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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第0章 幼少期
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0.2.十歳


 神託を授かるまであと二年となった。


 テールは背丈も伸び、顔立ちも男の子らしくなったように思う。

 髪型はリバスの真似をして、髪を伸ばして後ろで束ねるようにしている。

 銀髪によく似合う綺麗な青色の瞳は父親譲りだ。

 若くても男の子なので髪の毛は少しばかり癖が強いものの、その父親譲りの銀髪の毛は、そうしているだけで強くなれた気がした。

 十歳になった今ではリバスの手伝いができるようになっており、テールは村中を駆け回っている。


 リバスは普段、村の見回りと畑仕事を率先してやっている。

 元冒険者のリバスは村人からの信頼も厚く、魔物などを討伐してくれたり、鹿や猪といった動物を狩ってきてくれたりもするのだ。

 そんな父親の後ろをえっちらおっちらとついて回っている内に、自然と体の動かし方、山の歩き方、はたまた畑仕事のやり方全てを理解することができるようになっていた。


 スキルもまだ貰っていないのに大した小僧だと、村人たちから褒められたりするのが最近の日常だ。

 とはいってもまだまだリバスの様な動きはできないし、弓を引く力だってないので、リバスのおこぼれに預かっているだけというのが本当のところだ。


 そんな矢先、可愛らしい声がテールの耳に届いた。


「テール君! あっそびーましょ!」

「ええ……今お父さんと狩りに……」

「むー」


 言葉をすべて言い終える前に不満の声を漏らしたのは、テールの幼なじみで白色の髪の毛が特徴的なメルという名前の女の子だ。

 珍しい赤い瞳なので最初は少し不気味だったが、明るい性格が幸いして村の人たちや子供たちからもよく可愛がられている。

 女の子でありながら活発で、男の子の遊びに率先して参加したがる元気な子だ。


 別に苦手意識をテールが持っていた訳ではないが、メルと遊ぶとなると一日中連れ回されるのでリバスとの時間が減ってしまう。

 テールはそれが嫌でできる限り避けてきたのだが、一年ほど前からしつこくまとわりついてくるようになってきた。


 その理由をテールは理解できていなかったが、大人たちはその光景を微笑ましそうに見守っていた。

 もっとも一番それを面白そうに見ていたのはリバスであり、メルがテールを遊びに誘う度に、何とか理由を付けて距離を取ったり、いつの間にか居なくなっていたりした。


 その行動に更に首を傾げるテールであったが、居なくなってしまったのであればその誘いを断る理由がなくなるので、結局メルと一日中遊ぶことになってしまうのである。

 メルのことはテールも嫌いではない。

 ただ、面倒臭いのだ。


 とはいっても、遊ぶとなればそれはそれで面白い。

 テールは自分の好きな事以外は率先してやりたがらないだけだ。

 面倒くさがりとも捉えられるだろうが、それはあながち間違いではなかった。

 結局、今日もリバスが何故か居なくなってしまったので、メルと遊ぶことになった。


「はー……今日は何するの?」

「えーっとね、魚釣り!」

「あれ? メルって餌になる虫触れたっけ?」

「触れなーい。だから餌付けお願い!」

「ええぇ……」


 これがいつものパターンである。

 メルは何をするかを決めてから来てくれるので、何をしようかと迷った事は一度もない。

 が、面倒臭いことは全部テールに押し付けてくる。

 メルが森に入ろうと言えばテールに剣を持ってこさせ、鬼ごっこをしようと言えばテールに他の子供たちを集めるように指示し、遠足に行こうと言えばテールにお昼ご飯を作って貰ったりと様々である。


 僕はお姫様の護衛じゃないぞ、と心の中で呟きながらも、何故かメルに従ってしまうのだった。


「じゃ、道具を取ってくるから待っててね」

「ついてく!」

「……まあいいけど、荷物半分持ってね」

「うん!」


 そうメルと約束して、テールの家に釣り道具を取りに行くことになった。

 近場の川で魚釣りをしに行く、とレアリーに報告すると、なんとお弁当を作ってくれた。

 微笑ましそうにしているのは何故だろうかと首を傾げるが、これはまた一日拘束コースだなと少しだけ肩を落としたのだった。



 ◆



 釣りから帰ってきたテールは、日々の日課である素振りをしたあと、何でもいいから刃物を研ぐようになっていた。

 剣はなかなか研ぐ機会がないので、農具や包丁を好んで研ぐようにしている。

 このすべては冒険者になった時の為の布石なのではあるが、この事はレアリーにはバレていない。

 リバスは知っているようではあるが、決してそれをレアリーに話すことはなかった。


 未だに冒険者になる事だけは認められていないので、あと二年の間にどうしようかと考えながら、鎌を研いでいた。

 使い古した砥ぎ石は変形し、数回当てるだけでも切れ味が増すように感じられていた。


「鎌は研ぎにくいな……」


 鎌は他の道具や武器に比べて、その形が素直ではない。

 それに刃の幅が狭いので研ぎにくいのだ。

 なので鎌を研ぐ時は研ぎ石ではなく鎌の方を動かして研ぐようにしている。

 いつもとやり方が反対なので非常に難しいが、これでなんとなく刃がつくように感じられた。


「ま、こんなもんかな」


 鎌を外していた柄にはめ込んで元に戻しておく。

 軽く振って鎌が飛んでいかないかどうかを確認し、定位置に仕舞った。

 後は使い終わった砥ぎ石を綺麗に洗って、これも同じ場所に片付ける。


「またお父さんに買って貰わないとなー……」


 使い終わった砥石を見てみれば、すり減って小さくなっていた。

 研ぎ石もその辺にある石でいいというわけではないらしく、鉱石に詳しいスキルを持った人が採掘をして掘り当てるのだとか。

 非常に安いものではあるが、専門の人が選んでくれた研ぎ石は確かにその辺にある石よりも刃がつきやすい気がした。


 テールはまだ街に行った事がなく、砥ぎ石が欲しい時は街に行く村人か、リバスに頼まなければならなかった。

 何故行かせてくれないのだろうかと毎度思ってはいるのだが、どうもその理由が分からない。

 だがやはり心配だから行かせたくないのということは分かったので、大人たちの言いつけに素直に従うことにする。


 とはいっても、そこまで街に行きたいという事もないし、今は村で山の歩き方や狩りの方法を学んでおいた方が今後のためになるはずだ。

 テールはまだ街に行って何か得られるものがあるとは思えなかった。


 なので、砥石は他の村の人にお願いしようと決めてから、夕食を食べに家の中に入っていくのだった。


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