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呪い研ぎの研ぎ師  作者: 真打
第五章 盗賊と海賊
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5.18.説明


 一人と一振りが会話をしているが、他の者からすればさっぱり分からない。

 とりあえず話していた内容としては何かが丸く収まったようではあるが……。


「て、テール? 何がどうなったの?」


 話が一段落したのを見て、メルが声を掛けた。

 テールは灼灼岩金を不器用ながらに納刀しながら答える。


「里川さんの武器は、呪われてるから魔法を使えるみたい。本当は研いで魂を解放してあげないといけないけど、灼灼岩金さん……がそれを拒否した……のかな。その代わり僕を守ってくれるってさ」

「……大丈夫なの?」

「うん、ちょっとうるさいけど……」

『聞こえているぞ!!』


 近くで大きな声を出される本当に響く。

 バッと腕を広げて灼灼岩金を遠ざけ、片手で耳を塞いだ。


「テール」


 静かに名前を呼んだ木幕。

 少しだけ刀を警戒しているようではあったが、何の力も持っていないテールが手にしていても問題がないところを見て、とりあえず警戒は解いたようだ。

 顎に手を当てたまま、言葉を続ける。


「何を聞いた」

「説明しますね」


 それからテールは、灼灼岩金がコレクションとして保管されていたことを含めすべての話を全員に伝えた。

 刀が魔法を使えるのは呪われているからということ、そのおかげで侍の魂をこの世界に縛り付けているということ。

 普通では信じられない話ばかりではあっただろうが、木幕と槙田はやけに納得したように頷いて話を聞いている。

 すべての話の辻褄が自然な形で嚙み合っているのだろう。

 だからこそこの話は本当のことだ、と理解することができる。


 その話の中で問題があるとするならば、未だに木幕とかかわったこの世界の人物と出会っていないことだろうか。

 木幕でもどういう相手が出てくるかは把握できていないのだ。

 これからより一層の警戒が必要となることは間違いない。

 しかし侍に比べればその脅威度は数段下がるだろう。


 そして灼灼岩金がテールを守ると言い出したことも説明した。

 さすがにこれだけは信じ切れなかったが、先ほど説明してくれたことはその灼灼岩金が教えてくれたものだ。

 そうでなければ知ることさえ不可能だった話。

 完璧には信じることができなかったが、その辺は今は置いておくことにした様だ。


「ふむ……どう思う、槙田」

「最後には研がねぇといけねぇ……。まぁ……それまではぁ、好きにすればいぃ……」

「だ、そうだ。それはお主に任せるぞテール。時を見計らって研げ」

「分かりました」

「だがぁ……主が死んだいまぁ……。そいつは奇術を使えるのかぁ……?」

「む、そういえば」


 刀に施された呪いによる魔法は、主が死ぬと自動的に魔法を使うことができなくなる。

 これは過去に槙田が経験したことなので間違いはない。

 もう既に里川は死んでしまっているので、灼灼岩金の能力は使えない可能性がある。

 それでは困ると、テールは早速灼灼岩金に話を聞いてみたところ、答えは『案ずるな』だけであった。


「……大丈夫だそうです」

「では精々使いこなせぇ……。じゃあなぁ……」


 話をすべて聞いた槙田は、シュボッと一瞬で燃え尽きてその場から消え去った。

 木幕の中へと戻ったのだろう。

 急に燃えて驚いたが、魂だということを知っていればそこまで驚かない。


 槙田が消えたことで一つの区切りとなった。

 盛大に破壊された港町がようやく目に入った気がする。


 槙田が出てきたというのに、よくこれ以上破壊されなかったものだとレミはほっと胸をなでおろした。

 戦いのすべてを見ていたメルは槙田が教えてくれたことをしっかりと頭に入れている。

 灼灼岩金の大声を聞きながら耳を塞いでいるテールは、これからこいつと付き合わなければならないのかと思うと少し憂鬱だった。


「それじゃ、次の港を探しますか。この様子だとここはもう駄目っぽいですしね」

「それもそうですね」

「……その必要はないらしい」

「「え?」」


 木幕がゆっくりと指を海の方へと向けた。

 その場にいた全員がその先を見ようと海を見てみれば……巨大な船がこちらに近づいてきているところだった。

 怪しげな霧を纏わりつけて。


「あれは……!!」

「ギアクローズ号……。海王、ナルス・アテーギアか」


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真打Twitter(Twitter) 侍の敵討ち(侍の敵討ち)
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