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4.実はすごいプレイヤースキルを持っていたりはしませんでした

「やぁ!」

 弓術Lv.1のアシストを受けて放った矢は、狙ったルカマッシュの脇を逸れ地面に突き刺さった。

 3mくらいしか離れていないのにかすりもしないとは。

「最初はそんなもんだよ」

 ハルキさんが励ましてくれる。

 でも知ってるんです。弓の命中率がプレイヤースキルで変わってくること。上手な人なら弓術のレベルが低くてもバシバシ当たるって攻略サイトには書いてありましたから。

 ワンチャン才能があったらいいなぁって思ってたけど、普通に才能ありませんでした。

 当たりもしない矢には脅威も感じないのか、ルカマッシュはノンアクティブのままだった。

「そのうちスキルレベルが上がればアシストも強くなるから普通に当たるようになるよ。今はまだ練習だからどんどん撃ったほうがいいね」

 私はハルキさんのアドバイス通りどんどん矢を放つ。

 4発目にしてやっと命中した!

「やった!」

「まだだよ。気を付けて!」

 ルカマッシュはまだ倒れず、矢を放った私に向かってひょこひょこと突進してくる。

 子犬サイズのエリンギに足が生えたのがひょこひょこ走ってくるのはちょっと可愛い。

 とか思っていると、勢いそのまま私の足にぶつかってきた。HPがちょっとだけ減る。

「わ!えい!」

 反射的にルカマッシュを蹴り飛ばす。すると今度は光の粒となって消えていった。

「やったね。初勝利」

「あ、ありがとうございます。結構焦っちゃうもんですね」

「すぐに慣れるよ。今度は魔法を試してみよう」


 次に見つけたルカフラウは、足がついた花だった。

 私たちのことを気に留めていないのか、ぼーっと日光浴をしている。

「じゃあいきます。『エアカッター』」

 精霊魔法・風のLv.1で覚えている攻撃魔法、エアカッターをルカフラウに向けて放つ。

 風切り音と共に、ルカフラウの葉を数枚切り飛ばした。

 それを切っ掛けにルカフラウが私に向かって突進してくる。攻撃手段はルカマッシュと同じみたいだ。

 今度は先ほどよりも落ち着いて、向かってくるルカフラウを蹴り飛ばした。

 倒れたルカフラウはそのまま光の粒となって消えた。

「いい感じだね。魔法のが得意な感じかな?」

「どうでしょうか。たまたまな気もしますけど」

 ハルキさんが褒めてくれるのがうれしい。もっと頑張らねば。


 そうして私たちは森の中を歩きながら、モンスターを倒していった。

 相変わらず弓の命中率は悪いけど、それでもスキルレベルが上がったことで、3割は当たるようになった。


「あ、レベルが上がりました!」

「おめでとう。よかったね」

 3匹目のルカマッシュを倒したところでレベルが上がった。


 プラム

 種族:エルフ Lv.2

 HP:60 MP:125(+5) SP:90

 STR(筋力):6(+1)

 INT(知力):16(+1)

 AGI(敏捷):12

 VIT(耐久):5

 TEC(器用):13(+1)

 LUK(幸運):10

 CRS(魅力):13

 スキル

 精霊魔法・風Lv.2、弓術Lv.2、木工Lv.1、探知Lv.1、錬金術Lv.1

 スキルポイント2


 レベルが上がったことでSTRとINTとTECが+1、MPが+5されたようだ。

 INTとTECは魔法と弓で戦ってたからだと思うけど、STRはなぜ?


