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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第四章 旅の前の一騒動
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4.5.状況把握


 自信満々に胸を張るドーレッグは頼もしい存在だ。

 彼がいればほとんどの冒険者は味方に付いてくれると考えてもいいだろう。

 しかし物事はそう単純ではないらしい。


 ギルドとしての頂点に立っているドーレッグは冒険者のほとんどを味方につけるだけの力を持っている。

 だが問題なのは、それが本当に信用に足る人物であるかどうかだ。


 冒険者は力量もそうだが、商人と同じように信用されなければ仕事をさせてもらえないことは数多くある。

 ただ強いだけではこの世界を生きていくことは難しく、素行の悪さなどが目立つ場合には依頼する側もそんな人物に頼みたくはないと突っぱねられてしまう。


 それは今回も同じだ。

 もし冒険者の中で口が軽い人物がいた場合、もしくは商会との関係が深い場合は後手に回る。

 たった一日とはいえども向こうは本気で二人に襲いかかってくるはずだ。

 それだけ切羽詰まった状況であるのは間違いない。


 だからこそ、仲間探しはとにかく慎重にしなければならないのだ。

 今いる冒険者の中で協力してくれそうな、尚且つドーレッグが信用できる人物は誰だと頭の中で冒険者の顔ぶれを思い出していく。


 それとは別に、これからのことも考えなければならない。


「仲間探しは儂に任せておけ。問題は脱出方法だな」

「せ、仙人さんからは明日の朝もう一度来るようにと言われています」

「となると転移の樹木は使えないと思った方がいいか。待ち伏せされているだろうから、向こうまでは徒歩で行くことにしよう」

「でも向こうでも待ち伏せされているのではないですか?」

「可能性は捨てきれん。だが、その辺は仙人様の仲間たちが何とかしてくれるはずだ」


 ドーレッグが確信したように頷く。

 確かに彼らであれば危険因子を排除するのは至極簡単な作業であるように思える。

 そんなことならこっちの方も手伝ってほしいのだが、彼らも何か準備があると言っていた。

 今のところこちらに裂く余裕はないのかもしれない。


 とにかく自分たちでできるだけのことをする。

 そういえば、とテールはドーレッグに声をかける。


「仙人さんの居場所って結局どこなんですか?」

「転移の樹木使って移動したから分からないのか。よし、待ってろ」


 ドーレッグが立ち上がり、本棚を漁り始める。

 しばらくすると細長く丸められた紙束が取り出され、それを持って来て机の上に広げた。

 どうやらそれは地図だったようで、この国の全体像が手に取るようにわかった。


 こんなのが何処かの国に渡ってしまったら攻め落とすのは簡単だろうなと思いながら、その地図を見る。

 今いる場所は冒険者ギルドではあるが、それが何処か分からなかった。

 すると、ドーレッグが一点を指し示す。


「ここが今儂らがいる場所だ」

「「ちっさ!」」

「それだけ大きな国ということだよ。そして仙人様のいる場所は……」


 すーっと指を動かして城壁を越える。

 その先をまっすぐ滑らせていくと、大きな森の中に入った。

 森から入って数秒後の場所で指を止め、トントンと叩く。


「ここに仙人様のお住まいはある。転移の樹木はここだ」


 仙人が住んでいる場所から意外と近い所に転移の樹木はあるようだ。

 それにしては移動距離が長いような気がしたが、それはあの大きすぎる庭のせいだろう。

 建物の中も意外と広かったし、移動距離が伸びてしまうのは仕方がないような気がする。


 そのあと、ドーレッグがまた指を動かす。

 仙人の住んでいる家の周囲をぐるりと囲った。


「この辺りに商会の兵士がいる」

「すでに包囲されてるじゃないですか……」

「これも何とかしないといけないけど、まぁ強行突破で問題はないと思うぞ。奴らはせいぜい見張り程度の力しか持っていないし、冒険者ランクで言えばCランク程度だ。取るに足らない」

「でも絶対にこの一日で増員されますよね」

「その通り。だが、どの方角に行くかは分かっていない」


 いくら兵士をかき集めたとしても、全方位を十分に囲みきれるだけの数は用意できないはずだ。

 向かう先が分からないから、商会の連中は何とかして全方位を囲む必要がある。

 それによって集められた兵士の壁は薄くなり、突破は容易くなる。


 仙人の住まいから見て、東にリヴァスプロ王国があり、南に海がある。

 西と北には大陸が続いていてどちらもしばらく進めば国があった。

 逃げるのにわざわざ東に来る必要はないはずなので、移動するのであれば南、西、北の三方向のいずれかだ。

 転移の樹木で兵士を効率よく集められたとしても、やはり完璧な包囲は難しい。


 だからとにかく二人を襲撃するのに尽力を尽くすはず。


「やっぱり問題はこっちだな……」

「……んー……」

「……どうしたの、メル?」


 話を聞いている間、メルは何か引っかかるような気がして唸っていた。

 テールに声を掛けられたので、今考えていたことを口にする。


「いや、こうなることが分かってたんならどうして私たちをこっちに戻したのかなって……」


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真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
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