表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第二章 追放
36/422

2.15.お祭り


 大通りをすべて使ってお祭りが開かれている。

 朝から盛大な賑わいを見せており、いい匂いや軽快な音楽、楽しんでいる人々や祭りにあやかって商売をしている人物などが、お祭りを盛り上げてくれていた。

 盛大なパレードも同時に行われており、これは朝から昼、昼から夜の二回に分けて行われるものだ。


 さすが王都なだけあって、その規模は昔いた故郷とは大違いである。

 一日を使って行われる祭りなど、ここに来て初めて参加した。

 それはメルも同じであり、当時は人の多さと様々な匂いが混じって目が回りそうになったことを覚えている。


 今はもう慣れてしまったので、体調が悪くなってしまうということはない。

 なので普段通り歩くことができていた。


「ねぇテール、どこに行く?」


 テールを誘ってくれたメルは、今日は私服だ。

 可愛らしい格好はすれ違う人に二度見されてしまうほどである。

 しかし腰にだけは剣を携えていた。


「んー、特に行きたいところはないんだよねー……。メルに合わせるよ」

「ちょっとくらいないのー?」

「あ、そういえば僕が研いだ剣……。あれが王子様に渡されるみたいだから、それを見たいな」

「見れるのかな?」

「さ、さぁ……」


 誕生日で渡されるものとは聞いていたけど、手渡すところを公開するとは聞いていない。

 しかし王子の誕生日は、何か献上品を公爵の人が渡すという催しがある。

 見ることができるかは分からないが……とりあえずいつも王子が演説する場所に向かってみることにした。


 だがやはりその演説を見ようと殺到する人が多く、なかなか前に進むことができなかった。

 これ以上進むとはぐれかねないので、諦めてこの辺から見ることにする。


「見える?」

「んー、何か喋ってるのは分かるけど……何か手渡している感じじゃないなぁ」

「難しそうだね。でも研いだ剣って何?」

「あっ」


 そいえばこの事はメルにあの剣のことを話してはいなかった。

 いつもメルにだけはどんなことでも話していたので、うっかりしていたようだ。


「ご、ごめんこれ内緒なんだった……」

「じゃあ黙っておいた方がいいね!」

「ありがとう」

「で、どんなことしたの?」

「……」


 他の人には話はしないけど、何をしたのかは聞きたいらしい。

 これは自分がうっかりしていたから起こってしまったことだなぁと反省する。

 しかしここで話すのは良くなさそうだ。

 また店に帰ったら話すことにする。


 メルもそのことに納得してくれたので、今はお祭りを楽しむことになった。

 屋台に足を運んだり、お店に入って買い物をしたりする。

 なんだかいつもの生活と変わりがない気がするが、メルが楽しそうなので問題はないだろう。


「そういえばメル、今日はお休み?」

「うん! お祭りの日に仕事したくないからね~。前回の報酬と解体した魔物を売却して懐あったかくなったし! 皆今日は好きなことしてるよ」

「へー。どんな魔物を倒したの?」

「あとで名前を知ったんだけど、ハランドラっていう魔物と戦ったんだ。すごく大きくて大変だった。依頼書に書かれていた大きさと全然違うんだもん! 凄く大変だったよ」

「無傷で帰って来てる辺り……結構余裕だったんじゃない?」

「ばれた?」

「メルは分かりやすいし」


 メルのパーティーが今日全員好きなことをしているということは、彼女たちも特に大きな怪我を負っておらず、祭りを楽しめるだけの余裕はあるということだ。

 彼女のレベルで“大変”となると他の冒険者では“手に負えない”レベルになる。

 それこそ高位ランクの冒険者でなければ対処できない程に。


「あ、そういえばどうだった? ナイフの件……」

「う~ん、好評ではあったし認めてくれたけど……。逆にテールのこと心配してた。それとまだ抵抗があるってさ」

「そっかー……」


 やはり一筋縄ではいかなさそうだ。

 とはいえ研いだナイフの切れ味を認めてくれたのは素直に嬉しい。

 また切れなくなったら来てくれることを願いつつ、次のチャンスに繋げよう。


 そういえば今のメルの冒険者ランクはいくつなのだろうか?

 少し気になったので聞いてみた。


「メルは今冒険者ランクいくつなの?」

「Bランクよ」

「メルでもBランクなのか……」

「あ、でもこれは依頼達成数が足りないからまだBなだけで、もうちょっとしたらAランクに昇格するよ。ナルファムギルドマスターからは達成数さえ増えればSランクまでは余裕で昇格できるよって言われてる!」

「す、すごいなぁ……」


 メルのパーティーが戦っているところはさすがに見たことがないが、やはりそれくらいの実力は有していたらしい。

 話を聞いて、やはり自分が剣術スキルを貰ったとしても本当にメルに追いつけるのか不安になった。


 やはりどんどん遠くなっていく。

 だが実際、剣術スキルを持っていれば研ぎ師の仕事にここまで熱中することはなかっただろう。

 ナイア様の判断は正しかったと今になって理解する。


 とはいえ、まだ手紙が来ていないのが気になった。

 本当に剣術スキルを貰えるのだろうか。

 神様なので嘘は言わないとは思うのだが、これは一度話を聞いてみた方がよさそうだ。

 あとどれくらい研ぎ師スキルを極めれば剣術スキルを貰えるのか、正確な指標が欲しい。


 今日にでも行きたかったが、祭りの日は教会も大忙しでお休みとなっている。

 明日訪ねてみるのがいいだろう。


「おや? なにしてるのかな君たち」

「あ、ナルファムギルドマスター!」

「わぁ」

「久しぶりだねテール君。調子はどうだい?」


 赤と黒を基調とした豪華な服を着たナルファムが、声をかけてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