エピソード7:missing you②
翌日の日曜日、時刻は間もなく午前11時。
宮城の隣県・山形県山形市内の閑静な住宅街に到着した統治は、ナビで設定した住所に立っていた一軒家の路肩に車を停めると、サイドブレーキを引いて息を吐いた。すると、助手席に乗っている政宗が「ちょっと見てくる」と言って車を降りる。
統治がシートベルトを外したりしていると、程なくして戻ってきた政宗が助手席に乗り込んで、統治を見て一度頷いた。
「表札は『名杙』だった。『関係縁』もここだし、間違いないと思う」
「分かった。佐藤はここで待っていてくれ。万が一他の車の通行の邪魔になるなら……」
「おう、適当に移動させるから心配するなって。統治こそ、一人で大丈夫か?」
「ああ。相手に余計な威圧感を与えたくはない。それに……立ち話で終わらせてさっさと帰るつもりだ」
統治はそう言いながら、政宗へ車の鍵を手渡す。それを受け取った彼は、口元に意地悪な笑みを浮かべて、楽しそうに釘を差した。
「了解。やりすぎるなよー?」
「何かあったら止めてくれ。じゃあ……行ってくる」
こう言って、今度は統治が車を降りた。そして、塀に沿って門の方へと進み、胸の高さほどの門構えの前で立ち止まる。
表札は『名杙』、その隣にはカメラ付きのインターフォンがあったので、統治は迷わずそれを押した。画一的な呼び出し音から数秒後、向こう側が反応したようなノイズが聞こえる。
『はい、どちらさま、で……!?』
機械越しに聞こえたのは、妙齢の女性の声だった。どこかで聞いたことがあると感じて思い出す。先日、名杙本家で不本意な立ち聞きをした時に喋っていた女性の一人だろう。
彼女はカメラ越しに統治の顔を見て、唐突に訪ねてきたのが本家の長男であることを秒で見抜き、息を呑む。
『と、統治さん……ですか!? あ、あの、主人は今不在でして……!!』
「突然申し訳ありません。恐れ入りますが……お嬢さんの名杙史子さんと、少し、お話をさせていただくことは可能でしょうか?」
『ふ、史子ですか!? しょ、少々お待ち下さいっ!!』
焦りとともに通話が途切れて数十秒後、門の向こうにある引き戸が開き、若い女性が少し焦った様子で駆け出してきた。その後ろから、母親らしき女性――先程まで応対してくれた人物だろう――が、扉を閉めながら後を追う。
統治は改めて、自分の方へ向かって走ってくる女性――名杙史子を見つめた。
年齢は25歳、統治とはまたいとこ――統治の祖父の弟の孫――に当たる女性だ。髪の毛は大きなバレッタで一つにまとめており、目つきが切れ長で、凛とした印象を受ける。レトロな花柄の長袖ワンピースに黒いストッキングという服装は、自宅で過ごすには飾り気があるように思えた。これからどこかへ出かける予定だったのかもしれない。それならそれでいい。
史子は統治へ急いで頭を下げると、顔を上げて笑顔を向ける。
「ご、ご無沙汰してます、統治さん。あの……私のこと、覚えていてくださったんですか……!?」
彼女の言葉には、端々に喜びがにじみ出ていた。統治としては、5月のあの会合以来の顔合わせになる……らしい。統治自身は、こうやって改めて相対しても……ちっとも、その時の印象を思い出せないけれど。
勿論、そんな本音は伝えない。統治は2人へ向けて居直ると、軽く頭を下げた。
「ご無沙汰しています。お忙しいところ、申し訳ありません」
「とんでもないです!! あの……!!」
すっかり舞い上がった様子の史子へ、母親が「門を開けなさい!!」と小声で指示を飛ばした。我に返った彼女が閂に手をかけた瞬間、統治は静かに口を開く。
「いえ、これもこちらの都合で申し訳ありませんが……時間が限られていますのでこのままで結構です。伺いたいことがあります」
「え? あ、はい……何でしょうか?」
「単刀直入に伺います。先日、透名櫻子さんと俺の『関係縁』を切ったのは、貴女ですよね?」
刹那、史子が目をむいて表情を強張らせた。勿論、統治の言葉は後ろにいた母親にも届いており、怪訝そうな表情で娘を見やる。
