一話 入学魔法試験
初投稿です。
至らぬところは多いですが、温かく見守ってくれると嬉しいです。
「私、まだ死にたくない。もっとあの人の側にいたい。なんで急に私がこんな病気になるの。あの人とずっと一緒にいたいのになんで。なんで私なの。」
ある病院の一室。一人の女の子が泣き叫んでいた。
『ねぇ、私の声が届いてるかな?』
「だれ…?」
突如、彼女の頭の中に男性の声が響く。
『私はあなたの祈りを聞き入れ、叶える者。名を…。』
「あなたは、私の病を治してくれるの?」
『いえ、それはできない。しかし私と契約していただければ、ずっと大切な人の側にいることなら可能である|。』
時を同じくして、世界中の多くの人に突如として魔法が使えたりと不可解なことが起こるようになっていた。
人々は最初こそ驚き、混乱したものの、今では魔法は生活の一部となり、必要不可欠なものとなっていた。
♦︎
「今から、入学そうそう自己紹介もまだで悪いが、抜き打ち魔法実技試験を始めます。えー、出席番号順に火、水、地、雷の四元素属性の魔法を一種類ずつ唱えていただきます。魔力数値をそれぞれの属性ごとで測るだけの試験ですので、それぞれの属性の中で一番得意な魔法を唱えてください。」
入学式が終わり、魔法学実習室へと移動し、担任の岩田空先生がやる気のなさそうに声をかける。
そもそもこの世界の魔法は基礎魔法と呼ばれる、呪文系、媒介系、能力系の三種と、それとは別に魔導系又の名を原型魔導師が存在している。
また、原型魔導師には存在していないが魔法には、普通の魔法には四種類の属性が存在している。
そして、基本的に基礎魔法に関しては後付けで習得可能な魔法である。
呪文系とは、その名の通り呪文を唱え魔力を消費し、唱えた魔法を放つものである。
媒介系とは、何かしら道具を介し、自分の魔力と道具の魔力を練り合わせ放つ魔法である。
能力系とは、魔力の本質を変え、体質を変化させ、呪文や媒介などを使わずに放つ魔法である。
そこまでは現時点で判明しているのだが、この世界には魔法というのには謎が多く、世間一般的に魔法が認知され、みんなが当たり前に使用するようになったのが約12年ほど前のことだと言われている。
これが僕らの魔法に対する常識であった。
「我に眠りし聖なる力よ。炎を纏い、聖剣となって顕現せよ。」
そう呪文を唱えたのは、今年の入学者の中で魔力数値が一番高いのではないかと言われている葵 怜央であった。彼の唱えた魔法は手元から炎の剣を生み出し、それを一振り、振り下ろす。
そのようにして四属性すべての剣を生み出し、彼は試験を終える。
「はい、次。出席番号2番。天沢 日向。」
「はい。」
僕はこの葵 怜央の後にやるのはものすごく嫌だったが順番だから仕方ないと諦め、魔銃を腰から引き抜き、呪文を唱える。
「火炎弾。」
「水流弾。」
「砂塵弾。」
「雷撃弾。」
四属性の魔法銃弾が的にあたり、自分の試験が終わる。
「はい、次。出席番号3番。有川 凛々花。」
そして僕はこの時のことを今でも覚えている。
長く美しい髪をなびかせながら、まるでモデルでもやっているのか?と聞きたくなるようなプロポーションで立ち上がる。そう、僕はそんな彼女に見惚れてしまっていたのだろう。
そして、今から語るのは僕が彼女と出会い、彼女が真実を知るまでの物語だ。
「おい、凛々花!早く出てこい!」
担任の岩田先生が有川さんのことをいきなり下の名前で怒鳴るように言ったのは驚いた。
「義兄さん、私が基礎魔法使えないことわかってて言ってるよね?」
少し凛とした顔にもともと少しつり上がった目つきが先生を睨むかのようにつりあがりはしたものの、おとなしげそうに彼女は答える。
基礎魔法が使えない??
