79.海産物のポテンシャル
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再びアトリエへと戻ってきた私たちは、作業台の前で向かい合う。
「戻ってきてよろしかったので?」
「なんで?」
「アミー様やねりけし様にも御用があるものかと」
「あ、そういうことね。
うん、用はあるんだけどそっち行っちゃうとまた時間かかっちゃうから、先にアヤナの装備を作っておこうかと」
という訳で今から行う作業は、アヤナの使う武器の新調だ。
せっかく色々素材もあることだし、いくつか作って使ってもらおう。
「アヤナからは何か要望ある?」
「水中戦用の盾をお願いできればと。
水中ですと投擲が不可能ですので、突撃からの接近戦が主となります。移動自体はレガレクシスハウルで可能ですが、相手のブレスなどの遠距離手段が脅威となります。
今のアルカナティックミラーですと防御は出来ても抵抗が大きく推力が削がれるので、使い勝手があまりよくありません」
なるほどね。
となると、受け止めるよりは受け流すような形かな。何か使えそうなものあるかな?
あ、これなんかどうだろう。
二重螺旋巻貝の殻
つがいが一つの巻貝を作る、デュアリアルハーミットの殻。
それは愛の巣であり、今は抜け殻。
「………」
「一つの巻貝に二体のヤドカリが生息するモンスターでしたね。
殻の強度が高く攻撃が通りずらい難敵でした。瀕死になると回転しながらドリルのように殻の先端を突き刺してくる攻撃も水中では厄介でした」
今は亡き夫婦の愛の巣を、武器に仕立てようとするのは、果たしてモラルとしていいのだろうか。…深く考えるのは止めておこう。
とりあえず巻貝を実体化して作業台の上に出す。
直径は一メートルくらい。底になる側に二つ穴が開いており、それらがねじり合うように巻き合って高さも一メートルくらい、先端は尖って鋭利だ。
大きさは十分だね。強度も深海に生息する生物だっただけあって十分だ。ちょっと加工するだけで問題なく盾として使えそうだ。
とりあえず底側から内側へ向けて殻を砕いていく。円錐状の巻貝の内側をある程度空にしていく。
失った強度は他の素材で補完だ。リストの中にあった、コニカルジェリーフィッシュという傘が円錐形のクラゲを使って、内側にその円錐形の傘を張っていく。延性の高いこの素材は、高い剛性を持つこの巻貝の補強としては申し分ない。
あとは内側から外が覗けるように覗き窓を設けて、持ち手を付ければ完成だ。
デュアルヘリックシンブレラ
二重螺旋巻貝の殻を加工して作られた傘のような盾。
防御+81
効果:水抵抗軽減、回転時受け流し効果増
「お、出来た」
なるほど見た目的には長柄のない傘みたいな出来だから、こんな名前なのか。
あ、そう作った訳じゃないけど持ち手を持ってれば回転するようになったね。システムアシスト様様です。
「どうかな?」
アヤナが手に取り、それを頭上に向ける。
アヤナの身体がその傘の下にすっぽり隠れるようだったから、戦闘で突撃時に使っても相手からはちょうど見えなくなるだろう。
傘の回転はアヤナの意思で動いてくれるようだから、使い勝手は悪くないんじゃなかろうか。
「良い出来かと。
ただ回転時は覗き窓が役に立ちませんので、その点だけは欠点でしょうか」
「言われてみればそうだね。まぁアヤナなら大丈夫でしょ?」
「もちろんです。
モンスター相手であれば、事前の状況確認と、その後の行動予測で3秒先までほぼトレース可能です」
なんかすごいこと言ってるな、アヤナ。それが出来れば敵なしじゃない?
