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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第九章 折れた一閃通しと水面鏡
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9.19.水源解放その前に


 この湖を維持し続けるために早速現場に行って瓦礫をどかしたいところではあったが、どうやらそれをする為には水面鏡の力を取り戻す必要があるらしかった。

 水瀬が作り出した水面鏡では操れる水量に制限がある。

 本物であれば無制限になるのだが、それは刀身すべてが揃っている状態でなければできないようだ。


 それならばまず最初にする事は、水面鏡の折れた刀身探し。

 とはいえ彼の言葉は既に聞き取れるようになっている。

 どうやら折れた半身は今でも感じ取ることができるらしく、彼は楽しそうにしながら刀身が埋まっているところへと案内してくれた。


 数百年の月日が流れて埋められた場所から移動しているらしく、湖の端まで歩かなければならないらしい。


『『変な生き物が水の中に潜って来てねー? 僕の半身を咥えて持って行っちゃったんだ』』

「さ、災難でしたね……」

『『そうなんだよー! でもでも、僕も勝手に持って行かれるのは嫌だったから、頑張って抵抗したんだよね。お水でぐわーって! そういえば、その時は結構騒ぎになったなぁ』』


 当時の事を思い出しながら楽しそうに話す水面鏡は、人間と会話するという初体験を珍しく思い、とにかく喋りまくっていた。

 テールは相槌を打つくらいしかできず、彼の話にとりあえず耳を傾けている。

 こんなにお喋りな日本刀もあるのかと少し感心する。

 やはり武器というのは、それぞれ個性があるらしい。


 灼灼岩金はとにかく強気だし、意外と無茶なことを言ってくる。

 力技で何とかしようとするタイプだ。

 だが意外と聞き分けは良く、頭がいい。

 気分が高揚すると豪快な喋り方をするのが特徴的だが、普段は意外と落ち着いている。


 隼丸は声質に癖がある。

 優しい性格をしているが、嫌なことははっきりと嫌というタイプだと思う。

 なので怒る時はしっかり怒る。

 基本的に冷静ではあるが、戦闘時になると少し焦りを感じさせるような魔法の使い方をするので、戦闘はあまり慣れていないのかもしれない。

 テールが彼の魔法に慣れていないだけかもしれないが。


 不撓はあまり話したことがないのではっきりとした性格は分からないが、主従関係に重きを置いているように思えた。

 主に使われるのであればどの様な使われ方をされてもいい。

 実際彼女もそう言っていたし、忍び刀ということもあって任務を果たすための道具に過ぎないと自分でも思っているのだろう。

 褒められた性格ではないような気がするが、何にせよ彼女は怖い。

 綺麗な声から発せられる威圧のあった『は?』は今思い出しても身震いするほどだ。


 とりあえず自分が所持している日本刀はこんなところだろうか。

 あと声を聞いたことがあるのは、目の前にある水面鏡と、沖田川の日本刀の一刻道仙。

 それと辻間の鎖だ。


 彼らは本当にいろんな性格をしている。

 もう人間と何ら変わりのない存在だ。

 ……これが武器の性格を知る、ということなのだろうか?


 研ぎの境地に一歩近づけたような気がして、テールは自然に足を早める。

 すると水面鏡からストップがかかった。

 立ち止まって周囲を見渡してみると、どうやら目的地に到着していたらしい。


『『主の足元に埋まってるよ! 掘り返してくれるかな!』』

「分かりました。水瀬さんの足元に埋まっているみたいです」

「分かったわ」


 魂である水瀬が、両手で地面を掘り返す。

 折れた刀身も魔法で何とか浮上しようと頑張っていたらしく、少し掘り返せばすぐに美しい刃を拝むことができた。

 怪我をしないように丁寧に持ち上げる。


『『おっしゃー! これで七割の力が戻ったぞ! もう一個はあっち!』』

「……どっちですか?」

『『あっち!』』

「いや『あっち』じゃ分かんないんですって……」

『『あ、そっか』』


 彼が見ている視線など分かるはずがないので、方角を言葉で説明してもらわなければどっちに行けばいいのか分からない。

 日本刀に手が生えていると思っているのか、と隼丸が呆れながら呟いたのを少しだけ可笑しく思いながら、ようやく指示された方向へと足を運んだ。


 次の目的地は……どうやら水門であるようだった。


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真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
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