「透名……史子、統治さんがおっしゃっているのは何のことなの?」
「し、知らないわよ!! あ、あの、統治さん……急に、何ですか? 私、そんなことしていません……!!」
表情は困惑と狼狽が行ったり来たりしている。統治はそんな彼女を冷静に眺めつつ、淡々と話を進めた。
「していないとおっしゃるならそれでも構いません。こちらは防犯カメラの映像を警察に提出しています。もしも任意でお話を伺うような要請があれば、ご協力をお願いします。ご迷惑をおかけする可能性がありましたので、事前にお伝えさせていただきました」
「……」
史子は統治から視線をそらし、小刻みに震えながら無言で頷いた。同時に、母親がどこか懐疑的な眼差しで統治を見やり、史子の肩に手を添える。
「統治さん、お言葉ですが……急に娘を犯罪者呼ばわりされるというのは、あまり、いいえ、非常に気分が良くありません。主人を通じて、当主様に抗議させていただきます」
「どうぞご勝手に。当然ですが、俺も当てずっぽうではなく、確信を得た上でお伺いしていることをご承知ください」
「確信、ですって……!?」
母親の言葉を聞いた史子が、青白い顔でビクリと体を震わせた。統治はその様子を横目で見ながら、彼女のその様子が何よりの答えじゃないかと思っていたが……母親には、娘が犯罪者呼ばわりされて動揺しているように見えるのだろう。それならそれでいい。
統治は「失礼しました」と頭を下げると、踵を返して背を向ける。そして。
「史子さん、貴女の左手から繋がっている櫻子さんとの『関係縁』、ごく最近に構築されたものですよね? 色を見れば分かります」
刹那、史子が自分の左手を押さえた。本当に今まで、それが繋がっていることの意味を把握していなかったのだろう。
「5月の貴女は櫻子さん本人とは話をしていないし、それ以外に一切接点はなかった。にも関わらず、『関係縁』がキレイに繋がっている。この意味を理解出来ないのであれば……『縁故』としての修練をやり直してください」
「っ……!!」
「俺は貴女を許しません。失礼します」
統治は振り向くことなく足を踏み出し、2人から遠ざかる。
背後でなにやら言い争いをするような声が聞こえたような気もするが、統治にはもう、関係のないことだった。
車に戻った統治は、運転席に乗ろうとしたのだが……先にそこに座っていた政宗が、ガラス越しに助手席を指差したから。
回り込んだ統治が助手席に乗り込むと、政宗は「お疲れ」と告げてエンジンをかけた。
「さて、さっさとトンズラするぜー」
「佐藤、運転は俺が担当すると言ったはずだが……」
今回は名杙のゴタゴタなので、長距離の運転は統治が担当すると言い張っていた。政宗もそれを了承したものだと思っていたが、どうやらそれは、統治がそう思っていただけだったらしい。
どこか不服そうな統治をバックミラー越しに見た政宗は、努めて明るく声をかけた。
「いいからいいから。ケッカから山形土産買ってこいって言われてるんだよ。統治の運転だと、途中のサービスエリアにもよらずに直帰だろ? それだと俺の面目が丸つぶれだ」
「これ以上潰れて困ることもないだろう」
「ひっで……まぁとにかく、安全運転で帰るぜー」
既に帰り道のルートを入力していた政宗は、ナビの案内に従って、山形自動車道の方へと車を走らせる。見慣れぬ街の景色が流れていく様子を眺めながら……統治は昨日のことを、改めて思い返していた。
昨日、統治と櫻子が思いをぶつけ合い、互いの誓いを了承した直後のこと。
離れた場所にあるカバンの中で、統治のスマートフォンが震えている音が聞こえた。
「統治さん、お電話ではないですか?」
櫻子の方が近かったため、カバンの持ち手を持って統治へと手渡す。統治は「ありがとう」と言って中に手を入れると、震えている機械を手に取り、相手を確認した。
「理英子叔母さん……!!」
電話の相手は、名倉理英子。里穂の母親であり、協力してくれている数少ない身内である。
統治は焦りを隠そうと平静を装いつつ、画面に表示された緑のマーク――着信を取る方――をスライドさせようとして……。
「……っぁ!?」
