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エピソード3: family register①

 華蓮が定時退社をした18時過ぎ。支局の中には4人+分町ママが残っていた。

 自分の席にようやく座ることが出来た政宗が。こめかみに手を当てて、とっても疲れた表情で息を吐く。

 ユカはそんな彼に缶コーヒーを差し出しつつ、報告を聞くため、彼の斜め前である瑞希の席に腰を下ろした。その隣に統治、斜め向かい――ユカの向かい側にある華蓮の席には心愛が座っている。

「んで、政宗、さっきのお姉さんはどげんなったと? 帰ってもらえた?」

 この問いかけに、政宗はとりあえず頷いた。

「今日はとりあえずお引取りいただいた。ただ……」

「ただ?」

 不吉な接続詞に、ユカを含む全員が渋い表情になった。その中で渋柿を食べたような表情の政宗は、差し入れの缶コーヒーを開けながら……何かを思い出し、これみよがしなため息をつく。

「……明日も来てやる、ってさ」

「なして!? 分町ママもおったとに追い払えんかったと!?」

 驚いたユカが、政宗の頭上で苦笑いをしている分町ママを見上げた。全員の注目を集めた彼女は、ヒラヒラと手を振って肩をすくめる。

「あの子、とにかく頑固なのよ。そして、人の話を聞かないの。自分の糸……『関係縁』を切ってくれるまで、毎日ここにおしかけてやるー、って」

「えぇー……そげん言うなら、もう対応するしかないっちゃなかと? 業務に支障を来す、とか理由をつければよかやろうもん? あたしやろうか?」

 流石に毎日、こんなことが続くのであれば、政宗や『仙台支局』本来の業務に悪影響だ。また、同じ場所に『痕』がとどまり続けることがあれば、この建物や利用者に、瑞希のような悪影響が出るかもしれない。

 ユカの言葉に、政宗は「それが……」と、何度目か分からないため息をついた。

「彼女……自分の名前を付けたのは両親じゃないと言っていた。かつ、生育環境がかなり複雑そうな感じで、()()()の可能性が高いと思ってる」

「無戸籍!? うわ……」

 彼の言葉で事情を察したユカが、ここできたか、と、苦虫を噛み潰したような表情で押し黙る。統治もまた何かを察した様子で、眉間にシワを寄せて考え込んでしまった。一人だけ分からない心愛は、目を丸くして困惑する。

「む、無戸籍? 戸籍が無いってことは……えぇっと……」

 心愛の年齢では聞いたことのない単語だろう。政宗は一度統治に目配せをして、彼が頷いたことを確認し……自分が説明役になることにした。

 こういった対応があることは、今後のために知っておくべきだから。

「心愛ちゃん、唐突だけど、人の名前ってどうやって決まるか知ってる?」

「え? 名前は……生まれた時に、お父様やお母様……親がつけてくれるもの、ですよね?」

「そうだね。もっと厳密に言うと、出生届に名前を書いて役所に提出することで、戸籍が作られて名前が決まる。そして、その戸籍と同じ名前で呼び続けられたり、自分の手で書いていくことで本人の中に定着していくんだ。ここまでは大丈夫?」

「は、はい」

 心愛は真顔で頷いた。政宗が語っているのは、ある意味では『当たり前』のことだ。


 名前は、子どもが親からもらう初めてのプレゼント。

 そんな言葉だって、聞いたことがあるくらいなのだから。


「出生届って医者が書く欄もあるから、基本的には出産後に産婦人科でもらうものなんだ。そして、手続きが出来る期間も決まっている。例えば……妊婦健診なんかを一度も受けずに、自宅でひっそり出産をした人は、その書類を手にとることがないかもしれない。更に、様々な事情から、期間内に届けを出さない人もいる。そういう子どもは……無戸籍って呼ばれる状態になるんだ」

「無戸籍……」

「戸籍がないと身分証を持てないとか、社会的な保障が届きづらいとか、いろんな問題はあるんだけど、ここからは『縁故』的な話をするね」

 政宗の説明を理解していることを示したくて、心愛はおずおずと頷いた。

 理解はしている。ただ……実感としてはよく分からないのが本音だ。

 戸惑いの残る瞳を一瞥した政宗は、とりあえず最後まで説明を続けることにする。

「心愛ちゃんも知っているように、名杙直系ではない『縁故』にとって、本名は何が何でも守るべき大切なものなんだ。相手に本名が知られてしまうと、例えば『因縁』や『生命縁』とか、個人を司る大切な『縁』に、外部からの侵入を許しやすくなってしまうからね。俺やケッカは相手に偽名を認識させることで意図的にズレを起こして、自分自身を守っている」