彼女は基礎魔法が使えないのにこの魔法学院に入学してきたということになるのか??
入学試験に魔法の実技試験があったはずなのに彼女はどうやって入学してきたのだろうか?
「わかってるが、一応学校の試験として形だけでもやってくれ。っていうか、学校ではちゃんと先生と呼びなさい。」
「だったら、先生も凛々花のこと、有川さんって呼んでもらえますか?この人殺し。」
「あー。はいはい。有川さん。とりあえず適当な呪文唱えて失敗でもいいからやるだけやっちゃってください。」
先生完全に呆れてるよこの態度…。
その時だった。
「先生。一つ質問いいですか?」
「どうしたの?小林くん。」
質問してきたのは小林一輝だった。
特にこれといった特徴は見当たらない彼だが、気になることはズバズバ聞いていくタイプらしい。
「どうして、魔法の使えない人間がこの学院にいるんですか?そもそも先生のことお兄さんって呼んでたし、血縁関係の人ですよね?何かコネで入学してきたとかそんなんですか?」
すごく嫌らしいこと言う奴もいたものだ。だが、その気持ちはわかる。この学院に入学してきたものの大半は魔法をしっかりと身につけ優秀な魔法使いになることを目的とした人ばかりなのだ。
そんな中に魔法が使えない人間がいればそれは士気が下がるというものだ。
「一応、有川さんは僕の妻の妹なので、義理の妹という形にはなるよ。だけど彼女が魔法を使えないのにこの学院にいるのには関係がなくて、それはそのうちバレることだから今のうちに説明しておくね。」
先生が一呼吸おいてからまた話し出す。
「彼女は原型魔導師なんだよ。周りに原型魔導師がいないとよくわからないと思うから簡単に説明すると、魔法使いのように基礎魔法を使う人たちは自分の魔力に見合った魔法を使うのに対し、原型魔導師の使う魔導とは人知を超える者から与えられた者だと聞く。よく聞くのは女神だが、本当かはわからないけど噂では妖精に与えられたという者もいるらしい。」
原型魔導師についてまだ詳しいことは公表されていないはずだ。
だが、先生はなぜか知っているような口ぶりだ。
よく聞くのは女神と言っているが、もしかして有川さんに力を与えたのは女神なのか?
「まぁ、人知を超える者から与えられた力だから自分の魔力に見合っていない力が多いんだよ。だから無意識のうちに普段から魔力を蓄積することに使ってしまい、魔法を使うために使用する魔力が残っていなくて基礎魔法が使えない人が多いんだ。」
「ありがとうございます。それで学院にも基礎魔法を一切使えない人がいるんですね。」
小林は先生の説明で納得したようだ。
「わかってくれたならいいや。ただ、魔導を使用するのに必要な魔力より大きい魔力を習得することで基礎魔法もだんだん使えるようにもなるんだ。だから、原型魔導師に基礎魔法を使える人が少ないんだよ。ちなみに白石結衣さんも原型魔導師だからみんなよろしくね。」
「はい。よろしくお願いします。」
おとなしそうな女の子が綺麗な黒髪を揺らしながら立ち上がり一礼をする。
「一応この学院には上級生、先生含めて原型魔導師が五人はいるが基礎魔法も使える魔導師は三年生の人だけだよ。まぁ、変なところで時間を使い過ぎてしまったね。じゃぁ、有川さん形だけでいいからとりあえず続きやってくれる?」
「あぁ、はい、わかりましたよ。」
そして、クラス全員抜き打ち試験を終わらせるのであった。
♦︎
実技試験が終わり全員教室に戻り、出席番号順に席へと着き、それぞれが自己紹介を済ませる。
その直後であった。
「先生。気分が悪いので保健室に行ってもいいですか?」
そう手を上げたのは有川凛々花であった。
「わかった。一人じゃ不安だろうし、まだ保健委員とか決めてないからとりあえず天沢。保健室まで付いて行ってやれ。」
「あ、はい。わかりました。」
チッ
今、かすかに舌打ちのようなものが聞こえた気がするが、あまり気にしないでおこう。
「ねぇ、有川さん。」
保健室に向かってる途中、無言の間が続いたのち僕がその空間に耐え切れず声をかけた。
「なに?どうせあなたも原型魔導師に興味津々で基礎魔法が使えないことをバカにしたい連中と同じなんでしょ?だからこんな学校に進学なんてしたくなかったのよ。」
「ちょっと待て!?僕はまだ何も聞いてないよな!?有川さんの名前読んだだけだよな!?なんで僕が有川さんをバカにしたみたいな流れになってるの!?」
なんだか、おかしい。もしかして基礎魔法を使えないことを気にしてるのかな?