間違えて、赤いマーク――電話を切る方――をタップしてしまう。
当然、電話は切れる。
「何をしているんだ……」
普段の統治からは考えられない、まるで櫻子のようなミスに軽く凹みつつ、急いでリダイヤルをした。通話料を考えると自分からかけるほうがいい、理由を聞かれたらそうしようと瞬時に決めた上で。
そして、呼び出し音が数回鳴った後、
「……もしもし。先程はすいません、統治です」
『統治君、忙しいときにゴメンね。今、少しだけ大丈夫?』
「大丈夫です。何か分かったんですね」
統治の言葉に理英子は『そうよ』と強く頷くと、統治に『ある人物』の名前を告げる。
『名杙史子って女の子、知ってる? 5月に統治君の近くにいた1人よ。知らないと思うけど』
「……すいません、仰る通りです」
結論を先回りする叔母に同意すると、電話の向こうから『そんなもんよ』というあっけらかんとした答えが返ってきた。
彼女は、良い意味で名杙『らしくない』女性だと、改めて思う。
『一応、統治君や里穂とは、またいとこにあたる親戚で、年齢は25歳。今は山形に住んでて、一応、『上級縁故』ではあるけれど……曲がりなりにも本家筋の20代で『上級』までしか取ってない時点で、『縁故』としてはあまり動いてこなかった感じね。今も基本は家業手伝いという名の家事手伝い。一人娘みたいだし、本人の実績も年に数件程度。父親が現役だからまぁ……って、そうじゃなくて』
電話の向こうで愚痴っぽくなった理英子は、『ゴメンね』と言って話を元に戻す。
『東北地区で、俗に言う結婚適齢期、それでいて平日の昼間に仙台まで行って帰ってこれるとすれば、山形の彼女が一番怪しいと思って。SMSで住所を送るから、扱いに気をつけて。兄さん達にバレないようにね』
「分かりました。本当にありがとうございます」
『いいのよ。でも……ここからどうするの? 櫻子ちゃん、相手の顔を覚えているの?』
どこか心配そうな彼女の問いかけに、統治は自信を持って返答した。
「考えがあります。成功したら改めて……お礼をさせてください」
『分かったわ。甥っ子の恋路を邪魔するおじゃま虫なんて、スパッと切っちゃいなさい』
こう言って背中を押してくれた叔母に、統治は改めて謝辞を述べ、電話を終える。
その様子を櫻子が心配そうに見守っていたので、統治は画面を消して一度頷くと、瞬きをして、視える世界を切り替えた。
そして……櫻子の左手に、一本、統治でも心愛でも里穂でもない、宮城にいる名杙直系の人間ではない、かつ、名杙直系筋との新たな『関係縁』が残っていることを確認する。
これは先日、統治が櫻子の車に同乗した際に気付いたものだ。櫻子にそれを告げなかったのは、彼女がそれを意識することで悪い影響が出るのでないか、と、危惧していたからである。
この『関係縁』が、山形にいる名杙史子という女性と繋がっているのだとすれば……。
「統治さん、何か分かったんですか?」
櫻子の問いかけに、統治は首を縦に動かした。
「ああ。大きな手がかりが手に入った。明日にでも確認してこようと思う」
「分かりました。私は……」
櫻子は思わず、自分も一緒に行くと言いかけたが……現在の状況と相手を考えて、一度、息をつく。
そして、彼に向けて最善を告げた。
「……残ったほうがよさそうですね。ホテルで休んでいます」
「そうしてもらえると助かる。ただ、明日は……午後から、違うことに協力して欲しいんだ」
「違うこと、ですか?」
「ああ。とりあえず、佐藤や山本にも今の話をしておきたいんだ。ここから移動しても構わないだろうか」
「勿論です。むしろ、お待たせしているので早く移動しましょう……!!」
駐車場でユカ達が待っていることを思い出した櫻子は、机に置いていたスマートフォンをハンドバッグへ片付けた。そして、忘れ物がないかどうかを軽く見渡した後、身支度を済ませて待っている統治の元へ駆け寄ると、真っ直ぐに彼を見上げる。
「お待たせしました」
「急かしてすまない。鍵をかけるから先に出てくれ」