「いえ、メアリ様のような規格外には対応できておりませんので」
あれを対象にしちゃいけないと思うけど。
まぁなにはともあれこれでいいって言うなら、まず一つ完了だね。
「次は折角だから、水中用の遠距離手段を作ってみようか」
「出来るので?」
「機工を嘗めないでよね」
元になるのはクロスボウだ。
弓の部分を解体し、柄とレール部分だけを使用する。レール部に直径二センチ程度の穴が開いた長い直管を取り付ける。
直管の後ろ側になる方に、小型のガスタンクに繋がるホースを取り付け、タンク自体はレールの下側に取り付ける。
あとはそれらがトリガーで起動するように調整を行い、最後に海中でも使えるように防錆塗装を施す。
最後に専用の、細長く流線型の弾丸を用意すれば完成だ。
「どう?」
「ほう、水中銃ですか」
加圧ガス式水中銃
ガスにより水中でも弾丸を射出できる水中銃。
攻撃+34
「威力はそんなに高くないけど、牽制には使えるんじゃない?」
「そうですね。今までは遠距離攻撃手段がなかったので、十分かと」
「ガスがなくなったら使えないから気を付けて。一度の戦闘で十発くらいが限界だと思う」
ガスタンクをあまり大きくしても取り回しが悪くなるので、このくらいが限界だろう。
サイズ的にはライフルくらいだが、タンクなどが付いているので普通のライフルよりは重い。水中で使う分には気にならないと思うが。
さて、あとは今使っている装備の強化かな。
ただ素材の相性の問題があって、意外と出来ることは少ない。
深銀の鱗流双剣は、元の素材がイプシリムレガレクスなので、素材の格としてはそちらのが上なので多少補強するくらいしか出来ない。
レガレクシスバンテージも素材の格が高いので、大きくは変化がなかったが、深海蛸の脚や深海魚の触手が強化に仕えたので、グリップ感と攻撃力が増した。
フォーチュニードや嵐刃・胡蝶は、ここの素材とは相性があまりよくなかったので見送りだ。
意外だったのは鬼帝角のエストック。
イッカクオルカというイッカクとシャチを足して割らなかったようなモンスターの角、イッカクホーンが素材として非常に優秀だったのだ。
鬼帝尖傑・壱角
ゴブリンロードの角とイッカクオルカの角から作られた刺突専用武器。
尚鋭く、尚深く、ただ一点を狙い穿つ。
攻撃+103
効果:土属性・水属性
弱点特攻、弱点部位の肉質無視、弱点攻撃時極低確率で即死
「ちょっと想定外の出来だね」
「想像以上、という意味ではよかったかと」
ほとんど素材の力に頼ったおかげだけどね。あ、でも鍛冶Lv.50になったし、多少は影響してるのかな?
まぁ奇しくも私の最高傑作となったこの壱角はアヤナに活用して貰おう。
アヤナは鬼帝尖傑・壱角を掴むと握りを確認し、素早く数回刺突を繰り出す。
私はその刺突を目で追うのが精一杯で、もし私に向けられたとしたら避けるのは絶対無理だ。
「申し分ないかと」
素直じゃないアヤナからしたら最高の誉め言葉かもしれない。
私は小さく拳を握って、達成感を噛み締めた。
その後もアヤナ用の装備作成は続いた。
脚の生えたアンコウの足ヒレを使ってフィンを作ったり、投網を作ってみたり。
中でも我ながら力作だったのは、水中機雷だ。
深海マリモとかいう、表面が鋼鉄と同じくらい固い鱗のようなもので何層にも包まれている球体、それの中に雷管と爆薬を詰め防水処理を施した。
衝撃を加えると爆発し、その鋼鉄の鱗のようなものが辺り一面に飛び散るのだ。
見た目には深海マリモそのままなので、擬態という意味でもよくできたアイテムだと思う。
などと色々なアイテムを作って、それら全てをアヤナに渡す。
使うかどうかはアヤナに任せるけど、持っておいて損はないはずだ。
「では再び行って参ります」
「うん、気を付けて」
本当はディジィさんにお願いした装備が出来上がってから送り出したかったけど、もうちょっと時間が掛かりそうだから、私の作った新装備だけを持って出ていった。
まぁ、前の装備でも問題なかったわけだし、大丈夫だとは思うけど。
「さてと」
アヤナの準備が終わったら、今度は自分のことだ。
木工と錬金、この二つのレベル上げがまだ残っている。
アミーさんは、まだ三が日だしおうちのことしてるかな。
ねりけしくんは大学生だって言ってたし、ログインしてる可能性が高い。
よし、まずはねりけしくんに会いに行こう!




