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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第十三章 進軍、キュリアル王国
339/422

13.18.まだ


 作戦を話し合うのかと思ったら何を口にするのか。

 そう思って木幕は呆れた様子でその場を離れようとしたが、中にいる水瀬が引き下がらない。

 仕方なくその場に座り、耳を傾けることにした。


 とはいえ、メルがテールに抱いている感情はもう知っている。

 今更聞いても何も得はしないと思うのだが、思い返してみればそういう感情は修行の妨げになる場合がある。

 そこだけは把握しておいた方がいいかもしれない。

 盗み聴きというのはあまり好きではないが、そも水瀬がうるさい。


「えーーーーっとぉ……」

「……何もないの?」

「……ない……」

「追放されて追いかけて、しばらく一緒にいるのに?」

「まぁ前から鈍感だったけども」

「う、ううん……」


 アイニィとコレイアも呆れている。

 だがそういう気持ちになるのも、メルは理解できた。

 だがテールは常に仕事一本で、あまり他のことには興味がなかったように思える。

 それが今も続いているようで、振り向いてくれているのかいないのか、よく分からない。


「でも……」

「幼馴染だとしても、ちょっとはっきりして欲しいよね」

「うんうん。メルもそう思うでしょ?」

「それはそうだけど……。でも今テールは大事な時期だし、一生懸命だし邪魔しちゃ悪いし……」

「研ぎの修行? まだやってるの?」

「うん」

「ええ……仕事馬鹿だなぁ……」


 この二人は、テールが木幕たちにどれだけ必要とされているか知らない。

 そういう答えに辿り着くのは当然だ。


 しかしメルとしても、自分だけが想っているだけでテールはそうではないような気もしてきていた。

 自信がなくなってきた、といえばいいだろうか。

 今も気持ちは変わっていないのだが、なんだかそう考えると寂しい。


「もう直接聞く?」

「だだ、だめだめ! 集中してもらわないと駄目だし……!」

「めんどくさいなぁ……。いつまでも平行線じゃん!」

「そーだけどー……私もまだ強くならないといけないしぃ……余裕ないかも」

「「ううーん」」


 二人には、それぞれ任されたことがある。

 今は木幕の中に多くの侍が残っているが、いずれ居なくなることは決まっていた。

 その時テールを守るのは、メルだ。

 自分でもそれは分かっているので、今は余計なことを考えずに修行に集中しなければならない。

 だが、何処かでその気持ちが足を引っ張っていることは事実だった。


 テールは、魂を呪いから解放するために、今も修行に専念している。

 灼灼岩金を研いだことにより、解放することができるという自信を身に付けたはずだ。

 これからどんどん、魂はいなくなる。

 制限時間がどれだけ残っているか分からない今、テールはとにかく急いでいるようにも思えた。


「と、とにかくこの話は無し!」

「「ええー」」

「ええーじゃない! 今はガルマゴロでしょ」

「まぁそれはそうなんだけどねぇ」


 そう無理矢理話を区切ったメルは、本格的にガルマゴロをどう倒すかを考え始めた。

 アイニィとコレイアもそれに乗っかり、真剣な顔で考えている様だ。


 とりあえず、メルは気持ちこそ変わっていないが、今は押さえ込んでいる様だ。

 自分がなすべきことをしっかり理解している。

 それに満足したが、テールがどう思っているかという不安を抱えているのは事実。

 少しはっきりさせておいた方がいいかもしれない、と面倒くさそうな顔で考えていた。


『もちろん行きますよね? 木幕さん?』

「……水瀬……お主、くどいぞ」

『私もはっきりした方がいいと思います! ええ!』

「何故津之江も便乗する。聞くのであらば、遮断するぞ」

『『ええええええ!!?』』

「当たり前であろうが」


 そこから何度かヤジが飛んできて、木幕の頭がカクカクと動く。

 あまりにもやかましいので今から遮断した。

 軽く頭を振るい、せいせいしたようにため息を吐く。


「……はぁ、聞いてやろうか」


 木幕は重い腰を上げた。


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真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
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