7.2.教会へ!
潮の香りが国の中にまで流れてきている。
嫌な臭いではないが潮風は鉄などを風化させるので、海に近い場所に建てられている建物の金具などは錆びている様だった。
そんな風に押されるようにして、テール一行は教会を目指して歩いている最中だ。
乱馬との戦いが終わり、彼の武器隼丸を確保した。
これは呪いを掛けた神を完全に殺すために必要な物なので、持って行かなければならない。
隼丸も自分を無理矢理納得させ、共に旅をすることにようやく賛成したようだった。
彼は冷静になってみれば意外と大人しい。
二重に聞こえる声に少しばかり癖があるが、慣れてしまえばそんなに気にならなかった。
そんなテールは教会へと赴く道中、隼丸の魔法について説明を受けていた。
『『僕の奇術は三秒後までの行動を強制的に終わらせることができる。それと三秒前の好きな位置から三秒後までの行動を取ることができる』』
「?」
『……あ?』
分かりそうで分かりにくい説明に、テールと灼灼岩金は首を傾げた。
隼丸の魔法は非常に特殊だ。
分かりやすく言うと時間を操る魔法になるのだが、そういったものは普通この世界にはないし、隼丸が生きた時代では聞くこともなかった。
なので説明しようとしても説明はできないのだ。
無論隼丸もこの魔法を正確には説明できないし理解もしていない。
しかし乱馬が理解していたことは彼も知っている。
実際に使う分には何も問題はないのだが、口では説明しきれなかった。
『何言っておるのだ?』
『『えーと……主は斬撃、移動、回避にこの奇術を使ってた。この奇術は三秒間でできる行動を強制的に──』』
『いや、それは聞いた。何故そのような面倒臭い奇術持っておるのだ』
『『僕に聞くなよ。まぁ、僕は回避に専念するよ』』
初見殺しの魔法ではあるが、攻撃に使えないのであれば回避と移動にしか使えない。
テールはまだ剣術を教わっていないし、実際に前線に出ることは今のところないはずだ。
なので隼丸の魔法を攻撃手段として使用することはない。
テールに持たれた瞬間から、彼が十分な剣術を学んでいないと看破していた隼丸は、テールに危険が迫った時にこの魔法を使用することにした。
たとえ捕らえられても、三秒以内に魔法を発動させれば抜け出すことができるし、危険な攻撃が飛んできても三秒後に移動して回避することもできる。
この魔法を今一番輝かせるのであれば、こういう使い方をするのがいいはずだ。
「……ていうか……隼丸さん、腰に差しにくいんですけど……」
『『帯刀の仕方がへたくそなんだよ。帯の同じ場所に鞘を通すなっての。一つはまっすぐ、もう一つは少し角度を付けて横から差す。……って言っても、口で説明しても分かんないよなぁ』』
「すいません……」
とりあえず隼丸が言った様に差し直してみる。
一振りはまっすぐ差し、もう一振りを一枚隣りの帯へと差し、少し角度をつけて差した。
これでいいのか分からなかったが、隼丸が文句を言うことはなかったのでこれでいいのかもしれない。
そうしている内に、一行は教会へと辿り着く。
ここでテールはスキルの神、ナイアと出会って剣術スキルを貰う予定だ。
今の自分でもらえるかどうかはまだ分からないが、貰えなかったとしても話を聞きに行かなければならなかった。
聞きたいことがたくさんある。
彼らに会うには教会の中へと入り、祈りを捧げる必要がある。
あの時と同じことをすればいいはずだ。
テールとメルは中へ入ろうとするのだが、後ろから足音が付いてこない。
ふと振り返ってみれば、木幕たちがその場で立ち止まっていた。
付いて来ない彼らを見て、テールは声をかける。
「……あれ? どうしたんですか?」
「……某は、神が好かん。用が済んだら戻ってこい」
「ごめんね二人とも。私たちは神様にあんまりいい思い出ないから、ここで待ってるね。終わったら石の転移魔法陣の場所へ行きましょう」
「分かりました」
彼らの気持ちは、なんとなく理解できる。
神様のせいで彼らはここにいるのだから、恨んでいても仕方のない事である。
できるだけ早く話を聞いて戻ってこようと思い、テールとメルは教会の中へと入った。
小奇麗にされている教会の中には沢山の人々が手を合わせ、白い石像に首を垂れている。
ここは大きな国にある教会なので、六体の神様の像が並んでいた。
前列に五体並んでおり、彼らを見守るようにして立っているローブを着ている像が一体いる。
顔が見えないように作られているのが何だか不思議だったが、テールは片膝をついて祈りを捧げた。
すると、周囲の人々の気配が完全に消え去った。
音が聞こえなくなり、シーンとしていた感覚がなくなって無音が続く。
そっと目を開けてみれば床が見えるのだが、そこには教会の床に使われていた石のタイルではなく、真っ白な継ぎ目のない床が広がっていた。
顔を上げれば、神様にあった時の部屋……というより空間にいるということが分かる。
そして案の定、ナイアが大きな本を抱えてそこにいた。
「やっ! 久しぶりだねテール君!」