 特に、ユカや政宗のような中途覚醒の『縁故』にとって、本名は何が何でも死守すべき個人情報だ。現にユカも政宗の本名は知らない。

 政宗は先月、うっかりユカの本名を知る機会があったけれど、その後、口外しないという旨の誓約書を、ユカの署名付きで名杙本家に提出している。勿論、破った場合の罰則もある。

「だから、俺とケッカには戸籍上の本名があるんだ。ただ、今日の彼女にはそれが『ない』可能性が高い。それがどんな問題に繋がるかというと……」


 政宗はそう言って、彼女と非常階段で対話をしたときのことを語りだした。


 あの後……瑞希を駅まで見送った統治がエレベーターホールまで戻ってきた時、政宗はまだ同じ場所にいて、背中が少しだけくたびれていた。

 刹那、統治の存在に気付いた彼女が、政宗の背中越しに顔を出して大きく手を振る。

「あ、さっきのお兄さんが戻ってきた!! おにーさーん!! 早く何とかしてよー!! 持ってるやつでスパッといけるっしょー!?」

 目を合わせたくなかったので、統治は露骨に視線をそらした。そして、政宗の肩を人差し指でつつく。

「……おい、どうするつもりだ?」

 不用意に名前を呼ぶことが出来ない状況で言葉を選びながら尋ねると、政宗は引きつった顔で振り向いた。そして、目線で「戻ってくれ」と伝えた後、再び彼女に向き直る。

 そして、100点満点の営業スマイルと共に近づいた。

 こうなったら、彼女側の事情を探るしかない。分町ママも到着していないので、最悪……自分の判断で切ろう。どこの誰か分からないけれど、これだけ目立つなら生前の交友関係も広くて、『生前調書』も簡単に作れるだろう。多分きっと。

 政宗は自分にそう言い聞かせながら、訝しげに自分を見ている彼女へ提案した。

「とりあえず、貴女のことをもう少し知っておきたいんですけど、このままだと、俺が誰もないところに延々と話しかけるだけのヤバい人になってしまうんです。だから、場所を変えてもいいですか?」

「え? そうなの? それって大分イタい人じゃん。っていうか、アタシのことを知りたいとか何? お兄さん、アタシに惚れた感じ?」

 途端にニヤニヤした表情で政宗を見る彼女。勿論、こんなことで動じる彼ではない。

「興味はあります。と、いうわけで、扉の向こうの非常階段の方に移動してもいいですか?」

「オッケーオッケー。お兄さんイケメンだから許しちゃう。行こー」

 ケロッと了承した彼女を連れて、政宗は非常階段へつながる鉄の扉を押すと、その向こう側に消える。

 扉が閉まる音を確認した統治は、彼の健闘を祈りつつ……『仙台支局』へ戻り、待機することにした。


 蛍光灯に照らされた非常階段は、当然のように、人の気配などない。空気もひんやりとしていて、吹き抜けの空間なので、物音がいちいち大きく反響した。

 政宗は階段の一番上の段に腰を下ろすと、隣を漂う彼女に視線を向けて……。

「いくつか聞きたいことがあるんだけど、まず、自分の名前って覚えてる?」

 あえて敬語を取り払うと、彼女は特に不平不満もなく、「名前?」と首を傾げる。

「名前は……そう、川瀬空(かわせそら)ってつけてもらった」

「つけてもらった……?」

 彼女の言葉に、政宗は強烈な違和感を覚えた。

 自分の名前は確かに、親など、自分以外の第三者からつけてもらったものだろう。ただ、そんなこと『当たり前』なので、わざわざ口に出すことなどない。川瀬空、そう名乗って終わるのだ。

 政宗の反応に、彼女――空は「うん」と当たり前に頷いて。

「施設にいたおばちゃんと一緒に考えた名前なんだよね。ほら、空ってめっちゃ広いじゃん? めっちゃ自由って感じがしない? 名字は、えっと……なんか、おばちゃんの知り合いの人の名字を参考にしたとかなんとかで決まってた」

