03 CV
「……」
モルガナさんへの突然の意味不明ハグにぷんぷんお怒りのプリナさんの前で、正座反省中の僕。
隣には、申し訳なさげな、ナルン。
まんまと事を成したモルガナさんは、とっくに撤収。
ぐぬぅ、結局"導き手"の思い通りに踊らされてしまうとは、
修行が足らんにも程があるでしょ、僕。
「おや、見てはいけない家族の秘め事の真っ最中、まるでアランさんのおうちのようですよっ」
「もしかしてお取り込み中でしたか」
こんにちは、アリシエラさん。
取り込み中と言うよりは、どちらかと言うと"占い師"の術中に取り込まれた感じなのですが。
「出直しましょうか?」
いえいえ、こんな醜態まで目撃されたのですから、今さらジローもいいとこですよ。
して、今日のご用件は?
「むふっ、相変わらず覚悟ガンギマリなサイリさんに朗報ですよっ」
「このアリシエラ、ついに全世界待望のアレを完成させましたっ」
「つきましては、まずはサイリ家のコミュニケーション問題解決を、と、」
うはっ、アレっすね!
『多種族間マルチリンガルランゲージトラッカー』
略称『タマランッ』
フィグミさん用に開発された『通訳』魔導具の種族間を越えた翻訳能力は、原理的にはこの世界に存在する意思疎通可能な全てに適応可能。
なのですが、特定の種族のみならともかく、アリシエラさんが目指した『通訳』魔導具は全ての種族に対応可能な汎用型、いや、万能型。
そして、種族特性であるフィナさんの『通訳』能力を、万能『通訳』魔導具で再現しようとすると……
いかんせんまともに実現させると、現在の魔導技術では、あまりのデータ量に個人で携帯するのは不可能なサイズに。
っていうかそもそも、全ての種族に対応させたいなら、これからがっつりデータ集めせにゃならぬ。
で、遅延無しのリアルタイム魔導データ通信が可能という『Gふなずし』の即応性を参考に、
ご自宅の地下工房に、増設も容易な大容量言語データ管理魔導具を設置。
各人が所有する子機が読み取った思念状態の他種族言語をリアルタイムで親機に送信、
親機のデータ管理魔導具に全てのデータを蓄積・解析、
子機端末にリアルタイムで違和感なく『翻訳』言語を送信するシステム。
つまりは、携帯型万能『通訳』魔導具。
それが『タマランッ』
ちなみに、地下工房にある親機は、『Gふなずし』の地図データ保管庫兼用の、成長する巨大な建築物状大型魔導具で、
『マルチフレームジグラット』と呼ばれているそうです。
つまりは、システム総称『マジタマランッ』!
「けんちゃんのご許可は、ちゃんと取得済みですよっ」
すごいよ、アリシエラさん。
いつも以上にイカした魔導具、ありがとうございます。
「さあ、まずはナルンさんとの快適コミュニケーションを存分に!」
では、いきますっ。
こんにちは、ナルン、元気かな?
『先程の我の失態、サイリ殿には誠に申し訳なく……』
以外! それはイケボッ!
声低っ、ってか、口調が硬すぎっ。
ナルン、こんな渋いナイスミドルっ子だったんだ……
えーと、これからは、ナルンさんって呼ぶべき?
「すみません、現在サイリさんの試作型『タマランッ』の言語出力モードが、『男性』『壮年』『生真面目』の、『お堅いナイスミドル』モードに設定されているようですね」
「残念ながら試作型『タマランッ』には、お相手に合わせる自動調節機能はまだ搭載されておりません」
「連携されている『コニタン』からの設定変更が可能ですので、違和感のないよう手動調整していただければ……」
なるほど、了解です。
ちょっとビビっちゃいました。
えーと、腕輪魔導具『コニタン』の設定画面から、連携されてる『タマランッ』の設定画面を呼び出して、と。
ナルンは女の子ですから、当然『女性』
年齢は、僕と同い歳くらいで良いかな。
口調は……フレンドリーな感じにしたいから『お友だち』で。
はい、設定完了っと。
それじゃ、
こんにちは、ナルン、さっきのアレは僕が悪いんだから、気にしなくて良いからね。
『サイリパパ優しいね、大好き!』
うひゃっ、可愛いっ。
ナルンの可愛さがよりいっそう引き立つ元気っ娘ボイス、
こりゃあマジタマランッ!
「お気に召していただけたようでなによりですっ」
「今後は、この試作型『タマランッ』子機の機能をブラッシュアップしてから『コニタン』に実装、よりいっそう皆さんの冒険者活動のお役立ちに、ですよっ」
今回は、性能から略称、今後の展望まで本当にお見事な、完璧な仕上がりですね。
「それでは次は、『シミージュ・改』のよりいっそうの快適性向上を目指す所存であります」
「それと、サイリさんのネコ暴走対策の方も、現在粛々と進行中ですよ」
「お楽しみにっ」
本当にありがとうございました、アリシエラさん。
いずれはアリシエラさんのプリチーなネコミミも存分にモフモフしたいという密やかな野望が、あったりなかったり……




