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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第十三章 進軍、キュリアル王国
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13.3.狩猟部隊立候補


 テールが冒険者ギルドに入ると、そこは未だに病床となっており、怪我の度合いに限らず様々な人が寝転がっていた。

 医療に当たる人々も多いが、医療道具がなく瓦礫の下から探す日々が続いている。


 彼らは床の上に敷いた一枚の布の上に寝ているだけで、ベッドなどはない。

 はやく施設の復興を……とナルファムギルドマスターに頭を下げている医療関係者がいた。

 彼女はそれを宥めて作業に戻らせてから、ふぅ、と一つ息を吐く。


 どこにいても大変そうだが、更にそこへ言伝てを伝えるのはなんだか憚られた。

 とはいえ王子からの頼みだ。

 申し訳ないなと思いつつ、テールはナルファムに近づいた。


「ナルファムギルドマスター」

「あら、テール君」

「アディ様から言伝てをいただきまして。狩猟隊の編成を急いでほしい、と」

「その事なんだけどね……」

「え?」


 ナルファムが困ったような顔をした。

 やはりなにか問題があるのだろうか。

 確かに怪我人の治療で多くの人々が拘束され、狩りに出掛ける余裕がない人も多いだろう。

 だが、ナルファム曰く狩猟隊の編成自体は既に完了しているらしい。


 ではなにが問題なのか。

 困った様な顔をしながら、もう一度ため息をつく。


「その狩猟隊に志願しようって子供がいてね……」

「こ、子供は流石に……」

「それがスゥさんだから困ってるのよ」

「え、スゥさん!?」


 ナルファムはそちらの方向を指差す。

 するとスゥが獣の尾太刀を掲げながら抗議していた。

 地団駄を踏んで連れていけ、とせがんでいるようだ。


「ちょちょ……」

「っ!」

「こ、困ったな……」


 周りに木幕やレミはいない。

 止める人が居ないため彼女は好き勝手しているようにも見えるが、この現状を分かっているからこそ狩りに行って貢献したいと考えているのだろう。


 テールはスゥの強さを知っているが、他の者はそうではない。

 はたからみれば小さな子供が身の丈に合わない武器をもって無茶を言っているようにしか見えないのだ。

 それに、仙人の仲間の一人であり、断りづらいというのもあるのだろう。

 彼らは心底困った様子で、どうすればいいのか悩んでいるようだった。


「仙人様はどこにいったの……。あれじゃ行こうにも行けないわ」

「う、ううん……行かせても問題ないと思いますよ? スゥさんは索敵魔法と大地魔法を使えますし、剣術も凄まじいですから」

「そうは見えないのだけど」

「なんにせよ、強力な助っ人になるのは間違いないかと」

「ううん……だとしてもねぇ……」


 しばらく行動を共にしていたテールが言うのだから、恐らくそれは事実なのだろう。

 だがやはり、勝手に連れ出していいのか悩む。

 無許可で向かわせたとなれば、彼の逆鱗に触れるかもしれないのだ。


「じゃあ聞いてきますよ」

「できるだけはやくしてほしいのだけど……」

「任せてください。不撓、場所分かる?」

『ええ、ええ。もちろん、もちろん分かります。レミ殿が医療施設の下見をしています。ここから東に一町ほど』

「隼丸、いいかな?」

『『いいよー』』


 すると、その場からテールが消えた。

 驚いて身を引いたナルファムだったが、またすぐにテールが帰ってきて更に驚く。


「えっ!?」

「レミさんに聞いたら大丈夫ってことなので、連れていってもいいそうです」

「あ……ああ、そう……」

「スゥさーん! 行ってもいいらしいですよー!」

「!! っー!」


 テールが伝えると、スゥは跳び跳ねながら喜んだ。

 狩猟隊の面々はまだ困った顔をしてナルファムを見たが、彼女が頷くと頭を掻きながら出発していった。

 お守りが増える、と乗り気ではないようだ。


 だがスゥの力を見れば考えを改めるだろう。

 彼らの後ろ姿を見送ったあと、テールもなにか手伝えないか、と周囲を見渡す。


「あ、その前にカルロさんに会ってこようかな……」

「カルロなら二階よ。お腹空いてただけだから、無理にでも動いてそっちで休んでもらってるわ」

「分かりました」


 一階は動くのが困難な怪我人が占めているので、まぁ当たり前だろう。

 ナルファムに頭を下げてから、テールは二階へと上がっていった。

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真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
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