「なんでSTRが上がったんでしょう」

「あーそれは、蹴ってたからかなぁ」

 ハハと苦笑いしながら答えるハルキさん。

 うっ、確かに止めに蹴りをいれまくっていた気がする。ちょっと恥ずかしいな。

 レベルアップ時のステータス上昇はそれまでの行動が参照されて勝手にあがるらしいから、この結果なんだろう。

 まぁこれからに期待ってことで。

 Lv.10まではチュートリアルみたいなもので、比較的レベルが上がりやすいらしい。

 その後緩やかに上がりにくくなって、Lv.50を超えると一気に上がらなくなる。

 私にとっては相当先の話だけど、初期から始めてる人ならもうそこまで行ってる人もいるんだろう。ハルキさんもLv.50なのかな?さすがにそこまで高くないか。


「探知持ってる?あれはあると便利だよ」

「探知は初期スキルで取りました!」

 取っていたけど使うのを忘れていたのは秘密だ。

 私は探知のスキルをオンにする。すると視界の端にあったミニマップに赤い点が一つ表示された。距離は5mくらいの右前方。

 見た感じ草むらになっているところだが。

「そこになんかいるみたいです」

「ん、そうだね。探知Lv.1だと範囲は自分から半径5mくらいかな。森の奥まで行くと不意打ちも気にしないといけなくなるから、今のうちから探知のレベル上げとくといいよ」

「了解です」

「ダンジョンも視界が悪くて探知が重要になるよ。この近くにはないんだけど、この先行くだろうしね」

 ダンジョンかぁ。この手のゲームでは定番である。

 ハルキさんによればダンジョンにもランクがあるらしく、いつもフィールドの同じところにあるダンジョンはコモンダンジョン。時間制限や人数制限などの特殊な条件があり、そのうち消えてしまうのがレアダンジョンだそうだ。

「あとは…エクストラダンジョン」

 これはよくわかっていないらしい。過去にも一度だけしか見つかっておらず、それもクリアはされなかったとか。

 まぁ私には関係ないね。さぁキノコ狩りを続けよう!


 ハルキさんからのアドバイスを受けながら、私は順調に戦闘を進めていく。

 途中、ルカウルフという狼が現れたが、それはさっさとハルキさんが倒していた。

「そんなに強くないけど、仲間を呼ばれると面倒だからね」

 30m近く離れたところにいた狼の脳天を一撃で貫いて倒してしまったところを見て、やっぱり上級プレイヤーなんだなぁと思った。

 そんなハルキさんの援護もあり、私のレベルは4まで上がり、ハルキさんに声を掛けられてから2時間が経った。


「お、ちょうど称号貰えたよ。【称号】初心者の道標」

 そういってステータス画面を見せてくれた。私に2時間付き合ってくれたことで無事に称号がもらえたようだ。

 称号獲得という目的が終わったということは、私と一緒にいるのも終わりということだ。

「おめでとうございます、ハルキさん」

 満足そうに微笑むハルキさんの横顔を見ながら、ちょっと寂しくなる。

 だから、ついぽろっと言ってしまった。

「ハルキさんはまた強い敵がいっぱい出る攻略前線?にいっちゃうんですか」

 わー何言ってんだ私。言ってしまって恥ずかしくなって俯く。

「いいや、行かないよ。言ったでしょ、気分転換だって。しばらくはのんびりお手伝いプレイかな」

 顔を上げるとハルキさんがはにかんで笑っていた。

 その笑顔がかっこよくて嬉しくて。


「それじゃあ、もうちょっとお手伝い、してもらってもいいですか?」

「もちろん」

 やったー!ハルキさんはイケメンだし内面もかっこいいし、もう大好き!


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『いきなりマッチングなんてすごいじゃん』

「へへー、すごいでしょ」

 あの後、結局さらに2時間も付き合ってもらってしまった。半分くらい雑談してただけだけど。

 しかもフレンド登録までしてもらい、また今度お手伝いをお願いもしてしまった。ちょっと図々しかったかな。

 ハルキさんが一度ログアウトするって言うので、私も一旦ログアウトすると、イケメン熱が冷めやらず思わずミカに電話を掛けてしまった。

「次会う約束もしたし、私もやれば出来るのかもしんない」

『案外そうなのかもねぇ。あたし、小梅じゃ絶対マッチングなんて無理だと思ってた。無理っていうかやらないと思ってた。なんか小梅っぽくない気がしてさ

 えらいぞ小梅!そのまま彼氏にしちゃえ』

「う、まぁね。がんばるよ」

 ミカにはネットでイケメンと出会ったことは話した。それがゲームの中だとは言っていない。ミカはきっとこないだ言ったマッチングアプリで出会ったと思っているけど、あえて訂正はしない。

