2.22.Side-メル-パーティー解散
ダムラスに言われた通り、東にあるスイーツ店に駆け込んだメル。
扉を開けて店内を探してみると、私服を着ているアイニィとコレイアがそこにいた。
今日来る予定ではなかったメルを見て、少し驚いている。
なにせ仕事着を着ているのだ。
今日は休みなのにどうしてそんなものを着ているのだろかと首を傾げていると、メルは二人を見つけるや否や目の前に走っていった。
「二人とも!」
「ど、どうしたの……?」
「なにかあった?」
「本当に、本当にごめん。私……この国を出る」
「「……え?」」
突然の告白に疑問の言葉が自然と出てしまった。
これが意味することは、パーティーから抜けるということだ。
アイニィとコレイアは顔を見合わせて、またメルの方を向く。
突然そんなことを言われてもどう反応すればいいのか分からない。
本当に急すぎるのだ。
「り、理由を聞いてもいい……?」
「テールが追放されたってカルロさんが教えてくれたの。理由は知らない。でも今テールは一人で外を歩いているはずなの……」
「そういうことね……」
二人も、メルがテールを好いているということは知っている。
こんな状況になったのであれば追いかけるのは普通だろう。
だから、二人の答えはすぐに出た。
「いいよ。頑張ってね」
「うん、応援してる」
「いいの?」
「いいに決まってるじゃない。私は強いし、コレイアも強い。他のパーティーもすぐ見つかるわ。でもメルが追いかけてる人は一人でしょ。他の誰も代わりにならないんだから、彼を追いかけるんだったら私たちは止めないわ」
「うんうん。でもいつか帰って来てね。待ってるから」
「……二人ともありがとおおおお!」
「「わあっ!?」」
一瞬で二人の背後に回ったメルは、アイニィとコレイアをガッを抱きしめる。
ここまで気持ちよく送り出してくれる人は、この二人を置いて他にはいないだろう。
嬉しくて涙が出そうになる。
だがそれを堪え、二人の温もりを最後に確かめた後ぱっと手を放した。
「本当にありがとう! またいつか!」
「ばいばい!」
「お土産まってるね~」
二人に手を振って店を出る。
しかしその一歩手前で、苦手な人物がその場に立っていることに気が付いた。
「ゲッ」
「やぁメルちゃん。仕事服に着替えてどこに行くんだい?」
「あんたに構ってる暇はない」
「でも一人じゃないか。仕事に行くんだったら俺が手伝っても──」
「「そいっ!!!!」」
声を掛けられた瞬間、左右からアイニィとコレイアが飛び出してきた。
アイニィはそのまま右側から拳を振り上げて顔面を捕らえ、コレイアは左から飛び出し、下から突き上げる様に蹴りを繰り出した。
それらをもろに喰らったガーディウスは吹き飛び、スイーツ店の扉から大通りへと吹き飛ばされる。
彼は既に気絶しており、取り巻き三人が心配するように集まってきた。
揺らしたり叩いたりして見るが、目を覚ます気配は一向にない。
「な、なにしやがるんだ!」
「「メルの門出は邪魔させない!!」」
「ありがとう! じゃあね! アイニィ! コレイア!」
「こっちは任せて! もうこいつらにはうんざりだからね!」
「同意……」
見ているこっちもスカッとしたので、気持ちよく旅に出ることができそうだ。
メルは走りながら手を振り、西の城門へと走っていった。
初めての一人旅だ。
だがこれは一時的なもの。
テールを見つけることさえできれば、あとは二人での旅となる。
こんな日が来るのを心待ちにしていた自分がいる。
それに少し罪悪感を覚えてしまうが、やはり自分の気持ちを抑えることはできないようだ。
自分を育て上げてくれたナルファムに挨拶をする事はできなかったので、また今度帰ってきた時にでも謝るとしよう。
ダムラスは相当怒られてしまうだろうな、と想像して少し笑った。
「待っててねテール! 今行くから!」
ナルファムに貰い、テールに研いでもらった両刃剣・ナテイラを携え、テールが通ったと思わしき道を走っていった。
国から離れるにつれ、賑わいが消え去っていく。
メルは屋台のおじさん、ダムラス、アイニィとコレイアの期待を背負って、テールを追いかけたのだった。