「そう、じゃぁ、私をバカにしたいわけじゃないの?」
そう彼女が言い放った瞬間だった。彼女の黒く澄んだ瞳がまるでルビーを目にはめているかのように綺麗な朱色に変わって言った。
「別にバカにしたいわけでもないし、魔力数値高くなれば使えるようにはなるんでしょ?」
その瞳の圧迫感に押されて僕は少し怖じ気付いてしっまたようで少し声が小さくなってしまったようだ。
「そうね。確かに魔力数値をあげれば基礎魔法は使えるようにはなるかもしれないけど、それであの人が帰ってくるわけでもないし、興味はないわ。」
「あの人…?」
「聞きたいの?聞きたいならもう少し親密になってからね。今日初めましての人にいきなり身内ごとなんて話すわけないじゃない。」
確かにそれもその通りだ。彼女は誰かを生き返らせたいとかそんな願望でもあるのかな?気づいたら瞳も黒に戻っているし。
「そうかそれもそうだよね。それなら君の魔導がどんなものなのか聞くのはもっと親密になってからのほうがいいよね。同じクラスメイトとして聞いてみたかっただけなんだけど。」
「まぁ、それくらいのことなら教えてあげてもいいわよ?あなたは嘘をつかなかったから。」
嘘をつかなかった。いつのことだろう?
「え?いいの?」
「別に減るものじゃないしね。私は真実の魔導師。空が言うにはまだ使いこなせていないらしいけど、それでも、人と話せばその人の話してることの真偽くらいはわかる。」
「そうなんだ。じゃぁ、有川さんには嘘がつけないな。」
僕が笑いながら言うと彼女は少し笑いかけてきた。
「あなたっておもしろいのね。天沢くんだっけ?これから同じクラスの仲間として、よろしくね。そういえば、あなたの魔法は媒介系よね?」
「あ、そうだよ。」
彼女が名前を呼んでくれたのは初めてで僕も話をしていて楽しかった。
「私の魔導についても教えたのだから、天沢くんの魔法についても教えるのが筋なんじゃない?」
「まぁ、それはそうだね。僕の魔法はこの魔銃に魔力を注いで魔弾を放つっていう結構単純な魔法だよ。」
「ふーん。なんで銃なの?媒介系魔導師はものに思い入れのある人じゃないと使えないとは聞いたことがあるのだけど。」
「あぁ、それは僕の父親が自衛隊の人でね。小さい頃からレプリカが多かったけど、銃を触ることが多かったからじゃないかな?」
「それは本物の銃も握ったことがあるってこと?もしかして人も…」
そう彼女が低めトーンで放った声は僕の胸に刺さり、またしても、彼女の瞳が黒から朱色へ色を変えていった。
「いや、そういうわけじゃないよ。火縄銃っていう銃で父親の動物狩りに付き合っていただけだよ。」
少し、安堵したかのような落ち着いた表情に戻った彼女を見て僕は少し肩の荷を降ろした。
「そういえば、有川さんの瞳って…」
僕が質問を続けようとしたその時だった。
「ここが保健室ね。」
有川さんは僕の質問なんて興味がないかのようにして、保健室の扉を開いたのだった。
今後必ず面白くします!
これからも読んでいただけると幸せでございます!!