02 満腹
無事、我が家に到着、
お庭にいたプリナさん、ちょうど昼食準備の真っ最中。
スーミャとイリーシャさんは討伐遠征中、
フィナさんとフィグミさんは夜までおねむ、
つまりは、プリナさんとナルンと僕とで、幸せお昼ごはんをいただきますってことですよ。
「おかえりなさい、早かったのですね」
ただいま、プリナさん。
なぜか急にオムパスタが食べたくなったので、急遽とんぼ返りしちゃいました。
せっかくお弁当を用意してもらったのに、ごめんなさい。
「ちょうどお庭でパスタの準備をしていましたから、オムパスタしましょうね」
ありがとうございます、良かったね、ナルン。
「きゃっ」
プリナママだいすき! ってな感じで飛び付いたナルン、
ぺろぺろぺろぺろ
うん、さすがはナルン、容赦無し。
ぺろぺろぺろぺろ
いや、本当に容赦無し。
ぺろぺろぺろぺろ
えーと、もうちょっと容赦を……
「そんなにもの欲しげなまなざしで我慢せずとも」
「遠慮せずにサイリさんもぺろぺろするがよい」
「と、"導き手"は告げた」
……出たな、トラブル"占い師"
お昼どきを狙って来るとは、さすがですね、モルガナさん。
まあ、プリナさんがお庭パスタしていた時点で来客に気付くべきでしたけど。
「プリナさんの美味しいお昼ごはんがお目当て、では無く」
「あくまで目的は"サイリウム"補給」
「そして、より効率的な摂取にはハグがオススメ」
ふふん、このイシン サイリ、いつまでもなすがままだと思われるのは心外。
ハグはもちろん、大切なプリナさんのオムパスタも、謎の"占い師"の好きに出来ると思うなよ!
「ふふん、心得違いはどちらかな」
「なぜなら私は"占い師"では無く"導き手"」
「つまりは、二兎を得るような"導き"など余裕のよっちゃん欲張りさん」
「必ずや、オムパスタざんまいハグざんまいで勝利の美酒を」
うちは飲酒はご法度ですよ、モルガナさん。
ちなみにおいくつですか。
「うっ……」
まずは先手成功、この調子で今日こそ勝利を!
……
オムパスタ、うめぇ!
ってな感じで無我夢中でパクついちゃいまして、
もちろんモルガナさんなんかに構ってるヒマなど微塵も無く、
気が付けば、みんな満腹にこにこ状態。
いえ、相変わらずの高隠蔽フードの奥のモルガナさんの表情は全く確認出来ないのですが、
満腹大満足っていうのはさすがに気配で分かりますって。
「まずは、一勝」
くぅ、なんという憎たらしさ、まさに天敵。
このままハグられるのだけは、なんとしても避けねば。
家長のピンチ、今こそ出番だ、我が家の守り手ナルン!
……って、懐いてるし。
なんすか、あんなに怪しげなだぼだぼローブのフード被り娘にすりすりのぺろぺろですか。
……違うぞ、コレ。
『ここは俺に任せて先に行けっ』
ってヤツだっ!
スゴイよ、ナルン。
でもね、家族を犠牲にして助かろうなんて、そこまで落ちぶれてはいないのですよ、このイシン サイリ。
やってやろうじゃない!
ぎゅっ
細っ。
僕より痩せっこな人、初めてだよ。
しかし、僕より細いということは、モルガナさんはこのハグからは脱出不能ということ。
つまりは、僕の勝利!
はて、このイベントの勝利条件とは……
『にやり』