 嘘は言っていない、ちょっと伝えてる情報が少ないだけだ。後ろめたい気持ちがないわけではないが、おいおい話せばいいだろう。

『じゃあ次も頑張んなよ、またね』

「うん、また報告するね」

 そういって私は電話を切った。

 時間は夜の8時を回ったところだ。まだ寝るには早いし、AWOにログインだ!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ログインした私が立っていたのはエルルカ村の大樹の前だった。

 宿屋とかでログアウトするとそこからリスタートになるみたいだけど、さっきログアウトしたのは村の広場だったからここからなのだろう。

 私はさっきハルキさんが手伝ってくれた戦闘で得たアイテムを冒険者ギルドで換金し、クエストの完了報告を行う。

 わずかばかりの報酬金を受けとり、再度同じクエストを受注する。

 私の今回の目標はソロプレイだ。さっきフレンドリストを確認して、ハルキさんがログアウト中なのは確認した。

 次もお手伝いをお願いしているとはいえ、頼りっぱなしなのも申し訳ないし、ちょっとは成長して褒めてもらいたいのだ。


 この世界の1日は現実世界の30時間だ。これは社会人が平日の夜しかログインできないことを考えての設定なんだろう。

 ちなみに今日は現実の朝6時がこっちの0時だった。だから現実の夜8時だったけどまだこっちはお昼過ぎくらいだ。昼間ならソロで狩りにいっても大丈夫だろう。

 それにデスペナもLv.10までは免除されるので、今のうちに慣れておいたほうがいい。


 さてやってきました西の森。

 探知をオンにし、索敵を開始。いま私の視界にはHPとMP、SPを表すバーと、ミニマップが表示されている。ミニマップは意識すると見やすい位置に移動してくれるので便利だ。

 おっ、キノコ発見。とりあえず矢で射貫…けない。2射目は当たり、私に気付いてトコトコ突進してくるのを狙ってさらに弓を引くが、やっぱりあたらない。

 結局最後はいつも通り蹴り飛ばしてキノコは光に粒となった。

 うーん。止まってるところを狙ってあたらないんだから、動いてたら当たるわけないよなぁ。

 そういえば、モンスターに鑑定ってしてなかったけど、やってみようか。

 ちょうどいいところにお花がいるじゃん。

 私は指で丸を作り、そこを除く。鑑定!


 ルカフラウ

 種族:植物

 HP:30


 おぉ鑑定できたよ!簡易鑑定でも種族とHPくらいは見れるのか。弱点とかはスキルの鑑定取らないと見れないっぽいね。

 とか考えてると、ルカフラウがこっちに向かって突進してくる。

 うわ!もしかして鑑定って攻撃と同じ?

 とりあえず弓はどうせあたらないので、杖に持ち替え魔法を唱える。

「『エアカッター』!」

 放った魔法はルカフラウに当たり、突進の勢いをそぎふらつかせることができた。

 私は落ち着いてその突進を避けてルカフラウが通りすぎたところを後ろから蹴り飛ばす。

 ルカフラウはそれで倒せた。

 ふぅ、むやみに鑑定とかしちゃだめだね。注意しないと。

 それにしても一番使ってるのが弓でも魔法でもなく蹴りな気がする。これは格闘スキルでも取るべきか。また次のレベルアップでSTRが上がる気がするし。


 ちょこちょこと敵を倒しながら、森の中を徘徊していく。

 キノコと花ばっかりを狙い、ウルフは遠くに見えた段階でそそくさと逃げるようにしているので、幸運にもまだ一回も死に戻っていない。初心者にしてはなかなか優秀じゃなかろうか。

