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13 思案


 平穏な日々が戻ってきました。



 ナルンは、以前よりちょっとだけ精力的にナワバリ巡回するように。


 個人的には、可愛らしい女の子声のナルンには、あまり無茶してほしくは無いのですが。



『心配御無用ですぞ、サイリ殿』


 うわっ、渋っ。


 ちょっと誰ですか、ナルンのボイス設定を変えちゃったの。



『ボクが自分で変えられるように、アリシエラお姉さんにお願いしたのっ』


 えーと、ナルン。


 僕の前ではやめてね、ソレ。



『それじゃ、ナワバリお散歩、行ってきまーす』


 はい、気をつけて。




 ふむ、お庭にナルンハウスを建てるのでは無く、みんなといっしょの生活にしたこと、やっぱり正解だったかな。


 もちろん、みんなでわいわい相談しながらナルンハウスを建てるのも楽しかっただろうけど、


 あれだけ綺麗好きなナルンをお外暮らしさせるなんて出来ませんでしたし。


 それに、あの女の子声を聞いちゃったら、ねえ。




「元気なのは嬉しいのですけど、女の子なのだからもう少し……」


 大丈夫ですよ、プリナママ。


 子は親の背を見て育つと言いますし、ナルンだってプリナママみたいなおしとやかさんになりますって。



「……」


 はい、りんごほっぺプリナさん、いただきました。


 今日はまた一段と可愛らしいですね。



 ぽかり


 いてぇ!


「らぶらぶ呑気も結構だが、ルシェリさんからの依頼の件、どうするのだ」


 ひどいよ、イリーシャさん。


 そもそもその件はヴァンパイア組にお任せするって……



「えー、サイリ、やっぱり行かないの?」


 えーと、スーミャ。


 今は家長として我が家の防犯対策の再検討が先、かな。



 ルシェリさんからの依頼は、例の魔法の絨毯絡みの件。


 あの学者先生が司法官監督の元、チームを組んで秘宝の絨毯の魔法陣の解析を進めているそうで、


 現在判明している情報の確認のために古代王国の遺跡を探索する人員を大募集しているのですよ。


 スーミャとイリーシャさんは大乗り気なんだけど、もちろん僕はお留守番希望なのです。



「むう、ナルンの日課のお散歩は心配でも、危険な遺跡の探索に挑む私たちの心配をしてくれぬとは」


「サイリ、ひどーい」


 いえいえ、超強いヴァンパイアのおふたりには、心配するなんてむしろ信頼を裏切る行為。


 海の魔物のくっさいアンデッドの大群にも負けなかったおふたりなら、遺跡の魔物ごときなんてモノの数ではありますまい。



「……」×2



 おふたりとも、めっちゃ顔をしかめております。


 相当くさかったそうですからねえ、海産物アンデッド。



「すっごい魔導具の秘宝を見つけても、サイリには貸してあげないからっ」


「……では、募集手続き、行ってきます」


 はい、お気をつけて、おふたりとも。



 ……



 ふー、ようやく我が家も落ち着きましたよ。


 プリナさんは、りんごほっぺのまま、干しているおふとんをぱんぱん叩いております。


 あのチカラの入りっぷり、なんとなくナギナタの修練に見えちゃうのは気のせいでしょうか。


 ちょっとおふとんに同情しちゃうほどに……



 ナルンは、日課のナワバリお散歩。


 この間みたいに、迷子の冒険者を咥えて来ませんように。



 スーミャとイリーシャさんは、例の依頼の受け付け手続きのためにキルヴァニア王都の巡回司法官支部へ。


 確か、あの支部には見習いの司法官助手としてレマリィが居るんだっけ。


 大丈夫……だよね。



 フィナさんとフィグミさんは、あそこの木陰でおやすみ中。


 木からぶら下げられた編みカゴの中で、ぴたりと寄り添い合いながら、そりゃあもうぐっすりと。


 とても気持ち良さそうなのですが、この前みたいに毛虫が落ちてきて大騒ぎになりませんように。


 アリシエラさんに、毛虫避け結界、お願いしようかな。




 フィナさんの『シミージュ』依存症の件は、きっちり解決しました。


 シナギさんの恋人、じゃなくて、ご友人のヴェルネッサさんから、あの件についていろいろとアドバイスをいただいたのです。


 ヴェルネッサさんは北方の魔導大国メネルカ魔導国のご出身で、魔法研究の大家。


 南方の古代王国の失われた魔法についても研究なさっているそうです。



 で、例の魔法の絨毯にも失われた魔法技術が魔法陣として織り込まれているそうなのですが、


 飛行をサポートさせる魔力源として妖精を惹きつける魔法陣が使われていたのだとか。


 つまり、『シミージュ』に使われていた絨毯の切れ端には、フィナさんをマタタビする効能があった、と。


 なるほど納得、なのですが、妖精さんを絨毯で飛行するための予備燃料タンク扱いするなんて、そんな古代王国は滅んで当然だよね。



 魔法陣から遠ざけておけば影響は薄れていく、とのことで、今はフィナさんも元通りの呑気妖精さんなのです。


 ただ、あの編みカゴへのご執心っぷりは、依存症じゃないですよね。




 僕は、我が家の防犯対策を思案中。


 あの件で、上空などからの奇襲の可能性があることが判明しましたからね。



 対策案、ひとつ目。


 結界範囲の拡大。


 現在の結界は、我が家を中心とした半球状のもの。


 単純に結界を広げれば良い、のでしょうが、それだとイタチごっこになりそうな予感も。


 結局は、より抜本的な対策が必要となる、よね。



 対策案、ふたつ目。


 地下はともかく、まずは上空を重視ということで、なんらかの魔導具で上空監視を強化。


 たとえば、無人の気球型魔導具などでの常時滞空対空監視。


 または、モノカ邸のような高高度ポールを立てて、その先端に監視魔導具を設置。



 今この異世界では飛行する脅威は少ないとはいえ、


 なにも対策しないでいると、あの時みたいに痛い目みちゃうし。



 かと言って、上空に展開させた結界に僕が追加付与すると、即死系でも麻痺系でも、空からいろいろボトボト落ちてくるようなホラーな展開に。


 我ながら想像力がアレですけど、結局はいつも通りにアリシエラさんと相談、かな。



 なんだか、いつもアリシエラさんに頼ってばかりで、少し情けないのです……



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