョコを口にいれて・・ニッコリする者もいたりしていた)




「不味い! 不味い! このままでは魔力量が・・・」

涙や鼻水を垂らしながら、ノアは必死に連射を続けた。

そう、死にたくなければ・・撃ち続けるしかない。

魔力がなくなるのが早いか・・・それともオーク撃退か!?



そんな激戦の傍らで、シルンは口を大きく開けて 大量の空気を吸いこみつづけた。

そして、しだいに大きくなる腹部・・・まるで風船のような腹だが、何かをしようとしていた。



『 ノア様・・・大技をだしまっす。その隙に逃げるっす 』


「えっ・・・そんな技が!?」


『 あるっす! あとちょっとで準備完了っす! 技がだせるまで、がんばるっす 』


ノアは・・シルンの言葉を信じ、残りわずかな魔力で・・・チョココーティングを連射する。

だが・・・オークたちの数は減らない。どんどん近づいてくる。


連射しても連射しても・・・オークたちが雄叫びをあげて突っ込んでくるのだ!


一体・・・どれほどの数がいるのか!

大広間一面にオークの死体ではなく・・・チョこまみれとなり動けなくなったオークたちが蠢いていた。


もちろん・・撲殺できるような余裕はない。

ノアは・・・ひたすらチョココーティングを連射する。


ドッドドド・・・・・グシャバシャ




ついにデットラインが突破された!

連射の隙をついた・・・一匹のオークがノアの目前に迫り、その手に持った棍棒が振りおろされる。


「やばい!」


ノアは身をよじり・・・手に持つ魔法杖(ブラッディ・マリー)で、棍棒を受け止めようとした。

だが・・・はたして、ノアの非力な腕力でオークの棍棒を受け止めきれるのか!?


そんな不安が脳裏をよぎったその時! シルンの口から・・・炎が吹き上げられた。


しかも・・・手のりドラゴンとは思えない大火力、

小さい口から噴き出したとは信じられないほどの とんでもないスーパー火炎放射!


ゴッゴゴコゴェェェェゥゥゥャォォォォ


広間全体が赤い炎に染まる。

炎が・・・広間を焼き尽くす。


「シ・・・シルンちゃん」

ノアは・・あまりの凄さ! シルンの実力の高さに驚愕した。


『 今っす! 逃げるっす! 今がチャンッす! 』


シルンちゃん火炎攻撃で・・・突撃してきていたオークたちの足が止まった。

かなりのオークたちが炎に巻き込まれているようだ。


さすがのオークたちも・・この惨状を見て・・恐怖し右往左往している。


たしかにこれはチャンスだ! 今なら逃げれる。


ノアは・・・出口に向かって全速力で走った。

ときおり、けつまずきそうになりながらも走った!

その後ろを 羽をはばたかせながら飛ぶシルン。


「シルンちゃん・・・すごいよ! あんな大技があるなんて!」


『 はいっす! どうです!? わっちの実力を・・・だけど・ 』


「だけど・・・!?」


『 幻覚魔法なのっすなので・・・打撃はないっす 』


「え~!?」


『 見かけだけっす 』


そう! あの大規模火炎魔法は見た目だけで・・痛くもなく、熱くもない。

まさに面白グッズから生まれたチビドラゴンのシルン。

そう! シルンの技は全て幻影なのである。


「あんな凄い・・・迫力満点だったのに・・・幻影だったの!? 

でも・・・シルンちゃんのおかげで助かったよ! 本当にありがとう」


『 ノア様! まだ安心はだめっす 後ろを見るっす 』


シルンの指摘に ノアは少しだけ後ろを見た。

そこには・・・・

ダンジョン通路を埋め尽くすほどのオークたちが・・・怒涛の如く追いかけてきていたのだ!

シルンの幻影魔法で・・・一瞬、怯んで混乱したようだが・・所詮、一時的にものだったのだろう。


「ひっえええ」


『 止まったら死ぬっす! 』


「ぐぅあ! なんてことだ~」


ノアは身体強化魔法を発動すべく・・・呪文を唱える。

「 美味しいチョコでチョコザイナ! 」すると・・・目の前に板チョコが召喚された。


そして、すかさずパクリ


うん、甘くておいしい!

・・・・などと思っているうちにノアの脚力アップ! 砂埃を舞いあげながら速力アップ!

出口にむかって駆け走る。


ズズドォォォォオオオ   

 

これぞ! 身体強化魔法・・・オーク軍団との距離が、一挙に広がった。

もう・・・追いつかれることはないだろう。



ノアは猛スピードで走り抜け・・・あっという間にダンジョンから脱出!

だが・・・決して止まらない!


念には念をいれるため・・・このまま走り抜け・・・山の向こうへと爆走するのであった。








--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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