「なるほど、施設のおばちゃんと……その施設の名前は覚えてる?」

「施設の名前? んー……なんか、難しい漢字ばっかりで読めなかったんだよね。みんな『施設』って言ってたから施設でいいんじゃない?」

「そっか……ありがとう」

 政宗はそう言って、空の頭上を見る。残念ながら『因縁』は消えているので確認しようがないが、本人がこれだけはっきり喋っているのだ。きっと、それが事実なのだろう。

 それにしても……。

「……よく覚えてるね」

 『痕』となってもなお、これだけ生前のことをはっきりと、しかも時系列に沿って覚えているのは珍しい。『関係縁』が残っている相手とのことを覚えているパターンは多いから、この2本の『関係縁』の先にいるのは、きっと、彼女が施設で世話になった人物なのだろう。

 しげしげと自分を見る政宗に、空はドヤ顔で胸を張った。

「当たり前じゃん。それなりに最近のことだよ? あれ、何年前? んー、そこまでは分かんないけど、()()()()()()()()()()っしょ」

「なるほど。じゃあ、俺も空さんって呼んでいい?」

「おけ。そういえばお兄さんの名前は? 太郎?」

「どうしてそう思ったのか聞きたいけど……残念ながら違うよ。俺は政宗」

 次の瞬間、空が目を見開いて「マサムネ!!」と叫ぶ。

「マサムネって武将と同じじゃん!! やっぱイケメンは名前がレベチだわ……ねぇ、眼帯しないの? 馬飼ってんの?」」

「眼帯も馬も持ってないよ。んで、そんな空さんが、手に残ったそれを切って欲しいのは、どうして?」

 軽く話を受け流しつつ、政宗が話の核心へ迫る。

 分からないのは、空自身が、彼女に残る『関係縁』を今すぐに切りたがっていることだ。

 死してなお残る『関係縁』は、生前、特に強い思い入れがある相手との繋がりだ。多くの『遺痕』や『痕』はむしろ、切られることに拒絶反応を示す。だからこそ、懐柔するように近付かなければならないのに。

