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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神様、出番ですよ?

作者: クロ

転生神様の朝は早い。

今日は久しぶりの出勤で気合いも入る。


一汁三菜の朝餉を平らげて身支度を整えるとガレージに向かう。

だだっ広いガレージには白いトラックが1台停まっており、神様は助手席に乗り込んだ。


「え~……今日はこの人ですね」


黒いノートに書かれた名前を辿りながら適当な名前を指でなぞる。

すると運転席に光の粒子が集まり、あからさまにトラック野郎な格好をした男が出現した。


「な、なんだっ!?

 どこだここはっ?!」


男はそんな言葉とは裏腹に安全運転でトラックを発進させる。


「あ~……毒島直通さん、おはようございます」


「誰だっ!?

 あんただれだ!?」


毒島と呼ばれた男は真顔から表情も変わらず、声だけを荒げながら安全運転でお昼の国道をひた走る。


「転生を司る神様をしています。

 今回は毒島さんの衆合地獄逝きをお祝いしようと言うことでお呼びしました。

 あ、ハンドル操作は無意識で行ってもらっているのでご安心ください」


「衆合……?

 と、とにかく俺を元居たところに戻しやがれッ!!」


「ダメですよ。

 貴方死体埋めに行くところだったんでしょう?」


「あ、あんた……なんで……」


「仏様に関しては私のほうで通報しておきましたので、ご安心ください。

 ついでに()()()()()も掘り起こしてもらいますから」


「な……何者なんだあんた」


「だから転生の神様ですよ。

 あ、貴方の転生先は地獄ですので私の管轄外なのですが……そうですね。

 少し愚痴りましょうか」


転生神は腕を組みながら深いため息をつく。


「この世界はですね……他の世界、所謂【異世界】と提携してまして、

 極々稀にこの世界で育った魂を異世界へと貸し出しているのです。


 もちろん、こちらにもメリットがあっての事ですよ?

 貸し出した魂はあちらの世界で寿命を迎えるとこちらの世界へ帰ってきまして、

 また転生します。


 すると魂にはこの世界ではすごく特殊な経験を積んだことになりますから、

 魂の習熟度が他より少しばかり、増すわけです。

 まぁ個人差はありますけれどね。


 習熟度は人間社会に貢献できる力と言い換える事も出来るので、

 将来的に文明の発達にも役立ちます。


 まぁこちらとしてはそのようなメリットがあるので貸し出すわけです」


「俺に何をさせようとしてんだ、あんた……?」


「え?

人を轢いてそのまま死んでもらうだけですよ?」


「……出せ。

ここから出せっ!

出せってんだよっ!!」


「無駄ですよ、うるさいなぁ。

今回異世界行きに選ばれた魂は残念な事に夜、自宅に強盗が入ってしまって殺されてしまうのです。


わかります?

強盗のあなたに殺されてしまうのですよ。


死の運命とは避けがたいものでしてね、例えば私が介入して彼女が殺される運命を回避させたとしましょう。

それでも彼女は別の理由で同じ時間に死んでしまうのです。

これを避けるにはこの世界の分岐世界……所謂平行世界に行かなければいけませんが、そこまでいくと彼女に宿る魂は同一のものではなくなります。


あ~……、理解が追い付いてないようですね。


端的に言えば運命は変えられないって事です。

この世界には予知能力なんてないので当たり前ですよね。

それにしてもうるさいですね、消音にさせてもらいますか」


「こんな平和で安全な国に生まれて殺されて死んでしまうなんて、相当な……それこそ魂に影響を与えてしまうような精神的負荷を残してしまいます。


次回もこの世界ならまだ良いのですが、彼女は既に記憶を持ち越して異世界に転生することが決まっている身です。

それではまずい。


なので、少々早めに事故死して頂くことにしたのです。

これなら心的ストレスも多少は軽微になります。


まぁ、みようによっては殺人ですけれど、殺す側が同じ人なので補正も緩やかになることでしょう」


「今までの愚痴を聞いてもらってわかるとおり、もちろん貴方も死ぬ運命にあります。

強盗のあと、自宅に帰っていつものように眠ると、そのまま急な心臓発作で眠るように死んでしまうんですよ。

ですので、贈り物をご用意しました」


「そんな恨みの念を飛ばしてきても無駄ですよ。

そんなものになんの効果もないことなんて貴方か1番理解している事でしょう?」


「もうそろそろですね。

彼女の来世に幸多からん事を……」


けたたましい男の笑い声と共にトラックは女性を轢き、横転する。

トラックはそのまま炎上し、男の半身を焼いた。

転生神はそれを即死した女性の近くで見ながら彼女の魂を回収するとそのまま天……世界の狭間にある転生の間へと昇っていった。


事故死のショックで安らかに眠る女性の魂は転生の間で目覚めないまま、事故の直前の記憶を消されて次に転生すべき異世界へと流されていく。


無事仕事の終わった転生神は安堵の息を吐いた。


ポケットで携帯端末が振動する。

転生神が、画面を確認すると次の仕事が舞い込んできた。


「次は知恵の回る人ですか……転生者の欲しいチートを自由に持たせる予定……ならゲームを用意しておかないと。

負けるのはあまり好きではないんですけれどねぇ……」


少し憂鬱になりながら転生神は次の仕事の準備を始める。

神無月には友達の神様と楽しい将棋をさそうと決意しながら。


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