表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第七章 雷閃流継承者
171/422

7.40.次の目的地


「それで、次はどこに行くんですか?」

「決まっている」


 柳が得意げにそう言うと、テールの肩を掴んだ。


「君の師を救いに参ろう」


 その言葉を聞いて、また目頭が熱くなるのを感じた。

 何度か瞬きをして堪え、力強く頷く。


 しかしその道のりはとても長い。

 ルーエン王国からキュリアル王国へ向かうのには、優に三ヵ月以上はかかるだろう。

 その間どこかの国を経由して向かうのがいいのだが、残念ながらテールは周囲の地形について無知だった。


 一番手っ取り早く向かう方法は、船を利用することだ。

 リヴァスプロ王国の近くにあった港からアテーゲ王国までは船で来たので、帰りも同じ道を通ればいいのだが……その道は推奨されない。

 なぜかというと。


「乾芭道丹に警戒せねばならぬ」


 船で海を渡れば一ヵ月は移動時間を短縮できるが、その一ヵ月間は危険に晒される。

 逃げ場のない船の上での戦闘。

 ましてやどんな魔法を所持しているかも分からない未知の相手で、忍びだ。

 勝ち方にこだわりを持たない彼であれば、船ごと燃やすことも厭わないだろう。


 航路を利用するのは、危険すぎた。

 乾芭道丹は毒を使うと聞くので、船内という個室で使われたら一網打尽にされてしまう。

 それを回避するためにも、多少遅かろうが陸路を進む方が安全なのだ。


 柳の説明に、木幕はもちろんテールとメルも納得した。

 死なない仙人一行であればともかく、こちらは普通の人間だ。

 今までの経験上、侍は狙うべき相手をよく理解している。

 なので真っ先に狙われる可能性があった。


 そう考えると、どう考えても陸路の方が安全だ。

 馬車はルーエン王国で調達すればいいし、地図はレミの頭の中に入っているので問題はない。

 長い旅になるが、その間に柳から稽古をしてもらえるし、沖田川から研ぎの極意を教えてくれる時間が増える。

 なので決して時間だけを無駄に過ごす旅になることはないだろう。


「では、どういう経路で向かうんですか?」

「そこはレミに任せよう」

「えーっとですね。ルーエン王国から東北に向かうと、ミルセル王国という国があります。ここに、西形さんと水瀬さんの槍と二振りの日本刀があるはずです」

「ああ、そうであったな」


 今はない侍の刀を集めるのも仕事の内だ。

 手元に残っている日本刀は少なく、あるだけでも五つしかない。

 これを回収しないことには、呪いを消すことができないので、キュリアル王国に向かう道中で集められる時に集めなければ非効率になってしまう。

 幸い道すがらにある国なので、必ず立ち寄って物資の調達をしなければならないのだ。

 ついでに探すのには大いに賛成だった。


 だが一つ懸念もある。

 彼らが生きた時代は六百年前のことだ。

 その間に何処かに持ち去られたりしている可能性もある。

 呪いによって朽ちることはないのでその辺は安心していいのだが、もしかしたらまったく別の場所に移動しているかもしれないのだ。


 レミもその可能性を失念していたわけではない。

 しかし、今はそれだけしか手掛かりがないのだ。


「なんにせよ、行ってみない事には分からないのよねー。もしかしたら呪いを感じ取って見つけられるかもしれないし、何処かに祀られてる可能性もあるし」

「なるほど……」

「でも、どこで失くしたかを知っている分はいい方ね。約一名本当にどこにあるのか分かってないし……」


 木幕の首がカクンッと傾いた。

 誰かが彼の中で大声を出したようだ。

 うるさそうに片耳を手で塞ぎ、鬱陶しそうに呟く。


「お主の武器は魔族領にある。……聞かれなかったからな。……叫ぶな……」


 まだ何か叫んでいるようで、小刻みに頭が傾く。

 元気な人もいるんだなと思いつつ、レミの話に再び耳を傾けた。


「まぁなんとかなるわ。さ、馬車探しに行きましょうか」

「あ、レミさん。テールの砥石はどうするんですか?」

「沖田川さんが居ないから加工できないけど……まぁそれは馬車で移動中に見せましょう。なんせ、見つかったらちょっと面倒だから……」

「た、確かに……」


 実際に砥石となるクオーラ鉱石を見たメルは、あれが公になると大騒ぎになってしまうと直感した。

 一生懸命ツルハシを振るっても、ほんの一欠片しか手に入らないものなのに、一抱えほどあるものを今所持しているのだ。

 それに加えて入手が困難とされているクオーラウォーター。

 帰る時にスゥが自慢するように見せてくれたのだが、魔法袋の中に悍ましいほど入っていたことを思い出す。

 そしてその価値を聞いて、身を震え上がらせた。

 絶対に触りたくはないほどに高価な値段だった……。


 さて、目的地は決まった。

 あとはもろもろの準備をして向かうだけだが……。


「なんか、疲れました……」

「あー。一泊してから向かってもいいかもしれないね。どうしますか善さん」

「移動する。この世の宿は……やかましい」

「言うと思いました。じゃ、もうちょっと頑張りましょう」

「はーい……」


 賑やかな大通りを通り抜け、馬車を購入するために馬小屋に向かい、クオーラ鉱石の欠片と交換して無事に馬車を手に入れることができた。

 テールは似たような鉱石がレアルの屋敷の宝物庫に会ったことを思い出すが……ライアの攻撃でほとんどが壊れてしまったのではないだろうか。

 そんなことを思いながら、長い道のりを進み始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