 空は政宗が指した2本の『関係縁』を見下ろして、不意に、口をとがらせた。

「だってコレ、多分……片方が翼君と繋がってるから」

「翼君って?」

「アタシの神だった人。瀬川翼君って人」

「瀬川……!?」

 刹那、その名前に聞き覚えがあった政宗は軽く目を見開いた。勿論、そんな変化を見過ごさない空は、つけまつげの残る双方を開き、盛大に彼に詰め寄っていく。

「何? マサムネさん、もしかして知り合い!? 翼君がイケメンだから知り合い!?」

「いや、知り合いに似た名前の人がいて……元気にしてるかなって思ったんだ。話の腰を折ってごめんね」

 確証が得られなかったので適当に誤魔化すと、空が更に目を見開いて政宗を凝視する。

「嘘!? 座ってるだけで折れるなんて骨もろすぎじゃない!? マサムネさんマジで大丈夫!?」

「俺は大丈夫。話を戻すけど、どうしてその……ごめん、神ってどういうこと?」

 彼女の言葉に全て反応していると、時間がどれだけあっても体力がもたないことに気付いた政宗は、とりあえず気になったポイントの解説を求める。

 すると空は、さも当たり前と言わんばかりの表情で返答した。

「いや、翼君は神だし」

「どのへんが神なの? イケメンってことは、顔?」

「顔だけじゃなし!! 性格も優しいし絵もうまいし優しいからひっつかんで全部が神なの!!」

「な、なるほど……」

 性格等はひっつかむものではないが、訂正していると話が更に脱線しそうだ。

 政宗は日本語の誤用を正確に脳内変換するよう心がけると、めげずに彼女の目的を深掘りする。

「じゃあどうして、そんな神とつながってるものを切ってほしいの?」

 刹那、空の瞳が複雑な感情で揺れ動いた。

「だってアタシ、死んじゃってるんだよ? なのに、翼君、まだ、アタシを探してるの。これって、この糸のせいだなって思って。だから――!!」

 彼女が声を張り上げようとした次の瞬間、壁をすり抜けた分町ママがこの場に合流した。その姿を見つけた空が「あっ!!」と手を挙げる。

「おばちゃんだ!! やっほー。あ、今日はお酒飲んでないね」

「おば……!?」

 刹那、分町ママが口の端を引きつらせ、政宗は吹き出すのをこらえるので必死になっていた。

 分町ママのジト目で我に返った政宗は、咳払いをした後、改めて分町ママへ視線を向ける。

「空さん、彼女はおばちゃんじゃなくて……分町ママって呼んでくれないかな。俺達はそう呼んでるんだ」

「ブンチョーママ? あれ? ブンチョーママは名前を覚えてない系? おばちゃんだから?」

 そう言って目を丸くする空へ、分町ママは「そうなのよ」と顔を引きつらせながら首肯する。

「貴女みたいに、生前のことを覚えている人ばっかりじゃないのよ。とにかく、おばちゃんは勘弁してくれないかしら?」

「分かった、ブンチョーママ、オッケーオッケー。宜しく。アタシは空でいいよ」

「空ちゃんっていうのね。こちらこそ宜しく。それで……さっき、少し聞いていたのだけど、その翼君って人が、空ちゃんを探しているの?」

 分町ママの問いかけに、空は「そう」とひときわ大きく頷いた。

「アタシ、ほら、あのおっきい波で死んじゃったからさ。翼君、まだアタシがどっかで生きてるって思ってるかもなんだよね。だからたまに、一人で施設があったところにいたりしてる」

「そうだったのね」

 分町ママの相槌を聞きながら、政宗は、空に関する情報を整理していた。


 親に名前をつけてもらえず、施設に入ったことで『川瀬空』と名乗るようになった。

 『瀬川翼』という神……のように親切にしてくれた人がいた。

 そして、彼女が亡くなったのは、4年前の災害が原因だった。

 

「ほら、おば……ブンチョーママには言ったけどさ、アタシ、マサムネさんと……妹さん? 最初に会った女の子が、荒浜にいたヤバいお姉さんを消した瞬間を見てたの。その時、女の子がハサミ使ってたように見えたから、きっと、この『糸』を切ってもらえばいいんじゃね、って、ピーンとひらめいちゃったわけ」

「なるほどねぇ……」

 相槌を打った分町ママは、政宗に目配せをして……一度、軽く首を横に振った。それは、彼女のことはこのまま放置した方がいい、という、『親痕』としてのアドバイスだ。


 彼女はたしかに、生前のことを、驚くほど覚えているけれど。

 でも……それの裏取りをするために、非常に多くの労力と時間がかかることを、政宗は安易に予想することが出来た。

 正直、通常の業務だけであれば、統治やユカにも協力してもらえば終わらせることが出来る。

 ただ、今は……名杙本家や慶次に関する情報を集め、喧嘩を売らなければならないのだ。しかも、ベスト・オブ・繁忙期として覚悟をしている年末も近づいているため、緊急性のないことには関わたくない、というが本音である。


 とはいえ。

 これだけ聞いてしまって、しかも、知っている人物の名前まで出てきた。

 これは果たして……偶然だろうか。


 ここまで話を聞いた心愛は、情報をうまく整理することが出来ず……困惑した表情で政宗を見やる。

「えっと、それで……佐藤支局長、無戸籍だと何が問題なんですか?」

「戸籍がない『痕』は、まず、『生前調書』を作るのがすっごく大変なんだ。今は仁義君も謹慎中だから、あまり表立って頼めないし……ましてや、彼女は災害で亡くなっている。戸籍がない人は自治体も存在を把握していないことも多いから、どこでどう生きていたのか、調べるのにとても時間がかかるんだよね」

 『縁故』として『遺痕』等の『縁切り』を行う場合は、『生前調書』という書類を用意している。

 『縁』を切るには原則としてそれに足る理由が必要になるので、あらかじめ『痕』や『遺痕』の行動範囲や生前の人間関係、死に至るまで等を調べた書類を作成し、それを見て支局長がゴーサインを出すのだ。

 突発的に対応する場合も、後からしっかりと作成する必要がある。この書類があることで、『縁故』一人ひとりが、自分の仕事は単なる作業ではなく、この世界を生きた人間を送る、最期のひと押しであることを自覚することが出来るのだ。

