32.神々たちの企画書
本日2話投稿です。
こちらは2話目です。
ワールドクエスト『イプシリムを探せ』は4つのフェーズからなるクエストです。
フェーズ1 調査
浮遊大陸データスを除く、アーファン大陸、ベティタ諸島、ガルマ大陸の砂浜に自動人形のパーツが漂着します。
それを持って、特定の住人に話を聞くと、過去に存在した幻の大陸の話を聞くことができます。
フェーズ2 探索
調査の進捗により、各所でイベントダンジョンが発生します。
イベントダンジョンをクリアと、自動人形作成のための部品と幻の大陸についての情報を得ることができます。
フェーズ3 生産
一定以上の自動人形作成用のアイテムが集まると、機工スキル取得のためのクエストが発生します。
探索やトレードを駆使し、全てのパーツを集めると機工スキルが取得できるようになります。
機工スキル、鍛冶スキル、木工スキル、錬金スキルを使用し(分担可)、自動人形を作成すると、次に核を探すよう指示が出てきます。
核は浮遊島データスにいる長命の天魔族から、クエストをクリアすることで獲得することができます。
全てを揃えると、自動人形が起動します。
そして自動人形から、海底都市イプシリムについてを知らされます。
フェーズ4 潜行
自動人形とパーティまたはクラン(同盟含む)を組んだ状態で大陸間鉄道に乗車すると、イプシリム行き特殊クエストが発生します。
この時、自動人形の出来栄えにより特殊クエストの難易度が変化します。
列車番号001から100まであり、001が最難関、100が最も簡単です。また、090以降はイプシリム直行となり、001から089までは寄り道が発生します。
最終的にイプシリムまで到着すればクエストクリアとなります。
企画書を読み返し、天を仰ぐ。
「主任」
呼ばれて振り返れば、松本がいた。
「あぁ、すまんな」
「いえ、そりゃそうなりますよね」
「まぁな、しかし大浦班にとっては災難だったな」
「せっかく企画して随分前から張り切って調整してましたからね。それが殆どスキップされちゃ敵わないですよ。
特に潜行フェーズは100パターン作ってたみたいですからね。機関トラブルの修復とか、減車による人員の選別とかまで考えてたみたいですよ」
「結構殺伐としたイベントまで考えていたんだな。しかしそれじゃ高ランクの者しか残れないだろ?」
「今回殆どが海中での行動になるじゃないですか。今の攻略組じゃ水泳にしても水中適応にしても、取ってる奴は殆どいませんよ。そしてそれを取るスキルポイントもない。レベルも上がらないから新規にポイントも得られない」
「そこでポイントに余裕のある初心者に役割を与えるのか」
「いえすっ!その通りです。なので攻略組も初心者を無下に出来ないので共闘していく必要がでると」
なるほど、思ってた以上によく練られたイベントだったようだ。
今度見舞いに何か送っておくか。
「しかしタイミングが最悪というか、最高というべきか」
「ログを見てる限り、本人はなにも理解してないっぽいですけどね」
「そりゃそうだろう。列車に乗ったと思ったらいきなりイプシリムだ」
「ご愁傷様というべきか、おめでとうというべきか、って奴ですかね。ところで彼らはパーティ組んでなかったんですね」
彼らというのは、マニュファクトリィから一緒だったハルキたちだろう。
「そうだな。まぁこんなことになるとは思ってなかったら仕方ないかもしれないが」
彼女が列車に乗るあたりからモニターしていたが、ハルキたちは列車に取り残されたままだった。パーティを組んでいれば一緒に転送されたはずで、急にいなくなった彼女と人形に相当焦っていた。
「さて」
「今後のことっすよね」
そうだ。今後のことを考えないといけない。
「ただ僕としてはあまり手を加えるつもりはない」
「いいんですか?そうすると当分彼女専用フィールドになっちゃいますけど」
そうなのだ。
イプシリムに一度行ってしまえば、その後行くのに制限はない。しかし初回は必ず自動人形が必要だ。それはワールドクエストがクリアされたからといって変わらない。そして一度イプシリムに行った自動人形では不可となる。
つまり後続がイプシリムに行くには、また自動人形を作る必要があるということだ。
それまでにどれだけの時間が掛かるのか。
「まぁ一人先行したってだけで、元のワールドクエストに戻ったって感じですかね?」
「そうだな」
その一人がとんでもないアドバンテージなんだが、まぁ仕方ない。
個人のために仕様に手を加えるのは自分の主義に反する。
「ところで、あの人形、いいんすか?」
「何がだ?」
「いや、顔。まんまじゃないっすか」
あぁ、それのことか。
「いい趣味してるじゃないか」




