08 追跡
ところが、夕方になってもフィナさんが戻ってこない。
今日は相当高くまで昇っていたので、もしかしたら風に流されたのかも。
フィナさんのチョーカー型『コニタン』に呼びかけても応答無し。
……イヤな予感がする。
『お空だと匂いが分かんない……』
心配しないで、ナルン。
すぐに見つけるからね。
『Gふなずし』の探査機能を、僕の付与で最大限まで増幅強化。
…………いた!
って、なにこの速度。
明らかに『シミージュ・改』の出せるスピードじゃ無い。
つまりは、ナニモノカにさらわれたってこと!
プリナさんに、みんなへの緊急連絡をお願いして、
ナルンに、我が家の全力警護をお願いして、
僕は全力で『転送』!
……
さっきの『Gふなずし』探索で大体の方向・位置・高度は把握していたので、
僕の『自在転送』の気配探知でフィナさんの追尾は容易。
気配を追って『システマちっく転送』を繰り返しながら追跡。
つまりは、空を飛びっぱなし。
正確には、落ちっぱなし。
でも、怖いなんて言ってられないでしょ。
ナニカが飛んでるのは、目視でも確認出来ました。
ただ、飛びながらだと、ディテールが良く見えない。
詳細『鑑定』出来るほどの距離まで近付くことも、
フィナさんの安全確保をしながら飛んでるナニカを攻撃することも、
さすがに自信無し。
よって、これ以上近付かないで、今は追跡に専念。
かなりの速度で飛んでるから、地上の様子もどんどん変わる。
飛びっぱなしの『システマちっく転送』の落下感にもだいぶ慣れた。
今は近付きすぎないよう調整する余裕もある。
飛行機同士の空中戦だと、相手の上を取った方が有利なんだっけ。
まあ、空中戦をやる気は無いけど、相手に見つかりづらい位置取りって、上? 下?
なんて考えていたら、ヤツが段々高度を落としてきた。
いよいよ着陸、かな。
……たぶん、今の僕は容赦出来ない。