16 勝利
えーと、悪化しまして、肩が。
それでも、自身の固有スキルのみならず、クロ先生の治療薬まで断っちゃった、意固地な僕。
あー、悪い方向に頑固をこじらせるパターン、いかんよ、これ。
『ごめんね、サイリパパ……』
ナルンのせいじゃ無いんだよ、悪いのは僕の運動不足とお調子者の性格だからね。
「お薬、どうしてもお嫌ですか……」
すみません、プリナさん。
なんだかいろいろ悔しくて意固地になっちゃってるのは心底理解してるのですが、今回は自分への戒めの意味も含めて、しばらくこのままでいようかと。
「ふむ、それは困る」
「サイリさんの体調が回復しないと、"サイリウム"放出量にも影響が大」
「それは本当に困る」
このタイミングで来るか、おじゃま"占い師"め。
ふむ、でもモルガナさんが困ると言うことは、なんだか僕的には勝利な気がしないでも無し。
つまりは、僕の苦しみが長引くことこそが栄光への架け橋にして勝利への道!
って、ソレだとドM宣言でしょっ。
「ふふん、ジレンマに悶えながら、ついでに身体も悶えるが良い」
「一度の"サイリウム"補給で足りないのならば、何度でも訪れて補給すれば良いじゃない」
「つまりは、長期になればなるほど私がこの家を訪れる回数が増えて、美味しいお料理やお菓子に出会える回数が増加」
「それって私にとっては美味しいことこの上無しの長期戦略なり」
ハイッ、"肩すっきりな健康体"を自身に速攻で即効付与。
イエーイ、超スッキリ!
どうよ、これぞサイリ流異世界健康術。
しつこい不調もキレイさっぱり、まさに心も身体もピッカピカってね。
「うふっ、確かにピッカピカですね、"サイリウム"溢れまくり」
「さすがはプリナさん、サイリさんのことは何から何までお見通し」
「二重の意味でごちそうさまでしたと勝利宣言して、"導き手"は去るのです」
…………謀られたっ。
ってか、プリナさん!?
あんなのと共謀しないでくださいよぅ。




