0章
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序章 国の為に・・・
「ブラック、すまぬ。このような形で・・・」
宰相ヴェインの口から、この場所にいない名を口にした。先程自分自ら、国外追放を言い渡したのだ。正直ヴェインは後悔していた。だが、近いうちに起こる国難の為、彼を予め別の土地に移す必要があった。ある意味タイミング良く、とてつもない騒ぎを起こしてくれた。しかも、ガーディアーナ兵士からロイヤルガードになったブラックが、だ。
「目聡い陛下の事だ。私の策なぞ読んでおられる、そうでなければ、こんなに上手くいかなかったであろうな・・・シゲン。」
「だな。ステイン殿には悪い事をしたが、この際、仕方ない。」
と、シゲンと呼ばれた老人は答えた。
「だが、ああも上手くいくとはな。ブラックも男、好いている女に迫られては、答えざるをえまい。マーガレットには、伝えておるな。」
「伝えておる。」
聞くまでもない、と言わんばかりであった。ヴェインは罪悪感が無かった、といえば嘘になる。彼も1人の人間だからだ。やっと、身も心も結ばれた2人を来る国難の為に、引き裂く事になってしまった。特にミネルバ・ステインにとって、許されない男と分類されても仕方がない。
そんな物思いに耽っていると、ノック音がヴェインの部屋に響いた。ヴェインには訪問者は分かっていた。
「・・・入りたまえ、ミネルバ。」
ノックした人間がヴェインの部屋の扉を開く。
「失礼致します。」
そこに立っていたのは、フィフス・ジェネラルの1人、マーガレット・ステインの愛娘、ミネルバ・ステインだった。
「こんな夜更けに何の確認をしたいのだ?ミネルバ。母から話は聞いているだろう。」
ヴェインは悪役に徹しようとした。それが時には必要だからと、自分にも言い聞かせていた。そんなミネルバから出た言葉は、思い通りの言葉だった。
「・・・なぜ、ブラックを国から追い出したのですか?陛下もお許しになったとか。何故なんです!?この国のロイヤルガードを!」
ミネルバは抑えきれない感情をヴェインにぶつけた。だがヴェインは表情一つ変えず、彼女を見た。
「・・・君にも責任はあると思うがな。」
「!?ヴェイン様?」
「君はインペリアル・ナイトでありながら、あんな田舎者と恋に落ちたからだ。私は、ステイン家の血が汚れるのを防いだのだから、感謝して欲しいくらいだ。」
動揺したミネルバは言葉を詰まらせる。非情にもヴェインは言葉を紡いだ。
「私は忙しいのだ。早く家に帰りたまえ。」
と言い、ミネルバに背を向けた。
「ヴェ・・・イ・・・ン・・・さま・・・。」
ミネルバは言葉が出ず、その場に立ち尽くしてしまった。
するとドアがノックされ一人の女が現れた。
「マーガレット殿。」
シゲンが答える。
「シゲン殿。娘が話を聞かず飛び出してしまって・・・。申し訳ない。ヴェイン殿にも詫びを。」
マーガレットはシゲンに頭を下げ、詫びた。
「いやいや、気にしておりませんよステイン殿。想定外ではありますが、仕方ないでしょう。」
シゲンは、にっこりと笑い答え、言葉を続ける。
「そう言って貰って助かる・・・まったく、こういう時だけ足が速いんだから。」
そう言うと、ミネルバの手を握った。
「ミネルバ。帰ろう。父さんも心配しているわ。」
「・・・・・・」
ミネルバは引き摺られるように、ヴェインの部屋を出て行った。
その騒動からしばらく、ようやく、緊張の糸が解けてきた。
ヴェインは振り返りぶっさいくな顔して、一言。
「・・・シゲン。宰相替わってくれへん?」
どんがらがっしゃあん!!シゲンは盛大にずっこけた。
「な、何をゆーとるんじゃ!!」
よろよろと何とか起き上がると、突っ込んだ。
「それに、そんなホイホイ替わってやれるものでもでないわい。」
と返したもののヴェインの脳みそは、次の項目に切り替わっていた。
「・・・ミネルバ~泣かしてもうた~すまんの~。」
しまいに、おいおいと泣き出した。ミネルバは小さい頃から知っている娘で、よく可愛がっていたものだが彼は今日、それを泣かしたのである。
「・・・そっち?」
シゲンの突っ込みはもっともである。さっき、宰相がどうのこうの言ってたような・・・。
「まあ、自分が立てた策じゃ。必ずやり遂げるんじゃな。協力してくれる者がたくさんいるではないか。」
「お前は?お前の助けなしでは、成功はありえん。」
「んなもん分かっとるわい。じゃが時期が来たとき、あそこの中庭で、頑張っとる2人とワシと後1人でルシード殿の所に向かう。それが条件じゃ。」
「何!?」
こう言いだすと、聞かない。それがシゲンである。だが背に腹は代えられない、そこでふと思う。
「?中庭の2人?」
そういえばと窓から中庭を見てみると、もう夜もだいぶと深まった空の下、騎士になったばかりの、男女1組が仕合をしていた。
「さっきからずっと仕合ってをしておった。いい筋しとる。育て方によっては化けるぞ、あの2人。」
ヴェインは少し考えて溜息をつき、
「・・・分かった。それなら、その条件を飲もう。あの2人と最後の1人はデニスを連れて行け。」
「ほ?良いのか?すまんの~、これで楽が出来る。」
「このクソジジイ、覚えてろ~。」
ヴェインがシゲンを睨みつけながら人財貸し出しの許可をすると、シゲンは、こう言った。
「陛下は何と言っておられた?」
ヴェインが答える。
「いや、具体的には聞いていない。ただ、それはエンフィールドの南から来るんだそうだ。」
「そうか・・・何事も起きて欲しくない所からか・・・。」
「そうだ。だから・・・シゲン。時期が来るまで手伝ってくれ。」
ヴェインと、シゲンはガーディアーナに来る国難に備える準備の為、動き出した。
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