 仙台支局の場合は、柳井仁義(やないひとよし)という少年に動いてもらったり、先日の駆のように新聞社から情報をもらったり、それでも埒が明かない時は直生に相談をして、相手の情報を集めている。

 また、実際に『縁』を切る際は、『縁故』が相手の名前を認識して、それを認めさせることで、有意に立つことが出来る。ただし……彼女のように名付けが後付だったりすると、自分の名前を一切覚えていないということもあるのだ。今回、その心配は不要だけど。

「正直、今はそこに時間と労力を使いたくないし……次の不安点としては、生前の名前が両親由来ではない場合、『縁故』が『縁』を切るときにしっかり認識出来なかったり、最悪、有意に立てない可能性もある。要するに、リスクと手間がかかるから、出来ればこのまま見て見ぬふりをしたいところなんだよね……」

 政宗の話を聞いた心愛が押し黙る。ここでユカが「はい」と手を上げて口を開いた。

「それにしても……川瀬さん、だっけ。『関係縁』が2本残っとるとはいえ、生前と、死んだ後のことまで……よう覚えとるよね」

「それも正直、怖いところなんだよな。彼女は生前、霊的にとても強かった可能性もある。だからやっぱり、できればこれ以上関わりたくないけど……切ってくれるまで押しかけてやるって、笑顔で言われた……無視させてくれないんだよなぁ……」

 何かを鮮明に思い出したのだろう。政宗と分町ママが揃って重苦しいため息をついた。

 ユカは統治と顔を見合わせて首を傾げつつ、余裕のない眼差しで虚空を見つめる政宗を見やり。

「……今日はよく引き下がってくれたね。何かあると?」

「それは分からない。要求を伝えて満足したんじゃないのか?」

 どこか投げやりになる政宗は、缶コーヒーを一口すすって息を吐く。そんな政宗へ、今度は統治が「佐藤」と声をかけた。

「彼女が言っていた『瀬川翼』という人物に、心当たりは? 俺は知らない名だが……」

「俺の知ってる『瀬川翼』で合ってるとすれば、同じ大学で、学部は違ったけど、3年の時の学祭実行委員の仲間で、その後も何度か飲んだことがある人なんだ。今は確か、医療関係会社で営業をやっていたと思う」

 政宗は大学生の頃に、学祭の実行委員やオープンキャンパスの手伝いなど、他学部の生徒とも積極的に関わっていた。そして統治は、学生時代の政宗と外で、しかも多人数で飲んだことはない。ちなみに社会人になってからもほとんどない。理由は推して知るべし。

 それはさておき、政宗はスマートフォンを操作して、まだ、彼の連絡先が残っていることを確認した。卒業してから3年も経過していないので、問題なく連絡は取れると思う。

 ただし……。

「確かに人当たりがよくて、細かいことにも気付いてくれる人だったけど……あの災害で知り合いを亡くしていたなんて話は、聞いたことがなかったな。あと、神って呼ばれてた。アイツ、新興宗教でもやってんのか? 分からん……とにかく、連絡は取ってみようと思う。今のところ、瀬川しか頼れないからな」

 政宗はブツブツと呟きながら、今後の方針を考えようと……軽く目を閉じて思案する。

 そんな彼へ、ユカが「ほい。」と手を上げて。

「ねぇ政宗、この件なんやけど……瀬川さんのことは頼むとして、それ以外はあたしと心愛ちゃんに任せてみてくれん?」

 ユカがそう言った瞬間、急に巻き込まれた心愛の目が最も大きく見開かれた。

 説明回が長くなって本当にスイマセン。(普段の1.5倍)お疲れ様でした……!!

 生まれた時に届けが出されず、戸籍がない人が社会問題になっていたことから、空の境遇を思いつきました。

 間違いなく、ここに書いている以上の不都合や不具合があると思います。今回はあくまでも作中における不都合はこんな感じです、ということで、厄介な親がいたんだという認識でお願いします。ひどい両親の設定は得意です。(威張れない)

 出生届は本人が出せないので(そりゃそうだ)、無戸籍から戸籍を作る場合は裁判所への申立等の手続きが必要になります。戸塚君は後発で戸籍が出来た子ども、空は生涯、戸籍がなかった子どもという違いがあります。

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