統治の言葉に頷いた櫻子が、彼を追い越して靴を履く。統治はそんな彼女を後ろから抱きしめると、振り向こうとする彼女の耳元で呟いた。
「もうすぐ終わらせるから、あと少しだけ……協力して欲しい」
暗中模索だったけれど、ようやく、ゴールが見えてきた。
あと少し、あと少しだけ戦えば、きっと、2人で安心して過ごすことが出来るから……最後まで毅然と立ち向かう力が欲しい。櫻子はそんな彼の腕を両手で握ると、「はい」と力強く頷いて。
「ラブラブな未来のため、最後まで頑張りましょう」
「……ああ」
聞き慣れない、使い慣れない言葉を使うと、おかしくてお互いに笑ってしまう。そして、強張っていた肩の力を緩めることが出来る。
統治は少しだけほころんだ口元を自分の意思で引き締めると、背筋を伸ばして前を見据える。
この扉を出たら、もうしばらく……具体的には明日の昼食を食べるくらいまで、『時期当主』としての自分で過ごすために。
その後、ユカと政宗を交えて情報を共有した結果、日曜日の午前中に統治が政宗と共に山形の名杙史子の元を訪ね、真偽を確かめることになった。
政宗が同行するのは、単純に、車の運転が出来ることと……櫻子から繋がっている『関係縁』が、本当に名杙史子と繋がっているのか、統治と共に確認するためだ。
史子は、名杙直系であるにも――それ以前に『縁故』であるにも関わらず――彼女自身の『縁』の見え方に、一切のプロテクトをかけていない様子だったのだ。政宗やユカが櫻子に残る『関係縁』を見て、思わず絶句するほど、セキュリティがガバガバな状況。これを好機として、すぐにでも手を打つ必要がある、ということで、統治は政宗と共に行動をしたのである。
「とりあえず終わったな、統治」
「……いや、まだだ」
助手席に座っている統治は頭を振ると、窓の外を流れる山並みを見つめる。
そして……『名杙次期当主』としての仮面を脱ぎ、1人、口元を引き締めた。
一方その頃、留守を任されたユカは……。
「櫻子さんっ!! はらこ飯弁当ですよ!!」
期間限定の駅弁を目の前にして、目を輝かせていた。
時刻は間もなく12時、場所は『東日本良縁協会仙台支局』。
ユカは櫻子と共に応接用のソファに横並びで腰を下ろし……目の前にある弁当に対して、イクラのように目を輝かせている。
今日は午後から『あること』をすることになっており、落ち着いて話ができる場所が必要になった。統治達も山形から帰ってくるし、櫻子のホテルからの移動距離も短いほうがいいだろう、ということで、交通の便が最強の駅チカ・仙台支局が寄り合い場所に選ばれたのである。
午前中は家で過ごしていたユカのスマートフォンは、政宗から『全部終わったからそっち戻る』と連絡が入った。それを見たユカは『山形は麺と果物が有名なんだってね』とだけ返信して移動を開始。仙台駅で櫻子と合流し、昼食を調達して事務所の鍵を開けたのである。
弁当のフタを開けると、表面に敷き詰められたいくらの醤油漬けと、醤油ベースで味付けされた鮭ハラスの切り身が盛大に自己主張をしていた。この下にあるご飯は鮭と同じ味で炊き込まれたものなので、味に一体感がある。本当はどこか店舗で食べたいのだが、櫻子がまだ本調子ではないし、今日は政宗もいないので次の機会に。とはいえ、弁当でも十分すぎるほど美味しいことは、ユカ自身もよく知っていることだ。
ユカは割り箸を割ると、「いただきます」と手を合わせて容器を手に取る。そして、いくらの粒を落とさないように気をつけながら米と一緒にすくい上げて口に含み、噛み潰すと、イクラのプチプチした食感が口の中で踊り、程よいしょっぱさが食欲を増進させていく。
「んー……!!」
少し遅れてやってくるのが、炊き込みご飯の風味。ちらし寿司等と違って酸味はないので、優しい味わいが口の中に広がっていく。
「これ、基本的には秋にしか食べられないんですよね……」
「そうですね。宮城県南の秋の風物詩です」
「勿体ない……」
こんなに美味しいのに。
ユカの残念な気持ちを汲んだ櫻子が、自分の目の前にある弁当をしげしげと見つめた。