 んー、そろそろ村に戻ろうかな。アイテムも結構拾ったし。

 インベントリの中はルカマッシュの傘やルカフラウの花びらで埋まってきた。遠距離主体なのであまり回復ポーションは使わないが、それでもちょっと減ってきている。

 と考え、村へ帰るルートを歩いていると、

「おっと、ウルフだ。迂回迂回」

 正面の草むらの陰に動く姿がちらりと見えた。私の探知はレベルが低いので、見える範囲がまだ狭い。視認に頼らないと遠くのモンスターは見つけられない。

 ふと、私の胸の中で好奇心がうずいた。

 ウルフ、いけるかなぁ?私もちょっとは強くなったし、ここ最初のフィールドだしそんなに強いわけないよね?いっちゃう?やっちゃう?

 距離は10mちょい。私は木の陰に隠れつつ、弓に矢をつがえる。きりきりと弦を引き、今までで最高の集中力を持って、ウルフを狙い撃つ。

 放った矢は見事に、ウルフの右後脚の付け根に突き刺さる。

「やった!」

 私は間髪入れづに次の矢をつげる。

 ウルフが私に気付く、でも足を怪我してるからそんなに早くは来れないはずだ。

 しかし私は忘れていたのだ。ハルキさんの言っていたことを。

『そんなに強くないけど、仲間を呼ばれると面倒だからね』

 ウルフはその場から動くことなく、アオーンと高らかに遠吠えを上げた。

 それに呼応するように、遠くから聞こえる遠吠え。

「え?マジ?」

 がさがさと草木をかき分けて走ってくる音が聞こえる。しかもこれ、1体じゃない!

 私はすかさず武器をしまい、さっきまで戦っていたウルフに背を向けて逃げ出す。

「やばいやばいやばいやばい!」

 振り返るとウルフが群れになって追いかけてきている。

 捕まったらすぐに殺される。まだレベルも9なのでデスペナを気にすることはないのだが、ウルフに寄ってたかって食われるのは勘弁してほしい。

 私はなんとか必死に足を動かして森の中を走る。


 条件を達成しましたのでスキルを獲得しました。

『疾走Lv.1』

『悪路適応Lv.1』


 スキル獲得のアナウンスが聞こえ、ちょっとだけさっきよりも速く走れるようになった。

 それとさっきよりも体幹がしっかりしたような、バランスがとりやすくなった。

 よし、これで逃げ切れる!こっからさらに加速だ!

 と思って踏み出した右足が空を切る。

「へ?」

 下に目を向ければ、そこにはあるはずの地面がなかった。

 慣性にしたがって振り出された左足もやはり空を切る。

 反射的に手を伸ばして木をつかもうとするが届かない。

 首だけで振り返ると、崖の手前で止まるウルフの群れが見えた。ぐるるっと啼いていたのは獲物を取り逃がしたからか、ご愁傷様ということか。


「どわー!へぶっ、うわわわわー!ぶへー」

 一瞬の浮遊感の後は、崖を転がり落ちる感覚が続いた。

 受け身なんか取れないし、そもそも自分がどっちを向いているかわからない。

 10数秒はその感覚が続いたので、結構な距離を落ちた気がする。

 視界の隅に見えたHPバーはもうミリしか残っていない。

 とりあえず生き残ったことに奇跡を感じ、回復ポーションを飲む。

 徐々にHPが回復してくるのを確認し、ようやく一息ついた。

 ぺたんと地面に座った状態で回りを見渡す。

 後ろにはさっき落ちてきた崖。下から見ると崖というより急な斜面というレベルか。急に現れたら、まっさかさまに落ちるのだからどっちでも一緒か。

 そして正面。

 そこにはもう枯れて朽ち果てそうな巨木と、ぽっかりと開いた穴が見えた。


 左手の人差し指と親指で丸を作り、覗き込む。


『傀儡遣いの工房

 ランク:エクストラ

 推奨Lv.50』

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