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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第十三章 進軍、キュリアル王国
376/422

14.23.


 守身番・十録と鎮身が消えると、その場に涼しい風が通り抜けたような気がした。

 まるで彼らの魂を運んで行くような。

 そんな涼しくもあり温かくもある優しい風だった。


 彼女とは短い付き合いで、頑なに『奇術は使うな』と言われていたため戦闘時に使ったことは一度もない。

 しかし今所持している中で最も良識のある刀だったように思う。

 隼丸もまぁ良識はある方だとは思うが、性格があんな感じなので子供っぽく見え、守身番・十録よりは大人に見えない。


 そんなことをお口にすれば怒るんだろうな、と思いながら、空を見上げた。

 今回は灼灼岩金を研いだ時のような寂しさはない。

 もう一度会うことは決してないだろうが、あの二人の存在はテールの中に永遠に残り続けるだろう。


『『テール~。次はどうするの? 中夢を研ぐの?』』

「んー、ちょっと考え中。中夢の魔法は強すぎるから僕じゃ使えなさそうだし、候補には入れてたんだけど……まだ何にも知らないんだよね。この子の事」

『ほぁ? なんかありますのん?』

『『ああー、それもそうだねー。まぁ奇術は強いし、いざとなったら使えばいいさ』』

『……ということは、ということは今はもう研がぬ、と?』

「そうだね」


 不撓の言葉にテールは頷く。

 自分を最低限守る為にも、やはり彼らの協力は必要だ。

 研ぐ順番というのは本当に大切で、誰を残すかを検討しなければならない。

 木幕たち仙人の仲間も、誰から研ぐべきなのかは今も検討中だ。

 しかしすでに、なんとなく決まっている。

 まだ誰にも話してはいないが。


 すると、カルロが隣に座った。

 珍しい武器を興味深そうに見てから、先ほどまで使っていた砥石をまじまじと見る。


「……これはルーエン王国の……」

「よく分かりましたね」

「話には聞いたことがあったからね」

「へぇー。……あれ、メルたちは?」

「テール君は集中しすぎかもね。何時間経ったと思う?」

「え?」


 ぱっと空を見てみるが、自分が研ぎを始めてからそう時間は経っていないと思っていた。

 なにせ研ぎを開始した時と、周辺の明るさが同じだったからだ。

 しかし周囲はなんとなく変わっていたように思える。


 もしや……と思って恐る恐るカルロに聞いてみた。


「……も、もしかして……十二時間くらい……? 経ってますか……?」

「ほぼ一日。なにかに囚われたように研ぐんもんだから、止められなくてね。といっても、あの様子だと言ってもやめなかっただろうけど。夜になったから女の子たちは返したよ。皆遅くまで付き合ってくれていたけどね」

「そ、そうだったんですね。悪いことしたなぁ……」


 そういえば、灼灼岩金を研いだ時も知らない間に七時間が経過していた。

 自分は二時間程度で終わらせているような感覚だったのだが、実際はその数倍の時間を要している様だ。


 確かになんだか眠い気がする。

 集中力が切れたからだろうか。

 一気に疲れが押し寄せてきたような気がして、瞼が重くなった。


「ね、眠い……」

「はは、そうだろうね。じゃあ片付けようか。それまでは頑張って」

「はい……」


 砥石を直し、綺麗に水気を取ってから布でくるむ。

 それをバッグの中にしまって背負い、テールとカルロは一緒に冒険者ギルドの方へと向かった。


 その背を見送った木幕は、小さく頷く。

 隣にいたレミも満足そうに笑っていた。


「どうですか、善さん。もう任せられるんじゃないです?」

「なんにせよ某は最後だ」

「ふふ、それもそうですね」


 その言葉が出るのならば、もう木幕はテールの技量を認めているのだろう。

 素直じゃないな、と心の中で笑いながら、自分も魔法袋に手を当てる。

 この子を研いでくれるのはいつになるだろうか。

 そんなことを考えてしまう。


 決して早く旅立ちたいわけではないが……やはり、できるだけ早い方がよさそうだ。


「で、善さん。これからどうします? 私たちここにずっと留まっていると、また侍が来ますよ」

「……そうだな。しかしこの都をこうしてしまった責任は某らにもある。もう少し見届けてからでも問題は無かろう」

「期限決めておいた方がいいですよ。それに、私たちの中でも一人、そろそろ解放してもらわないと、身が持ちませんから。誰が最初か、決まってますか?」

「決めるのは某ではない。テールだ」

「あら」


 少し意外な答えに目を瞠る。

 だがこれは木幕とテールが話し合って決めた事。

 タイミングはさすがに任せきりとはいかないが、まず最初に誰を研ぐのかは、テールに決めてもらうことが決定している。


 ここにいる間に、一人は研いでもらおう。

 木幕はそう考え、復興に協力する傍らこちらの負担を少し減らしてもらおうと思っていた。

 テールと出会ってからしばらく経つ。

 自分の腕を見てみれば、少し違和感が残っていた。


 器になみなみと注がれた水が、零れそうだ。

 時間はもうあまり残されていないが、木幕の中に居る者たちで力のある人物を解放することができれば、まだ持つだろう。


「……明日、頼んでみる」

「わかりました」


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真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
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