「でも、最近はこんな風にお弁当になって、通年で楽しめる機会が増えた印象もあります。私も好きなので、ありがたいですね」
「ウヘヘ……」
この味が年中楽しめるなんて。迂闊に未来を想像したユカがニヤニヤしながら箸を進めていると、櫻子が「あの……」と、ユカを覗き込むように見つめ、どこか心配そうに問いかけた。
「ユカちゃん、今日の午後は結局、何があるんですか? 統治さんに聞いても教えていただけなくて……」
「スイマセン、始まるまで言えないことなんです。ただ、悪いことじゃありません。未来のために必要なことですね」
「未来の、ために……?」
具体的ではない答えに、櫻子は首を傾げつつ……これ以上追求してもユカが口を割ることはないと思い、観念して鮭の切身を箸先で簡単にほぐす。
そして、ほぐしたものとイクラ、米の三点セットを箸ですくい上げ、口に運んでいると……お茶のペットボトルから口を離したユカが、キャップを締めながら呟いた。
「櫻子さんみたいな人が、統治の隣にいてくれて……良かったです、本当」
「ユカちゃん……」
「統治、『名杙』っていう家と自分を切り離すのが難しそうだなって思うことがあって。多分、これからもそれは難しいと思うんです。櫻子さんは統治に寄り添って、オンとオフを切り替えるタイミングを、ちゃんと示してくれる人だなって思いました。だから……これからも統治のこと、よろしくお願いします」
こう言って櫻子を見つめると、彼女は頬をほころばせ、一度だけ頷いた。
「はい。勿論です。私こそよろしくお願いします」
「って、こういうのは心愛ちゃんの役割か……スイマセン、なんか図々しくて」
改めて考えると、大分、出しゃばった物言いになってしまった気がする。萎縮するユカへ、櫻子は「そんなことありません」と首を横に振った。
「統治さんが身内以外の方をご自分の判断で信用なさるようになったのは……間違いなく、ユカちゃんと佐藤さんのおかげです」
「だと、いいんですけど」
「そうですよ。それに……」
櫻子はここで言葉を切ると、箸を一度机に置いた。そして、自分の両手を見つめ、目を細める。
不安だったとき、頑張りたいと思ったときに、ユカがよく櫻子の手を握ってくれたことを思い出していた。
「今回はユカちゃんがたくさん私のそばに居てくれて、ずっと手を握ってくれたから……すごく、安心できました」
傷ついて、1人では立ち上がれない。そんな時に『大丈夫だ』と、体温を分けてくれる人がいる。
1人ではないと実感することができる。
統治に頼れなかった櫻子にとっては、ユカの存在と行動が、分かりやすい励みになった。
真正面からの謝辞に照れるユカへ、彼女はどこかいたずらっぽい表情で言葉を続ける。
「私ばっかり、佐藤さんに申し訳ないですね」
「政宗はいいんですよ。っていうか、政宗とは……」
付き合ってるわけでもないですし。
言いかけた言葉を区切り、ユカは少しだけ思案した。
そして。
「……政宗とはずっと、顔を合わせていますから。だからいいんです。それに、今日だって政宗は統治とドライブデートですよ? だったらあたしも、櫻子さんとランチデートしないと」
「そうですね。じゃあ、食べ終わったら……甘いものでも買いに行きましょうか」
「はーい」
元気に返事をするユカに、櫻子も楽しそうに頷いて、まずは目の前の食事を完食することに集中するのだった。
誰やねんこの女。
……というご意見は甘んじて受け入れます。いちおー、エピソード1の中で名前だけは1回出したんですよ、ええ。姿は一切出しておりませんが!!
推理小説ではないので、犯人は唐突でもいいやと思いました。あと、山形県はとてもいいところです。麺がめっちゃ美味しい。果物とか最強です。山形りんごを食べるんご……!!
そして私は、統治と政宗がドライブデートしてる、と、思いながら、彼らが立ち寄ったルートを妄想してニチャニチャしました。仙台からだと作並経由でガチの山道を通っても行けるのですが、本当にぐねっぐねの山道なので(道路はありますが、雪が降るとマジで怖いです)、彼らは今回高速道路を使ってます。
からのはらこ飯。
食べたい。(私が)




